なんでも探偵部!

きとまるまる

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125話「ごっこ遊び⑤」

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 とあるアミューズメント施設。室内で色々なスポーツが遊べる大きな空間は、多くの人で溢れかえっている。
関たちは、テニスを楽しんでいる。


関「綾小路くん!」

綾小路「お任せください! ふんぬっ!」


 力強い掛け声とは裏腹に、綾小路が打ち返した打球は、ふわふわ高々と上がっていく。


狗山「おっしゃぁぁぁ! もらったっすぅぅ!!」

張間「いけぇぇぇ! 羽和ちゃぁぁぁん!」

狗山「おんどらぁぁぁぁぁ!!」


 狗山は助走をつけて勢いよく飛び上がると、まるでバレーのスパイクをするかのように、ラケットを力任せに振り抜く。


張間「しゃぁぁぁぁ! きまっーーー」

関「三種の返し球トリプルカウンター...!」

狗山「へ?」

張間「なっ...!?」


 関は素早く後ろを向き、とんでもないスピードで迫って来る打球にラケットを合わせる。素早く後ろを向いた際に生じた遠心力により勢いを失った打球は高々と打ち上がり、狗山たちの後方へと落ちていく。


関「僕にスマッシュは...効かないよ。」

狗山「ちょっ、待っ! え!? 今の、なんすか!? 幸先輩、今のなんすか!?」

張間「くっ...! まさか部長が、三種の返し球トリプルカウンターの一つである、ひぐま落としを使えるなんて...!」

狗山「羆落とし!? めちゃくちゃカッケェっす!!」

関「さぁ、次は張間くんのサーブだ。油断せずに行こう。」

綾小路「は、はい!」

張間「私のサーブ...打てるもんなら、打ってみやがれぇぇぇ!!」

綾小路(速い...! さすが、張間ちゃんだ...! でも、僕だって...!)


 綾小路は、ラケットを振りかぶる。しかし、ボールはバウンドするとトップスピン気味に跳ね、綾小路の顔面目掛けて跳ね上がる。


関(なっ!? あれは...!?)

綾小路「おぶしぃ!?!?」

狗山「綾小路ぃぃぃぃ!!」

関「張間 彩香...! 一年ながら、ツイストサーブを使えるとは...生意気な新入生ルーキーだ。」

張間「ふっ...まだまだだね。」

綾小路「あ、あぁ...!? い、痛い...!」

狗山「しっかりするっす! 綾小路ぃぃぃ!!」



ーーー



 とある小さなたこ焼き屋の店内。店内はとても狭く、お客用のテーブルは二つしかない。新沼は、席について店内をキョロキョロと見回している。


間宮「お待たせ! ほら、これこれ! 食べてみて!」

新沼「い、いただきます。あーん...。」

間宮「どう?」

新沼「お、美味しい! すごく美味しいです!」

間宮「でしょでしょ! ここのたこ焼き、大好きなんだ~!」

新沼「これなら、何個でもいけそうです!」

間宮「でしょでしょ! あ、一つちょうだい。」

新沼「はい、どうぞ。」

間宮「ありがと。いただきま~す!」

新沼「......あ、あの、間宮先輩。」

間宮「ん? なに?」

新沼「さっきは、その......あ、ありがとうございました。」

間宮「気にしないでよ。困ってる人がいたら、助けるのは当たり前でしょ?」

新沼「そう言ってサラッとできるところが、なんかズルいですね。」

間宮「ん? なにがズルいの?」

新沼「な、なんでもないです!」

間宮「ごめんね、怖い思いさせちゃって。」

新沼「間宮先輩が謝ることじゃないですよ。そ、それに、怖くなんてなかったですし...。」

間宮「ほんと? 震えてなかった?」

新沼「あ、あれは...! わ、忘れてください!!」

間宮「あはは、ごめんごめん。」

新沼「......ちょっとだけ、怖かったです。あんなの初めてだったので...頭の中パニックになっちゃって、声も出なくて...。間宮先輩が来てくれなかったら、どうなってたか...。」

間宮「起こらなかった悪い未来を考えるのはダメだよ。」

新沼「え?」

間宮「そんなの考えるだけ時間の無駄だよ。そんなこと考える時間があるなら、たこ焼き食べましょうね。」

新沼「...はい。」


 間宮に微笑んだ新沼は、熱々のたこ焼きを一つ、口に放り込む。
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