なんでも探偵部!

きとまるまる

文字の大きさ
上 下
45 / 330

45話「嫌よ嫌よも好きのうちと言うけれど、嫌なもんは嫌②」

しおりを挟む


 アホ二人は椅子から転げ落ち、目を抑えながら床で悶えている。


新沼「うふふ、いつ来てもここは楽しいですね。」

関「人の目に、みかんの汁ぶっかけて楽しいとは...君は悪魔かい...?」

間宮「目を閉じればよかったじゃん。」

張間「私たちは...何事にも、全力投球なんですよ...くぅ...!」

間宮「新沼さん、相談事があるって言ってたけど、どうしたの?」

新沼「はい、困っていることがありましてーーー」

 「咲ちゃぁぁぁん!!」


 部室の外から、耳を塞ぎたくなるほどの元気な声が響いてくる。と、部室の扉が勢いよく開かれ、外から金持ちオーラをムンムンと漂わせた男ーーー綾小路 俊之助あやのこうじ しゅんのすけが現れる。


綾小路「咲ちゃん、ここにいたんだね! 探したよっ!」


 前髪をサッと手で靡かせ、新沼にウインクする。新沼は視線を合わせることなく、ビシッと指差しーーー


新沼「あれについてです。」

関「どれだい?」

張間「どれです?」

間宮「あれしかないだろ! あれが目にはいらないのか!? さっきの遊びで目がイカれたのか!?」


 間宮のツッコミが終わるや否や、関は間宮を羽交い締めにし動きを封じ、張間はガラ空きとなった間宮のボディーに、拳の雨を容赦なく降らせ始める。


張間「イカれたとしたら! てめぇらの! みかんの! 汁の! せいだからな!? わかってんのか!?」

関「発言に気をつけろ! 傑のおたんこなすが!!」

間宮「ごめんなさいごめんなさい! もう二度と邪魔しませんんんんん!!」

綾小路「咲ちゃん、どうしてだい? どうして僕がこれだけ愛を伝えているのに、君は答えてくれないんだい?」

新沼「だから、答えてるじゃないですか。無理ですと。」

綾小路「あぁ、いつ見ても君は美しい...! プリティガールだよ...! 心が締め付けられてしまうよ...!」

新沼「そのまま絞め殺されろ。」

綾小路「あぁ、咲ちゃん...君はどうして、咲ちゃんなんだい...?」

新沼「親が咲と命名したからです。それ以外に理由があるなら、是非とも教えていただきたいですね。」

間宮「新沼さんの言葉、一つ一つが冷たいね。」

関「めんどくさいのに好かれちゃったね。」

張間「咲ちゃん可愛いですから、仕方ないですね。」

綾小路「咲ちゃん! 僕と、結婚を前提にお付き合いしてほしい!」

新沼「これをなんとかしてほしいんです...。これとは同じクラスだし、部活も一緒で...私、死にたい...。」

関「おやおや、新沼くんらしくない発言ですね。」

張間「それだけウザいんですね、可哀想に。」

間宮「だ、大丈夫、新沼さん...? 大丈夫じゃないよね、ごめん...元気だして。」

新沼「......。」

間宮「に、新沼さん...?」

新沼「じーーーっ。」

間宮「ど、どうしたの、新沼さん? 僕の顔に、何かついてる?」

新沼「...うふふ♡」

関「見たまえ張間くん、あの小悪魔の微笑みを。」

張間「なにか恐ろしいことを思いつきましたね。」

新沼「綾小路くん、なんで私があなたの気持ちに応えられないのか、教えてあげるね。」

綾小路「あぁ、教えてくれ! このパーフェクトな僕に!」


 新沼は、ニコニコとしたまま間宮の隣へと移動すると、ギュッと間宮の腕を抱き、ピタッと身体をくっつける。


新沼「私、この人とお付き合いしてるの♡」

綾小路「...え?」

間宮「え?」

関「ワァオ!」

張間「オーマイガー!」

間宮「に、新沼さん...? 何をーーー」

新沼「んもぉ~新沼じゃなくて、いつもみたいに咲って呼んでよ♡」

間宮「え...?」

関「張間くん、わかっているね?」

張間「ふふ...言われなくても。咲ちゃんから向けられる、あの眼差しを見ればわかりますよ...!」

関・張間(話を合わせないと、殺される!!)

