なんでも探偵部!

きとまるまる

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154話「子の面倒を見るのは、親の役目④」

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 東咲高校、生徒会室。中には、三年会長の猪山 光里いのやま ひかり、三年会計の牛寅 灯うしとら あかりの他に、二年副会長の木江 辰巳きのえ たつみ、二年庶務の馬鳥 陽太うまどり ようた、二年書記の鹿野兎 凛かのと りんがおり、これから始まる会議の準備を各々進めている。


馬鳥「明日から夏休みかぁ~! 楽しみだなぁ~!」

木江「そうだね。僕としては、もう夏休みなのかって気持ちだけど。」

鹿野兎「歳をとるたびに、一日の経過が早く感じるよね。」

馬鳥「いやいやいや、歳とるたびって、俺たちまだ高校生だよ、かのっち。そんなオバさん臭いことは言っちゃダメだよ。もっと若々しく行こうね~。」

鹿野兎「オ、オバさん臭い...。」

木江「女性にそんなこと言うもんじゃないよ、陽太...。」

牛寅「夏休みだからって、羽目外しすぎないようにね。特に、馬鳥くんは。」

馬鳥「あかりん先輩、なんで俺だけ厳重注意なんですか?」

木江「日頃の行いだよ。」

鹿野兎「あ、あははは...。」

猪山「お前たち、はしゃぐのは会議が終わってからにしろ。まだ生徒会の仕事は残っている。やることをきっちりやってからはしゃげ。」

木江「はい。」

馬鳥「いや~ホント会長は真面目だよね~。真面目すぎて、面白いわ~。」

木江「おい、失礼なこと言うな。」

猪山「...灯。」

牛寅「はい、なんですか?」

猪山「俺は、面白いのか? 面白いことは、何一つ言っていないのだが。」

牛寅「え...? あ、いや...えっと...。」

馬鳥「あははは~! そういうところですよ、会長~! そういうところが、最高に面白い~! あっははは~!」

牛寅「こ、こら、馬鳥くん! 会長をからかわないの!」

猪山「面白い...今のなにが面白いのか...? 一体、どの辺が...?」

鹿野兎「か、会長! 陽太くんの言葉は、深く考えない方がいいですよ! 彼は、中身のあることを言う方が珍しいので! 軽く流してください!」

馬鳥「かのっち、それは酷くない?」

猪山「ところで、卯ノ森はどこに行った?」

木江「トイレに行くって言って出ていきましたけど...帰ってきませんね。」

馬鳥「察してあげなよ、たっつー。トイレで長いんだからーーー」

鹿野兎「よ、よよよよよ陽太くん! そういうのは、言うもんじゃないよ!!」

牛寅「もしかして、あの子...また一人でなんかしてるんじゃないでしょうね...?」

木江「それは...あり得なくないですね...。」

猪山「はぁ...。会議の前に、卯ノ森を探しに行くぞ。」

鹿野兎「わ、わかりました!」

馬鳥「了解っす~。」

張間「たのもぉぉぉぉぉ!!」

生徒会たち「「ん?」」

関「お邪魔しますよ!!」

牛寅「げっ!? あんたは...!」

馬鳥「あっ、わーりー先輩じゃん。こんにちわ~。」

鹿野兎「こ、こんにちわ。」

木江「珍しいですね、関先輩が生徒会室に来るなんて。何か御用ですか?」

関「おやおや、全員勢揃いでしたか。すみませんね、急にお邪魔してしまって。」

張間「部長! こんなやつらにヘコヘコしなくていいんですよ! もっと強気でいきましょう! ガンガン行こうぜ!ですよ! 作戦変更してください! まずは、どうします!? あそこで偉そうにしてるメガネの眼鏡を見せしめにかち割ってやりましょう!!」

関「張間くん、あの方は生徒会長ですよ。」

張間「いや~素敵な眼鏡ですね~! どこのブランドですか!? マジでキラキラに輝いてて、めちゃくちゃにすんばらしいですよ! ふぅ~イカしてる! ナイスガイだぜ!!」

猪山「なかなか見る目があるな、君は。これは、俺の行きつけの眼鏡屋で作ってもらったものだ。そんなに値は高くないが、使い心地は抜群だぞ。もし君も眼鏡を作りたくなったら、店の場所を教えてーーー」

