なんでも探偵部!

きとまるまる

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175話「先輩と後輩⑥」

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 時刻は20時半を過ぎ、間宮たちはお客さんを見送っている。


間宮「ありがとうございました!」

張間「またきてくださいね~!!」

間宮「つ、疲れたぁぁ!」

張間「間宮先輩! お客さんはいませんけど、まだおわってませんよ! 頑張りましょう!」

間宮「は、働くって大変だ...!」

閤「お疲れさーん! もうゆっくりしてていいよ~。今日は21時に閉めるから、お客さん来ないだろうし。」

張間「え? そうなんですか?」

間宮「よ、よかったぁ...。」

閤「二人とも、着替えてきていいよ~。今日はありがとね。」

張間「はーい!」

間宮「わ、わかりました...!」


 店の奥へと歩を進める二人を見送り、閤はバンダナを外しながらカウンター席へと腰を下ろす。


閤「いやーいっぱい人きたな? 流石にちょいと疲れたわ~。」

関「いつもあんな人くんのか?」

閤「いや、多分メイドさん効果。」

関「だろうな。」

閤「ホントあの子可愛いね。あんた、どうやって捕まえたの?」

関「部活紹介でマジックしたら釣れた。」

閤「へぇ~。というか、なんであんたマジックなんてしたの?」

関「なにかしらインパクト残そうと思って。」

閤「その後、生徒会に怒られたでしょ?」

関「よくわかったな。」

閤「あはは~! あんたって、たまにバカみたいなことするよね~。」

関「んだよ、悪いか?」

閤「そこがあんたの可愛いところ。私の好きなポイントだよ。」

関「うるせぇ。」


 閤はカウンターに頬杖つきながら、関をジッと見つめている。


関「な、なんだよ?」

閤「...呼んでくれないんだ。」

関「は?」

閤「華先輩って。」

関「はぁ?」

閤「今日は、まだ一回も呼ばれてないんだけど?」

関「べ、別にいいだろ。」

閤「ふーん。」

関「なんだよ?」

閤「べっつにー。」

関「......。」

張間「お着替え終わりました~!」

閤「おっ、早いね~! お疲れさん!」

張間「このメイド服、どうしたらいいですか?」

閤「そこの机に置いといて。」

張間「はーい!」

間宮「お疲れ様です。」

閤「間宮くんも、お疲れさん!」

張間「間宮先輩、お疲れ様です!」

間宮「うん、ありがとう。」

閤「二人とも、今日はホントありがとね。」

間宮「こちらこそ、貴重な経験をさせていただきありがとうございます。」

閤「貴重だなんて、そんな大したもんじゃないよ~。」

張間「閤先輩、またお手伝いしにきてもいいですか!?」

閤「おっ、いいねいいね~!」

関「張間くんは夏休みの宿題終わらせるまでは、バイト禁止ですよ。」

張間「えぇ!?」

閤「まだ宿題終わってないのか~。それじゃぁ、ダメだなぁ。」

張間「そ、そんなぁ! お願いしますお願いしますぅぅ!!」

閤「んん~! この子、ホント可愛いね! 可愛い子には、お姉さんがプレゼントあげちゃう! ちょっと待っててね~!」

張間「はーい!」


 閤は、スタスタと店の奥へと向かっていく。


関「傑くん、張間くん、お疲れ様でした。」

間宮「先輩も、お疲れ様です。」

張間「お疲れ様でーす!」

関「どうでした、働いてみて?」

張間「最初はどうなるかと思いましたけど、気合いでなんとかなりましたね!」

間宮「なってないだろ。ミスしまくりやがって...。」

張間「間宮先輩がフォローしてくれると思ったら、つい...てへっ♡」

間宮「てへっじゃないよ。」

関「まぁまぁ、それだけ信用されてるってことですよ。では、傑くんに感謝を込めて...張間二等兵、抱きつくぞ!」

張間「了解であります!」

間宮「はいぃ!?」

関「私は、後ろ! 張間二等兵は、前から! いきますよ~!」

間宮「え!? ちょっーーー」

張間「間宮せんぱ~い!」

関「ありがと~!」

間宮「うわっ!?」

張間「間宮先輩どうですか!? ありがとうでサンドイッチされてますよ!?」

関「私たちの絆が深まっちゃいますね~!」

間宮「......。」

