174 / 330
174話「先輩と後輩⑤」
しおりを挟む17時前となり、店の前にはお客さんが列を作って並んでいる。関は黒いエプロン、赤いバンダナを身につけて、厨房内からホールで待機している後輩たちを見つめている。
閤「よーし、もうちょいで開店だから! 気合い入れていけよー!」
張間「おぉー!!」
間宮「うぅ...お客さん並んでる...。緊張するなぁ...。大丈夫かな...?」
関(やれやれ...後輩たちは、いつも通りですね。)
関「傑くーーー」
閤「間宮くんっ!!」
間宮「うわっ!? な、なんですか!?」
閤「初めてのことだからな、緊張するのはよくわかる! 失敗したらどうしようとか考えてるでしょ?」
間宮「あ、は、はい...。」
閤「初めてのことなんだから、もし何かしら失敗しても、それは仕方ないこと。誰も最初から失敗せずにできる人なんていないよ。大切なのは、失敗した後。失敗を次にどう繋げるかだよ。」
間宮「......。」
閤「ここは、私のお店。だから、私が一番上の人間だ! その人が失敗していいって言ってんだから、じゃんじゃん失敗しな! んで、それをあんたの人生の糧にしなさい! わかったね?」
間宮「は、はい!」
閤「男なんだから、もっとどっしり構えな。あんな風に。」
張間「ふっ...これを乗り越えれば、私はまた一つレベルアップできるな...! ふっふふ...あーっはっはっは!!」
閤「あはは~ほんと面白い子だね、あの子! 間宮くんが不安がってたら、あの子も不安になっちゃうかもだから、どっしり構えな。あとは~!」
ニヤリと大きく笑いながら、閤は間宮の頬を掴み、無理やり上へ上へと引っ張り上げる。
閤「笑ってないとダメだぞ~! ほらほら、笑いなさ~い!」
間宮「わ、わかりましたわかりました!!」
閤「ほんとかな~? 張間ちゃーん、こっち来てー!」
張間「はーい! なんですかー?」
閤「張間ちゃんのとびきりスマイルを、間宮くんに見せてあげて!」
張間「もぉ~仕方ないですね~! いきますよ、間宮先輩!!」
張間「にっこにこ!!」
閤「おっ!いいねいいね~! 私も...ニッコニコ!! ほら、間宮くんも!」
間宮「えぇ!? えっと...に、にっこにこ!」
張間「あはは~! 間宮先輩下手くそ~!!」
間宮「そ、そんなこと言うなよ!」
閤「張間ちゃん、その可愛い笑顔でお客さんに「もうしばらくお待ちくださーい!」って元気よく言ってきて!」
張間「はーい! お任せください!!」
閤「間宮くん。」
間宮「は、はい。」
閤「あの子のサポートは、私や幸よりあなたが適任だと思うから。何かあったら助けてあげてね、先輩。」
間宮「はい、わかりました。」
閤「よし! んじゃ、ホールは任せたぞ!」
閤は軽く間宮の背中を叩くと、厨房へと入っていく。
関「ほれ、エプロン。」
閤「サンキュー!」
閤はエプロンを受け取ると、ポケットから赤いバンダナを取り出し、慣れた手つきで素早く身支度を整える。
閤「よっし、準備オッケー! おい、幸は準備オッケーか?」
関「道具、食材、調味料の場所、あと料理もばっちし頭に入ってるよ。」
閤「おいおい、本当か~? んじゃ、ミスったらお仕置きな。」
関「んじゃ、ミスなくできたら一つ言うこと聞いてもらおうかな?」
閤「いいぜ。この時間忙しいから、テンパんなよ。」
関「大丈夫だわ。」
閤「ふっ...ふふふ...!」
関「な、なんだよ?」
閤「いや、お前と二人でなんかすんのって、すげー久しぶりだからさ。懐かしいなって。あと、ちょいと楽しみだわ。」
関「......。」
閤「頑張ろうぜ、幸。」
関「......。」
閤「ん? どうしたんだよ?」
閤は、関の顔を覗き込む。関は視線を外しながら、軽く閤の頭を叩く。
閤「いて。おい、なんで頭叩く?」
関「汚いもの触ったんで、手を洗ってきま~す。」
閤「お前、あとで覚えとけよ。」
閤「おっ、時間だ。お二人さーん! 元気にお客さん迎えてー!!」
張間「いらっしゃいませーー!」
間宮「こ、こちらの席にどうぞ!」
間宮(M)こうして、僕の人生初のアルバイトが始まった。
間宮(M)最初は、どうしようってすごく不安だったけど...閤さんの言葉を聞いてたら、その不安はいつのまにかどこかに飛んでいってしまった。
張間「はいはーい! お待たせしましたー!」
間宮「張間さん、それ違う! あっちの席!!」
張間「あれ?」
間宮(M)それに、張間さんがこんな調子だから...僕がしっかりしないとって思ったら、思ってた以上に周りがよく見えた。
間宮(M)夕方でご飯時という事もあり、お店は常に満席だった。
間宮「え、えっと...この料理は...!」
関「傑くん、それは1番。こっちは3番ですよ。」
間宮「あ、は、はい!」
張間「間宮先輩、1番のやつ持ってきますね!」
間宮「ありがと!」
間宮(M)何度かミスをしてしまうこともあったけど...大切なのは、そのあと。ミスをしてしまったで終わらせない事。
間宮「張間さん、ここの片付け僕がやるから!」
張間「はーい! ありがとうございまーす!!」
間宮(M)働くって、すごく大変な事だな。
関「傑くーん、そのままちょいと待ってくださいね~! すぐもう一品出しますから~!」
間宮「わかりました!」
張間「ありがとうございましたー! またきてくださいね~!!」
間宮(M)でも、このメンバーで働いてるからかな?
間宮(M)すごく、楽しいなって思える。
間宮(M)僕はずっと、このふたりに支えられてるんだなって思った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる