なんでも探偵部!

きとまるまる

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97話「一年もあれば、色々と変わるもの④」

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 陽は落ちかかり、辺りを真っ赤に染め上げている。間宮は鞄を手にし、部室前で関にペコリと頭を下げる。


間宮「ありがとうございました。お茶もお菓子も美味しかったです。」

関「そりゃよかった。困ったことがあったら、いつでもこい。助けてやるよ。」

間宮「はい、ありがとうございます。」

関「ほら、部活紹介の冊子忘れもん。」

間宮「あっ。ありがとうございます。」

関「勝手にだけど、オススメの部活に丸つけといたから。」

間宮「え?」

関「丸つけたとこなら、高校三年間楽しい部活生活を送れると思うぞ。もし迷ったら、騙されたと思っていってみろ。一癖二癖ある変わりもんばっかりだけど、みんないいやつだ。溺れてる子犬助ける優しい俺が言うんだから、間違いないぜ。」

間宮「...はい。」

関「じゃあな。気をつけて帰れよ。」

間宮「ありがとうございました。」


 間宮はもう一度ペコリと頭を下げ、扉を閉める。歩きながら、受け取った冊子を開き、ペラペラとめくり始める。


間宮「あっ、ホントだ。丸ついてる。...あの人が丸つけたとこなら、きっと...。」


 ページをめくる。人一倍大きく丸をつけられている部活に目がいく。部活の名前は、なんでも探偵部。間宮は、クスリと小さく笑う。


間宮「あの人、自分の部活に丸つけてるよ。しかも、デカデカと...メッセージ付きだし。」


 「部長の関さんは、すごく優しい人だよ!」


間宮「優しいとか、なに自分で書いてるんですか?」


 「どこにも行くとこなかったら、なんでも探偵部にこい! 行くところがあってもこい!」

 「俺は、お前と部活したいぞ!!」


 間宮は足を止め、マジマジとメッセージを見つめる。


 「というか、お前が来てくれないと俺一人だから廃部になる! 俺を助けてくれ、間宮 傑!」


間宮「助...ける...。」


 「この部活には、お前が必要だ!」


間宮「僕が...必要...。」


 「一緒に、楽しい部活にしようぜ!!」


間宮「一緒に...僕と一緒に...。」


間宮(M)廃部になるのを避けるためだろ。このメッセージを見た人は、そう思うだろう。僕も、そう思う...はずだったのに。


間宮「...うぅ...。」


 冊子に、ポタポタと涙が落ちていく。ポタポタポタポタと、止まることなく落ちていく。


間宮(M)部活動がしたい。僕と一緒に。温かいこの言葉が、僕を包み込んだ。

間宮(M)あの人は、この言葉を本気で思って書いてくれてる。なぜかわからないけど、そう思った。


 「一緒に青春しようぜ! 間宮くん!!」


間宮「......決めた。」


 間宮は冊子を閉じると床を強く蹴り、駆け出していく。
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