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4話「サンタが届けるモノ」

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・登場人物

 園原 小雪そのはら こゆき:♀ 22歳。サンタクロース協会、日本支部で働くことになった新人。

 野薔薇 美礼のばら みれい:♀ 25歳。サンタクロース協会、日本支部で働く先輩。ナイスバディの美人さん。

 江野沢 淳太えのさわ じゅんた:♂ 29歳。サンタクロース協会、日本支部で働く先輩。バカその一。

 黒澤 義則くろさわ よしのり:♂ 26歳。サンタクロース協会、日本支部で働く先輩。バカその二。

 ジェイニー・ノリサワ:♂ 28歳。サンタクロース協会、日本支部で働く先輩。バカその三。

 

*度々登場する[サンタクロース!]は、場面の転換合図だと思ってください。



ーーーーー



 サンタクロース協会日本支部、江野沢チームのオフィス内。社員である園原は、黙々とパソコンと睨めっこしている。オフィス内は園原以外にはおらず、カタカタとキーボードを叩く音ばかりが響いている。


園原「あぁ...飽きた...飽きたよぉ...。毎日毎日パソコンとにらめっこ...笑えねぇよ...もう笑えねぇよぉ...。いい加減、何か別の仕事したいよぉ...。このままじゃ私は、パソコン作業ロボットと化してしまう...。ってかよ......なんで私以外、誰一人ここにいないんだよ!?!?」

園原「どうなってんだよ、ちくしょうが!! もしかして、私に全部めんどくさい仕事押し付けてる!? 押し付けてるよね!? 私は事務所にこもりっぱなしで、あいつらは今ごろお外でパーリナイか!? 私にも外の空気吸わせろや、こらぁぁぁ!!」

