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11話「待っているだけではなにも始まらない②」
しおりを挟む長机の上にはスナック菓子が広げられ、アホ二人はボリボリと手を止めずに食べ進めている。間宮は相変わらず、黙々と漫画を読んでいる。
関「ほぉ、アピールですか?」
張間「はい! この部室に人が来ないのは、アピールが足りないからだと思うんです! だから、こう...どかーんとデカデカと探偵部をアピールすれば、咲ちゃんみたいに悩み事を抱えた生徒がバンバンくると思います!!」
関「張間くんの言う通りですね。どれだけ質が高い商品を売っていても、店の場所やら存在を知らなければ、誰も買いに来ませんからね。探偵部も新入部員が入って新しくなったことですし、改めてどかーんとデカデカとアピールしますか。と、言うことでーーー」
関は口にスナック菓子を放り込むと、スッと立ち上がり近くにあったホワイトボードを机の前まで引いてくる。ペンを手に取ると、上段の中央にスラスラと走らせる。
関「それではただいまより、なんでも探偵部会議を始めます。」
張間「はい、よろしくお願いします!」
関「今回のテーマは「なんでも探偵部を認知してもらうためには?」です。意見がある人は、挙手をしてから発言ーーー」
張間「はいはいはい!! はーーい!!」
関「張間くん。」
張間「テレビに出る!! テレビに出ることによって、なんでも探偵部は幅広い世代へと知れ渡り、全国的にも知れ渡り、知名度がバンバン急上昇! 学校からだけじゃなく、各地いろんなところから依頼がーーー」
間宮「却下。」
張間「ちょっとぉぉ! なんで却下するんですか!? 名案じゃないですか!!」
間宮「テレビになんて出られるわけないでしょ。」
張間「そんなの、やってみないとわからないじゃないですか!」
間宮「やってみなくてもわかります。もっと現実的なものを考えたら?」
張間「ぐぬぬぬ...!」
関「まぁでも、傑くんの言う通りですね。我々一般人がテレビに出演するのは難しいことですし、ターゲットは全国民ではなくて学校内の人間ですから。そこまで大体的にアピールをしなくてもいいと思いますよ。」
関「しかし、会議というのは意見を出すことに意味がある。張間くんには、プラス10点!」
張間「よっしゃぁぁ!」
間宮「その点数は何の意味があるんですか?」
関「傑くんも、漫画読んでないで会議にちゃんと参加してください。何もない時は自由にしていて構いませんけど、活動している時はしっかりちゃんと部活動をしてください。あなたも、なんでも探偵部の部員なんですから。」
間宮「はいはい、わかりましたよ...。」
関「それでは、他に意見がーーー」
張間「はいはーい!! えっと「意見箱的な物を設置する」はどうですか!? 悩み事を紙に書いて入れる箱を、色んなところに置いておけば、沢山の悩み事が集まるに違いありません! どうですか!?」
間宮「却下。」
張間「またですか!? さっきよりは現実的でいい案ですよね!? なんで却下するんですか!? しっかりちゃんと説明してください!!」
間宮「毎日毎日、箱を確認しに行く作業がめんどくさい。それに、意見をくださいならまだしも、悩みを解決しますなら、どうせまた顔合わせしなきゃなんだから。それだと二度手間になるだけだよ。あと、そんな物作ったら悪戯とか多発するかもだし。」
張間「ぐぬぬぬ...!!」
関「それでも、テレビよりは現実的な案ですから、保留ということにしておきましょう。張間くんにプラス5点!」
張間「やったぁ!」
間宮「だから、その点数はなんなんだよ?」
関「傑くんは、なにか案はありますか?」
間宮「ポスターを貼るでいいんじゃないですか? 手間も時間もかかりませんし、今年も去年と同じでいいと思いますよ。」
張間「えぇ~ポスターって地味ですし、去年と一緒だなんて、つまんないですよ~。」
間宮「別に面白さは求めてないから。」
