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162話「夏に白球〜前編〜④」
しおりを挟む張間「頼む頼む、抑えてくれぇ...! 大丈夫大丈夫、君なら抑えられるよぉ...!」
関「次は当たりに当たってる四番バッターですからね...ここでランナーをためるのは怖いですよ。」
張間「頼む頼むぞぉ...! 欲を言えば、ダブルプレーでチェンジ...欲を言わなくてもダブルプレーがいい...! つまり、ダブルプレーが良きぃ...!」
間宮「お願いしますお願いします...!」
張間・間宮「お願いしますぅ...!!」
石山「ふぅ...。」
石山(大丈夫だ...落ち着いてる...。腕も振れてるし、まだ投げられる。大賀が張り合ってくるせいで、バカみたいに走ってたからな。まだまだスタミナはあるんだよっ...!)
審判「ストライクッ!」
石山(こんなところで、マウンド降りてたまるか...! 三番を打ち取って、四番に仕返しするまでは...! アホかってくらいバカスカ打たれてんだ...! このままじゃ終われねぇよっ...!)
審判「ボール!」
石山(はは...。前までだったら、また打たれるとか考えてたんだろうけど...今は、どう打ち取ってやろうかって考えが先に浮かぶわ...。これも、大賀と張り合ってたおかげだな...!)
審判「ストライク、ツー!」
石山(俺がここまで成長できたのも、アイツのおかげってか? それはそれで、なんかちょいとムカつくな...!)
審判「ファール!」
石山(まぁでも、アイツのおかげってのは本当のことだ。感謝の気持ちの一つや二つくらい、ちゃんと伝えてやんねぇとだなっ...!)
審判「ボール、ツー!」
石山(でも、感謝してるっつっても、マウンドは譲らねぇけどな。俺にもプライドがあるんだよ...! 三年間、必死に、がむしゃらに努力して手に入れたエースナンバーなんだ...! こんな中途半端なところじゃ終われねぇよ...! もっとマウンドに立ちたい! もっと投げたい! もっと勝ちたい!! エースは俺だ! 俺がエースだ!!)
石山(あの一年坊主に、マウンドを渡してたまるかぁぁっ!!)
石山の投げたボールが、外側いっぱいのコースへググッと大きく曲がり落ちていく。が、打者はうまくボールをすくい上げ、バットに当てる。ライナー性の鋭い打球が、石山めがけ飛んでいく。
実況「あぁぁっと!?」
打球は勢いを止めず、石山の右手首に直撃し、マウンド手前にコロコロと転がっていく。
今本「あきーーー」
石山「ファーストっ...!!」
歯をグッと食いしばって痛みを噛み殺しながら、石山はボールを拾い上げ、右腕を振り一塁へと投げつける。
一塁ベース手前でボールは点々とバウンドするが、一塁手が上手く合わせてボールを掴み、アウトコールが球場に響き渡る。
今本「晃!!」
山上「大丈夫かよ、お前!?」
タイムコールが響くと同時に、マウンド前で手首を押さえ膝をつく石山に駆け寄る内野陣。熱い応援を届けていたスタンドからも、ザワザワと不安な音が響きはじめ、グラウンドの選手たちへと降り注ぐ。
張間「あ、あぁ...!? あわわわわ...!? な、なんてこったい...!!」
間宮「せ、先輩...あれ、大丈夫なんですか...!?」
関「うーん...右手首を押さえているように見えますね...。多分、打球が右手首に直撃したんでしょうね...。」
張間「えぇぇ!? あの人、右投げでしょ!? じゃあ、この後は...?」
間宮「あっ、ベンチに下がってくよ!」
張間「あぁぁぁ!? そ、そんなぁ...!」
関「嫌な流れになってきましたね...。ここまで粘りのピッチングをしていたエースが、まさかの負傷交代...。」
張間「あぁぁぁぁ!? えらいこっちゃ!えらいこっちゃやでぇぇぇ!!」
間宮「......。」
関「傑くん、どうしました?」
間宮「...石山さん、このまま交代して、もし負けたら...これが最後ってことになるんですよね...?」
関「...そうですね。」
間宮「......。」
関「傑くん、まだ負けたわけじゃありませんよ。野球というスポーツは、27個のアウトを取られない限り終わらないスポーツです。まだ、七回。逆転のチャンスはあります。私たちが諦めムードになってしまえば、選手たちにも悪いムードが伝染しますよ。さぁ、こんな時こそ、声を出して応援しましょう!!」
間宮「そ、そうですね。」
関「それに、東咲高校の野球部には、悪い流れをスパッと断ち切れそうな生意気ボーイがいるじゃありませんか。そんな心配することでもないかもですよ。」
間宮「え?」
張間「そ、それって、もしかして...!?」
ウグイス嬢「東咲高校、選手の交代をお知らせします。投手、石山くんに代わりまして...大賀くん。背番号、10。」
張間「お、おぉぉぉ!? おぉぉぉぉぉ!! きたきたきたきたぁぁぁぁ!! 生意気ルーキー!!」
間宮「こ、ここで大賀くん...!」
関「むしろ、彼以外に適任はいないでしょ。さぁ、我々は我々にしかできないことをやりますよ! 声張り上げて、応援しましょう!」
張間・間宮「はい!!」
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