間宮「な、何言ってるの...? 僕らはーーー」

関「傑く~ん! 知らない人がいるからって、そんな態度とらなくていいんだよ~! いつものように、イチャイチャしてなさいよ~!」

綾小路「イ、イチャイチャ!?」

張間「いつもやってるみたいに、見せつけるようにチュッチュッしてもいいんだよ~!」

綾小路「チュ、チュ...チュゥ!?」

新沼「んもぉ~彩香ちゃんってば、恥ずかしい~♡」

間宮「え!? え!? あ、あの! ち、違うからね! 僕は新沼さんとはーーー」


 関は間宮の足を思い切り踏みつける。


間宮「いってぇぇぇぇ!?」

関「もう隠さなくていいんだよ! 付き合ってるっていっちゃいなよ!」

間宮「まずは足踏んだことを謝れよ! ってか、僕は新沼さんと付き合ってなんかーーー」

張間「ホアチャァァァァ!」


 張間は右拳に溜めていた力を解放し、間宮の腹に拳を捻じ込む。「ごぶぅ!?」と悲鳴を漏らした間宮は、そのままガクリッと気絶してしまう。関は間宮を丁寧に椅子に座らせると、起きていないことを確認するため、間宮の顔の前で手を何度も振る。
張間は、どこからか用意した赤い蝶ネクタイを身につけて、間宮の座っている椅子の後ろへと身を潜ませると、蝶ネクタイを口元まで寄せ話始める。


張間「(間宮の真似しながら)おっす! おら、間宮 傑! 咲ちゃんとお付き合いしてます! 毎日毎日、イチャイチャコラコラチュッチュッのチュッ三昧よ!」

綾小路「イチャイチャコラコラチュッチュッのチュッ!?」

張間「んもぉ! 間宮先輩ってば惚気のろけちゃって~! あーあ、私も彼氏ほしいなぁ~。」


 関は姿を隠すことなく、口元に赤い蝶ネクタイを持ってきて話始める。


関「(間宮の真似しながら)張間さん、君は可愛いから、すぐに彼氏ができるはずさ。」

張間「もぉ~間宮先輩ってば♡」

新沼「むむむぅ~...!」

関「(間宮の真似しながら)どうしたの、咲ちゃん? フグみたいに頬を膨らませて?」

新沼「な、なんでもないわよ!」

関「(間宮の真似しながら)嫉妬してるのかい? ふふ、嫉妬してる咲ちゃん...可愛いよ。」

新沼「や、やめてよ!」

関「(間宮の真似しながら)恥ずかしがってる君も、最高に可愛い。」

新沼「もぉ~恥ずかしいからやめてよ! ダーリン!」

綾小路「ダ、ダ、ダダダダダダーリン!?」

新沼「大好きだよ、ダーリン♡」


 新沼は気絶している間宮を、ギュッと抱きしめる。


綾小路「あぁぁぁ!? や、やめろやめろやめろぉぉぉぉ! お、おい、貴様! 間宮 傑と言ったな!? 咲ちゃんをかけて僕と勝負しろ! いいな!? お前に断る権利はないからな! 屋上で待ってる!! 逃げるんじゃないぞ!!」


 綾小路は、プンプンと怒りながら部室を出て行く。


関「いってしまったね。」

張間「屋上ですって。どうします?」

関「行かないと、もっとめんどくさくなりそうですから、とりあえず行きましょうか。」

新沼「巻き込んでしまってすみません、間宮先輩...。こんなこと、本当はしたくなかったんですけど...。」

関「ノリノリだったのにね。どこからその言葉が出て来るのやら。」

張間「遅れるとめんどくさそうなんで、早く屋上いきましょ。部長、間宮先輩を運んでくださーい。」

関「は~い。」
しおりを挟む

処理中です...