なんでも探偵部!

きとまるまる

文字の大きさ
上 下
259 / 330

259話「昨日の敵は今日の友⑤」

しおりを挟む

 昨日に引き続き、青空が広がり心地の良い風が吹くお昼時。

互いの想い人が同じと分かり、言い争いになった二人を仲直りさせるべくお昼に誘った狗山だったが、張間と新沼は目を合わせることもなく、言葉を交わすこともなく、無言でお弁当を食べ進めている。


狗山「......。」

新沼「......。」

張間「......。」

狗山「......。」

新沼「......。」

張間「......。」

狗山(お、重てぇ...! 空気が、とんでもなく重てぇっすぅぅぅ...! このままじゃ、押し潰される...潰れちまう...! は、早くなんとかしねぇと...!)

狗山(で、でも、どうやって仲直りさせれば...!? 一体、どうすれば...!? と、とりあえず、まずは会話をするっす...! 会話して、話を広げて、そこから仲直りの糸口を見つけるっす...!)

狗山「きょ、今日は、いい天気っすね~!」

張間「......。」

新沼「......。」

狗山「こ、こんな日はやっぱり、屋上で飯食うのが気持ちいいっすよね~! ん~いつもの何倍も、ご飯が美味しく感じるっす~!」

張間「......。」

新沼「......。」

狗山「......え、えっと...に、新沼!」

新沼「なに?」

狗山「お、お前、次の授業はなんすか!?」

新沼「それ聞いて、どうすんの?」

狗山「あ、いや、その...な、なんでもないです...すみません...。」

新沼「......。」

狗山「あ、彩香! 次の授業なんだっけ!?」

張間「現代文。」

狗山「そ、そっかそっか!現文だったっすか~! 昼食った後の現文って、めちゃくちゃ眠くて大変っすよね~!」

張間「そうだね。」

狗山「でも、眠いからって寝ちゃダメっすよ~! 授業は、しっかり受けなきゃっすよ~!」

張間「そうだね。」

狗山「......。」

張間「......。」

新沼「......。」

狗山(つ、続かねぇぇぇぇぇ! 会話が、これっぽっちも続かねぇぇぇ! ってか、こいつら一切続ける気がねぇぇぇぇ! 無理無理無理!もう無理っす! 自分から誘ったけども、帰りたい!今すぐに帰りたい! 帰らないと、押し潰される! この空気に、押し潰さーーー)

新沼「ねぇ、ワンちゃん。」

狗山「へ!? な、なんすか!?」

新沼「ワンちゃんはさ、どっちを応援してくれるの?」

狗山「...へ?」

張間「それ、私も気になる~! 羽和ちゃんは、どっちを応援してくれるの!?」

狗山「え、えっと...な、なんのことっすか~? 俺、全然わかんないっす~!」

新沼「もぉ~ワンちゃんってば~わかってるくせにぃ~!」

張間「とぼけちゃって、可愛い~!」

新沼「うふふ~♡」
張間「あはは~!」

狗山「あ、いや、その、えっと...お、俺は...その...!」

新沼「ワンちゃんは、もちろん私を応援してくれるよね?」

狗山「え!? あ、え、えっと...!」

新沼「応援...してくれるよね?」

狗山「も、ももももちろんっすよ! もちろんもちろん! 応援するっすよ! あ、あはははは~!」

張間「そうやって脅したら、羽和ちゃんが可哀想じゃん。やめてあげなよ。」

新沼「はい? 脅してなんかないけど。」

張間「羽和ちゃんは、もちろん私を応援してくれるよね! ね、羽和ちゃん!」

狗山「あ、え、えっと...!」

張間「...羽和ちゃん?」

狗山「は、はい! 応援します!応援するっす!!」

張間「わ~い! ありがと、羽和ちゃん! 私、頑張る!」

新沼「ワンちゃん、何でもかんでもはいはい言うことが、優しさじゃないよ? ハッキリと言ってあげることも優しさなんだよ?」

張間「何をハッキリ言うんですか~? あっ、私を応援するってことだね! そうそう、もっとハッキリ堂々と言っていいよ、羽和ちゃん!」

新沼「あんたみたいなバカを応援する人なんて、いないわよ。現実見なさいよ。」

張間「その言葉、そっくりそのまま打ち返してやるよ...! あっ、ごめんごめん! 咲ちゃんには、綾小路くんがいるもんね! 綾小路くんなら、きっと応援してくれるというか、綾小路くんでいいじゃん。綾小路くんにしなよ。あんなに愛されてるんだからさ。」

新沼「誰があんなウザいやつ選ぶか。あんただって、西田くんだっけ?に好かれてるんでしょ? よかったね~イケメンに好かれて。羨ましいなぁ~。」

張間「べ、別に私はなんとも思ってないし! それに、西田くんには北台ちゃんがいるので、私が入る隙なんてありません! はい、残念~!」

新沼「ごめん、聞き取れなかったからもう一回言ってくれる? あと、日本語で話して。」

張間「な、なにをぉぉぉぉぉ!?」

新沼「あーうるさいうるさい。こんなうるさいのと部活が一緒なんて、傑先輩も可哀想。」

張間「元気で楽しくていいって言ってくれてますぅ~! ってか、なんですか急に名前で呼んで~! 仲良いアピールですかぁ~?」

新沼「あ、ごめんなさい...! 私たち、二人きりの時は名前で呼び合ってるの。だから、その時のクセが...つい...!」

張間「べ、別に羨ましくもなんともないし! 私も、今日から傑先輩って呼ぶし、彩香って呼んでもらうもんね~! 咲ちゃんだけが特別じゃないから~!!」

新沼「「え、なんで? 張間さんのままでよくない? 呼び方なんて、別になんでも良くない?」って言われるわよ。」

張間「きぃぃ~~!! 否定できないし、そう言ってるのが安易に想像できるのが、またムカつくぅぅぅぅ!!」

狗山「......あ、あ~! そろそろお昼が終わるっすね~! 俺、一足先に帰るーーー」

新沼「何言ってるの、ワンちゃん♡」

張間「お昼は、まだ始まったばかりじゃん♡」

狗山「ひぃ!?」

新沼「そろそろ、答えを聞きたいなぁ~。」

張間「聞きたいなぁ~。」

新沼「ねぇ、ワンちゃん...。」

張間「私と、咲ちゃん...。」

新沼「どっちの恋を、応援してくれるのぉ~♡」
張間「どっちの恋を、応援してくれるのぉ~♡」

狗山「う、うわぁぁぁぁぁぁ!?!?」
しおりを挟む

処理中です...