なんでも探偵部!

きとまるまる

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231話「夏と恋と祭りと花火〜狗山編〜③」

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 張間探しを終え、屋台を巡っている関たち。
スーパーボールすくいーーー関のそばでボールをいっぱいに入れたお椀が数個プカプカ浮いている。


関「ん? おや、お椀がまたボールでいっぱいになってしまいましたね。おやじ、お椀一つ追加で~!」

狗山「幸先輩、取りすぎっす。スーパーボールほぼ浮いてないっすよ...。」

関「ん? おやおや、いつのまに。」

狗山「というか、ポイもまだ破れてないっすし...どうしたらそんな取れるんすか?」

関「教えましょうか? まずはーーー」

店主「やめろぉぉぉぉぉ!! これ以上、屋台荒らしを増やすなぁぁぁぁ!!」



 射的屋へとやってきた二人。


関「よしよし、あと少しでパーフェクトですね~! 次の的も、よーく狙ってーーー」

狗山「幸先輩! 倒されすぎて、射的屋のおっちゃんの魂が抜けかかってるっす! そろそろやめてあげてくださいっす!!」

関「甘ったれたことを言うな、羽和くん! 目の前の敵は全て倒す...それが私たち、スナイパーだ! そぉりゃ!」

店主「あ、あ...!? ま、また一つ倒れ...あぁ...!」

狗山「幸先輩ぃぃぃ! おっちゃんが...おっちゃんがぁぁぁ! しっかりするっす、おっちゃぁぁぁん!!」




 型抜き屋へとやってきた二人。


関「ふむ...。おやじ、もっと難しい型はないのかい? 物足りないんだが...。」

店主「ば、バカな...!? その龍の型は、未だ誰も成功していない型...! それなのに、なぜそうも簡単に...!?」

関「つまり、これが最高難易度と? やれやれ、今年も型抜きコンプリートしてしまいましたか...。」

店主「くっ...! ち、ちくしょう...! ちくしょぉぉぉぉぉ!!」

狗山「幸先輩、どうしたらそんな複雑な型を綺麗に抜けるんすか? 俺、クリスマスツリーもボロボロに砕けちまうんすけど。」

関「コツを教えてあげましょう。まずはですねーーー」

店主「やめてぇぇぇぇぇ!! 屋台荒らしが二人になったら、俺はもう生きていけないぃぃぃぃ!!」



ーーー



関「いやぁ~やっぱり祭りは楽しいですね~!」

狗山「そうっすね! ってか、幸先輩ほんとすごいっすね! 射的とかボールすくいとか、何やってもめちゃくちゃ上手いっすし...!」

狗山「ってか、どこ行っても「屋台荒らしの関」って言われてたっすけど、毎年荒らしてるんすか?」

関「荒らすなんて人聞きの悪い。私は純粋に楽しんでるんですよ。」

狗山「それなら問題ないっす! あっ、今度また色々とコツを教えて欲しいっす!」

関「いいですよ~。色々と技を覚えて、友達にでも披露して驚かせちゃってくださいね~!」

狗山「あっ、そうだ。幸先輩。」

関「なんですか?」

狗山「話めちゃくちゃ変わるんすけど...新沼って、間宮先輩のこと好きなんすかね?」

関「やっぱり気になっちゃうかい?」

狗山「ま、まぁ...友達だからってのも、変かもしんないっすけど...それなりに。」

関「羽和くんは、どう思うんだい?」

狗山「うーん...あいつ、人の多いところ嫌いっすから、祭りとか行きたがらないやつなんすよ。だから、そこに間宮先輩と行くってことは、そうなのかなぁ...とは思ってるっす。」

関「お祭りに来たのは、綾小路くんを諦めさせるための芝居って可能性も、ないことはないですけどね。」

狗山「あ、そうか。そっちもありっすね。そう考えると、お芝居な気がしてきたっす...。」

関「まぁでも、彼女が自分の嫌いなことしてまで芝居するとは思えませんけどね。」

狗山「そう言われると...じゃあやっぱり、そうなんすかね?」

関「私は、そうだと思いますよ。」

狗山「そうっすか...。あの新沼が、恋...。」

関「残念だね、綾小路くん。」

狗山「そ、そうっすね...可哀想になってきたっす...。でも、そうなるとすごいことになるっすね。」

関「すごいとは?」

狗山「だって、綾小路は新沼のことが好き。でも新沼は間宮先輩のことが好き。で、別のところっすけど、北台は西田のことが好きだけど、西田は彩香のことが好きってなって...俺の周り、一方通行ばっかりになるっす。」

関「確かに。一方通行ばっかりですごいですね~。」

狗山「...あっ。」

関「ん? どうしました?」

狗山「あ、いや...その...。」

関「今言われた恋愛図は、私も把握してますから。大丈夫ですよ。」

狗山「そ、それはよかった...って、心読まないでくださいっす!」

関「羽和くんがわかりやすいのがいけないんですよ。」

狗山「うぅ...!」

関「一体どうなるんでしょうね~? 誰と誰がくっつくのやらですよ。」

狗山「......。」

関「ん? どうしました、羽和くん?」

狗山「え? あ、いや、その...!」

狗山「...ゆ、幸先輩は、いないんすか...? その、えっと...す、好きな人...?」

関「私ですか? 私はですねぇ~...。」

関「...秘密ですよ。」

関「羽和くんは、どうなんですか?」

狗山「へ!? お、俺っすか!? お、俺はいないっす! 全然いないっす!」

関「本当に~?」

狗山「ほ、ほんとっす!」

関「なるほどなるほど、そうですか~。羽和くんって、ほんとわかりやすいですね~!」

狗山「だ、だから、いないっす! 本当にいないっす! いないいないいない!」

関「いない...けど~?」

狗山「...い、い、いないっすけど...その...なんというか......す、すこーーしというか、その...気になる、って言うのかな...? そ、そんな人は...その...。」

関「あっははは~! 羽和くんは素直でいい子ですね~!」

狗山「んなっ!? だ、だだだだって、幸先輩は俺の心見透かすんすもん! 隠してもすぐバレるんすもん!」

狗山「ってか、俺言ったんすから、幸先輩も教えてくださいっす! 早く言ってくださいっす!」

関「えぇ~だって、ミステリアスな男の方がモテるっておばあちゃん言ってましたし~。」

狗山「なんすか、それ!? そんな言い訳、通用しないっすよ! 早く言ってくださいっす!」

関「では、勝負といきましょうか。私に勝つことができたら、お教えしますよ。」

狗山「おっ、いいっすね、それ! 絶対に負けないっすよ!」

関「ではでは、勝負内容を決めましょうか~。」


狗山(M)幸先輩には、好きな人がいない。そう思うと、なぜかホッとしている自分がいた。

狗山(M)幸先輩には、好きな人がいる。そう思うと、なぜかちょっぴり悲しくなる自分がいた。


関「さてさて、今年は何発上がるんでしょうね~?」

狗山「ピッタリ当てなくてもいいんすよね?」

関「ピッタリは流石に無理ですよ。近い方の勝ちです。」

関「でも、もし羽和くんがピタリと数を当てることができたら、秘密を教える以外にもなにかご褒美をあげましょう。」

狗山「マジっすか!? おーし、やるっすよ~!」

関「一度宣言したら、変えるのは無しですよ。」

狗山「わかってるっすよ!」


狗山(M)新沼あいつにからかわれてから、ほんの少しだけ意識してしまって...ただ話して、たまに遊んで...前と何も変わらないこの行動が、なんだかすごく楽しく思えた。

狗山(M)楽しかったことが、もっと楽しくなった。

狗山(M)カッコいいなぁって思ってた人が、さらにカッコよく見えた。


狗山「おぉ~!!」

関「まずは、どデカい一発目!」

狗山「こっから、ガンガン打ち上がるっすよ! 絶対に俺が言った数上がるっす!」

関「数え間違えないように、しっかり見ててくださいよ~!」

狗山「はいっす!」


狗山(M)幸先輩は、俺のことただの後輩だとしか思ってないはず。

狗山(M)そのことに、すごくすごくすごーーく悔しく感じるようになってしまったら...それがきっと...。

狗山(M)俺の、恋の始まりっす。
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