なんでも探偵部!

きとまるまる

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158話「勝負は、最後までなにが起こるかわかったもんじゃない④」

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 グラウンドにやって来た一行。張間と卯ノ森はジャージに着替え、屈伸などを行い走る準備を各々行っている。


馬鳥「いや~ついに最終戦だね~。楽しみだね~。」

木江「やっと終わるのか...。」

鹿野兎「長かった...。」

張間「さてさて、負ける準備はよろしいですかしら? 卯ノ森さん?」

卯ノ森「誰に向かって言っているのです? 私が負けるだなんて、万が一にもあり得ませんわ。」

張間「おやおや、くしゃくしゃに丸めて箱にポイしたくせに、生意気な口を利くお子さまだこと。」

卯ノ森「だ、誰がお子さまですって!? あれは、あんたのためを思ってのことよ! グラウンド一周なんて、どう考えても私が勝つんだから! やめるなら今のうちよ! 私は大人だから、あと一時間ほど答えを待ってあげますわ! さぁ、やめるなら今のうちよ!」

間宮「めちゃくちゃに待つじゃん! どんだけ走るの嫌なの!?」

関「まぁ、どれだけ待っても答えは変わりませんけどね。」

鹿野兎「え、えっと...沙月ちゃん、大丈夫なの? 沙月ちゃんって、走るの苦手じゃ...。」

卯ノ森「凛先輩、勝負というものは、最後まで何が起こるかわからないものですわ。苦手だからと言って、負けるとは決まってません。」

鹿野兎「さ、沙月ちゃん...!」

馬鳥「さっちゃん、良いこと言うね~!」

卯ノ森「でしょう! まぁ、私ですからね! おーっほっほっほっほ!!」

木江「関先輩、張間ちゃんって足速いんですか?」

関「速いですし、スタミナもありますよ。男子に混じっても負けないと思います。」

木江「あぁ...そうですか...。」

関「すみませんね、面倒なお仕事を増やして。」

木江「いえ、いつものことですから。今のうちに、慰めの言葉を考えとかなきゃ...はぁ...。」

卯ノ森「ちょっと、そこぉ!! なんで私が負ける前提で話を進めているのよ!? しっかり見てなさい! 私が勝つところを!!」

猪山「いいから、早く始めろ。」

牛寅「それじゃあ、位置について~。」

張間「よっしゃぁ!」

卯ノ森「絶対に負けませんわ!」

牛寅「よ~い...ドンっ!」

張間「おんどらぁぁぁぁ!!」
卯ノ森「ふんっ!」

木江「......。」

鹿野兎「みるみる離されていくね...。」

馬鳥「張間ちゃん、足速すぎない?」

関「これは、ウサギとカメ的なことしない限りは、我々の勝利ですね。」

間宮「ですね。」

張間「うまぴょい!うまぴょい!うまぴょいぴょぉぉい!」

木江「さらに速くなったんだけど...。」

鹿野兎「まだまだ余裕そうだし...。」

馬鳥「張間ちゃん、圧勝だね~。」

張間「はい、ゴーールッ!」

関「我々の勝利~! 張間く~ん、素晴らしい活躍でしたよ~!」


 張間は駆けてくる関に近づいていき、笑顔でドロップキックをかます。


木江「...間宮くん、あれは大丈夫なの...?」

鹿野兎「い、痛そう...。」

間宮「いつものことだから、気にしないで。」

木江(あれが日常なのか...!?)

鹿野兎(なんでも探偵部、恐ろしいところ...!)

張間「いや~ゴールド張間ちゃんの圧勝でしたね~!」

関「で、ですね...。素晴らしい活躍でしたよ、張間ーーー」

張間「あっ、こら! 間宮先輩! 探偵部の未来を救った張間 彩香ちゃんを褒めずにどこに行く!? 戻ってこんかぁぁぁい! 逃さへんぞぉぉぉ! さぁ、褒め称えろぉぉぉ!」

関「やれやれ...うちの娘は、扱いが難しいんだから...。がくりっ。」

猪山「お前、大丈夫なのか?」

関「えぇ、もちろん。あれくらいでくたばると思ってもらっては心外ですね。」

猪山「そうか。そのまま静かにくたばってくれててもいいんだがな。」

関「おやおや、酷い言われようですね。」

猪山「問題ばかり起こしていた結果だ。」

関「それは昔の話でしょ? 過去ばかり見ていたら、成長しませんよ。」

猪山「ったく...。というか、お前のとこの一年は自由すぎないか?」

関「そこが彼女のいいところですよ。あなたのとこの一年も、素晴らしくいい子ですね。」

猪山「卯ノ森がか?」

関「えぇ。」


 二人は卯ノ森へと視線を向ける。卯ノ森は走ることをやめず、ぜぇはぁと息を切らしながら懸命にゴールめがけ駆けている。


木江「沙月ちゃーん、後少しだよー!」

鹿野兎「頑張ってー!」

馬鳥「ファイトファイト~!」

関「もう勝負はついているのに、投げ出さずに最後まで走り抜けようとする姿勢...ホント素晴らしいですよ。」

猪山「まぁ、なんだかんだ根性はあるやつだからな。問題ばかり起こすやつだが、憎めんやつだ。」

卯ノ森「はぁ、はぁ...! や、やっと、ゴールですわ...!」

牛寅「お疲れ様。」

卯ノ森「はぁ、はぁ...ぜぇ、はぁ...! ごほっごほっ! うぅ...!」

鹿野兎「だ、大丈夫...?」

卯ノ森「だ、大丈夫じゃ...ありませんわ...! 灯先輩、飲み物を...!」

牛寅「今持ってくるから、ちょっと待っててね。」

卯ノ森「お、お願い...し、します...。はぁ、はぁ...。」

馬鳥「さっちゃん、汗だくじゃ~ん。俺が拭いてあげようか~?」

木江「お前は女の子に近づくな。」

馬鳥「え? なんで?」

関「いいチームですね。」

猪山「あぁ。互いが互いを支え合える、いい奴らだ。」

張間「部長~! 今から部室で、張間ちゃんよくやったねパーティを開きますよ~! 早く来てくださ~い!」

間宮「わかったから! わかったから離してって!」

関「はいはい、今行きますよ~!」

猪山「...お前のとこも、いいチームだな。」

関「でしょ? チームワークなら、どこの部活にも負けませんよ。」

猪山「今日は、色々とすまなかったな。」

関「こちらこそ、失礼しました。あっ、勝負には勝ったので、廃部にしないでくださいよ。」

猪山「勝とうが負けようが、廃部にするわけがないだろ。あんな適当な理由で廃部にしてたら、卯ノ森がさらに暴走しそうだからな。」

関「それもそうですね。じゃあ、部費アップの件も、今回は見逃してあげますよ。」

猪山「何をしたって上げん。覚えておけ。」

関「やれやれ、いつまで経っても頭が硬いんだから。では、そろそろ行きますね~。」

猪山「......関。」

関「ん? なんですか?」

猪山「問題を起こせば、即廃部だからな? 忘れるなよ。」

関「言われなくても。では~。」

猪山「やれやれ...まぁ、人のことを言う前に、まずはこちらの問題を片付けなければな。」

卯ノ森「ぜぇ、はぁ...! うぅ...!? な、なんか出そうですわ...!」

鹿野兎「え!? で、出るってなにが!?」

馬鳥「もしかして、ピッコロみたいに口からーーー」

木江「黙れ、陽太。」

馬鳥「えぇ~酷いなぁ~。」

猪山「お前ら、さっさと戻って会議を始めるぞ。」

卯ノ森「え、えぇ!? い、今から会議をするんですの!?」

猪山「当たり前だろ。やることきっちりと終わらせるまで、今日は帰れないと思っておけ。」

卯ノ森「そ、そんなぁ...!」

馬鳥「どんまい、さっちゃん。」

卯ノ森「い、嫌ですわ! 私は、もう疲れました! 一歩も歩けません! ですから、今日の会議は無しですわ! この私が無しと言っているのですから、無しですわ。」

猪山「馬鳥、灯に生徒会室に戻ると連絡しろ。」

馬鳥「はいは~い。」

猪山「木江、鹿野兎、卯ノ森を引きずってでも連れてこい。俺は先に戻って準備をしておく。」

木江「はい。」

鹿野兎「か、かしこまりました!」

卯ノ森「会長! 私の体調を見てください! こんなにも辛そうにしているのに、会議に参加しろと言うのですか!? それは、あまりにもーーー」

猪山「卯ノ森、俺たちはお前のワガママに付き合ってやったんだ。次は、お前の番だぞ。」

卯ノ森「ぜっったいに嫌ですわ! 私は帰ります! 帰らせていただきますわ! 家に連絡して、今すぐに迎えに来てーーー」

木江「はいはい。行くよ、沙月ちゃん。」

鹿野兎「もう子どもじゃないんでしょ? ワガママばっかり言わないの。」

卯ノ森「ちょっ、離してくださいまし! やめて、離して!! こんな嫌がってる子を無理矢理だなんて! あなたたちに人の心はないの!? 離して! 離しなさい!! いやぁぁぁぁ! 誰か、助けてくださいましぃぃぃぃ!」

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