なんでも探偵部!

きとまるまる

文字の大きさ
上 下
225 / 330

225話「夏と恋と祭りと花火〜新沼編〜⑥」

しおりを挟む


間宮「...出ないな。咲ちゃん、どこ行ったんだろ?」


 新沼を奪われ、無事かどうかの確認のために通話をかけている間宮。だが、新沼から反応は一切なく、数十分が経過していた。


間宮「まぁ、綾小路くん絡みだから危ない目には遭わないだろうけど...。流石に何かしら連絡ないと心配だなぁ...。」

間宮「...咲ちゃんは、やっぱり優しい子だな。きっと、僕のこと気遣ってくれたんだろうなぁ。」


 新沼と離れ離れになる前にしていた会話を思い出し、呟く間宮。と、優しい新沼からメッセージが届く。

 「ゴミ処理が終わって、とても疲れました。今日は帰ります。とても楽しかったです。ありがとうございました。」


間宮「...心配すべきは、咲ちゃんじゃなくて綾小路くんの方だったか...。」

間宮「まぁ、自業自得...だよね?」


 あははと苦笑いを浮かべながら、送られてきたクマちょのスタンプに反応し、間宮は一人祭り会場をフラフラと歩き始めた。



ーーー



新沼「はぁ、疲れた...。あのクソゴミ野郎...次、私の前に現れたらどうしてやろうか...!」


 ゴミの処理を終えた新沼は、収まらぬイライラと共に帰路を一人で歩いていた。


新沼「...いや、今日は良かったのかもしれない。はぁ...私、何言おうとしてたんだろ...?」

新沼「今言ったって、ダメってわかりきってるのに...。」

新沼「私、どうしたらいいんだろ...?」


 大きなため息を吐き出し歩みを止め、スマホを取り出すためにカバンに手を突っ込む。


新沼「......。」


 ふと手に当たる、とても小さな硬い物体。

新沼は、取り出すはずのものを手に取ることなく、小さな小さな硬い物体を優しく握りしめ、カバンの中から取り出す。


新沼「...今のこの気持ち、傑先輩に相談できたとしたら...なんて言ってくれるかな?」

新沼「...私、どうしたらいいですか? 傑先輩...?」


 取り出したキーホルダーにボソッと語りかける新沼。疑問を受け取ったキーホルダーは答えることなく、ただただジッと新沼を見つめるばかり。短い沈黙が、二人を包み込む。


新沼「...はい、わかりました。深呼吸して落ち着いてみます。」


 まるで答えが返ってきたかのように呟く新沼。

目を閉じ、深く、深く、二度深呼吸をする。


新沼「...はい、落ち着きました。」

新沼「...私らしく、頑張ろうと思います。焦らずに、ゆっくり頑張ります。焦ったって、きっといいことありませんし。」

新沼「バドミントンだってそうです。焦ってやったっていい結果にならない...相手のことをしっかりよく見て、じっくりよく観察して...そして最後に、ガブっと食べちゃうんです。」

新沼「それが、私のやり方なんです。それが、私の戦い方です。」

新沼「だから、焦らず、じっくりとあなたのこと見て...ここだって時に、私の想いを伝えますね。」

新沼「...でも、油断しちゃダメですよ? あなたが隙を見せたら...私、遠慮なく食べちゃいますからね?」

新沼「覚悟しててください、傑先輩。」

新沼「...がぶっ。」

新沼「...なーんてね。」


 キーホルダーを優しく鷲掴み、笑みを浮かべる。
そのまま手を開けることなくカバンの中に突っ込むと、軽い足取りでまた帰路を歩き始めた。






しおりを挟む

処理中です...