張間「あれ? 間宮先輩?」

関「傑くん、どうしたんだい?」

間宮「......ぼ、僕の方こそ...色々助けてくれて...あ、ありがとうございました...。」

張間「おぉ...! ぶ、部長!」

関「傑くんのデレ...いただきましたよぉ!!」

間宮「お前らには、二度とお礼言わない。」

張間「えぇ~!? 間宮先輩~!」

関「もっとデレて~! 特に私! 私にデレてぇぇ~!!」

間宮「うるせぇ! いいから離れろ!!」

閤「おっ、なになに? 楽しそうなことしてんじゃん!」

張間「閤先輩にも抱きつきます!」

閤「いいねいいね~! でも、その前に...張間ちゃん、プレゼント! 間宮くんも!」


 閤は、二人にそれぞれ茶色の封筒を手渡す。


間宮「あ、ありがとうございます。」

張間「なんですか、これ?」


 二人は不思議な顔をしながら、封筒を開けていく。中からひょっこりと顔を出す、一万円札。


間宮・張間「なっ...!?」

閤「二人には頑張ってもらったからね。少し多めにいれといたから。」

間宮「ほ、ほ、本当にいいんですか!?」

張間「い、いち...1万円だ!? 間宮先輩、1万円ですよ!?」

閤「おーおー、1万円であんな喜ばれるとは。」

関「高校生にとっては大金ですからね。」

張間「閤先輩だーーいすきっ!」

閤「もぉ~! 私も好きだぞ、張間ちゃ~ん! ぎゅ~!」

張間「ぎゅ~!!」

間宮「く、閤さん! ありがとうございます!!」

閤「こちらこそ、ありがとね。すごく助かったよ。」

閤「張間ちゃんもね~!」

張間「えへえへ~! 私でよければ、いつでも呼んでください!」

関「よかったですね~傑くん。」

間宮「い、いち、1万円...! これが、働くということか...!?」

関「傑くーん、無視しないで。なにか反応してくれない?」


 男子二人のやりとりをニマニマとしながら見つめる閤。閤は、張間をギュッと抱きしめながら、男たちと少し距離をとる。


張間「あれ? どうしたんですか、閤先輩?」

閤「ねぇねぇ、張間ちゃん!」

張間「はい、なんですか?」

閤「間宮くんとは、いい感じなの~?」

張間「...へ?」

閤「あれ、間宮くんと付き合ってるんじゃないの~? もしかして、お姉さんの勘違い?」

張間「つ、つつつ付き合う!? な、何言ってるんですか!?」

閤「じゃあ、ちょっと気がある感じかな~? そのお小遣いで、どっか一緒に遊びにいっちゃいなよ!」

張間「え!? えぇ!?」

閤「間宮くーん! 間宮くんと張間ちゃんは、帰ってもいいよ~!」

間宮「え? いいんですか?」

閤「ラストオーダー終わったから、あとは片付けとかくらいだしね~。私ら二人でなんとかなるから、大丈夫だよ! それに、あんまり帰り遅くなると、親御さん心配しちゃうかもだからね!」

閤「ほらほら、張間ちゃん! 間宮くんと一緒に!」

張間「え!? えぇ!?!? ちょっ!?」

閤「間宮くん! 張間ちゃんのこと、ちゃんと家まで送ってあげるんだよ!」

間宮「はい、わかりました。」

閤「ではでは~!」

間宮「今日は、ありがとうございました。」

関「傑くん、張間くん、また月曜日。」

間宮「はい。行こっか、張間さん。」

張間「あ、は、は、はい。」


 間宮は一礼し、お店を出ていく。張間は閤に言われたことを意識しているのか、カチコチとロボットのようにカクカクしながら店をでていく。


関「...お前、なに言ったの?」

閤「んー? 背中押してあげただけ。いや~青春だね~! キラキラしてるねぇ~!」

関「楽しそうだな。」

閤「あんたも好きな人いるなら、応援してあげるからさ! 私に教えなさいよ~!」

関「死んでも嫌だ。というかさ...。」

閤「ん? なに?」

関「約束、覚えてるか?」

閤「...おい、今すぐ皿を割れ。ミスしろ。」

関「さてと、なにしてもらおうかな~?」

閤「おい、待て待て待て待て!!」

関「とりあえず...腹減ったし、なんか作ってもらおうかな。」

閤「はぁ? 仕方ねぇな...なにがいいんだよ?」

関「......。」

閤「はいよ。」


 ふっと笑みをこぼしながら、閤はバンダナを巻き直し厨房へと入っていく。
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