例え、私が殺した事実に責任を感じようとも。

紅飴 有栖

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父が選択を間違って死んでから数日__
「今日お父さん遅いわね。」
母は壊れた。父の死をきっかけに母は壊れ、変わった。
本当は気づいていたと思う。リビングに置かれた仏壇。遺影。線香のにおい。
それらは真実を母に見せるのに十分すぎるものだったから。
だけど母は、その重さに耐えられず、父は生きていると信じ続けていた。母は仕事もできなくなり、私は父のやっていた殺しの仕事を継ぐことになった。小学校中学年。だが、まだ幼すぎたが故、殺しは中学二年生になるまでしなくてもよいということになった。お金は与える。ただ、中学二年生になったら人を殺せ。そういうことだ。
私は母と二人で、どこか歪な家庭で過ごした。
「愛美、待っていればお父さんは絶対帰ってくるのよ。」
「.....そうだね」
帰ってくることは二度とない。
「お父さんはいつも笑顔でね....」
「.....うん。」
もう笑いかけてはくれない。
「お父さんは....あの人は....」
「お母さん....」
その瞬間、うつ向いていた母が顔をあげたため、目が合う。
母の目には、暗いが広がっていた。__絶望。
その二文字がこの目を表すに等しいことが、幼かった私にもわかった。
その日を境に母はどんどん闇に飲まれていった。
母は、私が中学二年生になったその日に、私に拳銃を持たせこう言った。
「愛美、あなたはこれから人を殺して生きていく。あの人のようにね。」
「.....う、ん...」
「だからね。あの人の、ううん。あの人と私の子供である貴方に、私を終わらせてほしいの。」
「....え....?」
私の手に拳銃を握らせ、指を引き金に添えさせる。
「ああ、やっとあの人のところへ行ける。」
母は私に持たせた拳銃の銃口を自身の額へ押し付ける。そして、私の引き金に添えられた指の上に自身の指を添えた。
「....え、やだ、お母さん...!」
「ごめんね。さようなら、愛美。愛しているわ」
そう言って母は添えた指に力を籠める。ぐっと引き金に圧力が加わり、
「や、やだ、やめて、お母さん、」
バンッ!!!
目の前で赤い花が咲いた。空中に何枚も何枚も花弁が舞うように。飛び。舞った。
赤い花をあたり一面に広げ、母は散った。
私の指に添えられた手はするりと床に落ち、私の手には銃が残った。
「う、あ、ああ、そんな、お母さん、!」
どれだけ混乱しても、どれだけ泣いても、叫んでも、喚いても。
母の目が開くことも、冷たくなっていく母があたたかくなることもなかった。

___私が殺した一人目の人。

それは自身の母親だった。
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