江野沢「江野沢が戻ってきたぞー。おーい園原、ちゃんと仕事してるかー?」

園原「してるわ、ボケゴラ! ずっとパソコンとにらめっこしてるわ!!」

江野沢「園原、俺は先輩だぞ? 忘れてない?」

園原「すいません。先輩よりも、AVばっかり見ている性欲モンスターという印象の方が強くて、つい...。」

江野沢「菊竹の件、忘れたのか?」

園原「お疲れ様です、江野沢先輩♡ お茶いれてきますね♡」

江野沢「気持ち悪っ! 似合わねぇことするんじゃねぇぞ...。あぁ、鳥肌が...。」

園原「ここで息の根を止めてやろうか?」

江野沢「口の悪さは問題だが、まぁ堅苦しく接されるよりはマシか。仕事には、慣れたか?」

園原「毎日毎日パソコンとにらめっこしてますから、それなりに。これ、さっき完成した資料です。」

江野沢「仕事が早いな、助かる。」

園原「ところで、江野沢さんはさっきまでなにしてたんですか? いつものようにAV鑑賞ですか?」

江野沢「ちゃんと仕事してたわ! しっかり素行調査してきたわ!!」

園原「へぇー。」

江野沢「お前、信じてないだろ?」

園原「はい!」

江野沢「なんだ、このクソ生意気な後輩は...。可愛くねぇなぁ...。」

園原「お前らの行動が私をゆがませてしまったんだ。恨むなら自分たちを恨め。」

江野沢「まぁ、生意気な部分をなくしても可愛くはないがな。」


黒澤(M)しばらくお待ちください。


 江野沢は鼻や口から血を流し、床に倒れこんでいる。


園原「あーあ、小雪もそろそろ別の仕事がしたーい☆」

江野沢「て、てめぇ...俺は先輩だぞ...? なぜ躊躇ちゅうちょなくここまでボコボコに殴れる...?」

園原「先輩だと思ってないからです。江野沢さんも、これからパソコン作業ですか?」

江野沢「いや、そろそろお前も仕事に慣れてきた頃だろうから、素行調査に連れてってやろうと思ってな。」

園原「え!? いいんですか!? やったぁぁぁ!! 外に出られる~~!! 外の空気が吸える~~!」

江野沢「園原、それは獄中ごくちゅうから出るやつのセリフだぞ。」





 とあるショッピングモール内。家族連れや友達連れ、お一人様、沢山のお客さんで賑わっている店内を、園原と江野沢は話しながら、目的地へとテクテク並んで歩いている。


園原「見学ですか?」

江野沢「そうだ。いきなりやれって言われても上手くできねぇだろ? だから、今日は先輩たちがどんな感じで仕事してるかを見て、やり方を覚えろ。」

園原「わかりました。黒澤さんもジェイニーさんも野薔薇さんも、今素行調査してるんですか?」

江野沢「黒澤とジェイニーは素行調査だが、野薔薇は違う仕事してる。」

園原「なにしてるんですか?」

江野沢「お願いしてる。」

園原「お願い? 仕事うまくいきますようにって?」

江野沢「いや、そのお願いじゃない。あいつはーーー」





 とあるホテルの一室。部屋の中は、ピンクの照明が薄らと照らし出している。キングサイズほどのベッドの上では、衣服を乱した野薔薇が、スーツ姿の男に迫っている。


野薔薇「ねぇ...いいでしょ?」

男性「だ、だめです! 何度お願いされても、絶対に...!」

野薔薇「うふふ...意思のカタい男は、嫌いじゃないわよ。」

男性「ほ、他をあたってください! 僕は絶対にーーー」

野薔薇「もぉ、すっごくカチカチなんだから...♡ 大丈夫よ、絶対にバレないから...お・ね・が・い♡」

男性「ぐっ...! し、しかし...!!」

野薔薇「本当は、したいんでしょ?」

男性「そんなわけないだろう! 裏切るわけにはいかないんだ...! 裏切るわけには...夢を壊すわけには...!!」

野薔薇「息子さんの喜ぶ顔...みたくないんですか?」

男性「そ、それは...!」

野薔薇「あなたが首を縦にふるだけで、あなたの息子さんは元気に...笑顔になるんですよ?」

男性「ぐっ...!」

野薔薇「息子さんの顔、思い浮かべてください。」

男性「や、やめてくれ...!」

野薔薇「ほーら、プレゼントがほしくてほしくてたまらないって顔してるよ?」

男性「そ、そんなことは...!」

野薔薇「正直になっちゃおうよ...ね♡」

男性「う、うぅ...!!」

野薔薇「私のお願い聞いてくれたら...息子さんに最高のプレゼント、あげちゃうよ? だから...お・ね・が・い♡」

男性「...わ、わかりました...。息子に最高のプレゼントをあげるためです...。僕も、サンタになります...。」

野薔薇「ありがと♡ じゃあご褒美、あげるね♡」

男性「あっ、ちょっ! 待っ、まだ心の準備が...!! あ、あ、あぁぁぁ~ん♡♡」





江野沢「みたいな感じで、全国のお父さんに代役サンタのお願いしてる。」

園原「大丈夫なんですか、それ? 子どもたちの夢が壊れる前に、家庭が崩壊しませんか?」


野薔薇(M)日本のお父さんたちは、仕事ができる男たちばかりだから大丈夫です。



江野沢[サンタクロース!]



 ショッピングモール内を抜け、外の飲食店が並ぶエリアを歩いている二人。


江野沢「素行調査は人それぞれやり方は違うが、まずはなんにせよ子どもに近づかないといけない。遠くから見てるだけじゃ本性はわからないからな。」

園原「なるほど。」

江野沢「もちろん、子どもたちに俺たちがサンタクロースだと気づかれてはいけない。気づかれたらとんでもなく恐ろしい罰が待ってるから気を付けろよ。」

園原「りょ、了解です...。」

江野沢「お、いたいた。園原、あそこの着ぐるみ見えるか?」

園原「え? どれどれ...?」


 江野沢の指差す方向ーーー大きく開けた広場の中心に、ソーセージと○○○を足して2で割ったようなビジュアルの着ぐるみが立っており、子どもたちに元気よく手を振っている。


