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206話「私たちの未来の話②」
しおりを挟む公園へとやってきた二人は、先程出たアイデアについてあーだこーだと話し合っている。
青海「うーん...やっぱり、脚本を考えるのって難しいねぇ...。」
黄島「やなぁ。上手いこと話がまとまらんわ。」
青海「ねぇ...。脚本家の方々には、頭が上がりませんよ...。」
黄島「ほんまやわ。白金にも、改めて感謝せなあかんな。」
青海「だね! あんな面白いお話を書けるんだもん! 麗ちゃんは、ほんと凄いよ!」
黄島「今度、話を書くコツでも教えてもらおうかのぉ? 一回くらいは、自分で脚本書いて演ってみたいし。」
青海「わかるわかる! 私も、自作自演で演ってみたい! 絶対に楽しいと思う!」
黄島「青海の書く脚本かぁ...全然想像つかんわ。」
青海「予測不可能で、楽しみ増し増しでしょ!?」
黄島「せやな。そこは否定せんわ。」
青海「やったね!」
黄島「とんでもないもんやろうで、ハラハラドキドキしまくりやわ。」
青海「とんでもないとは失礼な! 面白くて、何度も演りたくなりますぅ! ぱちくんの書くものは絶対に面白いと思うから、今から楽しみにしてるね!」
黄島「なんや、えらい信用されとんなぁ。」
青海「だって、ぱちくんだもん! ぱちくんは、すごくすごく努力する人だってわかってるから! 脚本書くってなったら、たくさんたくさん努力して、すごくすごく楽しいものを書くに決まってるもん! でしょ!?」
黄島「期待に応えられるように、頑張りますわ。つーか、努力に関してやったら、青海もやろ? ほんま、お前は凄いやつやで。」
青海「え、えへへへ...! 照れるなぁ~!」
黄島「芝居だけは、ほんま尊敬するわ。」
青海「もぉ~! そんな言われたら...って、芝居だけ!? 他にもあるでしょ! 他にも!」
黄島「あるか。」
青海「そんなこと言わないでよ!」
黄島「ぎゃーぎゃー騒ぐなや。一つでもあるだけええやろがい。」
青海「ま、まぁ、そう言われたら...。ないよりはマシですけど...。」
青海「...ねぇ、ぱちくん。」
黄島「なんや?」
青海「ぱちくんは、卒業してもお芝居続けるの?」
黄島「当たり前やろがい。やめるわけないやろ。」
青海「だよね! 舞台演る時は、絶対に連絡してね! 私、見に行くから! 約束だよ!」
黄島「......。」
青海「ん? ぱちくん、どうしたの?」
黄島「いや...卒業したら、一緒のとこおらん限りは、お前と舞台立つこともないんかと思ってな。」
青海「そうだよ。なんか、このままずっと一緒な感じするけどね。」
黄島「せやな。」
黄島(青海の言う通り、なんだかんだ一緒な気ぃするけど...そんなわけない。高校だって、たまたま一緒やっただけや。卒業して、また一緒の道に辿り着くなんて...そんな奇跡、起こらんやろ。)
黄島(青海と一緒に、芝居すんのも...もしかしたら......。)
青海「ぱちくーん? ぱちくんってばー! 聞こえてますか~? ぱちくーーん?」
黄島「聞こえとるわ。ほんま、お前はやかましいやっちゃなぁ。」
青海「聞こえてるんなら、返事してよ!」
黄島「......なぁ、青海。」
青海「なに?」
黄島「...お前は芝居、やめるんか?」
青海「え?」
黄島「どうなんや?」
青海「......うん。私は、卒業したらお芝居はやめるつもりでいる。」
黄島「...そうか。」
黄島「......理由、聞いてもええか?」
青海「うん、別にいいよ。あっ、先に言っておくけど、お芝居を嫌いになったわけじゃないからね! 嫌いだったら、公園に行こうとか言ってないよ!」
黄島「それもそうやな。」
青海「でしょでしょ?」
黄島「じゃあ、なんでなんや?」
青海「うーん...なんていうのかなぁ......? お芝居は好きなんだけど...それ以外のことがさぁ...。」
