なんでも探偵部!

きとまるまる

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13話「どすこいっ!紙相撲部!①」

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登場人物


 関 幸かかわり ゆき:♂ 三年生。なんでも探偵部の部長。

 間宮 傑まみや すぐる:♂ 二年生。なんでも探偵部の部員。

 張間 彩香はりま あやか:♀ 一年生。なんでも探偵部の部員。



ーーーーー



 放課後、なんでも探偵部の部室。白い三角巾と白いエプロンに身を包んだ関が、パタパタとはたきを使って部室内を清掃している。
張間は手伝う様子はなく、椅子に腰掛けニコニコニコニコ楽しそうな顔をしながらパタパタと足を揺らしている。


間宮「こんにちはー。」

張間「あっ、間宮先輩! こんにちは!」

関「こんにちは、傑くん。」

間宮「こんにちは。掃除、手伝いましょうか?」

関「おやおや、君からそんな言葉が出てくるなんて、何か良いことがあったのかい?」

間宮「特に何もないですけど、今の発言にイラッとしたので、もう手伝いません。」

張間「うふふ~♡」

間宮「張間さんは、すごく嬉しそうだね。何か良いことあったの?」

張間「おっと、気づいちゃいましたか間宮先輩!」

間宮「そんな顔してたら、気付いてくださいって言ってるようなものだよ。で、どうしたの?」

張間「うふふ~♡ 実はですね...今日、色んな人から「なんでも探偵部の張間さんだよね?」って声かけられたんですよ~! 私たちの作ったポスターが、こんなにも早く効果を発揮するなんて...! うふふ~♡ これで仕事がモリモリ沢山やってきますよ~! 部長も間宮先輩も、気合入れてくださいね!」

間宮(ポスター効果ではないことを伝えた方がいいのだろうか...?)

