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272話「本当のことほど、本当に?と聞き返したくなる③」
しおりを挟む放課後ーーーそれぞれの部活動が終わった関と牛寅は、校門で待ち合わせ後、会長である猪山の誕生日プレゼントを買いに店へと向かう。
途中途中で荒っぽく言い合う二人だが、険悪な雰囲気になることはなく、なんだかんだで話を途切らせることなく目的地へと向かっていた。
そんな仲が良いのか悪いのかよくわからない二人の背後から、こっそりと後をつける怪しげな影が五つ...。
今本「おいおいおい、マジかよマジかよマジじゃねぇかよ...! あれは確実に、それだろ、おい...!」
五十嵐「だな...! 二人で放課後仲良くご帰宅たぁ...間違いねぇな、これは...!」
青海「まさかまさかだよ...! いつの間に、こんな進んでたの...!?」
黄島「全く気づかんだわ。」
百瀬「私も。」
二人の後をつける、三年の元野球部キャプテンと元演劇部二人と遊部二人。
五人でギュウギュウになりながらも見つからないように、物影に隠れながら数メートル先の二人の様子を、ジッと見つめている。
今本「ってかさ、多くね? 流石に多くね?」
五十嵐「だな。俺も思った。」
青海「こんないるとは、思わなかった。」
黄島「ほんまやで。」
百瀬「ですね。」
今本「とりあえず、なんでここに居るのか理由をどうぞ。俺は、幸のやつこういうこと全然話さない奴だから、気になって気になって...。はい、次。」
五十嵐「幸ちゃん、ノリ悪い時はホント悪いから、遊びに誘う脅し材料として。次。」
青海「幸くんになんかされそうになった時の防衛策として! 次!」
黄島「気になったから。」
百瀬「同じくです。」
今本「なるほどなぁ~。まぁ、理由はどうあれ、俺たちは目的を同じくした、いわば同士だ! 仲良くやっていこうぜ。」
五十嵐「当たり前だろ。ダブルけんちゃんコンビ、仲良くいこうぜ~!」
今本「そういやそうだったな! 俺たち、ダブルけんだったな!」
五十嵐「おいおい、忘れんなよ~! 酷いぜ、相棒~!」
今本「すまんすまん! あっはははは~!」
百瀬「あーあ、笑っちゃった。」
黄島「めんどくさいわぁ、ほんまに。」
五十嵐「え? これもアウトなの?」
青海「今本くんは、ほぼアウトだよ。」
今本「ななみん、その言い方だと俺の存在自体がアウトみたい...な、なんで俺がアウトなんだよ...! ふ、ふふふふ...!」
黄島「決壊すんの早すぎやろ。」
五十嵐「日に日に決壊スピード早くなってない? こいつの笑いのダム。」
百瀬「もう、おちょこくらいのサイズだね。」
青海「それは小さい! 何もせき止められない!」
五十嵐「いやいや、こいつのダムの話なんてどうでもいい! 今は、あっちだ! あれだ、あれ!!」
青海「その通りその通り! バッチリしっかりじっくり見て、いざという時の武器とするのだ!」
五十嵐「証拠もしっかり残そうなぁ~!」
青海「お任せあれ! スマホの準備もバッチリ!」
今本「お前ら...お前らホント酷い...! 酷すぎて...酷すぎて...ふ、ふふふふ...!」
黄島(幸のやつ、閤先輩のこと好きちゃうんか? いつの間に乗り換えたんや?)
百瀬(灯ちゃん、猪山くんのこと好きだったはずだけど...どうしたんだろ?)
