なんでも探偵部!

きとまるまる

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262話「昨日の敵は今日の友⑧」

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 なんとか二人の言い争いを止め、校門が見えるところまでやって来た関たち。

三人の視線の先では間宮がおり、帰る様子なくスマホをいじっている。


張間「あれ? 間宮先輩、先に帰ったんじゃないんですか?」

関「その理由も、すぐにわかりますよ。」

張間「ん?」

新沼(なんだろう...すごく嫌な予感が...。)

関「君たちに伝えたいこと、二つ目...は、実際に目にしてもらった方がわかりやすいですね。では、どうぞ~。」

 「傑~~!」

張間「ん?」
新沼「え?」


 間宮のことを当たり前のように下の名前で呼ぶ女子生徒ーーー手を振りながら間宮の元まで駆けていくと「おまたせ!」と軽く挨拶をしながら背中を軽く叩く。


 「ごめんごめん! ちょいと遅れた!」

間宮「別に、気にしてないからいいよ。部活、お疲れ様。」

 「うん、ありがと! 傑も、お疲れ様!」

張間「...あの人、どっかで見たことある気が...。」

新沼「部長さん、あの方は...?」

関「彼女は、仲本 紗英なかもと さえ。傑くんの幼馴染で、テニス部に所属してる子です。」

新沼「傑先輩の...幼馴染...。」

張間「テニス部...テニス部と言えば...。」

関「テニス部よりも、張間くんにはこう言った方がわかりやすいと思います。2年Cクラスのぉ~?」

張間「2年...Cクラス...の...。」


 関から想い人へと視線を変える二人。見つめる先の想い人は、幼馴染という単語を聞いたせいかとてもとても楽しそうに話しているように見えてしまう。


新沼「...まさか...?」

張間「いやいやいや、そんなそんなそんな! まさかまさかまさか!!」

関「おや、どうしました? 顔色が良くありませんけど。」

張間「べ、べっつに~! なんでもないですぅ~! な、なんでもないし! 特に何にもないですし!」

新沼「そ、そんな...! う、嘘だ...嘘だ...!」

張間「さ、咲ちゃん、落ち着いて!! ただ仲良いだけだよ! 仲良しなだけ!」

関「まぁ、幼馴染ですからね。家が隣同士の。」

張間「い、家が隣同士...!?」

新沼「ま、漫画の...恋愛漫画の王道設定...!」

張間「咲ちゃん、落ち着いて! 現実を見て、現実を! 漫画と現実を一緒にしちゃダメだよ! 漫画は漫画、現実は現実!」

関「張間くんの言う通り、漫画と現実を一緒にしてはいけませんよ。傑くんが彼女のことが好きで、この高校に来た理由も彼女がいたからだなんて、そんな漫画みたいなことがあるはずがありませんよ~!」

張間「...はい?」

新沼「お、終わった...私の...私の...! あ、あぁ...!」

関「おや、どうしました? 一体何が...あっ!?しまったしまった、言ってしまった! もぉ~幸くんってば、ドジっ子なんだから~! てへっ☆」

張間「間宮先輩に...好きな人...。」

新沼「しかも、幼馴染...。」

関「そういうことです。あなたたちの敵は、隣にいる女の子ではありません。」

関「あそこの、傑くんの手を引いてどこかへと行ってしまった女の子ですよ。」

張間「......。」

新沼「......。」

関「ちなみに、彼女たちは私がプレゼントしたパフェ半額券を手にファミレスデニ~へと行くみたいですが...言わなくてもわかっていると思いますけど、邪魔なんてしちゃいけませんよ? 寄り道せず、まっすぐ帰りなさい。わかりましたね?」

張間「......。」

新沼「......。」

関「お~い? 聞いてます?聞こえてますか? お~い?」

張間「......。」

新沼「......。」

関「まぁ、あなたたちは良い子ですから、邪魔なんて言われなくてもしませんよね? ってことで、私はそろそろ帰りま~す! ではでは、さようなら~!」


 笑顔で手を振る関には一切目もくれず、二人は想い人が消えていった校門前をじっと静かに見つめ続けている。


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