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163話「夏に白球〜前編〜⑤」
しおりを挟む投手交代し、マウンドに集まる内野陣。
今本「よぉ、大賀! 緊張してない? 大丈夫?」
大賀「するわけねぇだろ。むしろ、先発できなくてイライラしてるっての。」
今本「あっははは~! 相変わらずだな、お前は~!」
大賀「笑うな! イライラが増すだろうが!!」
鶴森「大賀、次は四番だ。今日、当たりに当たってるからーーー」
大賀「あーはいはい、言わなくてもわかってますよ。つーか、あんたらよかったっすね。四番を前に投手交代してもらえて。石山さん、ボッコボコに打たれてたから、あのままいったら試合終了でしたよ。ってか、打たれすぎだろ。マジ情けねぇ。」
菊谷「お前、それアイツに言うなよ...。」
大賀「はぁ? なんでっすか?」
菊谷「あ、もしかして言っちゃったの?」
福川「ベンチで石山が鬼の形相で睨みつけてるのは、そういうことなの...?」
大賀「まぁ、石山さん以上に情けねぇのが、ここにいますけどねぇ。」
内野陣「「はい?」」
大賀「ねぇ、山上先輩?」
山上「......。」
鶴森「おい、やめろ大賀。」
菊谷「それ以上は、言うな。」
大賀「あっちの四番は、ホームラン含めて三安打猛打賞...比べて、うちの四番はノーヒットな上に、2三振...情けねぇったらありゃしねぇ。石山さんは、駒原相手に四点と、まぁそれなりに頑張ってましたけど...山上さんにいたっては、なーんにも仕事してないじゃないっすか? もしかして、寝てます?」
福川「おい、大賀! だから、やめろってーーー」
山上「なるほどなるほど...! つまり、てめぇは俺にぶん殴られるためにここに来たと...?」
鶴森「だぁぁぁ!? バカ、落ち着け!!」
菊谷「その怒りは、バットに乗せろ!! ここで発散させるな! わかったか!?」
大賀「雑魚。」
山上「上等だ、てめぇぇぇ!! そこ、動くなよぉぉぉぉ!!」
福川「よせ、山上ぃぃぃ!! ここで試合終了するぞぉぉぉ!! 落ち着けぇぇぇ!!」
今本「あははははは!! お前ら、面白すぎだろ!! 今、こんなことしてる場合じゃ...だっははははは!!」
鶴森・菊谷・福川「「笑ってねぇで、お前も止めろや!!」」
鈴田「...何やってんだ、あいつら?」
甲柱「また雄太が、なんかしたんだと思います。」
本島「大賀くんは、いつも通りだね...。」
外野から、内野陣のわちゃわちゃを遠目で見つめている三人。内野陣が各ポジションに戻っていくのを確認すると、三人も軽くグータッチを交わし各ポジションに戻っていく。
大賀「......。」
大賀(やべぇ、めちゃ心臓バクバクいってらぁ...。こんなの、初めてかもな。)
審判「プレイッ!」
大賀(ツーアウト、ランナー二塁。点差は二点...バッターは四番、しかも今日は三打数三安打の大暴れときたもんだ...。これ以上点差広げられたら、正直キツイ...何がなんでも抑えなきゃいけねぇ。)
大賀(...あぁ、ヤベェ...めちゃくちゃバクバクいってる...このまま爆発しちまいそうだ...! 先発では味わえねぇ緊張感...めちゃくちゃにのしかかるプレッシャー......こんなの、楽しくないわけがねぇ...! こんな展開、燃えねぇわけがねぇだろぉぉぉ!!)
勢いよく振り下ろした腕から、ボールが放たれる。
パァーンッと乾いた音が、球場内に大きく響く。
今本「...ん?」
鶴森「ま、マジか...!」
実況「インコースいっぱい、ストライクッ!! 149キロ!!」
監督「...大賀のMAXって、147じゃなかったっけ?」
石山「アイツ、この場面で...マジかよ...!」
大賀(ただ速いだけじゃねぇだろ? 四番は、散々石山さんの遅ぇボールばっかり見てきたから、倍以上の速さに感じるだろ? 慣れる前に仕留めてやるよ...!)
審判「ストライク、ツー!」
大賀(先発できなかったのはムカつくし、一番もらえなかったのもムカつくが...俺は見てきた、石山さんの努力を。俺が勝ってる部分もありゃ、悔しいけど負けてる部分もある。あの人は、すげぇ人なんだ。いい投手なんだ。だから、こんなとこで、あんな形で終わらせるなんて、俺が許さねぇ...! だから、何がなんでも...!)
大賀(ここで仕留めたらぁぁぁ!!)
大賀の放った球は、唸りを上げながら高めに構えられたミットに吸い込まれていく。バッターは負けじと勢いよくバットを振るうが、掠りもすることなくボールはもう一度乾いた音を響かせる。
大賀「しゃぁぁぁ!!」
実況「高め直球、空振り三振!! 一年、大賀 雄太!ピンチの場面も三球で仕留めました!! 最後も149キロ!」
張間「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!! ナイスピッチ、大賀くーーーん!!」
間宮「す、すごっ...!」
関「これは、いい流れがきそうですね~!」
監督「ナイスピッチ、大賀!!」
大賀「へっ! こんくらい、当たり前っすよ! 次からは、俺を先発でーーー」
鶴森「ナイスピッチ、大賀ぁ!!」
福川「よくやった、大賀ぁ!!」
菊谷「最高だぜ、大賀ぁ!!」
山上「大口叩くだけはある!!」
今本「次も頼むぜ、大賀ぁ!!」
ベンチへと帰ってきた内野陣は、次々と大賀のケツを力任せに叩いていく。
大賀「おい、てめぇら!! ふざけんじゃねぇぞ!! それがピンチを救った英雄にやることか!? 土下座しろ、土下座!!」
鈴田「よし、俺たちもやるか。」
本島「いや、これ以上はーーー」
甲柱「ナイスピッチ、雄太ぁ!!」
大賀「あだぁぁ!?」
鈴田「いくぞ!」
本島「あ、は、はい!」
ベンチに帰ってきた外野陣も、大賀のケツを叩き活躍を賞賛する。
今本「よーし、お前ら! 今は負けてるが、まだ二点差だ! これくらい、余裕でひっくり返せる!! 俺たちは、こんなところで負けるわけにゃいかねぇんだ! もっと夏を満喫するために、絶対逆転すっぞ!! もっと気合い入れろぉぉぉ!!」
野球部員「「おぉぉ!!」」
張間「よっしゃぁぁ! こっからこっから! ここで逆転しましょ~! ファイト、東咲~~!!」
関「七回は、一番からの好打順! 何かが起こる気しかしませんね!!」
張間「その通りであります!! さぁ、間宮先輩も声出して応援してください!」
間宮「わかってるってば。」
張間「それじゃぁ、いきますよ~! せーのっ!!」
探偵部三人「「頑張れ、東咲~!!」」
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