なんでも探偵部!

きとまるまる

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91話「心理戦には、ポーカーフェイスを装備して挑みましょう②」

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 放課後、なんでも探偵部の部室。間宮はいつものごとく椅子に座り、漫画を静かに読んでいる。張間は背後から抱きつき、ワーワーギャーギャー騒いでいる。


張間「ねぇ、まーみーやーセーンーパーイー! 漫画ばっかり読んでないで、スポーツしましょうよ、スポーツゥゥ! こんな天気の良い日にスポーツしないなんて、勿体無いですよ~! お外でスポーツしましょうよ~!! ねぇってば~!」

間宮「なにすんの?」

張間「バスケしましょう、バスケ! 私、体育でバスケしてたので、それの続きがしたいです!」

間宮「外でやるスポーツじゃないじゃん。」

張間「じゃあ、外でやるスポーツだったら一緒にやってくれるんですね!? そうですね!?」

間宮「先輩と二人でやってきなよ。」

張間「いーやーでーすぅぅ! せっかく三人でいるんですから、三人でやりましょうよぉぉ! まーみーやーセーンーパーイー!」

関「こらこら、張間二等兵。それ以上駄々をこねていると、傑くんが怒っちゃいますよ?」

張間「間宮先輩が怒っても、怖くもなんともないので大丈夫です。」

関「確かに。傑くんが怒ったとしても、小指一本でなんとかできてしまうレベルですけど...そういうことではありませんよ。」

間宮「お前ら、今すぐに正座して並べ。ぶん殴ってやる。」

張間「やれやれ、間宮先輩の「あれ?蚊が止まったのかな?」レベルのパンチで倒せるほど、この張間 彩香ちゃんは弱っちい人間ではありませんよ? どんなパンチが来ようとも、スッとかわしてカウンターパンチを、こう...ズババッとお見舞いしてやりますよ! かかってこいや!」


 間宮は漫画を閉じ後ろを振り返ると、素早く張間の両頬に手を伸ばし、力任せに引っ張り出す。


張間「あだだだだだ!? いだいいだいいだいぃぃぃ!! いだいですって、間宮先輩ぃぃぃ!!」

関「おやおや、パンチには強いですけど、頬引っ張りにはとんでもなく弱いみたいですね。」

水面「失礼します。」

関「やぁ、こんにちは。ようこそ、なんでも探偵部へ。本日は、どのようなご用件でしょうか?」

張間「ん? あっ、水面ちゃんだ! いらっしゃい!」

関「おや、知り合いなのかい?」

張間「隣のクラスのお友達です! さて、ここで問題です! B組の隣、AかCか...どっちでしょうか!?」

関「A組!」

張間「正解! 部長には、100張間ポイントをプレゼント!」

間宮「どこで使えるんだよ、そのポイントは?」

張間「ところで水面ちゃん、どうしたの? 何か相談事?」

水面「いや、用があるのは私じゃなくて...泉先輩、あの子が張間ちゃんです。」

張間「ん? 泉先輩?」

泉「んふふふ...! 君が、張間 彩香ちゃんか...噂は、輝から聞いてるよ!」

間宮「あっ、泉さん。」

泉「ヤァ、間宮くん! そういえば、あなたもなんでも探偵部だったね! こんにちは!」

張間「間宮先輩、この人は誰ですか?」

間宮「二年生の、泉 翼いずみ つばささん。バスケ部の人だよ。」

張間「ほほぉ、バスケ部! バスケ部の方が、何用でしょうか!? もしかして、張間 彩香ちゃんに助っ人の頼みですか!? 良いですよ良いですよ! ガンガンドンドコやっちゃいますよ!」

泉「いやいやいや、助っ人とはちょっと違うんだよな~。ねぇ、輝!」

水面「さっさと用件、言ってください。」

泉「いやいやいや、ちょっとくらいノッてくれても良いんじゃない!? 冷たくない!?」

張間「どうぞどうぞ、なんでも言ってください! ここは、なんでも探偵部ですからね! あなたの願いを、なんでも叶えちゃいますよ!!」

泉「ふふふ...なんでも、ねぇ...。その言葉、嘘偽りない?」

張間「ないです!」

間宮「僕たちのできる範囲でお願いします。」

関「話を聞いた後に、断る可能性もありますよ。」

張間「ちょっとちょっと! お客様になんてこと言ってるんですか!? そんな弱気な子に育てた覚えはありませんよ! もっと強気に、ガンガン行きましょうよ!」

関「無理難題をできるって言って、できなかった方がお客様に失礼ですよ。」

間宮「というか、お前に育てられた覚えはないわ。」

泉「では、私の願いを言いましょうか...! 私の願い...それはーーー」

水面「張間ちゃんを、バスケ部にスカウトしにきました。」

泉「そう! 張間ちゃんを...って、なんであんたが言うのよ!? ここは、先輩の私がズバッと言うところでしょうが! 察しろ!」

水面「先輩に任せてたら、長引きそうだったので。」

泉「なにをぉぉ!?」

張間「スカウト、ですか?」

泉「そうそう、スカウト! 張間ちゃんがバスケめちゃくちゃ上手いって、輝から聞いてね! スポーツめちゃくちゃ好きらしいし、どう!? 私たちと一緒に、バスケで青春しないーーー」

関「ちょっと待ったぁぁぁ!!」

泉「ん?」

関「申し訳ありませんが、引き抜きはお断りさせていただいておりますので、お帰りください。」

水面「ですよね。無理言ってすみません。泉先輩、帰りーーー」

泉「ちょっと待ったぁぁぁ!!」

水面「え?」

泉「ここは、なんでも探偵部...困っている人たちの願いを叶える部活動なんですよね?」

関「そうです。しかし、先ほどもおっしゃいましたよね? 私たちのできる範囲でお願いしますと。」

泉「退部届に記入して、バスケ部の入部届に判子を押せばいいだけですよ? とっても簡単なことですよ?」

関「やり方の問題ではないんですよ。うちの看板娘を、そう簡単に手放すと思っているのですか?」

張間「可愛い可愛い看板娘なんて...もぉ~部長ったら♡」

間宮「可愛いとは一言も言ってないよ。」

関「今、張間くんが抜けてしまえば...我がなんでも探偵部は、崩壊したも同然! 去年と同じく、誰もこない悲しい悲しい部活動になってしまう! そんなことは、させん!!」

間宮「今も、張間さんのおかげで人来てますもんね。」

張間「私がいなかったら、どんだけ暇なんですか? この部活。」

泉「さぁ、張間 彩香ちゃんをよこしなさい! 張間ちゃんは、この狭い部室よりも広々としたコートで輝く女の子なのよ! 可愛い可愛い看板娘を輝かせたくないの!? さぁ、なにも言わずに渡しなさい!」

関「なにを言われても、渡しません! さぁ、回れ右してお帰りください!」

泉「退部届と入部届は、もう用意してあるのよ! さぁ、張間ちゃん! まずは、この退部届にーーー」

関「ダメだ、張間くん! この悪魔の紙にサインをしてしまえば、君に不幸が降り注ぐぞ! こんなもの、私が破りさってあげましょう!!」

泉「させるかぁぁぁ!」

関「くっ...! 紙が近いようで遠い...! 届きそうで、届かない!」

泉「はっはっは! これがバスケ部の力よ! 観念して、張間ちゃんを渡しなさい!」

関「あきらめて...あきらめてたまるかぁぁぁ! あきらめたら、そこで試合終了なんですよ! うおぉぉぉぉ!」

泉「無駄無駄無駄ぁぁぁ! ディーフェンス! ディーフェンス!」

間宮「あははは...相変わらず元気だなぁ、泉さんは。」

水面「あの、すみません先輩。急に来て騒がしくして。」

間宮「気にしないで。騒がしいのには慣れてるから。」

張間「二人とも、もうやめてぇぇ! 私のために争わないでぇぇぇ!」

間宮「あんな感じで、騒がしいのいるからさ。」

水面「確かに、張間ちゃんは元気通り越してるところありますよね。あいつにちょっと似てるわ。」

間宮「あいつ?」

水面「こっちの話です。気にしないでください。」

張間「私のために争う姿なんて、見たくないです! だから...だから...! 私が欲しけりゃ、正々堂々戦って奪い合え!! 第一回「可愛い可愛いキュートな張間ちゃん争奪戦!」開催決定ぃぃ!!」

関「いえぇぇぇい!!」

泉「やったるぜぇぇ!!」

水面「なんでそうなるの?」

間宮「あなたたち、ただ騒ぎたいだけじゃないですよね?」

泉「で、勝負内容はどうするんですか?」

関「そうですね...お互いに公平な戦いができる「ババ抜き」なんてどうですか?」

泉「いいでしょう。ババ抜きで、勝負よ!」

張間「え? 張間ちゃんの運命、運で決めるんですか?」

関「張間二等兵、ババ抜きは運で戦うゲームではありません...ババ抜きとは、心理戦なのです! 心を読み合うゲームなのですよ!」

張間「おぉ! ババ抜き、かっこいいぃぃ!」

水面「めちゃくちゃ簡単に丸められた。」

泉「さぁ、戦うわよ! 輝、関先輩と間宮くんをコテンパンにやってやりましょ!」

水面「え? 私もやるんですか?」

間宮「サラッと僕も戦うことになってるし。」

張間「さぁ、始まりました! 究極の心理戦、ババ抜きが! 一体どっちが勝つのやら、負けるのやら! 知るのは神のみでございます! 本日の実況、解説、司会進行をします、張間 彩香でっす! よろしくお願いします!」

間宮「仕事、多いな。一人でできるの?」

張間「ふっ...! 任せてくださいよ、間宮先輩! 仕事も恋も勉強も、何もかも完璧にこなす張間 彩香ちゃんですよ? でっかい船に乗ったつもりでいなさい!」

水面「張間ちゃん、勉強できるの?」

関「水面くん、鋭いツッコミはそこにいる先輩に任せておきなさい。」

水面「あっ、はい。」

間宮「勝手に仕事増やさないでください。」

張間「ではでは、公平にするために私がカードを配りましょう! 部長から教わった、高速シャッフル...ほわちゃぁぁぁぁ!!」

水面「おぉ、早っ。」

泉「すごーい! めちゃ早いね! 手が見えないわ!!」

関「張間くんは覚えが早くて、教えるのが楽しいよ。」

間宮「なに教えてんですか? もっと張間さんのためになることを教えてあげてくださいよ。」

関「たとえば?」

間宮「勉強。」

関「ふむ...それもそうだね。」

張間「はいはいはーーい! 私語はやめてくださーーい! わーわー聞こえなーい! はーい、配りますよーー!」
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