今本「いや~しかし、幸のやつ羨ましいぜぇ~! 彼女ができただけでも羨ましいが、相手が灯ちゃんだなんてさぁ~。」
五十嵐「それなぁ~。」
今本「灯ちゃん、口悪いとこは玉に瑕だけど、可愛いしなぁ~。野球部でも結構人気だったんだぜ?」
黄島「まぁ、誰とでも分け隔てなく話すしな。そうゆうとこも、男人気あるポイントやろ。」
五十嵐「おっぱいもでけぇしな。男人気あるのは、納得のーーー」
百瀬「賢也~?」
五十嵐「いだだだだだだ!? 痛い痛い痛い!凪さんってば、痛いって! 肉がえぐれるえぐれるえぐれるぅぅぅぅ!!」
青海「ちょっ!? うるさいってば! 幸くんたちにバレちゃうよ!! もう少しボリューム落として!!」
黄島「お前が一番うるさいわ、ドアホ。」
今本「なんだよ、そのベタなやりとりは? 流石にそんなベタベタなやつは笑わ...わ、笑わ...んふふふ...!」
青海「笑ってるよ!!」
黄島「笑っとるやないか!!」
五十嵐「笑ってんじゃねぇか!!」
今本「だはははは!! そんな同時にツッコむなよ! 面白すぎるだろ、お前ら!!」
青海「どこも面白くないけど!?」
黄島「ほんまめんどくさいわ、こいつ...。」
五十嵐「今度、お笑いの動画見せてどうなるか観察しようぜ。」
百瀬「笑い死ぬんじゃない? 多分。」
五十嵐「遺体処理は任せたぜ、ぱち。」
黄島「誰がするか。自分でせぇや。」
関「......。」
牛寅「何やってんの、あいつら...?」
関「ったく...尾行すんなら、もうちょい静かにしろよな...。」
牛寅「え? なに?」
関「なんでもねぇよ。」
牛寅「そんなわけないでしょ! 何言ったの!? 早く言え!」
関「あいつら、どこ行くんだろうなって言っただけだよ。」
牛寅「最初から言いなさいよ。あんたのそういうとこ、大っ嫌い。」
関「大っ嫌いなやつと一緒にいるのは辛いと思うので、俺はここで帰りますね~。」
牛寅「おいこら、ふざけんな! 帰ったら探偵部潰す! わかってんの!?」
関「ホントわがままだよな、お前...。」
牛寅「わがままじゃない! そういう約束でしょうが!」
関「はいはい。」
牛寅「それより、なんか珍しくない? あのメンツ。」
関「そうか? 意外と仲良いメンツだぞ。」
牛寅「そうなの? 演劇部二人と遊部二人は、そういうイメージあるけど。」
関「ってかさ、遊部はなんで潰さないの? あっちの方が探偵部より酷くない? 遊んでるだけじゃん?」
牛寅「あそこの二人は、しっかりちゃんと活動してるし、勉強だって手は抜いてないからいいの。」
関「俺も勉強に手は抜いてませんが?」
牛寅「あんたは別よ。」
関「私情挟みすぎだろ、お前。」
牛寅「うっさいわ!!」
今本「おいおいおい、また楽しそうに話してますぜ。ホント羨ましいぜ。」
五十嵐「なぁ~。あんな急接近しちゃって...羨ましい限りだぜ!」
青海「ホントだぜ!」
今本「いや、お前らにそれ言う権利ないぞ?」
五十嵐「え? なんで?」
青海「私たち、彼氏彼女いませんけど! ねぇ?」
五十嵐「そうだそうだ! 俺たちは奴と違って、リア充じゃねぇぞーー!」
青海「発言を取り消せー!」
今本「いやいやいや、何言ってんだお前ら? 五十嵐は百瀬ちゃんと、ななみんはじんと仲良いじゃんか。いいよなぁ、めちゃくちゃ仲良い女子がいるって...。俺なんかむさ苦しい男ばっかだぜ? はぁ...自分で言ってて泣けてくるわ...んふふふ...!!」
黄島「笑わんと泣けや。」
百瀬「私たち、そんな仲良く見えてるのかな?」
五十嵐「部活一緒だから、まぁ悪くは見られてないと思うけど...そんなにか?」
今本「もうぶっちゃけちゃうけど、お二組はデキてるって噂ですよ? どうなの?」
五十嵐「え、マジ?」
今本「マジマジ。だから、お前一部から嫉妬されまくりだぞ。」
五十嵐「おい、マジかよ...! その噂を本当にするために...凪ちゃん!」
百瀬「絶対に嫌。」
五十嵐「つーことだ。その噂、嘘です。」
青海「私のとこもだよ! というか、私ぱちくんとお付き合いなんて絶対に無理!!」
百瀬「そう? お似合いだと思うよ?」
青海「無理無理無理! だってぱちくん、怒ってばっかりだもん! もしお付き合いするとなっても、ずっと怒ってきそうだもん! そんなの、嫌!」
黄島「怒るに関しては、全部お前の責任やろがい。つーか、俺だってお前となんてゴメンやわ。」
青海「なんでよ!? 私だよ!? いいじゃん!!」
百瀬「うんうん、お似合いだと思うよ?」
黄島「冗談でもやめてくれや、ほんまに...。」
今本「なんか今さ、俺だけ仲間外れじゃない? 俺だけ仲間外れ感すごくない? あっちはあっちで、こっちはあなたたちで。どうして俺の周りには、むさ苦しい男しかいないんだろうか...?」
百瀬「そんな落ち込まなくてもいいと思うよ、今本くん。」
今本「え?なんで? 俺が元気になる魔法でもあるの?」
百瀬「うん。今本くん、結構女子の間で人気だよ。」
今本「...え?マジ?」
百瀬「うん。」
今本「ほんとに?」
百瀬「ほんとに。」
五十嵐「おいおい、マジかよ...!?」
青海「笑ってばっかりの、このお方が...!?」
黄島「女子の考えることは、ほんまさっぱりやわ。」
百瀬「今本くん、いつも笑ってて明るくて見てると元気になるし、優しくて爽やかだし、野球やってる時は凄くかっこいいしとかなんとか色々言われてるよ。」
五十嵐「お、おい、凪...! それは、本当なのか...!?」
青海「本当なんですか...!?」
百瀬「試合とか見に行ってる子、結構いるよ? 最後の試合とか、私は見てないからわからないけど、守備の時すごくカッコよかったとか、最後の打席泣いたとか、色々言ってた。」
五十嵐「おいおいおい、マジかよ...!!」
青海「モ、モテモテでいらっしゃる...!」
今本「ってか、百瀬ちゃんは見てくれてないのね。俺たちの試合。」
百瀬「ごめんなさい。私、野球...というか、スポーツあまり興味なくて...。」
今本「いやいやいや、謝らないで。責めてるわけじゃないから。人それぞれだからね、好きなもんは!」
今本「いや~しかし、そうかそうか...俺、意外と人気者だったのか...! 全然気づかなかったわ...!」
五十嵐「おい、わかっていると思うが調子に乗るなよ?」
青海「あなたは私たちと同じですよ。抜け駆けは許しませんよ?」
今本「んじゃ、俺はお先に失礼しますので、あとは皆さんで楽しんでくださいませ!」
五十嵐「待てごらぁぁぁ!!」
青海「逃すかぁぁぁぁ!!」
五十嵐「今さっき調子に乗るなって言ったばかりだろうが! 言ったよね、俺!? ちゃんと言いましたよね!?」
青海「言った言った!言ってました! なのにこの男は、調子に乗りましたよ! 許されませんよ!」
今本「いやいやいや、調子になんて乗ってませんよ。ただ、人様の幸せを邪魔するようなことはしない方がいいよね?って、ふと思いましてね。ってことでーーー」
五十嵐「調子乗ってんじゃねぇか、てめぇぇぇぇ!!」
青海「人気者だからって良い気になりやがってぇぇぇ!!」
五十嵐「残念だが、てめぇもこっち側なんだよ! 先に幸せを勝ち取ろうなんて、許されるかぁぁぁ!!」
青海「良い人ぶってんじゃねぇぞ、こんちくしょうめがぁぁぁぁ!!」
黄島「うっさいわぁ、ほんまに。口にガムテでも貼ったろか?」
百瀬「ねぇ、黄島くん?」
黄島「なんや?」
百瀬「ほんとのところ、どうなの?」
黄島「なにがや?」
百瀬「七海ちゃんのこと。」
黄島「まぁ正直、一緒に居ったら楽しいやろうなとは思うけどもやな。」
百瀬「ふふ...! やっぱりそうなんだ。」
黄島「お前はどうなんや、百瀬? あいつ、アホんだらやけども、えぇやつやで?」
百瀬「良い奴なのは、知ってる。黄島くんが知ってる以上に、ね。」
黄島「ほんま、仲良しさんやなぁ~。」
百瀬「人のこと言えないよ、黄島くん。」
黄島「うっさいわ。まぁ、この先どうなるかはわからへんけどもや。俺は応援しとるで。頑張りや、百瀬。」
百瀬「私も、応援してる。頑張ってね、黄島くん。」
今本「人の幸せを邪魔する奴が、幸せになんてなれないだろ~? ってことで、後はーーー」
五十嵐「ふざけんな、てめぇぇぇ!!」
青海「貴様もこちら側じゃぁぁぁ!!」
五十嵐「ダブルけんちゃんは、死ぬまで一緒さぁぁぁぁ!!」
青海「灰色の学園生活は、まだまだ続くんじゃぁぁぁぁい!!」
応援ありがとうございます!
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