関「傑くん、それは言わなくていいですよ。言ったら、めんどくさいことになりそうなので。」

間宮「人の心を読まないでくれませんか?」

関「読まれない努力をしてください。」

張間「うふふ~♡ いつ来るかな? いつ来るのかな~? 困ってる人は、いつ来るのかな~?」

関「あーあ、めちゃくちゃやる気になっちゃってますよ。これで誰も来なかったら、どうしましょうね?」

間宮「めんどくさそうなので、僕は一足先に帰りますね。おつかれーーー」

関「こらこらこら、部活動はまだ始まったばかりですよ。彼女目当てで誰か一人くらい男が来ることを祈りながら、一緒にお掃除をしましょう。」

間宮「だから、掃除はしませんって。というか、張間さん目当てで来られても、それはそれでめんどくさい気がーーー」

 「こんにちわでごわす!!」

間宮「あー...誰か来た...。」

関「君がフラグを立てたせいですよ。」

張間「はいはいはーい! いらっしゃいませ!! どうぞこちら...に...。」


 張間の視線の先には、着物に身を包み、髷を結え、膨よかな身体をした男性がジッと張間を見つめている。


張間「......あ、あのぉ...うち、相撲部屋じゃないですよ?」

間宮「おいぃぃ! 失礼なことを言うな!! ど、どうぞ中に入ってください~!」

 「失礼するでどすこい!」

張間「え? この人、学生なんですか? どっからどう見てもーーー」

間宮「張間さんは、黙って飲み物を用意して!!」

張間「ちゃんこ鍋ですね! わかりました!」

間宮「人を見た目で判断するな!」

関「こんにちは。今日はどういったーーー」

 「緊急事態なのでごわす! 大変なのでどすこい! おいどんのどんどん!! 大切なつっぱり!!」

間宮「待って待って待って! 話はちゃんと聞くから落ち着いてください! あと、語尾は統一してもらえると助かります!」

 「盗まれたのでごわす!!」

間宮「何がですか!?」

張間「お待たせしました、カレーライスでございます。」

 「が、盗まれたのでごわす!!」

間宮「おい、飲み物を出すタイミング!! って、飲み物!?」

張間「え? だって、カレーは飲み物って...。」

間宮「その言葉は聞いたことあるけども!」

関「張間くん...これ、辛口かい!?」

間宮「いや、お前が食べるのむんかい!!」

張間「おぉ~! 間宮先輩のツッコミ、キレキレですね~! まだ部室に来て5分も経ってないのに、この熱量!」

関「こちらもボケる甲斐がありますね~!」

間宮「いいから黙ってろ、お前ら!!」

 「あの、すみません。」

間宮「あっ、ご、ごめんなさい! アホどものせいで!」

 「あっ、いえ。カレーのおかわりをください。」

間宮「お前は完食する前に用件を言えやぁぁぁぁ!!」

 「ごわすぅぅぅ!?!?」

関「こらこら傑くん、お客様の胸ぐらを掴まないの。というか、話が進まないから落ち着きたまえ。」

間宮「あんたに言われたくはないんだけど!?」

張間「ところで、大事なこと聞き忘れてたんですけど...あなた、名前は?」

 「ごわす! おいどんは、二年の花ノ山 川角はなのやま かわすみと申すでごわす!」

張間「二年生...ってことは、間宮先輩のお友達ですか?」

間宮「いや、存在は知ってるけど、話したことはないかな...。」

張間「まぁ、校内をこの格好で歩いてたら、話しかけづらーーー」


 間宮は素早く張間の口を手で押さえ込む。


関「花ノ山くん、盗まれたと言っていたが、一体何を盗まれたんだい?」

花ノ山「そ、それが...おいどんの「どすこい」が盗まれてしまったのでごわす...!」

関「な、なんだってぇぇ!?」

張間「ど、どすこいがぁぁ!?」


 アホ二人は、真剣な顔つきになっていく。周りの空気がシリアスな空気となって、場を包み込んでいく。


関「張間くん、これは大変な事件だぞ...!」

張間「部長、どうしましょう...!?」

間宮「おい待て。今の発言のどこに真剣な顔つきになるポイントがあったんだ? ってか、どすこいってなんだよ?」

花ノ山「今日、部室に行ったら、こんな手紙が置いてあって...。」

関「手紙? どれどれ...?」


 「お前のどすこいは預かった! 怪盗2かいとうに


関「な、なにぃぃ!? 怪盗2だってぇぇ!?」

間宮「なんで「に」なの!? なんか絶妙にダサいな!」

 「どすこいどすこい! ちゃんこ鍋っ!」

間宮「え!? 何、この音!?」

花ノ山「おいどんの着信音でごわす。」

間宮「着信音のクセがすごいな!?」

花ノ山「はっ!? し、知らない番号からテレビ電話でごわす! も、もしかして...!」


 花ノ山が通話ボタンを押すと、画面にヴェネツィアンマスクを着けて黒いマントを靡かせた女の子が映し出される。


 「はっはっは! 私の名は、怪盗2かいとうに!!」

関「怪盗2! どすこいをどこへやったんーーー」

間宮「ちょっと待てぇぇい!!」

張間「間宮先輩、どうしたんですか?」

間宮「どうしたんですかじゃねぇよ! こっちはまだ理解が追いついてないんだよ! ぽんぽんぽんぽん話を進めるな! 飛ばしすぎなんだよ! ブレーキついてないのか、お前らは!?」

関「えぇ~こちらはぁ~ノンストップ特急列車でぇ~す。」

間宮「うるせぇよ!! つーか、どすこいってなんだよ!? お前の着信音どうしたんだよ!?」

怪盗2「あ、あのーーー」

間宮「お前は誰だぁぁぁ!!」

怪盗2「ひぃぃぃ!?!?」

関「傑くん、大きな声で威嚇しないの。怪盗2、又の名を青海 七海あおうみ ななみちゃんが怖がってるじゃないか。」

怪盗2「んなっ!? ちょっ、ちょっと! 私は青海 七海じゃなくて怪盗ーーー」

張間「お胸のところに、平仮名であおうみって書いてありますよ~!」

怪盗2「えぇぇ!? 嘘ぉ!?」

張間「嘘です。」

怪盗2「えぇぇぇ!?!?」

関「後ろに映っている木は、中庭のものですね。張間くーん。」

張間「はっ! お任せください!」


 張間はビシッと右拳を左胸に当て、風のように部室を去っていく。


怪盗2「え? ちょっ、待っ! 来るの!? こっちに来るの!? ま、ままま待ってね! 移動するから、ちょっとだけ待っーーー」

張間「ターゲット発見んんん!!」

怪盗2「早っ!?!? うわぁぁ! 来ないでぇぇぇ!!」

関「花ノ山くん、どすこいは必ず我々が取り戻してあげますからね。」

花ノ山「お、おっす...!」

張間「部長~! 聞こえますか~? 見えますか~?」

怪盗2「わ、私のスマホ返してぇぇ~!!」

間宮「だから、飛ばしすぎだって言ってんだろうがぁぁぁ!!」
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