なんでも探偵部!

きとまるまる

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142話「中学生も高校生も、考えることほぼ一緒②」

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 とある和菓子屋さん。和装に袖を通した張間 恵が、お客を見送るために店の外へと姿を現す。


恵「ありがとうございました。お気をつけて。」


 温かな笑顔を客に向け、小さく手を振る。
中学生三人組は、その様子を遠くからジッと見つめている。


古瀬「うわぁ~綺麗な人だね~。」

向枝「だろ? めちゃくちゃ綺麗で可愛いだろ?」

古瀬「もしかして、あの人がトッシーの恋してる人?」

向枝「そう...! 俺は、あの人に恋してるんだ...! あの温かな笑顔...身体から染み出る、優しいオーラ...全てを優しく包み込んでくれそうなお姉さん感...そして、聞くだけでドキドキ胸が加速する甘~いボイス...! 店内にたった数分居ただけで、俺の心は持ってかれたよ...!」

古瀬「ようするに、一目惚れしたんだね。」

向枝「あぁ、一目惚れだ。」

古瀬「でも、トッシーの気持ちもわかるよ。あんな綺麗な笑顔で微笑まれたら、誰でもドキッとしちゃうよ。」

向枝「おい、わかってると思うが...惚れるんじゃねぇぞ。」

古瀬「大丈夫大丈夫。確かに、すごく美人だけど...僕、好きな人いるから。」

向枝「そうかそうか、それはよかっ...ん? ちょっと待て? お前、好きな人いるの?」

古瀬「まぁまぁ、その話は修学旅行まで取っておこうよ。今は、トッシーのことだよ。」

向枝「そ、そうだな!」

古瀬「それで、これからどうするの?」

向枝「とりあえず、店に入る。」

古瀬「それから?」

向枝「それからのことは、店に入ってからだ。」

古瀬「なるほど、了解。」

向枝「頼むぞ、真希、大和。正直、和菓子屋に一人で突っ込む勇気は俺にはないから...サポートしてくれ...!」

古瀬「あーわかる。和菓子屋さんって、大人って感じするから入りづらいよね。というか...大和、さっきから一言も話さないけど、どうしたの?」

大和「あ、いや...その......今日は、帰らない?」

向枝「何言ってんだ、お前は!! ここまで来て、帰るなんて選択肢はない!! さぁ、行くぞ!! 俺について来い、真希、大和!!」

古瀬「はーい。」

大和「......。」



恵「いらっしゃいませ。」

古瀬「こんにちわ~。」

向枝「こ、ここここここんにちわ!!」

恵「こんにちわ。あっ、君はこの前来てくれた子だよね?」

向枝「え!? お、覚えてくれてるんですか!?」

恵「うん。また来てくれてありがとね。」

向枝「はぁぁぁ...! なんてことだ...! 俺、感動...!」

古瀬「よかったじゃん、トッシー。」

向枝「うん...! 生きててよかった...! このまま、連絡先とか聞けないかな...!?」

古瀬「それは、さすがに早いんじゃないかな?」

大和「こ、こんにちわ。」

恵「あっ、大和くん! こんにちわ。久しぶりだね。」

大和「ど、どうも。」

古瀬・向枝「...ん?」

恵「最近、忙しいの?」

大和「えっと、部活とかテストとか、色々あったので。」

恵「部活、バドミントンだったよね? あっ、もしかして同じ部活の子?」

大和「は、はい。部活のつれで、友達です。」

恵「そっかそっか! お友達と一緒に来てくれて、ありがと! 大和くんは、?」

大和「あ、じゃあ、それで。」

恵「はーい。あっ、そうだ! ねぇ、今新作の和菓子を作ってるんだけど、もしよかったら食べてみない?」

大和「え、いいんですか?」

恵「お客様の意見も、聞かないとだしね。お友達の分も持ってくるから、少し待っててね。」

大和「はい、ありがとうございます!」

大和「おい、よかったなお前ら。新作の和菓子ーーー」


 大和が二人に振り向くと、古瀬はニコニコニコニコと楽しそうに微笑んでおり、向枝は目をこれでもかと開き、瞬きせずジッと大和を睨みつけている。


大和「...なに?」

古瀬「大和、すごく嬉しそうに話してたなぁ~って。もしかして、大和ってーーー」

大和「お、おい! 変な勘違いすんなって!! 俺は別に...!」

古瀬「え? 勘違いって? 僕は、すごく和菓子が好きなんだねーって言おうとしたんだけど...あれれ~? 違った?」

大和「て、てめぇ...!」

向枝「大和くんや大和くんや。」

大和「な、なんだよ?」

向枝「なんだよ?じゃないよね? まずは僕に言うことがあるんじゃないでしょうか?」

大和「え? なに?」

向枝「君、ここ知ってたの?」

大和「おう。」

向枝「いつから来てたの?」

大和「小学生の頃。」

向枝「あの方の名前とか...知ってる?」

大和「張間 恵さんだろ? 歳はーーー」

向枝「貴様ぁぁぁぁぁ!! なんだ、おい!? 俺の方が知ってますよアピールか!? ふざけんな、こんちくしょうがぁぁぁぁ!!」


 向枝は大和の背後にスッと移動すると、後ろからヘッドロックをキメる。


向枝「つまり、お前はずっと俺を嘲笑っていたわけだ!? 店を眺めている時から、ずっっっと笑っていたわけだ!? 親友を裏切って楽しいか、貴様ぁぁぁぁ!!」

大和「落ち着け、バカ!! いだだだだだだ!?」

向枝「俺の恋を応援するどころか、踏みにじりやがってぇぇぇぇ!! 貴様だけは、許してはおけんんんんん!!」

大和「落ち着けって言ってんだろうが! 店の中だぞ、おいぃぃぃ!!」

向枝「店の中だろうが外だろうが、男にはやらねばいけないことがあるぅぅぅ!! 俺は貴様を倒し、恵さんを手に入れるのだぁぁぁぁぁぁ!!」

大和「何言ってんだ、お前は!? 恵さんは俺のもんでも...いだだだだだだ!?!?」

古瀬「あはは~やっぱり二人は仲良いなぁ~。」

大和「わらってねぇで、こいつを止めろぉぉぉぉ!!」

向枝「絶対に、ゆるさぁぁぁぁん!!」
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