なんでも探偵部!

きとまるまる

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115話「張間 彩香は、元気な後輩②」

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 映画館内の売店。カウンターの前に作られた列に二人は並んでおり、上の壁に書かれた大きなメニュー表を眺めながら、買う物を決めている。


間宮「大きさ、どれにすんの?」

張間「一番デカイの!」

間宮「食べきれるの?」

張間「ふふふふ...! 私を、なめないでいただきたい! あれくらいのポップコーンは、ぺろりといけちゃいます!」

間宮「味は? 塩でいいの?」

張間「うーん...塩もいいけど、キャラメルも捨てがたいなぁ...どうしよう?」

間宮「じゃあ、僕はキャラメルにするから。食べたかったら、分けてあげるよ。」

張間「いいんですか!? もぉ~間宮先輩好き~! 抱きしめちゃう!!」

間宮「動きづらいから離れて。」



ーーー



 1番スクリーンへと入っていった二人。張間が率先して席を探している。


張間「あっ、席ここですよ! 間宮先輩!」

間宮「席着く前に、ポップコーン3分の1食べるやつ初めて見たわ。」

張間「急いで家出てきたから、朝ごはん食べてなくて!」

間宮「ゆっくり来ても良かったのに。」

張間「もぉ~間宮先輩ってば~! あんまり優しくすると、惚れちゃいますよ♡」

間宮「早く席に座ってくれない?」

張間「華麗なるスルーありがとうございまーす!!」

間宮「あ~映画楽しみだなぁ~。」


張間(M)映画鑑賞後。


 場内が明るくなり、人がポツポツと立ち上がり帰る準備を始めている。その中で二人は立ち上がる気配なく、顔を手で押さえながら感動の涙を流している。


間宮「ズルいよ...これは、ズルいよ...! 末永く幸せになってください...!」

張間「世界中のリア充が滅びても....あの二人だけは、ずっと幸せでいてください...! うぅ...!」



ーーー



 映画館を出た二人は、近くにあるショッピングモールへと向かって歩いている。


張間「いや~思ったより良かったですね~!」

間宮「あんなに泣くとは思ってなかったよ。」

張間「間宮先輩、後半ボロボロ泣いてましたもんね。」

間宮「張間さんだって泣いてたでしょ。」

張間「いやだって、あれはズルいですよ...。」

間宮「わかる。あれはズルい。」

張間「あー、私もあんなキラキラ輝く青春をおくりたーい!」

間宮「頑張れよ、高校一年生。」

張間「......。」

間宮「ん? どうしたの、張間さん?」

張間「...間宮先輩。」


 張間は、間宮にニコリと微笑むと、手をギュッと握り始める。


間宮「え? なに?」

張間「んふふふ~!」

間宮「どうしたの? なんで手を握ってんの?」

張間「どうです~? ドキドキしますか!?」

間宮「いや、しないけど。」

張間「即答!? なんでですか!?」

間宮「だって張間さん、日頃から手を繋いできたり抱きついたりしてくるから。」

張間「ちぇ! なんだ、つまんないの! さっきの映画みたいに、キュンッ!ドキドキッ!ってしてくださいよ!」

間宮「西田くんにしてあげたら、喜ぶんじゃないの?」

張間「もぉ~間宮先輩まで、やめてくださいよ! 別に、西田くんのことは嫌いじゃないですけども。」

間宮「張間さんは、好きな人いないの?」

張間「うーん......いないですかね。」

間宮「でも、張間さんって可愛いからモテそうだよね。」

張間「やだ、もう♡ 照れちゃう♡」

間宮「口、開かなかったらね。」


 張間は、握っている手を強く強く強く握り直す。


張間「まーみーやーせーんーぱーーい?」

間宮「いでででで! ごめんって!」

張間「全く...! そんなことばっかり言ってると、嫌いになっちゃいますよ!」

間宮「ごめんごめん。」

張間「でも、あんな映画を観たら、恋してみたいなぁって思いますけどね。なんかキラキラしてるじゃないですか!」

間宮「そうだね。告白されたことないの?」

張間「中学の頃なら、ちらほらとありますよ。」

間宮「でしょうね。全部断ったの?」

張間「はい。好きじゃなかったし。それに、付き合ったとしても...なんていうか、普段と変わんない気がして。それだったら、今のままでもいいかな~って。」

間宮「そんな考えだと、一生彼氏できないぞ。」

張間「えぇ~それは嫌だなぁ。」

間宮「というか、そろそろ手を離してよ。誰かに見られたら、勘違いされちゃうよ。」

張間「ほほう? 勘違いとは、一体なにをですか、間宮先輩!?」

間宮「なにって、僕と張間さんが付き合ってるって。」

張間「おやおや、間宮先輩は私と付き合ってるって思われるのは嫌なんですか~? 私、泣いちゃう! びぇぇん!」

間宮「嫌じゃないけど、張間さんに迷惑かかるでしょ? 僕なんかと付き合ってるって思われたらさ。」

張間「迷惑なんて思わないですよ! 私は、間宮先輩のこと大好きですから! それくらい仲がいいって思われてるんだな~って思うと、むしろ嬉しいです!」

張間「あっ! 今のは、ドキドキしたんじゃないですか~!? どうでしたか、間宮先輩!?」

間宮「そのセリフがなかったら、60点だったんだけどな。」

張間「セリフなしでも60点!? 採点厳しすぎませんか!?」

間宮「ありがとね。好きな人にそう言ってもらえて、嬉しいよ。」


張間(M)私は、間宮先輩に恋愛感情はない。もちろん間宮先輩にも、私に恋愛感情はないはず。

張間(M)先ほどの好きは、恋愛ではないことはわかっている。

張間(M)でも、二人っきりだからかな?

張間(M)好きと言われて、少しだけドキッとしてしまった。


間宮「張間さん、どうしたの?」

張間「...間宮先輩。」

間宮「なに?」

張間「ゲーセンに行きましょ! 今日は、バーンと遊びましょ!!」

間宮「いいけど、その前にお昼食べない?」

張間「あっ、そうですね! じゃあ、まずはお昼ご飯を食べましょう! 行きますよーー!」

間宮「え!? ちょっ、引っ張らないでよ! 張間さーん!?」


張間(M)さっき、恋愛映画を見たからだ。きっとそうだ。

張間(M)私は、まだ人を好きになったことはない。だから、恋がどんなものかなんてわからない。

張間(M)恋愛って、どんな感じなんだろうな?

張間(M)私の初恋は、どんな感じで始まるんだろう?

張間(M)どんな人に、恋するんだろう?
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