牛寅「会長! 丁寧に答えなくていいんですよ! で、何しにきた!?」

関「何しにきたって、そんなの言わなくてもわかるでしょうが!」

牛寅「わかるか! そもそも、こっちはあんたの顔なんてみたくもないのよ! さっさと帰れ!」

関「帰る前に、理由を説明してください、理由を! ちゃんと納得のできる理由を聞かない限りはーーー」

馬鳥「ねぇ、君。」

張間「え? あ、はい。」

馬鳥「君、可愛いね。一年生? 俺は二年の馬鳥 陽太ってんだ。よろしくね~。」

張間「え? は、はぁ...よろしくお願いします。一年の張間 彩香です。」

馬鳥「彩香ちゃんか~。じゃあ、あやぴーだね。」

張間「あ、あやぴー...?」

馬鳥「あやぴー、今スマホ持ってる? 連絡先、交換しない? 明日から夏休みだし、どっか一緒に遊びにーーー」

木江「はいはい、お前は少し黙ってろ...! 話が進まないだろうが...!」

鹿野兎「ご、ご、ごめんね! 急にズカズカ近づいて! 気にしないでね! この人、基本こんな人だから! 無視して大丈夫だから!」

張間「は、はぁ...。」

馬鳥「ちょっとちょっと、たっつー邪魔しないでよ~。ってか、口塞ぐなら、たっつーじゃなくて、かのっちに塞いでもらいたいんだけど。」

木江「凛にそんな仕事させられるか! いいから少し黙ってろ!」

鹿野兎「ど、どうぞどうぞ! こちらのことは気にせずに、話を進めてください!」

牛寅「はぁ...あの子たちは...。」

関「いつも通り、元気で賑やかですね~。」

張間「部長、私ちょっと馬鳥さんあの人苦手です...。」

関「おやおや、張間くんにも苦手なタイプがあったんですね。こりゃ驚きです。」

牛寅「で、話戻すけど...マジで何しにきたのよ? 早く帰ってくれない?」

関「ですから、理由を聞かせてください。いきなりあんなこと言われて、納得できるわけないでしょ。」

牛寅「だから、なんのことよ? 私たちは、あんたがここに来るようなヘマをした覚えはないわよ。」

関「...なんだか、話が噛み合いませんね。」

張間「とぼけても無駄やで! さっさと理由を言わんかい!理由を! なんで、なんでも探偵部が廃部にならないかんのじゃい!?」

牛寅「...はい?」

猪山「どういうことだ?」

関「こっちが聞きたいんですけど。おたくの卯ノ森くんがーーー」

卯ノ森「あ、あんたたちぃぃ...!!」


 生徒会室に、息を乱しに乱した卯ノ森が転がり込んでくる。


卯ノ森「わ、私の...はぁ、はぁ...話を...ちゃんと...はぁ、はぁ...き、聞きなさいって...げほっげほっ...! い、言った...はぁ、はぁ...!」

木江「ちょっ、沙月ちゃん!? 大丈夫!?」

鹿野兎「なんでそんな汗だくなの!? と、とにかく、飲み物用意するね!」

卯ノ森「あ、ありがとうございます...。」

馬鳥「さっちゃん、もしかしてまたなんかやらかしたの~?」

卯ノ森「や、やらかしたとはなんですの!? 私は、生徒会会計としての仕事をしたまでですわ! 怒られるようなことは、何一つしてーーー」

牛寅「沙月ちゃーん?」

卯ノ森「な、なんでしょう...?」

牛寅「もしかしてなんだけど...また勝手に廃部にするどうこう言ったんじゃないでしょうね?」

卯ノ森「......。」

牛寅「だーかーらー! 何かしら行動する時は、必ず私たちに許可とってからにしなさいって何度も何度も言ってるでしょうがぁぁぁ!!」

卯ノ森「痛い痛い痛い! ほっぺがちぎれますわぁぁぁぁ! 離してくださいぃぃぃ!!」

関「えっと、つまり...探偵部の廃部どうこうは、卯ノ森くんが勝手に言っていたってことで、実際にそんな話しはしていないってことでOKですか?」

猪山「そのようだな。」

関「そうですか、それはよかったです。」

張間「つまりつまり、何事もなく一件落着!ってことでいいんですか?」

関「いいんですっ!」

張間「くぅ~! よかったよかった!」

猪山「すまないな、卯ノ森が迷惑をかけて。あいつは勝手な行動が多くて、俺たちも手を焼いているんだ...。」

張間「あーわかりますわかります。部室きた時から、わがまま独裁ガール臭がプンプンしてましたからね。」

関「あなたも似たようなものですけどね。まぁとにかく、廃部にならなくてよかったですよ。」

卯ノ森「灯先輩ぃぃぃ!! そろそろ離してくださいぃぃぃ! このままでは、私の頬がぁぁぁ!!」

牛寅「ったく...! もう二度と勝手な行動はしないと誓いなさい。わかった?」

卯ノ森「で、でも、灯先輩も言っていたではありませんか! 「なんでも探偵部は廃部にすべき部活No. 1だ」「あんな部活、存在していたってなんの利益にもならない。むしろ害悪だ」「部費を無駄に消費する、害虫に等しい部活だ」とか、他にもーーー」

牛寅「ちょっ!? 待って待って待って! わ、私、そんなこと一言も言ってないからね~! か、勘違いしないでね~!」

関「張間くん、あの人は平気な顔でペラペラと卯ノ森くんが言っていたことを言う人ですから、気をつけなさいね。」

張間「わかりました! 肝に銘じておきます!」

牛寅「おい、こら!! 変なこと吹き込むな!!」

卯ノ森「つまり、私はこの学園のゴミ虫を片付けるために動いたのですわ! 正義の行動なのですわ! 怒られるようなことは、何一つしてませんわ!!」

張間「めちゃくちゃ言われてますよ、部長。」

関「えぇ。部長、悲しくなっちゃう。」

張間「やれやれ、仕方ないですね~。では、なんでも探偵部の紅一点、張間 彩香ちゃんが、我が部の必要性をぐうの音もでないほど語り尽くしてやりましょう! ついでに部費もアップじゃ!」

関「言ってやってください、張間さん!」

張間「やいやい、生徒会の野郎ども! 聞いて驚け! 我が、なんでも探偵部はなぁーーー」

卯ノ森「それに、なんでも探偵部に所属する張間 彩香という女は、授業中は基本寝ていて、起きていても死んだ魚のような目で黒板を見つめてノートをとらず、宿題なんかも友達に見せてもらって自分の力でしてないようなーーー」

張間「ぎゃぁぁぁぁぁ!?!? お、おおおおおおまっ!? 何言ってんだい!? コノヤロウ、バカヤロウ!!」

卯ノ森「それもこれも、害悪な部活動生活のせいですわ! ですから、早いうちに害悪部活指定されている探偵部を潰し、更生させるべきですわ!!」

張間「部長! 事件は、もう解決しております! これ以上、この場に居続ける意味は皆無っ! さぁ、帰りましょう!!」

牛寅「えっと...張間ちゃん、だっけ?」

張間「は、はひぃ!?」

牛寅「今の話は、本当なのかな~?」

張間「いやいやいや、そんなそんなそんな! そんなわけ! はっはっはっは!!」

関「張間くん?」

張間「な、なんでしょう...?」

関「今の話は、本当ーーー」

張間「しょ、勝負だ、生徒会の野郎どもぉぉぉぉ!! 貴様たちが勝負に勝てば、なんでも探偵部を好きにするがいいわ! 廃部にでもなんでもすればいい! ただし、負けた場合は、これ以上なにも口出しするな! わかったな!?」

卯ノ森「いいでしょう! 望むところですわ!!」

牛寅「だから、勝手に話を進めるなっての...!」

関「やれやれ、今年の一年生は手のかかる子が多いんだから...。」

馬鳥「あっはっはっは~! なんか面白いことになってきたね!」

木江「来年は、僕らが沙月ちゃんを止めないといけないのか...。」

鹿野兎「頭が痛い...。」

馬鳥「ところで、わーりー先輩。まみーは今日休みなんですか?」

関「ん? あれ? 傑くんは、どこに?」

張間「さっきからツッコミが全然聞こえないと思ったら...トイレですかね?」

卯ノ森「間宮先輩なら、あなたたちが出て行った後、座って漫画読み始めてましたわよ。」

関「まぁぁみぃぃやぁぁぁ!!」

張間「我が部の存続危機に、なにしとんだアイツはぁぁぁぁ!!」

関「ツッコミ仕事放棄したら、部の評価がさらに下がるだろうがぁぁぁ!!」

張間「仕事しろ、仕事をぉぉぉぉ!!」

関「引きずってでも連れてきたるわぁぁぁ!!」

張間「イヤイヤ言っても、許さへんでぇぇぇ!!」

馬鳥「あははは~! あっちの二人も面白いなぁ~!」

卯ノ森「では、今のうちに作戦会議ですわよ! もちろん、指揮を取るのは私ですわ!」

牛寅「だから、勝手なことをーーー」

馬鳥「まぁまぁ、あかりん先輩。こうなったら、ちゃちゃっと勝負して終わらせた方が早いですよ~。」

木江「こればかりは、陽太に同意です。」

鹿野兎「右に同じく...。」

牛寅「あぁもぉぉ...! わかったわよ! ただし、やるからには絶対に勝つわよ! わかった!?」

卯ノ森・馬鳥「はーい!」
木江・鹿野兎「はーい。」

猪山「...お前たち、会議のこと忘れてないよな?」
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