115 / 330
115話「張間 彩香は、元気な後輩②」
しおりを挟む映画館内の売店。カウンターの前に作られた列に二人は並んでおり、上の壁に書かれた大きなメニュー表を眺めながら、買う物を決めている。
間宮「大きさ、どれにすんの?」
張間「一番デカイの!」
間宮「食べきれるの?」
張間「ふふふふ...! 私を、なめないでいただきたい! あれくらいのポップコーンは、ぺろりといけちゃいます!」
間宮「味は? 塩でいいの?」
張間「うーん...塩もいいけど、キャラメルも捨てがたいなぁ...どうしよう?」
間宮「じゃあ、僕はキャラメルにするから。食べたかったら、分けてあげるよ。」
張間「いいんですか!? もぉ~間宮先輩好き~! 抱きしめちゃう!!」
間宮「動きづらいから離れて。」
ーーー
1番スクリーンへと入っていった二人。張間が率先して席を探している。
張間「あっ、席ここですよ! 間宮先輩!」
間宮「席着く前に、ポップコーン3分の1食べるやつ初めて見たわ。」
張間「急いで家出てきたから、朝ごはん食べてなくて!」
間宮「ゆっくり来ても良かったのに。」
張間「もぉ~間宮先輩ってば~! あんまり優しくすると、惚れちゃいますよ♡」
間宮「早く席に座ってくれない?」
張間「華麗なるスルーありがとうございまーす!!」
間宮「あ~映画楽しみだなぁ~。」
張間(M)映画鑑賞後。
場内が明るくなり、人がポツポツと立ち上がり帰る準備を始めている。その中で二人は立ち上がる気配なく、顔を手で押さえながら感動の涙を流している。
間宮「ズルいよ...これは、ズルいよ...! 末永く幸せになってください...!」
張間「世界中のリア充が滅びても....あの二人だけは、ずっと幸せでいてください...! うぅ...!」
ーーー
映画館を出た二人は、近くにあるショッピングモールへと向かって歩いている。
張間「いや~思ったより良かったですね~!」
間宮「あんなに泣くとは思ってなかったよ。」
張間「間宮先輩、後半ボロボロ泣いてましたもんね。」
間宮「張間さんだって泣いてたでしょ。」
張間「いやだって、あれはズルいですよ...。」
間宮「わかる。あれはズルい。」
張間「あー、私もあんなキラキラ輝く青春をおくりたーい!」
間宮「頑張れよ、高校一年生。」
張間「......。」
間宮「ん? どうしたの、張間さん?」
張間「...間宮先輩。」
張間は、間宮にニコリと微笑むと、手をギュッと握り始める。
間宮「え? なに?」
張間「んふふふ~!」
間宮「どうしたの? なんで手を握ってんの?」
張間「どうです~? ドキドキしますか!?」
間宮「いや、しないけど。」
張間「即答!? なんでですか!?」
間宮「だって張間さん、日頃から手を繋いできたり抱きついたりしてくるから。」
張間「ちぇ! なんだ、つまんないの! さっきの映画みたいに、キュンッ!ドキドキッ!ってしてくださいよ!」
間宮「西田くんにしてあげたら、喜ぶんじゃないの?」
張間「もぉ~間宮先輩まで、やめてくださいよ! 別に、西田くんのことは嫌いじゃないですけども。」
間宮「張間さんは、好きな人いないの?」
張間「うーん......いないですかね。」
間宮「でも、張間さんって可愛いからモテそうだよね。」
張間「やだ、もう♡ 照れちゃう♡」
間宮「口、開かなかったらね。」
張間は、握っている手を強く強く強く握り直す。
張間「まーみーやーせーんーぱーーい?」
間宮「いでででで! ごめんって!」
張間「全く...! そんなことばっかり言ってると、嫌いになっちゃいますよ!」
間宮「ごめんごめん。」
張間「でも、あんな映画を観たら、恋してみたいなぁって思いますけどね。なんかキラキラしてるじゃないですか!」
間宮「そうだね。告白されたことないの?」
張間「中学の頃なら、ちらほらとありますよ。」
間宮「でしょうね。全部断ったの?」
張間「はい。好きじゃなかったし。それに、付き合ったとしても...なんていうか、普段と変わんない気がして。それだったら、今のままでもいいかな~って。」
間宮「そんな考えだと、一生彼氏できないぞ。」
張間「えぇ~それは嫌だなぁ。」
間宮「というか、そろそろ手を離してよ。誰かに見られたら、勘違いされちゃうよ。」
張間「ほほう? 勘違いとは、一体なにをですか、間宮先輩!?」
間宮「なにって、僕と張間さんが付き合ってるって。」
張間「おやおや、間宮先輩は私と付き合ってるって思われるのは嫌なんですか~? 私、泣いちゃう! びぇぇん!」
間宮「嫌じゃないけど、張間さんに迷惑かかるでしょ? 僕なんかと付き合ってるって思われたらさ。」
張間「迷惑なんて思わないですよ! 私は、間宮先輩のこと大好きですから! それくらい仲がいいって思われてるんだな~って思うと、むしろ嬉しいです!」
張間「あっ! 今のは、ドキドキしたんじゃないですか~!? どうでしたか、間宮先輩!?」
間宮「そのセリフがなかったら、60点だったんだけどな。」
張間「セリフなしでも60点!? 採点厳しすぎませんか!?」
間宮「ありがとね。好きな人にそう言ってもらえて、嬉しいよ。」
張間(M)私は、間宮先輩に恋愛感情はない。もちろん間宮先輩にも、私に恋愛感情はないはず。
張間(M)先ほどの好きは、恋愛ではないことはわかっている。
張間(M)でも、二人っきりだからかな?
張間(M)好きと言われて、少しだけドキッとしてしまった。
間宮「張間さん、どうしたの?」
張間「...間宮先輩。」
間宮「なに?」
張間「ゲーセンに行きましょ! 今日は、バーンと遊びましょ!!」
間宮「いいけど、その前にお昼食べない?」
張間「あっ、そうですね! じゃあ、まずはお昼ご飯を食べましょう! 行きますよーー!」
間宮「え!? ちょっ、引っ張らないでよ! 張間さーん!?」
張間(M)さっき、恋愛映画を見たからだ。きっとそうだ。
張間(M)私は、まだ人を好きになったことはない。だから、恋がどんなものかなんてわからない。
張間(M)恋愛って、どんな感じなんだろうな?
張間(M)私の初恋は、どんな感じで始まるんだろう?
張間(M)どんな人に、恋するんだろう?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる