なんでも探偵部!

きとまるまる

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279話「どすこいっ!紙相撲!恋のつっぱり編⑤」

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花ノ山「うふふ~やっぱりお天気の良い日にやるお茶会は、とっても楽しいですわね~!」

関「いいですか? 彼のおままごとの設定は「楽しいお茶会」です。この設定を、頭に叩き込んでください。」

張間「うっす!」

津々浦「おっす!」

関「おままごとで一番やってはいけないことは「主催者の意見を否定すること」です。否定してしまった時点で、おままごとの世界は崩壊...主催者の心も落ち込んでしまい、話を聞くどころではなくなります。」

張間「うっす!!」

津々浦「おっす!!」

間宮「今からおままごとやる人たちとは思えないくらい、力強い返事なんですけど。大丈夫なんですか?」

関「主催者の広げる世界を素早く察知し、主催者の求めるものをテンポよく投げ渡す。わかりましたか?」

張間「うっす!!」

津々浦「おっす!!」

関「あなたたちの準備が出来次第、作戦を始めていきます。準備は、いいですか?」

津々浦「おっす!」

張間「いつでもいけやす!」

間宮「なんで紙相撲部じゃないお前ら二人が、どすこいをスッと用意できるんだよ? もしかして、常に持ち歩いてるの、その紙切れ?」

関「では、まずは私が行って道を切り開いてきます。あなたたちは、自分で行けると思ったタイミングで入ってきてください。お任せします。」

津々浦「おっす!!」

張間「うっす!!」

間宮「僕は行きませんからね? わかってますよね?」

関「では...いざ、出陣!!」

花ノ山「五山海森GT~クッキーが焼けたわよ~! お茶と一緒に、召し上がれ♡」

関「コンコンッ!」

花ノ山「あら? おかしいわね...外でお茶会してるのに、扉を叩く音が聞こえたわ?」

間宮「出だしから躓いてんじゃねぇか!! よく自信たっぷりにおままごとを語れたな!?」

関「コ、コンコンドコドン、コンドコドンッ! ウ、ウホホォ!!」

花ノ山「あら、扉を叩く音じゃなくて、ゴ・リラさんが胸を強く叩いてドラミングをしてた音だったのね! ゴ・リラさん、こんにちわ!」

張間「さ、さすが部長だ! 修正力がエグいぜパネェぜ!」

津々浦「あの一瞬で、違和感なく修正していきました...! これが、紙相撲の幻影師の力...! す、すごすぎます...!」

間宮「あれであいつの評価爆上がりすることに、納得できない!!」

花ノ山「ねぇ、ゴ・リラさん! 私、今お茶会をしているんですの! よかったら、ゴ・リラさんもご一緒にどうかしら?」

関「ウホホ! ウホホ~!」

花ノ山「まぁ、そんなに喜んでくださって私嬉しいわ! うふふ!」

関「ウホホ! ウホホホー!」

間宮「おい、なんであいつはウホウホしか言わないの? ついに脳みそ吹っ飛んだのか?」

張間「何言ってるんですか、間宮先輩! 部長のどすこいであるゴ・リラは、ゴリラのどすこいです! つまり、ウホウホしか言えません!」

津々浦「ゴリラが日本語話してたら、怖いですよ! おっす!」

間宮「どうして僕が否定されてるの? どうして僕が少人数派なの? もうわかんない、この世界...。」

張間「あー間宮先輩ったら、その顔...「部長がウホウホ言ってて全然意味がわからない...! こんな時、ウホウホ翻訳機があればなぁ...。」って顔ですね。」

間宮「「こんなバカばかりの世界から早く抜け出して家に帰りたい」って顔です。」

張間「そんなあなたに、はいこちら! テケテケテン!「ウホウホ翻訳機!」」

間宮「ねぇ、話聞いて。」

張間「これを使えば、あら不思議! ウホウホの意味がすぐわかっちゃう! ってことで、早速使いましょう! 部長は、一体なんと言っているのか...楽しみでしょ、間宮先輩!」

