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82話「好きと好き⑤」
しおりを挟む体育館裏では、北台が小さく震えている。キョロキョロと辺りを見渡し、誰もいないことを確認すると、下駄箱に入っていたくしゃくしゃの紙を広げ、何度も何度も黙読を始める。
北台「い、一体、誰がこんなこと...? 何でバレて...誰も、いなかったはずなのに...。なんで、どうして...どうして、私が...。」
関「こんにちは。」
北台「ひっ!?」
関「どうしたんですか、こんなところで? あっ、体育館裏にいるってことは...もしかして、今から告白されるんですか!? いいですね~青春ですねぇ~!」
北台「あ、あの...あなたは...?」
関「うちの部員が、お世話になりました。」
北台「...な、な、なんのことですか...?」
関「んもぉ~知ってるくせに~! 嘘はダメですよ、嘘は。」
北台「だ、だから、私には何のことだかーーー」
関「隠さなくていいですよ。私、全部知ってますから。」
北台「え...?」
関「北台 時架...張間くんの笑顔を奪った罪は、おもてぇぞ。」
ーーー
間宮「はい、これ飲んで落ち着こ。」
自販機から戻ってきた間宮は、屋上のベンチで元気なく座り込んでいる張間に、買ってきた紙パックのイチゴ牛乳を手渡し、張間の隣に腰を下ろす。
張間「ありがとうございます...。」
間宮「...張間さん。」
張間「なんですか...?」
間宮「ごめんね。」
張間「え? な、なにがですか...?」
間宮「犯人見つけるの、遅くなっちゃったからさ。」
張間「え? 犯人って...?」
間宮「僕らが遅かったせいで、張間さんを長いこと傷つけちゃったよね。ホント、ごめん。」
張間「あ、謝らないでくださいよ...。間宮先輩たちは、何も悪くないんです...。私がーーー」
間宮「張間さんは、何も悪くないよ。だから、張間さんは謝らなくていい。」
張間「......。」
間宮「張間さん、僕らの部活はなんだっけ?」
張間「え...? な、なんでも探偵部...です...。」
間宮「そう! 僕らは、なんでも探偵部! 校庭の草むしりから人探しなどなど、困っている人たちに手を差し伸べる、すんばらしい部活動だ!」
間宮「困っている人たちに手を差し伸べる...それが、なんでも探偵部。」
間宮は、クルリと顔を張間に向ける。不安そうに見つめている後輩に、優しく優しく微笑み、そっと手を差し伸べる。
間宮「助けに来たよ、張間さん。」
張間「ま、間宮...先輩...。」
間宮「もう、一人で悩まなくていいよ。」
張間「な、なんですか、それ...? かっこよすぎますよ...かっこよすぎ、かよぉ...!」
張間「間宮先輩ぃぃぃぃぃ!! うわぁぁぁぁん!!」
大声を上げながらベンチから立ち上がり、間宮へと飛びつく。胸に顔を埋めて、ギュッと強く服の裾を掴み、またポタポタと涙をこぼし始める。
張間「怖かったよぉ...! 私、どうしたらいいのかわかんなくて...わかんなくてぇぇ...!」
間宮「よしよし、もう大丈夫だから。今日で終わるからね。」
泣き喚く後輩の頭を、優しく撫でる。その優しさに、後輩の目からは止まることなく涙が溢れていく。
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