関「私たちの部活動、そんなに資金ありませんから。やはりポスター作戦が一番効率的でお金もかからなくていいですね。うちの学校、生徒も無料で使えるコピー機がありますし。」
張間「えぇ~~! 部長、別の案にしましょうよ~! ポスター作戦なんて地味で絶対に流行らないですってば~!」
関「やれやれ、張間くんはポスターの凄さを知らないのですねぇ。」
張間「むっ...! どういうことですか!?」
関「ポスターというものは、ただ絵を描いて字を書いてではダメなんですよ。なにを伝えたいのか? 誰に伝えたいのか? どこになにを描けば目を引くのか?などなど、色んなことを考えて考えて作られているものなのです。その色んな物が全て合わさってできたポスターは、たった一目一瞬見ただけでも、脳内に存在を刻みつけます。」
関「ポスターとは、支配者なのです! たった一目見ただけで存在を脳に刻み込み、心に訴えかけ、その人を支配できる!」
張間「か、かっこいいぃ!!」
関「まぁ、ポスターを支配者にするか紙切れにするかは、作り手の腕次第ですけどね。」
関「張間くん、君は作ってみたくないかい? この学校の生徒たちを...支配したくはないかい?」
張間「ふっふっふ...! 部長、任せてくださいよ...! 私を誰だと思っているんですか...? 私は...この学校の支配者、張間 彩香です!! はっはっはっは!!」
張間は自分のカバンからノートと筆箱を取り出し、高速でペンを走らせていく。
間宮「先輩、張間さんの扱い上手いですね。」
関「部長ですから。さぁ、彼女もやる気を出してくれましたし、我々もポスター作りをしましょうか。」
間宮「えぇ、僕も作るんですか...?」
関「当たり前ですよ。三人で案を出し合って、先程言ったように支配できるポスターを作るんです。」
間宮「支配とかしなくていいんですけどね。」
張間「できましたぁ!!」
間宮「え、早っ。」
張間「ふっふっふ! これで、ここの生徒は支配されること間違いなしですよ!」
関「ではでは、張間くんの渾身の作品を見せてください。」
張間は、自信満々にノートを二人に見せつける。「なんでも探偵部」と赤い字でデカデカと書かれているだけで、特に工夫などは何一つ感じられない仕上がりになっている。
間宮・関「......。」
張間「どうですか!? まず伝えたいのは、もちろん私たちの部活動です! なので、デカデカと名前を書いてアピールしました! そしてそして、遠くからでもよくわかるように、目立つ赤で書きました! あと、右端に小さく、「来てね!」って書きました! ふっふっふ...! これで360度どこから見ても、目立つこと間違いなし!」
間宮「壁に貼るんだから、後ろからは見えないよ。」
関「確かに、このレベルのポスターが貼ってあったら、誰もが足を止めて見ること間違いなしですね。」
張間「でしょでしょ!!」
間宮「張間さん、褒められてないことに気づいて。」
張間「ではでは、早速この素晴らしいポスターをコピーしてきますね! レッツゴー!!」
関「...行っちゃったね。」
間宮「行っちゃいましたね。張間さん、思ってた以上に脳筋ですね。」
関「驚きの硬さですよ。帰ってきたら、頭を柔らかく揉みほぐしてあげなければ。」
間宮「というか、一人で行かせていいんですか? 張間さんのことだから、百枚くらいコピーしそうじゃないですか?」
関「あっはっはっは! 確かに、脳筋の彼女ならば、それもやりかね...張間くーーん!! 落ち着きたまえぇぇ!! そんな駄作を百枚もコピーすれば、生徒会の野郎どもにグチグチ言われること間違いなしですよぉぉぉ!! 戻ってきなさぁぁぁい!!」
間宮「...さてと、漫画の続きを読むか。」
間宮(M)その後、百枚コピー事件はギリギリのところで未遂に終わり、三人で案を出し合ってポスターを作りました。
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