46 / 330
46話「嫌よ嫌よも好きのうちと言うけれど、嫌なもんは嫌③」
しおりを挟む数分後、屋上。綾小路が歯をぎりぎり鳴らしながら、仁王立ちで立っている。正面には意識を取り戻した間宮が立っているが、なぜこんなことになっているのか理解ができていないようで、ポカンとした表情で立っている。
綾小路「よく来たな! 待っていたぞ、間宮 傑!」
間宮「すいません、僕はなぜ屋上にいるんですか? 今からなにが起ころうとしてるんですか? 誰か説明してください。」
関「かくかくしかじかなことがあってね。」
張間「そこから、かくかくしかじかになって。」
新沼「かくかくしかじかして、ここに来ました。」
間宮「かくかくしかじかで伝わるのは漫画の世界だけだぞ! 何一つ伝わんねぇよ!!」
張間「まぁまぁ、なにも言わず勝負してあげてくださいよ。咲ちゃんを助けると思って。」
関「君が勝ったら、彼も諦めるさ。新沼くんを助けてあげてよ。」
新沼「お願いします、間宮先輩...。」
間宮「そ、そんなこと言われても...。」
綾小路「間宮 傑! この勝負で僕が勝ったら、咲ちゃんと別れてもらう! 咲ちゃんは、君のような冴えない凡人貧乏人より、僕のようなパーフェクト金持ちがお似合いに決まっている!」
間宮「金持ちだからって、なんでも言っていいと思ったら大間違いだぞ!」
綾小路「さっさと勝負を始めるぞ! まるでダメな男、略してマダオ!」
間宮「うるせぇぞ! マジで抱かれたくない男、略してマダオ!」
関「両者ヒートアップして来ましたね! それでは、早速始めていきましょう!」
張間「第一回「新沼 咲、争奪戦」ドンドンパフパフ!!」
関「まず最初のお題は、こちらです!」
新沼「新沼 咲は何が好き? キュンキュンプレゼント対決~!」
張間「この対決はですね、咲ちゃんにプレゼントをあげてください。どちらのプレゼントが良かったかを、咲ちゃんに決めてもらいます。」
関「では、先行の綾小路くん...どうぞ!」
綾小路「ふっ、プレゼントと言えば...これしかないだろ? さぁ、咲ちゃん...受け取ってくれ! 僕の愛が詰まった、100本の薔薇を...!」
新沼「重い。」
綾小路「え? 本数、減らした方がよかったかい?」
間宮「物理的な重いじゃねーよ!」
関「いいツッコミですね~~。」
張間「流れるようなツッコミ、素晴らしいですね。」
間宮「ツッコミじゃなくて、プレゼントを評価しろよ!」
関「さぁ、続いては傑くん!」
張間「一体なにをプレゼントするのか、非常に楽しみですね。」
新沼「傑先輩、なにくれるんですか♡」
間宮(ちょっと待ってくれよぉぉぉぉ! プレゼント!? 新沼さんって、なにあげたら喜ぶの!? なにが好きなの!? というか、女の子はなにをあげたら喜ぶの!? わかるかぁぁ! 誰か助けてくれぇぇぇ! 無理だよぉぉぉぉ!!)
間宮の脳内に、誰かが語りかけてくる。
「諦めちゃダメだよ、傑くん! 俺のことを思い出して!!」
間宮(え? あ、あなたは!?)
関「おっと、傑選手が動き始めました!」
張間「咲ちゃんの後ろへ...彼はなにをしてくるのでしょうか? 非常に楽しみですね。」
間宮「さ~きちゃん!」
間宮は後ろから新沼の首元に、冷えた飲み物を当てる。
新沼「ひゃぁ!? ちょ、ちょっと!」
間宮「へへへ、冷たかった?」
新沼「つ、冷たいに決まってますよ! なにするんですか、急に!」
間宮「冷たい飲み物を、咲ちゃんの首にピタッと!」
新沼「そ、そんなことを聞いてるんじゃありません!」
張間「...間宮先輩、なんか様子がおかしいですね? 一体どうしちゃった...はっ!?」
関「君も気づいたようだね、張間くん...! あの喋り方、彼は間宮 傑ではない...!」
張間「ま、まさか...道浦!? 道浦 健太なの!?」
関「そう! 少女漫画「あなたの首に輪っかをつけたい」に出てくる犬系男子、道浦 健太! やつは今、道浦 健太になりきっている!」
新沼「なんですか? 私になにか用があるんですか?」
間宮「ん? いーや、特になんもないけど。なにか理由がないとダメだった?」
新沼「そ、そんなことは...。」
間宮「ん~じゃあ、咲ちゃんに構って欲しくて!」
間宮「これでいいかな!」
新沼「え...?」
関「間宮 傑、ここで無邪気な笑顔ぉぉぉぉ! これは、たまらない! たまらないぞ!! このままプレゼントを渡すのかぁ!?」
張間「いえ...彼は、プレゼントを渡さないわ。」
関「張間さぁん! なにを言っているんですか!?」
張間「ごめんなさい、もっとわかりやすく言った方がよかったわね。渡さないんじゃない...彼は、もう渡したの。」
