219 / 330
219話「夏と恋と祭りと花火⑧」
しおりを挟む真っ暗な夜空に、色とりどりの花が咲き誇っている。人々は皆足を止め、打ち上がる花を堪能している。
張間「間宮先輩間宮先輩!」
間宮「うん、綺麗だね。」
張間「はい、すごく綺麗です! でもでも~?」
間宮「......花火の方が、張間さんよりずっと綺麗だよ。」
張間「やだもぉ~.....ん? なにか違くないですか?」
間宮「あ、気づいた?」
張間「おい、このやろう! やっぱり逆だ!逆じゃねぇか! 裁判だ!裁判起こしてやる!」
間宮「花火よりうるさい音出さないでくれる?」
張間「バーン!! ヒュ~~~ババーーン!!」
間宮「周りの人の迷惑になるから、静かにしてなさい。」
張間「ぶぅーー!」
間宮「張間さんは、ほんとうるさいよね。」
張間「なんですか!? うるさい張間さんはダメなんですか!?」
間宮「ダメじゃないよ。見てたら元気になるし、そこが張間さんのいいところだと思うよ。」
張間「えへへ...! でしょでしょ! 張間ちゃんは元気で可愛い子です!」
間宮「西田くんはきっと、元気な張間さんを好きになったんだろうね。ほら、今からでも遅くないよ? 西田くんたちと合流したら?」
張間「ちょっとちょっと! 西田くんの話はダメダメですよ! 今は、私だけを見てなきゃダメですよ♡」
間宮「あー花火綺麗だなぁ。」
張間「このやろう! 怒った!怒りましたよ!」
間宮「だから、静かにしてなさいって。」
張間「ぶーーだ!!」
間宮「......。」
張間「......。」
張間「...ま、間宮先輩。」
間宮「ん? なに?」
張間「ま、間宮先輩は...その...げ、元気な張間ちゃんは...す、好きですか?」
間宮「うん、大好きだよ。」
張間(M)この大好きは、きっと恋愛ではない。そんなことは、わかってる。
張間(M)でも、大好きと言われて、すごくすごく嬉しかった。
張間は間宮の手をギュッと握りしめる。
間宮「ん? なに?」
張間「大好きな張間 彩香ちゃんが、手を繋いであげているんです! 喜んでいいんですよ~!」
間宮「暑くない? 大丈夫?」
張間「それ以外の感想はないのか、このやろう! 間宮先輩、嫌い!!」
間宮「ごめんごめんって。」
張間(M)あぁ、すごくすごく暑い。
張間(M)これが夏の暑さか...。
張間(M)これが、恋の暑さか...。
張間「間宮先輩。」
間宮「なに?」
張間「来年の夏祭り、一緒に行きたいです。」
間宮「ん? 来年?」
張間「来年です。」
間宮「早くない? まだ今年の夏祭りも終わってないよ?」
張間「早くないです。今年は花火の時しか一緒にいれませんでしたから。来年は、一緒に屋台巡って、美味しいものいっぱい食べて、射的とかいろいろいっぱいして...そして、こうやって...。」
張間「...また隣で、一緒に花火見たいんです。」
ギュッと手を握り直す。心臓の鼓動に応えるように、顔が真っ赤に染まっていく。
間宮「張間さん...。」
張間「は、はい...。」
間宮「「恋に恋して恋い焦がれ」8巻のセリフだね。」
張間「......へ?」
間宮「いやぁ、ほんといいよね、あの漫画。あんな引き込まれる物語を書けるなんて...ポテチサラダ先生は、ほんとすごいよ...!」
張間「......。」
間宮「ん? どうしたの、張間さん?」
張間「あ、い、いや...なんでもないです...。」
張間(まさかの漫画と同じセリフ...!? こ、恋は一筋縄ではいかないということか...! というか、なんか恥ずかしいんだけど!!)
間宮「来年かぁ...来年は、僕らどうなってるのかな?」
張間「さ、さぁ、どうなんでしょうね~!? あははは~~!」
張間(間宮先輩、ツッコミはキレキレなのに、こういうのにはすごく鈍感なんだな...。)
張間(...頑張ろ...。)
間宮「ってか、来年の約束を今して、張間さん忘れない?」
張間「わ、忘れないですよ! 絶対に忘れません!」
間宮「ほんとかな?」
張間「本当です!」
間宮「忘れちゃダメだよ。」
張間「は、はい! 間宮先輩も、忘れちゃダメですからね!」
間宮「うん、忘れないよ。多分。」
張間「多分はダメです! 今ここで、忘れないという約束もしてください! さぁ!」
張間(M)今年の夏は、一段と暑いなぁ...。
張間「ねぇ、間宮先輩。」
間宮「なに?」
張間「漫画、部室にありますか?」
間宮「漫画?」
張間「さっき言ってた漫画です。」
間宮「うん、5巻まではあるよ。そのあとは僕が持ってるから、貸そうか?」
張間「はい!お願いします! 約束ですよ!」
間宮「はいはい。今日は約束ごとが多いね。」
張間「そうですね! えへへ~!」
張間(M)毎年見てるはずの花火...今年は、一段と綺麗に見えた。
張間(M)好きな気持ちに気付いて、好きな人が隣にいて...たったそれだけで、世界は大きく変わる。
張間(M)間宮先輩がいるだけで、こんなにも変わる。
張間(M)「ずっとずっと、隣にいれますように。」そんな願いを込めて...。
張間(M)間宮先輩...。
張間「大好きです。」
祭りのフィナーレを飾る大きな花が打ち上がると同時に、ボソッと小さく打ち上がった言葉。
夜空に咲く花に負けず劣らず美しく打ち上がった言葉ーーー小さすぎて、誰にも届くことなくひっそりと姿を消していった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる