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124話「ごっこ遊び④」
しおりを挟むボウリング場を出た二人は、人気のない路上を歩いている。
間宮「咲、次はどこ行くの?」
新沼「あ、もう新沼でいいですよ。あの人たちいないんで。」
間宮「あ、うん。...え? あいつら、ずっとついてきてたの?」
新沼「はい。待ち合わせのところから、ずっといましたよ。」
間宮「ぜ、全然気づかなかった...。」
新沼「いっぱいイチャイチャ見せつけましたし、これで諦めてくれるといいんですけど。」
間宮「新沼さんは、綾小路くんのこと嫌いなの?」
新沼「大っ嫌いです♡」
間宮「大っ嫌いなんだ...。なんで嫌いなの?」
新沼「うーん...積極的すぎるというか、一言で言うとウザいです。」
間宮「そ、そっか...。」
新沼「私は、間宮先輩みたいな人がタイプですから♡」
間宮「え?」
新沼「うふふ、冗談ですよ。ドキッとしました?」
間宮「新沼さんみたいな可愛い人にそう言ってもらえたら、男だったら誰でもドキッとするよ。」
新沼「へ?」
間宮「ん? どうしたの?」
新沼「あ、いえ! なんでもないです!!」
新沼(ま、まさかカウンター攻撃されるとは...。)
間宮「新沼さん、大丈夫?」
新沼「だ、大丈夫ですよ! あ、で、でも! ちょっと疲れちゃったので、公園で少し休みませんか!?」
間宮「いいよ。」
新沼「じゃあ、先行っててください。私、自販機で飲み物買ってきますね。あっ、間宮先輩は、なんでもいいですか?」
間宮「え? いいよ、別に。」
新沼「間宮先輩には、こういうめんどくさいことに付き合ってもらってるんで、お礼がしたいんです。だから、遠慮しないでください。」
間宮「わかった。なら、お言葉に甘えて。先行ってるね。」
新沼「はい。」
間宮は、近くの公園へと歩いて行く。新沼は間宮の姿をジッと見つめ、間宮が道を曲がり姿が見えなくなると、少し俯き頬を赤らめる。
新沼「...うぅ、面と向かって可愛いって言われると、なんか変な感じする...。今日は、ベタベタ近づきすぎたかな? そういうことにしておこ...。」
新沼「えっと、間宮先輩はどれがいいかなぁ?」
ジッと自販機を見つめる新沼。その背後から、チャラチャラした男が二人やって来る。
男1「ねぇねぇ、そこの可愛い子ちゃ~ん!」
男2「俺たちと、ちょいと遊ばな~い?」
新沼「......。」
男1「ねぇ、聞いてる~?」
男2「君だよ、君ぃ~!」
新沼「......。」
男1「君のことだよ、可愛い子ちゃん!」
男1が、トンっと新沼の肩に手を置く。
新沼「え? あ、すみません。私のことだと思わなくて...。」
男2「今、君の周りに誰も人いないでしょ~! 面白い子だねぇ~!」
新沼「あ、あははは。」
新沼(あー...めんどくさそうなのに捕まっちゃった。)
男1「ねぇ、暇でしょ? 俺たちと遊ばない?」
新沼「ごめんなさい。彼氏待たせてるので。」
男2「あ~やっぱ彼氏いるのかぁ~!」
男1「可愛いから、当たり前か~! 残念!」
新沼「ごめんなさい。ですからーーー」
男1「まぁでも、俺たちはそんなの気にしないからさ~!」
男2「お茶とかどう? 可愛い子ちゃん!」
男2は、スッと新沼の手を握ろうとする。
新沼「さ、触らないでください!」
男2「え~! そんな怒らないでよ~!」
男1「俺がさっき肩触った時は、怒らなかったじゃん。あ、照れ隠し? 可愛いね~!」
新沼「違います。お茶なら、ほかの人誘ってください。では。」
新沼は、飲み物を買わずに間宮が待つ公園へと歩いて行く。が、遮るように男1が新沼の手を握る。
男1「待ってって~!」
男2「少しでいいから話そうって~! ほら、奢ってあげるから~!」
新沼「だから...! 触んないでって言ってんでしょ! このブタども!!」
男1「え?」
男2「ブ、ブタ?」
新沼「日本語が通じないんですか? あぁ、ブタさんですもんね。さっきからブーブーブーブーほんとうるさい。家畜臭がうつるので、近づかないでもらえます?」
男1「な、なんだと!?」
男2「おい、てめぇ...!」
新沼「...はっ!?」
新沼(ウザすぎて、つい...! ど、どうしよ...!?)
男1「おい、このやろう...!」
男2「最高じゃねぇか...!」
新沼「...え?」
男1「おい、可愛い子ちゃん...!」
男2「もっと俺たちを、罵ってくれよ!」
新沼「え...?」
男1「ほらっ!ほらっ!! 早くぅぅぅ!!」
男2「もっと、もっとくださいぃ!!」
急に身体をくねらせて、新沼の罵声を今か今かと待つ男たち。新沼の顔は、どんどんと引きつっていく。
新沼「き、き、気持ち悪っ!!」
男1「あぁぁぁ!! 最高、最高だぁぁ!!」
男2「気持ちぃぃぃ!!」
新沼(え!? ヤバっ! この人たち、なに!? めちゃくちゃヤバイ!!)
男1「君とは、お茶しようと思ってたけど...予定変更だ...!」
男2「一緒にホテルに行こうぜ...女王様!!」
男2は、新沼の腕を力強く握る。
新沼「え!? ちょっ、離して...!」
男1「なーに、怖いことはなにもしないよ。」
男2「俺たちを、たっっぷりいじめてくれるだけでいいんだ...。」
男1・2「ぶひひひひひ!!」
新沼(ど、どうしよう!? ホテルって!? え!? と、とにかく逃げなきゃ...助けを...!)
新沼「た、たす...け...。」
新沼(こ、声が、出ない...!? なんで!? なんで!?)
男1「俺は、蝋燭プレイをお願いするぜぇ...! ぶひひひひ...!」
男2「俺は鞭で叩きながら言葉責めをご所望だ...! ぶひひひひ...!!」
新沼「い、いや...! は、離して...!」
間宮「新沼さん?」
新沼「ま、間宮先輩...!」
男1「ん? なんだ、てめぇ?」
男2「もしかして、お前が彼氏か?」
男1「おい、マジかよ! くっそ地味じゃん!」
男2「お前、よくこの子を捕まえられたなぁ~!」
男1「え!? どうやって捕まえたの!? お兄さんたちに教えてくれよ!」
間宮はゲラゲラと笑う男たちから視線を外すと、スマホを取り出し耳に当てる。
間宮「あ、もしもし? 警察ですか?」
男1「ぶひぃ!?」
男2「ちょっ、待てよ! お前、すぐに警察に頼るとか、恥ずかしくーーー」
間宮「えっと、場所は...。」
男1「こ、こいつ、全く空気読めねぇ男だ!!」
男2「警察に責められるのは、さすがにかんじねぇよ!!」
男1「にげろぉぉぉ!!」
男2「ぶひぃぃぃ!!」
慌てて逃げていく男たちを横目に、間宮はスッとスマホをポケットに仕舞い込み、新沼へと駆けていく。
間宮「新沼さん、大丈夫? 怪我してない?」
新沼「あ、は、はい...。大丈夫です...。」
間宮「よかった...。ごめんね、一人にして。」
新沼「い、いえ...。な、なんで戻って...?」
間宮「公園のベンチ全部座られてたから、それ伝えようと思って。」
新沼は、俯き小さく震えている。
間宮「...新沼さん、小腹空いてない?」
新沼「え...?」
間宮「僕、さっきボウリングしたからちょっとお腹空いちゃって。ここの近くに、美味しいたこ焼き屋があるからさ。一緒に行こ!」
間宮は、新沼にニコリと微笑む。新沼は、小さく頷き、間宮のそばへと歩き出す。
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