黄島「それ以外?」
青海「えっと...本人前にして、こんなこと言うのは、ちょっぴりと恥ずかしいんだけども......私が今こうして楽しくお芝居のこと話せるのは、ぱちくんがいるからなの。」
黄島「俺が?」
青海「私、バカだからさ。周りのこと、全然見えないというか...周りに合わせずに一人で突っ走っちゃうというか...。そのせいで、先輩ともうまくいかなかったし...。」
黄島「あれは別に、お前のせいちゃうやろ。」
青海「お芝居は、一人でやるものじゃない。いくら私が周りから評価されてるからって、一人だけ突っ走ってたら、舞台はバラバラで...なんというか......みんなで一つのものを作り上げなきゃいけないのに、私のせいで...。」
黄島「だから、何度も言わすなや。あれは、お前が悪いんやない。お前の努力についてけへんだ、俺たちのせいや。お前は毎度毎度、最高の舞台を作るために努力した。そのお前が、俺らに合わせんのはおかしいやろ? 合わせないかんのは、俺らの方や。」
青海「ぱちくんはさ、すごくすごくお芝居が好きで...私と同じ...それ以上に好きだからついて来てくれた。でもさ、みんながみんな、そうじゃないんだよ。先輩たちみたいにさ、思い出作りとして、みんなで楽しくやりたいって人もいるんだよ。そういう人たちが大勢いるところなのだとしたら、それは私が合わせなくちゃいけないと思う。一人で作り上げるものじゃないから。」
青海「あとは...その......役作りに関してだけど...色々と、迷惑かけてたみたいだし...。」
黄島「お前、迷惑かけとるって自覚あったんかい...。」
青海「そりゃまぁ、あれだけぱちくんに怒られてたら、少しは思いますよ。あははは。」
黄島「それでも少しなんかい。」
青海「だから...なんていうのかなぁ...? 今はさ、ぱちくんが色々と支えてくれてるって言うの? やりすぎたらやりすぎだ!って言ってくれるし、私を見守っててくれるから、安心して役作りもできるというか?」
黄島「俺頼みすぎるやろ。自分でなんとかするって気ぃないんかいな?」
青海「あるというか、前やったことある! それで、大失敗した!」
黄島「そういや、そんなこともあったなぁ...。」
青海「先輩たちに色々と言われた後、自分なりに頑張ってやってみたよ。でも、なんというか...すごく息苦しいというか......。続けてやっていけば、そのうち慣れるかもだけども...こんな息苦しいことに慣れちゃうのは、なんか違う気がするというか...あんな状態で芝居を続けて、周りが納得しても私が納得できないというか......とにかくあの時は、すごくお芝居が楽しくなかった。」
青海「私は、お芝居に嘘は吐きたくない。でも、100%になれないのはわかってる。だから、100%になるべく近づきたいの。どんな役にも、できる限りの努力をして100%に近い状態で舞台に立ちたい。舞台の上では、青海 七海ではなく、その役として生きたい。」
黄島「......。」
青海「先輩に言われた後に、色々とやり方を変えてみて...その後に、ぱちくんにブチギレられてやり方を戻してみて...やっぱり私には、今のやり方が一番合ってるなって。全力で役と向き合って生きていくスタイルが、合うし、楽しいなって。でもさ、そのやり方だと色んな人に迷惑かけるみたいだし、卒業した後も先輩たちとぶつかった時みたくなるのは嫌だなぁ~って思いまして、私はやめようと思いました!」
黄島「...お前は、それでええんか?」
青海「うーん...どうなんだろ? 後悔はないかって言われたら、あると思う。でもさ、息苦しい思いしてまで...嘘を吐き続けてまでお芝居続けたいかって言われたら、首を縦には振れないかなぁ。私は、お芝居がすごくすごく大好きだから、全力で取り組みたい。だから、全力で出来ないんだったら、やめた方がいいってね。みんなに迷惑もかかんないしね!」