関「ま、まさか...無邪気な笑顔!? 犬系男子の必殺技、無邪気な笑顔をプレゼントとして選択したのかぁぁぁ!?」
張間「「あなたの首に輪っかをつけたい」の三巻で道浦くんが使った技...これで落ちない女の子はいないわ...。でも、これには一つ弱点があるの。」
関「弱点ですか!?」
張間「えぇ。綾小路くんは、薔薇という形のあるプレゼントを選択した。でも、間宮 傑は無邪気な笑顔という形のないプレゼント...。威力は高いけど、形がないの。だから、これはプレゼントではないと言われたら...。」
関「な、なるほど! プレゼントかどうかの判断は、新沼 咲によって決められます! 果たして...?」
新沼「も、もっとください...! おかわりを要求します!!」
関「まさかのおかわりぃぃぃぃ! プレゼント認定されませんでした! どうする、間宮 傑!?」
間宮「咲ちゃんは、ここでなにしてるの?」
新沼「な、なんでもいいじゃないですか! あなたには関係ないでしょ!」
間宮「そんな冷たくしなくてもいいじゃ~ん。あ、もしかして...俺に会いに来てくれたとか!?」
新沼「そ、そ、そんなわけないでしょ!」
間宮「そっか~それは残念...。」
新沼「......。」
間宮「ん? どうしたの、咲ちゃん?」
新沼「も、もし、もしですよ...? 先輩に会いに来たって言ったら...どうしますか?」
間宮「へへへ、すごく嬉しい!」
関「ここで、また無邪気な笑顔!」
張間「でも、無邪気な笑顔はプレゼント認定されていません! このままでは、間宮 傑はノープレゼントで敗北が決まります!」
関「間宮 傑、一体どうするんだ!?」
間宮「あっ、やっべ! 先生に呼び出しくらってんの忘れてた!!」
新沼「あっ! せ、先輩!」
間宮「ん? どうしたの?」
新沼「あ、いえ...! な、なんでもありません...。」
間宮「ん? ならいいけど...あっ、そうだ! 咲ちゃんに、これあげるよ!」
関「間宮 傑、ここでなにか形があるものをプレゼントする気か!?」
新沼「こ、これは?」
間宮「飴だよ。俺の好きなやつ!」
関「飴玉だぁぁぁぁ! 薔薇に対して、飴玉で勝負を仕掛けたぁぁぁぁ! しかし、この飴玉は新沼 咲が好きなものではない! 間宮 傑が好きな飴玉だ! これがどう影響してくるか!?」
新沼「これ、何味なんですか?」
間宮「俺もわかんない。」
新沼「え!? わ、わかんないって! 」
間宮「口に入れるまで、何味かわかんないやつなんだ。ドキドキするでしょ!」
新沼「え?」
間宮「んじゃ! 俺、先生に呼ばれてるから! 何味だったか、また教えてね! バイバーイ!」
新沼「あっ...! 行っちゃった...。ふふ、先輩って、ホントおかしな人。」
新沼「口に入れるまで、何味かわからない...ドキドキする...か。先輩、私は飴を舐める前から...飴をもらう前から...あなたと会ってから...ずっとドキドキしてます。」
新沼(M)先輩にもらった飴を口に放り込んだ。甘くて、酸っぱくて、ちょっぴり苦くて...食べたことない味だった。もしかして、これは...。
新沼「恋の味...なのかな? なんちゃって。」
張間「はい、カットォォォォ!!」
関「では新沼くん、判定をどうぞ。」
新沼「勝者、間宮 傑。」
間宮「流 八先生、ありがとうございました!」
綾小路「待ちたまえぇぇぇぇ!!」
関「ん? どうしたんだい?」
綾小路「どうしたんだい、ではありませんよ! 尺! 僕よりはるかに尺が長いではありませんか!? これは不公平ではありませんか!?」
張間「あなたが、咲ちゃんの心を掴めなかっただけですよ。」
綾小路「な、なるほど...! くそっ、次こそは咲ちゃんの心を...!」
関「意外と素直だね、あの子。」
張間「ちなみに、三本勝負なので、次負けたら終わりですよ。」
関「そんなことより...傑くん、君どうしたの? セリフとかバッチリだったじゃん? 道浦 健太くんだったじゃん? どうしたの? 部長、びっくりなんだけど。」
間宮「去年やることなさすぎて、部室に置いてあった漫画を暗記するまで読んでたのが、こんなところで役に立つとは...!」
張間「去年のなんでも探偵部は、どんだけ暇だったんですか...?」
関「張間くん、それは聞かないでくれたまえ。」
張間「では、早速二回戦を始めましょうか。」
新沼「犬系男子...あぁ...♡ 首輪...躾けたい...散歩したい...ふふふふふ♡」
関「新沼くーん、早くこちらの世界に戻ってきたまえ。」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる