なんでも探偵部!

きとまるまる

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147話「夏休みの予定は事前に計画を立てましょう④」

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 購買部前。狗山がスマホを耳に当て、張間に電話している。


狗山「もしもし? 彩香?」

張間「羽和ちゃん、どうしたの?」

狗山「お前、まだ学校っすか?」

張間「うん、学校にいるよ。」

狗山「あのさ、購買部のアイス無料券とかいうの二枚もらったんすけど、新沼はいらないって言ってるっすから、彩香いらねぇかなって思って。期限、今日までなんすよ。」

張間「なに、それ!? いるいる!!」

狗山「じゃあ、購買部の前にいるから。んじゃあな。」

狗山「...こんなんで、本当に来るんすかね?」

張間「おまたせ、羽和ちゃん!!」

狗山「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!? お、お、おまっ! 急に出てくるなっす!!」

張間「アイス!アイス!!ア・イ・ス!! 羽和ちゃん、早く早く!」

狗山「お、おう...その...。」

張間「羽和ちゃん? ...はっ!? まさか!? 後ろかぁぁぁ!」

関「おやおや、よく気づきましたね。」

張間「だ、騙したなぁぁ!」

関「騙される方が悪いんですよ。というか、あんな手に引っかかるなんて...張間くんはホント...バカだよねぇぇぇ!!」

張間「羽和ちゃん、あとでアイスおごってもらうからね!!」

狗山「なんでだよ!?」

張間「私を騙した罰だぁぁぁぁぁぁ!!」

関「羽和くん、お礼はいつか必ずする! ありがとう!! まちなさいぃぃぃぃぃぃぃ!!」

狗山「...いつも賑やかな人たちっすね。」

狗山「......。」


 狗山は、全力で張間を追いかけていく関の背をジッと見つめる。ふと、屋上で言われた一言が頭の中に浮かび上がる。


新沼「部長さんのこと、好きなの?」


狗山「いや、好きじゃねぇし...。いや、別に嫌いってわけじゃねぇけど...ただの先輩っていうか...だから...。」

狗山「だぁぁぁ...! あんなこと言われたら、なんか意識しちゃうじゃないっすかぁぁ...!」


 顔を真っ赤に染め、その場にしゃがみ込む。うぅ~と小さく唸りながら、チラッと関が走り去った方を見つめる。関の姿はもうなく、誰もいない寂しげな廊下だけが視界に映り込む。



ーーー



関「張間くぅぅぅぅぅぅん!!」

張間「あ、あと少しぃぃぃぃぃ!!」

関「待ちなさいぃぃぃぃぃ!!」

張間「負けてたまるかぁぁぁぁぁ!!」


 グラウンドに二人の声が響き渡る。ちらほらと活動している運動部を華麗に避けながら、関たちはグラウンドを走り回っている。
五十嵐は、屋上から二人の様子をニヤニヤと見つめている。


五十嵐「おーおー頑張ってるねぇ。あと、もうちょいか。どっちが勝つかねぇ?」

五十嵐「...楽しそうだな、あいつ。でも、楽しさなら、うちの部活も負けてないぜ。こっちにも、おもしれぇ後輩がいるからな。」

関「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
張間「ぬぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

五十嵐「後輩あいつらとお前らが一緒になったら、すげーうるさそうだな。でも、すげー楽しそうだ。想像しただけで笑えてくるわ。今度、なんか企画してみっか?」


 五十嵐は、小さく笑いながらスマホを取り出す。画面には30の数字が映し出されると、29.28と素早く数字を減らしていく。
画面と関たちを見比べる。数字が小さくなるほどに、距離を詰めていく二人。


五十嵐「......10、9、8、7、6、5、4、3、2、1ーーー」


 トンっと、優しく肩が叩かれる。五十嵐は遊びの結末を見届けることなく、反射的に背後に振り返る。
ニコニコと可愛い笑顔を浮かべる女子生徒が一人。素敵で可愛い笑顔から視線を逸らしてしまうほど、たわわに実った果実が二つ。ナイスバディなお姉さん、五十嵐と同じく三年の遊部部員ーーー百瀬 凪ももせ なぎが、笑顔を崩すことなく、ジッッッと五十嵐を見つめている。


五十嵐「あっ、凪さん...。」


 五十嵐の額から、ポタポタと汗が高速で滴り落ちていく。その姿を目にしても、百瀬は表情を一切崩すことなく、黙って静かにジッッッと五十嵐を見つめている。


五十嵐「いや~今日も、すごくステキな笑顔ですね~! 俺、ドキドキしちゃいますよ~!」

百瀬「......。」

五十嵐「あ、あの...凪さん、なんか言ってくれない? 笑顔でも、黙って突っ立ってると怖いんだけど...?」

百瀬「うふふ...♡ けーんーやー♡」

五十嵐「凪さん、そのハサミはどこから出したの? それをどうする気ですか? 今は、ハサミを使用する状況じゃないと思いますが...な、な、凪さん!? ちょっ、刺す気!? 刺す気ですか!? それは、まじでシャレになりませんよ!? ちょっ! ちょちょちょっ!! 待って待って、近寄らないで! 待っ...あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
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