黄島「......。」
青海「今思い返すと、私ってば本当にぱちくんに迷惑かけまくってたよねぇ~。でも、そのおかげで私は楽しく、全力でお芝居に取り組めたから...本当にありがとう! そして、本当にごめんなさい...。」
黄島「礼なんかいらんわ。俺がやれ言うてやらせたことや。お前が気にすることちゃうわ。」
青海「いや~ほんと、あの時のぱちくんは怖かったよ~。「なんで私が怒られてるの!?」って気持ちでいっぱいだったしね!」
黄島「...なぁ、青海。」
青海「ん? なにー?」
黄島「お前はさ...もし、卒業後も俺と一緒に舞台に立てるっちゅーなら、芝居やめへんのか?」
青海「うん。全力で役作りするから、それ止めてくれるのならば。」
黄島「即答かいな。あと、なんやその条件は?」
青海「さっきも言ったでしょ! 私は、やるなら全力でやりたいの!」
黄島「はいはい、そうですか。」
青海「それに、私はぱちくんと一緒にお芝居するの、すごく好きだから! ぱちくんは全力で私にぶつかってきてくれるから、終わった後の達成感というか?なんか色々とすごくて好きだよ!」
黄島「なんやねん、色々って。」
青海「色々は色々! 色々、たくさん、いっぱい! とにかく、好きだよ!」
黄島「はいはい、そですか。」
青海「もしかして、ぱちくん...喜んでる? 嬉しい? 私に好きって言われて、嬉しい? ねぇねぇ、嬉しい!?」
黄島「まぁ、お前は俺の目標であり憧れやからのぉ。そないな人に褒められたら、嫌でも嬉しなるやろ。」
青海「やだ、もぉ~! 目標とか憧れとか、照れる......って、え? ん?」
黄島「なんや、そのアホ面は? しばいたろか?」
青海「憧れ? ぱちくん、私に憧れてるの? え? 私に?」
黄島「芝居やぞ、芝居。それ以外に憧れるとこないやろがい。」
青海「なに、その言い方!? せっかく良い気分だったのに! でも、そっか...! ぱちくん、私に憧れて...目標にしてくれてたんだ...!」
黄島「まぁ、あないな芝居見せられたら、誰だってそうなるわ。」
青海「そ、そう...? ってか、いきなり何でそんなこと言ったの!? いつもは、アホとかボケとか言ってくるばっかりだったのに! もしかして、最終回!? 今日が最終回だったの!?」
黄島「なんのやねん。」
青海「私の人生!!」
黄島「生きろや。」
青海「憧れ...憧れかぁ...。え、えへへ...! なんか、憧れとか目標って言ってもらえるの、すごく嬉しいなぁ~! 今まで一生懸命に頑張ってきた甲斐があるというか? 私を目標に...え、えへへ~!」
黄島「ニヤけすぎやろ、気持ち悪い。」
青海「気持ち悪いとは失礼な! 嬉しいんだから仕方ないでしょ! え、えへへ~!」
黄島「ほんま、芝居以外はポンコツやな。」
青海「ポ、ポンコツ言うなぁぁ! でも、今日は気分いいから許す!」
黄島「なんやねん、それ?」
青海「えへへへ...! ぱちくんが、私を目標に...憧れを...! へへへ...!」
黄島「お前、いつまでニヤけとんねん! こっちが恥ずかしなるやろがい!」
青海「もうちょっと浸らせて! この感動に!」
黄島「もうええわ!! 次ニヤけたら、どつき回すぞ!」
青海「怖っ! 怖すぎるよ、ぱちくん! でも、好き! ぱちくん、好き!」
黄島「好きちゃうわ、ボケ!」
青海「うふふふふ~~!」
黄島「ったく...なんやねん、マジで...。」
青海「...ありがとね、ぱちくん。」
黄島「は? なにがやねん?」
青海「んーとね、色々と。今まで色々支えてくれてたこととか、いっぱい褒めてくれたこととか。あと、お芝居のことも。」
黄島「芝居のこと?」
青海「私、お芝居が大好きなの。だから、大好きな芝居のことで、憧れとか、目標とか言ってもらえたの、すごくすごく嬉しい! でも、あなたの目標になれた私が頑張れたのは、目標としてくれるあなたが...ぱちくんがいたからだよ?」
黄島「はい?」
青海「さっきも言ったでしょ? ぱちくんは、私に全力でぶつかってきてくれるって。だから、いつもいつも思ってたの。全力でぶつかってきてくれるぱちくんのためにも、私もいつも以上に全力出さなきゃ!って。だから、目標として見てくれてる私がいたのは、ぱちくんがいたからなんだよ。だから、ありがとう。私を、憧れるくらい素敵な役者にしてくれて。」
黄島「......。」
青海「...あれ? ぱちくん? もしかして、伝わらなかった? 何言ってんのか、理解できなかった? ぱちくん? ぱちくーん?」
黄島「...青海。」
青海「なに?」
黄島「芝居、好きなんやろ? なら、辞めんなや。好きなんやったら、もうちょい俺の憧れで...目標であってくれ。」
青海「......。」
黄島「お前、自分で言うたことやでな。嘘とか抜かしたらぶっ殺すからな?」
青海「えっ!? なにが!? というか、怖っ! 怖すぎますって!」
黄島「青海。」
青海「な、なによ!? わ、私、殺されるようなことはーーー」
黄島「劇団、作らへんか?」
青海「......へ?」
黄島「俺と、お前で、劇団。そうすりゃ、卒業しても同じ舞台に立てる。俺と同じ舞台に、俺が色々とサポートすんのやったら、続けるんやろ、芝居。ならーーー」
青海「やる。」
黄島「...ん?」
青海「やるやるやる、やる!! 絶ッッッ対にやる!! やるよ、私は! 何言われてもやるからね!!」
黄島「待て待て待て。最後まで話聞けーーー」
青海「ぱちくんと劇団かぁ~! それなら、ずっとずっとお芝居続けられるね! あっ、劇団名どうする!? 私、決めていい!? いや、せっかく二人で作るんなら、二人で決めた方がいいよね!?」
黄島「いや、せやからーーー」
青海「他の人、どうする!? まずは二人で始める!? その方がいいかな!? 最初から大人数でやるよりは、少人数でちょこちょこしてから増やす方がいいと思うよ! その案でいこう! いいよね!? いいよね!?」
黄島「話聞け言うとるやろうがい!!」
青海「よーし! そうと決まれば、勉強頑張るぞー! ぱちくんと同じ大学に、入るぞー!!」
黄島「はいぃぃ!? なんや、それ!?」
青海「あれ? ぱちくん、進学じゃなかったっけ?」
黄島「進学やわ! って、そゆことちゃう! なんでお前が、俺と同じとこくんねん!?」
青海「だって、その方が色々と話し合いの時間取れるでしょ! 二人で作るなら、話し合いは重要でしょ!」
黄島「そやけどや! それよりもーーー」
青海「あっ、やばっ!! そろそろ帰らないと、お母さんに怒られる! ってことで、またね! 話の続きは、家帰ってからね! ばいばーーい!!」
黄島「だから、待て言うとる...待てやぁぁぁぁぁ!!」
青海「ぱちくーーーん!!」
黄島「なんやねん!!」
青海「劇団!! 約束だよーー!! 約束破ったら、ぶっ殺す!! わかったね!?」
黄島「とっとと帰れ! んで、親に叱られろ!!」
青海「マジで怒られる! じゃあね~!!」
黄島「......マジで、なんやねん...。つーか、色々と勢いで言いすぎたわ...恥ず......。何してんねん...。」
黄島「でもまぁ、えぇか。また、あいつと舞台に立てるんやし。」
黄島「これから、色々と考えることが増える気ぃしかせぇへんわ、ほんまに...。何してんねん、マジで...。自分で色々と背負って...アホちゃうか...?」
黄島「...なんでワクワクしとんねん、自分は。アホちゃうか? アホなんか? アホやわな。あんなん目標にしとる時点で。」
黄島「...高校では追いつけへんだけど、まだ終わりちゃうぞ。こっからや。舞台上で、お前と同じ景色見るんや。待っとけや、ドアホ。」
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