間宮「こんなワクワクしないの、生まれて初めて。」

張間「では、いきまーす! ポチッとな!」

関「ウホウホ! ウホウホホ!!」


       \ピロリンッ/

   「ウホウホ! ウホウホホ!!」


張間「あれ?」

間宮「全然翻訳できてないじゃん。」

張間「あれれ? おかしいな...。もう一度、ポチッとな!」

関「ウホウホウホホ! ウホホホウホー!」


       \ピロリンッ/

 「ウホウホウホホ! ウホホホウホー!」


間宮「おい。」

張間「やはりそうでしたか...なるほどなるほど...!」

間宮「一人で納得してないで、早く教えて。」

張間「部長、特に何も考えずにただウホウホ言ってるだけですね。」

間宮「なにやってんだ、あいつは!? というか、なんだこのやりとりは!? アホすぎて今すぐ無かったことにしたい!!」

張間「間宮先輩、これあげます。」

間宮「いるか、そんなガラクタ!!」

張間「ウホ~!」


       \ピロリンッ/

      「そんな~!」


張間「ほら、ちゃんと翻訳されてますよ! ガラクタじゃないですよ、これ!」

間宮「だとしても、使い所が皆無だろうが!! というか、どこで手に入れたんだ、それ!?」

張間「はっ!? 私の勘が「今すぐにおままごとに参加しろ!」と叫び散らかしている! 張間 彩香、いざ出陣ッ!!」

間宮「世界観は「楽しいお茶会」はい、復唱!!」

張間「楽しい楽しいお茶会です! オッケー!行ってきます!!」

間宮「早く行って聞き出してこい! そんで、サッと帰るぞ!!」

花ノ山「うふふ、クッキーもお茶も、とっても美味しいわね~!」

関「ウホウホ!」

花ノ山「ゴ・リラさん、クッキーもお茶も沢山あるから、遠慮せずに食べーーー」

張間「どかーーん!ばこーーん!ちゅどーん!ズドドドド!!」

関「ウホッ!?」

花ノ山「な、なに!? この物騒な音は、一体!?」

張間「げひゃひゃひゃひゃぁぁぁ~! こわす、コワス、全てを壊す!! 俺様の前に立つものは、全て灰と化してやる!! さぁ、灰になりたいのは、どこのどいつだぁぁぁ!?!?」

花ノ山「きゃぁぁぁぁ!? 殺戮のキラーマシン「デス・コーラス」よぉぉぉ!! 逃げてぇぇぇぇ!!」

張間「げひゃひゃひゃひゃぁぁぁ~!!」

間宮「お前は、おままごとしたことがないのか!?!? なにやってんだ、お前は!? 楽しいお茶会だって、復唱させただろうが!! 誰が世紀末のお茶会にしろって言った!? 世界観くらい正しく守れ!!」

張間「おいおいおいぃ~なにやってんだ、おいこら~!」

花ノ山「あ、あなたには関係ないわ!」

張間「そんな悲しいこと言うなよぉ~!げひゃひゃひゃ!」

張間「おっ、こりゃあれだ、お茶会ってやつだな? 楽しそうじゃねぇか!俺様も混ぜてくれよ~!」

花ノ山「誰が、あなたみたいな野蛮な人を招待するものですか! 早く帰ってちょうだい! 早く!」

張間「へっへっへ~! 気が強いやつ、俺様は嫌いじゃねぇぜ? つーことで...!」

花ノ山「きゃぁぁぁ!? は、離してぇぇぇぇ!!」

張間「まずは、てめぇからお茶にしてやるよ!! げひゃひゃひゃ~~!!」

間宮「脅し文句が斬新すぎるだろ!! あと、その下品な笑い方をやめなさい!!」

関「そこまでだ、デス・コーラス!!」

張間「んぁ? なっ...!?俺様のお茶が...!? てめぇ、いつの間に!?」

関「お怪我はありませんか?」

花ノ山「ゴ・リラさん...!」

間宮「おい、ゴリラ!! 日本語喋ってるぞ!! 自分の設定くらい最後まで貫け!!」

関「あいつの相手は、私にお任せください。」

花ノ山「で、でも...!」

関「あなたのような美しい人が、あのような下品なやつの側にいてはいけない。あなたのそばには、この綺麗な花がお似合いですよ。」

花ノ山「ド、ドキッ...! キュン...!」

関「お前の好きにはさせないぞ、デス・コーラス!」

張間「おいおい、王子様気取りかぁ~? いいねいいね、かっこいいねぇ~~!」

張間「いいぜぇ、やってやるよ...! まずはお望み通り...てめぇからお茶にしてやるぜぇぇぇ!!」

関「甘いっ!!」

張間「ひゃっはぁぁぁ!! 次は、こっちだぁぁぁ!」

関「なにっ!? なんて速さだ...!?」

張間「おいおい、カッコつけてた割には、その程度かよぉ~! 期待外れもいいとこだぜぇ!!」

関「まだだ...! 僕の力は、こんなもんじゃないぞぉぉぉぉ!!」


 両者どすこいを手に、激しい戦闘が繰り広げられる。

部室という空間を広々と使い、互いに駆け、拳を、想いをぶつけ合う。


花ノ山「もうやめてぇぇぇ! 私のことで争わないでぇぇぇ!!」


 花ノ山の悲痛な叫びを聞き入れることなく、二人の戦いは激しさを増していく。

自分たちで、空を駆ける効果音を、殴る音を、ダメージを受けるアクションを...見ているものが思わずを飲むほどの、激しい激しいおままごとーーー


関「っ...!」

張間「っ...!」


 徐々に息が上がり、奥底へと眠らせていた高校生というプライドが目を覚まし、二人の顔はみるみる赤く染まっていく。

しかし、二人は動きを止めることなく、おままごとを必死に続ける。


間宮「......。」

津々浦「あ...あぁ...!? あぁぁ...!?」

花ノ山「お願い...お願いだから...! お願いだから、もうやめて! これ以上戦えば、ゴ・リラさんの身体が...! だから...だから、もうこれ以上はーーー」

関・張間「さっさと止めろや、間宮ァァァァァ!!」


 ついに恥ずかしさの限界を迎えた二人は、手にしていたどすこいを放り投げ、黙ってただただ見つめていた間宮の元へと駆けていく。


関「いつまで黙って見てるんですか!? 私たちは、いつまでこんなよくわからないことをしていればいいんですか!? というか、ツッコむところいっぱいあったでしょ!! ツッコんで止めなさいよ!! あなたが止めないと止まれないでしょ、私たち!!」

間宮「止めてたじゃないですか、花ノ山さんが。」

張間「バカか、おめぇは!? アレが止めるのと間宮先輩が止めるのでは、意味が大きく違います!! 全く意味が違います!! 流石の私も、早く止めてくれって思いでいっぱいでしたよ!いっぱいいっぱいでしたよ! 高校生にもなって、なにやってんだ!?」

津々浦「お、おっす...ほんと、その通りです...! 高校生にもなって、あんなことをーーー」

張間「おいおいおい...! なんで君は顔を手で覆っているんだい...? どうして顔を真っ赤にしているんだい...?」

関「というか、どうしてあなた入って来なかったんですか...? 入るタイミング、いっぱいありましたよね...? 私たち、目で沢山合図送りましたよね...? 一回私と目、合いましたよね...?」

張間「間宮先輩は、ツッコミ+どすこい持ってないから、100歩譲って入らなくてもいいとしましょう...! しかし、あなたはどすこいをお持ちであり、さらにさらに紙相撲部の部員ときた...!」

関「これは、紙相撲部の問題...! 私たちが必死に、恥ずかしさに耐えて耐えて頑張っているのに、あなたはただ黙って見ているというのは、おかしいですよねぇ...!?」

張間「おら、さっさとどすこいだせ...!! てめぇもやるぞ、ごら...!」

津々浦「い、いや...! やめて、離して!! 私は、こんなことをやるために紙相撲部に入ったわけじゃーーー」

関「私たちだって同じ気持ちじゃぁぁぁぁ!!」

張間「こんなことするために探偵部に入ったわけじゃないわぁぁぁぁ!!」

津々浦「いやぁぁぁ!? 誰か助けてぇぇぇぇ!!」

間宮「はぁ...紙相撲関連は、ほんと体力使うよ...精神的な意味で...。」

間宮「ねぇ津々浦さん、改めて聞くけど...紙相撲の大会、夏場所が終わってから以外は、なにもわからないんだよね?」

津々浦「お、おっす! 紙相撲の大会、夏場所の三回戦が終わった後に「ド、ドキドキが、収まらないでごわす!!」とかなんとか言って、急にクネクネし始めて戦いに集中できずに準々決勝で敗北したこと以外は、なにもーーー」

張間「おい、てめぇ。」

津々浦「おっす、なんですか!?」

張間「さっき、なんつった?」

津々浦「え?」

張間「さっき、なんつった?」

津々浦「だ、だから、紙相撲の大会、夏場所の三回戦が終わった後に「ド、ドキドキが、収まらないでごわす!!」とかなんとか言って、急にクネクネし始めて戦いに集中できずに準々決勝で敗北したこと以外は、なにもーーー」

張間「なんでそれを言わねぇんだ、てめぇはぁぁぁぁぁ!?!?」


 衝撃の事実にブチギレた張間は、勢いよく津々浦の胸元を掴み上げると、力任せに津々浦を揺さぶる。


張間「何も知りませ~ん!じゃねぇよ!知ってんじゃねぇか!! そうなった原因、丸わかりじゃねぇか!! なんでそれを黙ってた!?なんで私たちにおままごとをさせた!? 言ってみろ、ごらぁぁぁぁ!!」

津々浦「お、おっすぅぅぅ!? すみませんんんんん!!」

張間「すみませんもクソもねぇぞ、ごらぁぁぁぁ!! どういう気持ちで見てたんだ!? 真実を知りながらも語らず、私たちが手のひらでアホみたいに踊り狂う姿を、貴様はどう見てたんだぁぁぁぁ!?!?」

津々浦「あばばばば!? あ、頭がぁぁぁぁぁ!?!?」

張間「他にもあるだろ!? 隠してる真実があるだろ!! おら、言ってみろ!! さっさと言わんかぁぁぁい!!」

津々浦「き、ききき菊さんが、解説として夏場所にいらっしゃてーーー」

張間「ほんまに隠してるもんあるんかいぃぃぃぃぃ!! てめぇはどれだけ私たちをおちょくれば気が済むんじゃ、ボケェェェ!!」

関「張間くん、ストップ!! 気持ちはわかるが、それ以上はいけない! それ以上、津々浦くんの脳をシェイクすれば、とんでもないおバカになってしまう! だからーーー」

張間「バカになるのであれば、なおのことやめるわけがないでしょうがぁぁぁぁ! というか、こいつはすでにバカじゃ、ごらぁぁぁぁぁ!! 平均90も絶対に嘘だろ!! テスト見せてみろやぁぁぁぁ!!」

津々浦「すすすすすすみませんんんんんん! 許してくださいぃぃぃぃ!!」

張間「許されるか、ボケェェェェ!!」
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