112 / 330
112話「大切なものは失わないように①」
しおりを挟む登場人物
関 幸:♂ 三年生。なんでも探偵部の部長。
間宮 傑:♂ 二年生。なんでも探偵部の部員。
張間 彩香:♀ 一年生。なんでも探偵部の部員。
花ノ山 川角:♂ 二年生。紙相撲部の部長。
津々浦 紅葉:♀ 一年生。紙相撲部の部員。
ーーーーー
少しずつ、暑さを感じるようになった6月の中旬。生徒たちは夏服へと移行を始めて、校内では半袖シャツを着る生徒が多く見られるようになった。半袖シャツ民の一人である間宮は、放課後になり、いつものようにダラダラとゆっくり部室へと向かっている。
間宮「こんにちはー。」
関「てめぇを、バターライスにしてやろうか!?」
張間「お前の頭は、ポンポコリンかぁ!?」
間宮「...なにしてるんですか?」
関「やぁ、傑くん。」
張間「どっちが間宮先輩に似てるかゲームしてます!」
間宮「なんだ、そのクソつまらない遊びは?」
張間「間宮先輩、どっちが似てました!?」
間宮「どっちでもいいよ。」
関「傑くん、どちらかを選択しなさいと言われたら、どちらかを選択しなさい。優柔不断な男は嫌われてしまうぞ?」
間宮「じゃあ、張間さんでいいよ。」
張間という単語を聞くや否や、張間はフラフラと膝を折ってその場に崩れ落ちる。関はしゃがみ込み、張間の肩に優しく手を置く。
関「そういうことだ。残念だったね、張間くん。」
張間「な、なんで...なんで私が...? 間宮先輩に似てるとか...人生お先真っ暗...。」
間宮「今すぐ、てめぇらの人生を真っ暗にしてやろうか?」
津々浦「助けてくださいぃぃぃぃ!!」
関「ん? おや、津々浦くんじゃないか。そんなに慌てて、どうしたんだい?」
津々浦「おっす! 実は昨日...!」
関「え? もう回想に入るの? 早くない?」
ーーー
昨日の放課後。津々浦が、どすこいの[ピー]チュウと歩いている。[ピー]チュウは何故か実体化しており、目線にはしっかりと黒い太線が仕事をこなしている。
津々浦「今日は、家帰ったら一緒にゲームしようね! [ピー]チュウ!」
[ピー]チュウ「ピカピッ!」
[ピー]チュウ「...ピカァ!? ピカッ! ピカピィ!」
津々浦「ん? どうしたの、 [ピー]チュウ?」
[ピー]チュウ「ピカピィ!」
津々浦「ん? あっちを見ろって? ...あ、あれは!?」
[ピー]チュウが指を指し示す方角には公園があり、中央に設置された紙相撲用の土俵で、グラサンをかけ、星が沢山描かれたバンダナを巻いた男と、なんの特徴もなさげな青年が紙相撲を行なっている。
グラサンの男ーーーキースは、力強く腕を振り下ろし土俵を叩く。青年は、あまりの力強さに吹き飛ばされていく。
青年A「ぐぁぁぁぁ!?」
青年B「せ、青年Aぇぇぇぇ!!」
キース「HAHAHAHA!! コノテイドトハ、オモシロクモナントモナイゼ!」
青年A「く、くそぉ...!」
青年B「お、おい! しっかりしろ!!」
キース「オレノカチダ! ヤクソクドオリ、キサマノドスコイハ、オレノコレクションニスルゼ!!」
青年A「ち、ちくしょう...! 俺の、アーノルド・シュワルツネルナァーが...!」
津々浦「だ、大丈夫ですか!?」
[ピー]チュウ「ピカピッ!」
青年B「き、君は!?」
青年A「お嬢さん...ここは危険だ...! 俺たちのことはいい...逃げなさい...!!」
津々浦「で、でも!」
キース「オイオイ、マタヨワソウナノガデテキタナ! HAHAHA! JAPANハ、オモシロイクニダゼ! ココハ、ザコセイゾウコクカァ!?」
津々浦「なんですって!?」
青年A「お嬢さん、挑発に乗っちゃいけない!」
青年B「やつは、紙相撲USA王者のキース・コンバイアンだ! 君が勝てる相手じゃない!!」
津々浦「USA王者!?」
青年A「早く逃げろ! このまま奴と目があえば、試合開始だ! 逃げられないぞ!」
青年B「奴に負けたら、あんたのどすこいがとられちまう! 急げ!!」
キース「!」
青年A「し、しまった! 目が合ってしまった!」
青年B「近づいてくるぞ!!」
キース「HAHAHA! オンナダロウガガキダロウガ、ヨウシャシナイゼ!▼」
青年A「USA王者、キース・コンバイアンが勝負をしかけてきた!▼」
青年B「お嬢さん!」
津々浦「おっす! 大丈夫です!! もともと、逃げる気なんてありません!! USA王者だか金髪王者だか知りませんが...今まで奪ってきたどすこいを返してもらいます! おっす!! みんなをビリビリ痺れさせちゃえ! いってこーい! [ピー]チュウ!!」
[ピー]チュウ「ピッカッ!」
キース「スベテヲ、ムニカエス! サイキョウサイアクノヘイキ! イデヨッ!!リボルバー・ゼロ!!」
キースは、両手がリボルバーになっていて厳ついサングラスをつけた男のイラストが描かれたどすこいを、土俵に力強く出す。
青年A「では、両者デスクタップの準備を!!」
青年A「見合って見合って...残った!!」
津々浦「うおぉぉぉぉぉ!!」
キース「HAHAHAHA~~!!」
津々浦は素早く小刻みに、キースは一つ一つ力強くデスクタップを始める。
青年B「は、始まっちまった...! 闇のゲームが...!」
津々浦「先手必勝! うぉぉぉぉ!!」
津々浦の小刻みなタップに答えるように、[ピー]チュウが右へ左へ素早く動く。
青年A「は、早い!?」
青年B「あんなに早く動くどすこいは、見たことないぜ!!」
キース「HAHAHA! オモッテタヨリ、ヤルジャナイカ!!」
津々浦「あなたのどすこいは、思ったより遅いですね! おっっす!!」
青年A「背後をとった!」
津々浦「いっっけぇぇ! [ピー]チュウ、18万ボルト!!」
[ピー]チュウ「ピーーカーーーチュゥゥゥゥ!!」
青年A「18万ボルト!!」
青年B「これは決まったぁぁ!!」
[ピー]チュウから電撃が放たれ、電撃はリボルバー・ゼロへと直撃する。
土俵は激しい土煙に包まれ、どすこいの姿が見えなくなる。
キース「HAHAHA~~!!」
青年A「な、なぜ笑っている!? 直撃したはずなのに!?」
青年B「み、みろ! あれをみろ!!」
青年A「なっ!? リボルバー・ゼロが...!」
青年B「立っている! あの強烈なデスクタップに、ビクともしていない!?」
青年A「そんなバカな!?」
キース「HAHAHA~~!! オジョウサン、ソノワザハ...コウカハナイヨウダナァ~~!!」
津々浦「そ、そんな...!?」
青年A「ま、まさか、あいつのどすこい...!」
青年B「あぁ、きっとそのまさかだ...! 18万ボルトが効かないのは、それしかねぇ!」
青年A「あいつのどすこい...じめんタイプか!?」
青年B「電気技が封じられた[ピー]チュウは、ただ素早く動く黄色のどすこい! このままじゃ...!」
青年A「スプリンクラーだ! 天井に電気を放って、なんやかんやして水を出すんだ! そうすれば、じめんタイプのあいつは...!」
青年B「馬鹿野郎! 今の世代の子が、その戦い方を知ってるわけないだろうが! それに...上をみろ!!」
青年A「上...はっ!?」
青年B「ここは、公園だ...! スプリンクラーひとつない、綺麗な青空だぜ...!」
青年A「あぁ...綺麗だ。」
キース「サァテ、ソロソロオワリニシヨウカ!!」
キースはニヤリと笑うと、胸の前で手をクロスさせ、力をためる。
津々浦「そのデスクタップの構え...まさかっ!?」
青年A「マ、マズい! このままじゃ、お嬢さんが!!」
青年B「はっ!? そうだ! ここは、公園! スプリンクラーはないが、空がある!」
青年A「そうか、雨! 雨が降れば、じめんタイプのどすこいは...!」
青年B「あぁ! 勝つには、これしかない!」
青年A「でもよ...空を見てみろ!!」
青年B「はっ!? こ、これは...!」
青年A「綺麗な、空だぜ...!」
青年B「あぁ、雲ひとつない綺麗な空だ...!」
青年A「漫画じゃないんだ。そんな都合よく雨なんて...。」
青年A・B「降らないよね~。」
キース「HAHAHA~~! コレデ、オワリダ!「世界終焉!!」」
キースがクロスさせた腕を、力任せに何度も何度も土俵に叩きつける。
[ピー]チュウは、リボルバー・ゼロの激しい攻撃を受け、高々と宙を舞う。
[ピー]チュウ「チュァァァァァ!?!?」
津々浦「[ピー]チュウゥゥゥゥゥ!!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる