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20話「頭でしっかり考えてから行動しましょう②」
しおりを挟む突然の抱き締め攻撃からようやく解放された張間は、床に力なく四つん這いになり、息を整えている。
「えっと、その...ごめんなさい。私ったら、可愛い子を見つけると、つい...。」
張間「はぁ、はぁ...! ち、窒息死するかと思いました...!」
関「よくぞ死の淵から戻ってきた。さぁ、この聖なる水を飲みなさい。」
張間「ありがたき幸せ...!」
間宮「かなねぇ、今日はどうしたんですか?」
張間「かなねぇ? この方は、間宮先輩のお姉さんなんですか? 全然似てないし、何というか...月とすっぽんですね!」
間宮は無言で張間に近づくと、両頬を力任せに引っ張る。
張間「あだだだだ!?!? 暴力反対!! 暴力反対ぃぃぃ!!」
関「今のはあなたが悪いですよ、大人しく罰を受け入れなさい。ちなみにこの方は、傑くんのお姉さんではありませんよ。我がなんでも探偵部の顧問をしてくださってる、佐伯 奏先生だ。」
佐伯「初めまして。女子テニス部と兼任だから、あまりこっちには顔出せてないんだけど...一応、顔は覚えておいてくれると嬉しいな。」
張間「覚えます覚えます覚えます!! だから、まずは間宮先輩をどうにかしてくださいぃぃぃ!!」
関「傑くーん、彼女も反省してるようだし、そろそろ解放してあげて。」
間宮は無言で手を離し、椅子へと腰を下ろす。
張間「あたたた...。絶対に真っ赤になってますよ...。酷いです...。」
間宮「自業自得だよ。」
関「どこぞのあんぱんヒーローみたいになってますね。真っ赤っかですよ。」
張間「えぇぇ!? そんなに赤く腫れあがってますか!? もぉ、間宮先輩! 乙女の肌になんてことを!!」
佐伯「張間ちゃん、保健室に行く? 連れて行こうか?」
張間「あ、いえ。そこまでのことではないので、大丈夫です!! えっと、佐伯先生ですよね? 私は、なんでも探偵部に新しく入ったニューヒロイン、張間 彩香ちゃんです! これからよろしくお願いします!」
佐伯「あ~~♡ か、か、可愛いぃ~♡」
張間「ひぃ!? 間宮先輩、お助けぇぇ!」
間宮「めんどくさい仕事を持ち込まないでくれる?」
張間「め、めんどくさいとはなんですか!? 可愛い可愛い後輩が困ってるんですから、助けてくださいよ!」
間宮「自分で可愛いとか言うな。」
関「かなねぇも、落ち着いてください。」
佐伯「そ、そうね...ごめんなさい。」
張間「ところで、なんで二人は先生のことをかなねぇって呼んでるんですか? そんな軽ーい感じで呼んでいいんですか?」
佐伯「いいのよ。私がそう呼んでほしいって言ってるから。張間ちゃんも、先生じゃなくてかなねぇって呼んでくれていいんだからね。」
張間「ほほぉ、わかりました! では、かなねぇって呼んじゃいますね! これからよろしくお願いします、かなねぇ!」
佐伯「はぁ、はぁ...! か、可愛い...♡」
張間「ひぃ!?」
間宮「あの...落ち着いてくださいって...。」
佐伯「ねぇ、張間ちゃんはテニスに興味ある?」
関「サラッと勧誘しないでくださいよ。テニス部は、今年もたくさん新入部員がいるでしょう? うちはご覧の通りなので、これ以上減らさないでください。」
佐伯「ご、ごめんなさい...つい...。」
間宮「ところで、今日はどうしたんですか?」
佐伯「えっとね、一年生が入部したって関くんから聞いたから、挨拶をと思ってね。ごめんなさいね、もう少し早く顔出すべきだったんだけど...。」
間宮「気にしないでください。テニス部のことで忙しかったんですよね?」
佐伯「うん...。部活終わった後に顔出そうと思ってたんだけど...いつも忘れちゃって...。」
関「私たちって、忘れるような薄い存在でしたっけ? 自分で言うのもアレですが、結構濃い味だと思うんですが...ねぇ、傑くん?」
間宮「こっちはホント時間ある時で大丈夫ですから。無理言って顧問引き受けてもらってるみたいですし。」
関「傑くーん? 無視しないでー。」
佐伯「そう言ってもらえて安心するわ。でも、一応顧問なんだし、これからはちょこちょこと顔出すようにするわね。」
張間「部長、さっきからすごい見られてる気がするんですが...気のせいですか?」
関「気のせいではないぞ、張間くん。これから先、何度もテニス部に勧誘されるでしょうけど...君は強い心を持って、はっきりノーと言えますか?」
張間「ふっ...! 部長、私を誰だと思っているんですか? 私は、なんでも探偵部の張間 彩香ですよ?」
関「は、張間くん...!」
張間「お菓子食べ放題、ジュース飲み放題、マンガも読み放題だし遊び放題...! こんな快適空間を、自ら手放すなど...げふんげふん!! えっと...私、困ってる人は見捨てられないんですよ...! キリッ!」
間宮「あそこまで言い切って、よくそんな言葉言えるな?」
関「可愛い後輩だからって、甘やかしすぎましたかね? これからは、少し厳しくいきましょうか。」
張間「わーわーわー!! 冗談ですよ冗談!! 冗談に決まってるじゃないですか、もぉ~! 部長も間宮先輩も、冗談が通じなくて困っちゃいますね~! はっはっはっは!」
佐伯「張間ちゃん、テニス部はいつでもあなたを歓迎するからね?」
張間「わーわーわー!! 聞こえない聞こえなーーい!! か、かなねぇは、そろそろテニス部に戻った方がいいんではないでしょうか!? 部員の皆さんがお待ちですよ、きっと!!」
佐伯「それもそうね。それじゃあ、私はそろそろテニス部に行ってくるね。」
間宮「はい、お疲れ様です。」
佐伯「あっ、張間ちゃん。」
張間「はい、なんですか?」
佐伯「お別れのギューをしてもーーー」
関「申し訳ありませんが、うちの部室ではお触り禁止ですので。」
張間「またのご来店をお待ちしております! ではでは!」
佐伯「ちょ、ちょっと! わ、わかったから! わかったてばぁ~! じゃあ、ちょっとほっぺを触るだけ! ほっぺをムニッとーーー」
両手を広げて張間を迎え入れる準備を始めた佐伯だったが、関と張間に強く背中を押されて、そのまま部室の外へと追い出されていく。
間宮「相変わらずだな、かなねぇは...。」
関「これは、張間くん目当てで来店数がアップしますね。嬉しいような悲しいようなですよ。」
張間「あの、かなねぇって女子テニの顧問なんですよね? あんな感じで、部員の子たちは大丈夫なんですか...?」
関「一年生は毎年のことながら、どう対処していいのかわからずあたふたしてますけど、二、三年生がしっかりと対処してるので、安心してください。」
間宮「たまーに暴走して対処できない時があるけど、その時は僕らが対応してるよ。」
張間「え? 暴走...?」
関「まぁ、今年暴走しても張間くんは部室でお留守番させますので、安心してくださいね。」
張間「あの、暴走ってなんですか...? 暴走して、なにするんですか...?」
関「その時はしっかりと鍵をかけて、私たちから連絡がくるまで決して扉を開けてはいけませんからね?」
張間「ちょっとちょっと!! 怖いんですけど!? かなねぇが暴走したら、一体どうなっちゃうんですか!? 教えてくださいよ!!」
関「こっちに顔出した時に暴走しなければいいんですけどね~。」
間宮「もうあんな思いはしたくないですよ...。」
張間「だーかーらー! 私にも教えてくださいってばぁぁ~!!」
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