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202話「孤独の天才①」
しおりを挟む関(M)小さい頃から、勉強もスポーツも一度見ただけですぐできた。だから、周りから天才と呼ばれ、憧れの眼差しで見られていた。
関(M)しかし、中学生になると、憧れの眼差しは段々と嫉妬の眼差しへ変わっていった。尊敬の言葉は、暴力に変わった。学年が上がるにつれ、嫉妬はどんどん大きくなっていき、手を出してくる連中まで現れた。
関(M)でも、俺は天才だ。なんでもそつなくこなしてしまうんだ。勉強もスポーツも、喧嘩も。
関(M)周りにたくさんいた人間は、一人また一人といなくなっていった。毎日毎日、喧嘩に明け暮れる日々...ふと顔をあげると、周りには誰もいなくなっていた。
関(M)俺は、独りぼっちだ。
東咲高校の一年生である関 幸は、不機嫌な顔をしながら一人廊下を歩いていた。雑に丸めた「東咲高校、部活紹介!」と書かれた冊子をポッケに突っ込み、チラチラと背後から突き刺さる視線を無視し、止まることなく廊下を歩み続ける。
関(部活、どうしようなぁ...? つーか、なんで必ず部活に入らなきゃなんだよ...。別に、入らなくてもいいだろうが...。俺のこと歓迎してくれる部活なんて、どこもねぇだろ。クソが。)
関(M)数日前、屋上に行ったら三年がタバコ吸ってた。クセェって言ったらぶん殴られた。だから、殴り返した。
関(M)噂ってのは、恐ろしいものだ。広がっていく速さもだが、ありもしないことをあったかのように...嘘を本当にしてしまう。
関(変な噂のせいで、怖がって誰も近寄ってこねぇし...くるのは頭おかしい連中ばっかり...。あーあ、もう高校なんてやめちまおうかなぁ? まだ入学して数日だけど...やめた方が、きっといいことある気がーーー)
「おっ! ようやく見つけた!」
関は、背後から聞こえた元気な声を気にすることなく、歩みを続ける。段々と大きくなる足音にも気にすることなく、振り返ることなく歩き続ける。
「よっと! 捕獲完了!」
背後からの足音が止まると同時に、突然目の前の視界が白い網目状の布を映し出す。そして、頭部に感じる違和感ーーー関は、ようやく足を止め背後へと振り返る。自分達、一年生とは色の違うリボンをつけた、先輩と思われる女子生徒ーーー虫取り網を頭から勢いよく被せてきたにも関わらず、悪びれる様子が一切ない女子生徒。
関は無言で頭の網をとり、目の前の女子生徒を睨みつける。が、女子生徒は恐る様子もなく、もう一度関の頭に虫網を被せる。
「おいおい、逃すわけねぇだろ? 大人しくしてな。」
関「誰だ、お前?」
「人に名を聞く前に、まず自分から名乗ったらどうだ?」
関「まず、人様に虫あみ振り下ろしたことに対しての謝罪はねぇのか?」
「細かいこと、いちいち気にすんなって。」
関「細かくねぇよ、大ごとだよ。んで、あんた、誰?」
「私は、閤 華。三年だ。あんた、一年の関 幸だろ?」
関「そうだけど。知ってて近づいてくるってことは、あんた頭おかしいやつなんだな。」
閤「まぁ、私のこと、そう見る人もいるんじゃない? あはは~!」
関「...んで、三年の先輩が、俺になんのようっすか?」
閤「んなもん、一つしかないだろ? おい、一年坊主...私と勝負しろ。」
関「は? 勝負?」
網目越しから見える先輩は、ニヤリと笑みを浮かべながら関の腕を掴むと、虫網を取ることなく強引に何処かへと引っ張っていった。
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