園原「...あのソーセージみたいなやつですか?」

江野沢「そうだ。あれはソーセージをモチーフに作られたゆるキャラ「ちーぽこくん」だ。」

園原「誰だ、その名前でOKだしたアホは?」

江野沢「あの着ぐるみの中に黒澤がいる。」

園原「なんで数あるゆるキャラの中でちーぽこくんを選んだんだよ、あのアホは!!」

江野沢「あれでも子どもたちには大人気なんだぞ。だから、あれが街にいればーーー」

男の子1「あっ! ちーぽこくんだ!!」

男の子2「ちーぽこちーぽこ~!!」

江野沢「あんな感じで子どもが簡単に集まってくる。素行調査が楽ちんだ。」

園原「ちーぽこに集まるショタたち...! 可愛すぎて目が離せない...! ごちそうさまです!!」

江野沢「お前はちーぽこを見ろ。やつの仕事っぷりを見ろ。」

男の子1「おらおら!」

男の子2「くらえ! 必殺キック!」

男の子3「パーーンチッ!!」

園原「...あの、ちーぽこくんがサンドバッグと化してしまったんですけど...大丈夫なんですか?」

江野沢「大丈夫だ。」

男の子たち「おらおらー!!」

園原「あの、ちーぽこくん頭抱えてしゃがみ込んじゃったんですけど...助けた方が...。」

江野沢「大丈夫だ、ちーぽこくんを信じろ。」


 ふと、園原とちーぽこくんの視線が重なり合う。ちーぽこくんはサンドバッグになりながらもジッと園原を見つめる。すると、園原たちに向かって手を懸命に動かし、何かを伝えようとし始める。


園原「あの、なんか一生懸命こっちに手で何か伝えてるんですけど...なんですか、あれ?」

江野沢「あれは、ハンドシグナルだ。」

園原「なんて言ってるんですか?」

江野沢「「助けてくれ」って。」

園原「助け求めてるじゃないですか!! 大丈夫じゃないじゃん!!」

江野沢「ちょうどいい機会だ。園原、お前にハンドシグナルを教えてやる。」

園原「はい、わかりました!」

江野沢「あいつに向かって、中指を思いっきりあげろ。」

園原「はい!!」

江野沢「以上だ。」

園原「...あの、これはなんて意味なんですか?」

江野沢「「こっちに仕事押し付けんな! 自分でなんとかしやがれバーカ!! 100万円くれるなら考えてやるよ! 地面に頭擦り付けろ!」だ。」


園原(M)中指一本には、たくさんの意味が込められてることを知りました。



黒澤[サンタクロース!]



 ショッピングモールを後にした二人は、お店が立ち並ぶ道沿いを並んで歩いている。こちらも先程のショッピングモールに負けないほど、沢山の人たちで賑わっている。


江野沢「さてと、次はジェイニーだな。」

園原「あの、黒澤さんをあのまま放っといてよかったんですか...?」

江野沢「あとでめちゃくちゃ怒られるぞ、お前が。」

園原「なんで私が!?」

江野沢「中指立てたの、お前じゃん。」

園原「お前がやれって言ったんだろうが!」

江野沢「そんなギャーギャー騒ぐなっての。おっ、いたぞ。」


 江野沢が指を指し示す方向ーーー移動販売のクレープ店の車内には、ジェイニー・ノリサワが赤、青、白のストライプ柄の可愛い帽子を頭に乗せ、生地を慣れた手つきで焼きあげている。


ジェイニー「イラッシャイマセー! オイシイクレープ、イリマセンカー!」

園原「あれは...クレープ屋ですか?」

江野沢「そうだ、子どもはクレープ好きだからな。」

女の子「こんにちは! クレープ1つください!」

ジェイニー「ナニクレープガ、ホシイデスカ?」

女の子「うーんと...イチゴ!」

ジェイニー「イチゴクレープ、マイドアリガトウ!」

園原「...江野沢さん、なんかあの人いつもよりカタコトしてませんか?」

江野沢「ん? そうか? あんなもんじゃね?」

園原「いやいやいやいや、私にはわかりますよ。あいつ、いつもよりカタコトしてますよ。絶対そうですよ。」

江野沢「そんな細かいことに気がつくなんて...お前、もしかしてジェイニーのこと...!?」

園原「お前の頭は腐ってんのか?」

江野沢「え? そこまで言う? それは俺にもジェイニーにも失礼だぞ?」

園原「くそぉ...なぜだ? こんなクソどうでもいいことがめちゃくちゃ気になってしまう...。なぜやつは、いつもよりカタコトしてーーー」

女子高生「あ~! ジェイニーさんじゃ~ん! こんにちー!」

ジェイニー「コンニチー!」

女子高生「あはは~! 今日もカタコトでめちゃかわ~!」


園原(M)一人の女子高生の出現により、謎は簡単に解けてしまった。そして、わかったことがもう一つ...。


園原「江野沢さん。」

江野沢「なんだ?」

園原「あの人がクレープ屋してるの...素行調査のためじゃないですよね?」


園原(M)自分の欲望に忠実な男、ジェイニー・ノリサワであった。



ジェイニー[サンタクロース!]



 とある小児科の大きな病院の、スタッフルーム内。


園原(M)園原 小雪、22歳! 悪い子には、注射しちゃうぞ☆

園原(M)いやーこれで全国の男どものハートを鷲掴みにしてしまったわ~! 自分の可愛さが恐ろしいわ~!

園原(M)ん? なんで急にあんなセリフ言い出したのって? いや、ナース服着てたら言いたくならない? なるでしょ? ん? なんでナース服着てるのって? まぁ待て待て、焦るんじゃない。今から説明しようではないか。


野薔薇「うふふふ! やっぱり小雪ちゃん、似合うわね~! とっても可愛い♡」

園原「でへへ~! そんなこと言われたら照れちゃいますよ~! 照れちゃうんですけど...。」

野薔薇「あら? どうしたの?」

園原(はち切れんばかりに膨らんだ胸! 思わず手を回したくなるほどに細い腰! 触りたくなるお尻! ワァオ! パーフェクトボディ!! あなたの隣にいたら、私の可愛さ消し飛ぶね!!)

野薔薇「どうしたの? ジッと私を見つめて?」

園原「いや、なんて言うんでしょうか...? どうして神様はこうも不公平なのかなって...。私にも少しくらい、おっぱいと色気を...。私は神を恨みます...。」

野薔薇「小雪ちゃんは、そのままでも充分魅力的よ。それじゃあ、お仕事の説明するわね。」

園原「は、はい!」

野薔薇「小雪ちゃんには、この小児科しょうにかで入院している子どもたちの欲しいものを聞いてきてほしいの。」

園原「はい! ショタたちの欲しいものは、私がどんな手を使っても聞き出してみせます!」

野薔薇「ロリたちの欲しいものも忘れず聞いてきてね。」


黒澤(M)欲望に忠実な女、園原 小雪であった。


野薔薇「あ、そうそう。もし休憩したかったら、ロッカー室出て目の前にある部屋を使ってね。」

園原「わかりました!」

野薔薇「休憩する時は、私に一言おねがいね。」

園原「はい! では、お仕事してきます!!」

野薔薇「いってらっしゃい。」

野薔薇「うふふ、小雪ちゃんは元気でホント可愛い...♡ 早く休憩しないかなぁ? あの部屋は滅多に人がこない所だから...小雪ちゃんと二人っきりで...うふふふ♡ しかも病院でいけないことって...あぁぁぁ、興奮しちゃう~~~♡」


黒澤(M)野薔薇 美礼...この女もまた、欲望に忠実な女であった。



野薔薇[サンタクロース!]



 小児科病院のとある一室。広場のように大きくひらけた部屋の中には、積み木があったり絵本があったり、子どもたちの遊び道具がたくさん置いてある憩いの場となっている。
部屋で楽しげに遊んでいる子どもたちに、園原は一人一人欲しいものを聞いて回っている。


子ども1「欲しいもの? 野球のグローブ!」

子ども2「ニンニンドウ・スポッチが欲しい!」

子ども3「僕はね、ヒーローセット! カッコいいヒーローになりたいんだ!!」

園原(いや~可愛い~! ここは天国じゃの~! 最高に可愛くて可愛い!! あなた達の願いは、私が絶対に叶えてあげるからね~!)

園原「君たちは何が欲しい~?」

子ども4「富!」

子ども5「名声!」

子ども6「マグロッ!!」

園原(最近の子は、考えがぶっ飛んでるな~。そこもまた可愛いんですけど~!)

園原「えっと、君たちは何が欲しい~?」

黒澤「AV。」

江野沢「エロ本。」

ジェイニー「女子コーコーセー!」


野薔薇(M)しばらくお待ちください。


 バカサワは口から血を流し、床に倒れ込んでいる。


園原「何してんだ、テメェらは?」

黒澤「お前...少しくらい手加減しろよ...。」

江野沢「ちょっとボケただけじゃんか...。」

ジェイニー「酷すぎマース...。」

園原「んで、バカサワはなんでここにいるんですか? あなたたちがここにいると、ショタたちがけがれてしまうので、とっととどっかに消えてください。」

江野沢「ひどくね? 俺たちはお前の先輩だぞ?」

黒澤「そんなこと言ってるから、お前は胸が小さいんだよ。」

ジェイニー「悪口ハいけませンヨ、園原サン。」

園原「すみませーん、そこの菌を今から除菌するので捕まえてくださーい。」

黒澤「おいおい、菌って誰のことだよ?」

ジェイニー「あなたデスヨ、黒澤サーン。」


 ジェイニーは、がっちりと黒澤を羽交い締めにする。


黒澤「えぇぇ!? ちょっ!? ジェイニーなにしてんだ!? 離せぇぇ!!」

江野沢「園原様、アルコールでございます。」

園原「よくやった、褒めてつかわす。」

江野沢「ははぁ! ありがたきお言葉!」

黒澤「待てぇぇぇぇ! 待ってくださーーい!! お前ら、バカサワとしての絆はどこに捨ててきた!? お前らだって、ちっぱいって思ってるだろ!! 援護射撃してくれると思ったから言ったのに!! 園原にボコボコにされたのをもう忘れたのか!?」

江野沢「園原にボコボコに? 何を言っている? 園原様がそんな乱暴なことするわけないだろ?」

黒澤「クソがぁぁぁ!! 園原様、ここにいるジェイニー・ノリサワとかいう奴は、この前あなた様の胸を見て「火曜サスペンス劇場カサスで出てくる崖みたい」とか言ってましたよ!!」

ジェイニー「なぜ私ヲ攻撃スル!? 江野沢さんデショ!! ってか、ソンナコト私ハ一言モーーー」

園原「江野沢、無限ロケットランチャーむげんロケラン。」

江野沢「どうぞ、園原様。」

黒澤「無限ロケランンンン!?!? バカやろぉぉ!! 無限ロケランは、ゾンビにぶっ放すもんで、生きてる人には撃っちゃダメなんだぞ!! 考え直してください、園原様ぁぁ!!」

ジェイニー「ってか、それ撃ったラ私モ消し炭ニなるんデスケド!? 落ち着いてくだサイ園原様ァァ!! 私ハ、火サスの崖なんテ一言モ言っテーーー」

園原「消し炭になれぇぇぇ!!!」

黒澤「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
ジェイニー「ノォォォォォォォォ!?!?」


 病棟内に爆音が響き渡る。黒澤とジェイニーは爆風に巻き込まれて瓦礫と共に外へとぶっ飛び消えていく。


園原「ふぅ、除菌完了。」

江野沢「お見事です、園原様。」

園原「あの、話戻しますけど...なんでここにいるんですか?」

江野沢「なんでって...ここ、小児科じゃん?」

園原「はい。」

江野沢「そこに、園原じゃん?」

園原「それがなにか問題でも?」

江野沢「もっとわかりやすく言おう...幼稚園にライオンが放たれたら、危ないだろ?」

園原「お前たちは私をなんだと思ってるんだ?」

江野沢「ちゃんと仕事できてるかも気になってな。一応俺たち先輩だし、後輩の面倒はしっかり見ないとだろ?」

園原「そうですか。しっかりちゃんと仕事してますから、安心してください。」

江野沢「そうか。ところで園原、一つ質問いいか?」

園原「なんでしょう?」

江野沢「首からぶら下げてる、そのカメラはなんだ?」

園原「仕事用です。」

江野沢「お前の仕事は写真撮ることじゃないぞ。」


野薔薇(M)カメラは没収されました。



園原[サンタクロース!]



 園原はトボトボと一人、廊下を歩いている。


園原「ひどい...ひどすぎる...。カメラを奪うだけじゃなく、ここで撮ったショタたちのデータを...。一体私がなにをしたというんだ...? うぅ...。」


 手元の資料を確認しながら、トボトボと歩みを進める。目的地のとある病室へと辿り着くと、資料と扉の近くに掲げてあるネームプレートを交互に見比べ、間違いがないことを確認する。


園原「えっと、奥村 茂おくむら しげるくん...よしよし。この子に聞けば今日のお仕事は終了っと。さぁて、この子は何を欲しがってるのかな~?」

園原「失礼しまーす。しげるくんはーーー」


 軽く扉をノックしてゆっくりと開けた園原の視界には、ベッドから落ちたのか床にうつ伏せになって倒れ込んでいる男の子の姿が。


園原「え!? ちょっ、大丈夫!?」

しげるくん「だ、大丈夫! 歩く練習をしてただけだから!」

園原「あ、歩く練習? と、とにかく、ベッドの上まで運ぶよ!」

しげるくん「う、うん...。」

園原「いくよー! 1、2の、3!」


 園原はしげるくんの肩を支えながらゆっくりと起こすと、ギシッと左足からあまり聴きなれない音が部屋に響き渡る。園原が視線を音の方向へと運ぶと、彼の左足は人の手で作られた人工の足に支えられていた。


園原(この子、足が...。)


 園原はゆっくりと、丁寧に彼を支えベッドの上へと運ぶ。


しげるくん「あ、ありがと...。」

園原「どういたしまして! ってか、大丈夫? 転けた時に頭ぶつけてない?」

しげるくん「う、うん。ちゃんと手をついて倒れたから大丈夫。」

園原「それはよかった。ちょっと手を見せて。どこか痛むところある?」

しげるくん「大丈夫。」

園原「今、お姉ちゃんが押したり触ったりしてるけど、どこも痛まない?」

しげるくん「うん。」

園原「うんうん。じゃあ大丈夫そうかな? もしどこか痛くなったら、すぐに看護婦さんとか先生に言うんだよ?」

しげるくん「......。」

園原「しげるくん?」

しげるくん「......。」

園原「しげるくん、もしかしてだけど...歩く練習は一人でしちゃダメなことなんじゃないの?」

しげるくん「ぎくっ!?」

園原「ははーん、その反応...ダメなことやってたんだね?」

しげるくん「うぅ...。」

園原「さっきみたいに転けたら危ないんだから、ちゃんと誰かいるところでじゃないとダメだよ。わかった?」

しげるくん「う、うん...。」

園原「今日のことは誰にも言わないから、そんな顔しなくて大丈夫だよ。」

しげるくん「ほ、ホント?」

園原「うん、お姉ちゃんを信じなさい!」

しげるくん「あ、ありがと! え、えっと...。」

園原「あっ、名前まだ言ってなかったね。私は、園原 小雪だよ。よろしくね。」

しげるくん「ぼくは、おくむら しげるです。よ、よろしくお願いします。」


 しげるくんはペコリと頭を下げると、左足につけていた義足を丁寧に外し始める。


園原「しげるくんは、いつ頃から歩く練習を始めたの?」

しげるくん「つい最近。でも、何回やっても上手に歩けないんだ...。いつもこけてばっかりで...。」

園原「それでさっきも練習してたんだね。」

しげるくん「うん...。」

園原「焦らなくても大丈夫だよ。ゆっくりゆっくりできるようになればいいんだから。」

しげるくん「......。」

園原(うぅ...なんて声をかけてあげるのが正解なんだろうか...? と、とにかく、まずはこの重たい話から楽しい話に変えた方がいい気がします! そうします!)

園原「ねぇ、しげるくん!」

しげるくん「なぁに?」

園原「私ね、今みんなに欲しい物を聞いて回ってるんだ! もしよかったら、お姉ちゃんにしげるくんの欲しい物を聞かせてくれない?」

園原(さっきの子どもたちもそうだったけど、小さい子は自分たちの欲しいものの話になると元気にわーわー語ってくれる! きっとしげるくんも、元気に語ってーーー)

しげるくん「......。」

園原「しげるくん?」

しげるくん「......足。」

園原「...え?」

しげるくん「僕は、足が欲しい。みんなと同じ...作り物なんかじゃない...。」

園原「......。」


園原(M)私たちは、サンタクロースだ。子どもたちが欲しいものを、願ったものを与える存在。グローブだったり、ゲーム機だったり、マグロだったり...。

園原(M)でも、でも...この子みたいに、私たちにはどうしようもできないモノを願う子には、なにをすればいいんだろう...?

園原(M)私たちサンタは、この子になにをあげればいいんだろう...?
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