なんでも探偵部!

きとまるまる

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289話「ハイリスクハイリターンのリスク部分だけ削り取りたい⑤」

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 張間が不知火に、突撃お昼の訪問!をしてから数日後の放課後。

張間と同じクラスである男子生徒ーーー立花 涼介たちばな りょうすけは、自身が所属している部活動「遊部あそぶ」の部室へと歩みを進めていた。


立花「こんにちわ~。」

五十嵐「おっすぅ~。」

百瀬「こんにちわ、立花くん。」

笹原「こんちわ~!」

暁「ちわ~。」

不知火「......。」

立花「あの、夏帆先輩は大丈夫なのですか? 日に日に元気がなくなっていってる気がするんですけども。」

不知火「うっさい...。」

立花「僕への暴言が「うっさい」の一言だけ...これは、相当重症ですね。」

五十嵐「俺は、夏帆よりもお前のことが心配だよ、立花。」

暁「その判断基準、なに? 聞いてて悲しくなるんですけど。」

立花「僕も自分で言って悲しい気持ちになりました。まぁでも、それだけ普段から暴言吐いてるってことですよ。わかりましたか、夏帆先輩? これからは、少しでいいので優しくしてください。」

不知火「......。」

立花「あの、夏帆先輩ほんとどうしちゃったんですか? さすがに心配なんですけども。」

五十嵐「なんか知らんが、ここ最近探偵部の一年に追われてるらしいぞ。」

立花「探偵部の一年? 探偵部の一年ってことは...張間ちゃんですか?」

百瀬「あら、立花くんはお知り合いなんですね。」

立花「同じクラスなんですよ。まぁそんな話すこともないですけど。なんで張間ちゃんに追われてるんですか?」

笹原「なんかね、探偵部に手鞠先輩から依頼があったみたいでね。」

暁「夏帆とコスプレを~ってことらしい。」

立花「なるほどなるほど。断っているけど、張間ちゃんが引き下がらないって感じですか?」

五十嵐「夏帆の様子見る限りじゃ、そうだろうなぁ。まぁ探偵部としても、受けた仕事を「はい、できませんでした」って言うわけにゃいかねぇもんなぁ。」

立花「張間ちゃんは夏帆先輩の苦手なタイプだろうし、こうなるのも納得です。」

 「かーーーほーーーせーーーんーーーぱーーーーいっっ!!」

不知火「はっ!? こ、この声は...!?」

張間「扉、どーーんっ!! こんにちわこんばんわおはようございます!! なんでも探偵部の一年、張間 彩香ちゃんですっ!! お邪魔いたします!!」

百瀬「あら、噂をすればですね。」

笹原「やっほ~! 張間ちゃん、こんにちわ~!」

暁「おっす~!」

張間「あっ、笹原先輩と暁先輩、こんにちわでございます!!」

五十嵐「どうした? なんか用か?」

張間「はい、用です! 夏帆先輩に用があってきました!」

五十嵐「ですって、夏帆ちゃん。」

不知火「「不知火 夏帆は体調不良のためお帰りになりました」と伝えておいてください。」

五十嵐「ですって、張間ちゃん。」

張間「あっ、そうでしたか。それは失礼しました。では、また日をあらためてお邪魔いたします。失礼しました!」


 勢いよく頭を下げる張間。そして、なにも言うことなく背を向けて部室を出て行く。

部員たちの間に流れる、数秒の沈黙ーーー


張間「って、騙されるかぁぁぁぁい!! 目の前におるじゃろうがい!! そんな見え透いた嘘に引っ掛かるわけないでしょうがぁぁぁ!!」

笹原「す、すごい...すごすぎる、張間ちゃん...!」

暁「なんてノリの良さだ...! あの新喜劇もびっくりのノリの良さだぜ...!」

百瀬「張間ちゃんがいれば、部がさらに盛り上がること間違いなしですね!」

五十嵐「張間ちゃんや、全力で遊ぶことに興味はないかい?」

立花「勝手に勧誘してたら、探偵部の人に怒られますよ?」

 「は、張間さぁぁぁん...!」

笹原「ん? おやおや?」

暁「この声は...。」

間宮「や、やっぱりここにいた...! 夏帆ちゃんの迷惑になるから、部室に突撃はやめなさいって何度も言ってんでしょうが...!」

笹原「やぁやぁ間宮くん、こんにちわ~!」

暁「お前、なんでそんな息荒げてんの?」

五十嵐「おい秋斗、察してやれよ。男が息あげてるってことは、それ即ちーーー」

百瀬「部長~?」

五十嵐「あだだだだ!? 凪さん凪さん、俺まだ何も言っていだだだだだ!?!?腕とれる腕とれる腕とれるぅぅぅぅ!!」

間宮「......。」

笹原「どうぞどうぞ、お気になさらずに~。」

暁「どうして、そんなに息を荒げているんですか~? はい、どうぞ!」

間宮「あ、えっと...張間さん追いかけてたからです。すごく速いから、全力出さなきゃ追いつけなくて...。」

笹原「あぁね。張間ちゃん、足早そうだもんね~!」

暁(全力出しても追いつけてないやん!ってツッコミは、しない方がいいよな?)

張間「さぁ夏帆先輩、観念してコスプレしてください! お願いします!」

不知火「だから、何度も言ってんでしょうが! 私は、絶対にやらない!」

張間「なんでですか!?いいじゃないですか、コスプレくらい! お願いしますお願いします!」

不知火「じゃあ、私の代わりにあんたがやればいいでしょ!」

張間「無理です!あの衣装は、流石に恥ずかしいです!」

不知火「私だって、同じ気持ちだわ! というか、自分ができないことを他人に押し付けるな! さっさと断ってこい!」

張間「嫌です嫌です嫌ですぅぅ! お仕事受けたのに「できませんでした~!」なんて言ったら、探偵部の信用がガタ落ちになっちゃって、仕事が来なくなるじゃないですかぁぁぁ! というか、私は夏帆先輩みたくおっぱい大きくないので、あのコスプレはーーー」

不知火「ななななな何言ってんだ、あんたぁぁぁぁぁ!!」

五十嵐「ほう、おっぱいとな...?」

暁「一体、どのような衣装を着る予定なのか...間宮くん、画像をこちらに。」

五十嵐「我々も、夏帆と同じく遊部の部員...部員の動向を知っておくのもーーー」

百瀬「部長~?」

五十嵐「あぁぁぁぁぁぁ!?!? なにそれなにそれ、なんのツボそれぇぇぇぇ!? 痛い痛い全身が痺れるぅぅぅぅ!! お前、何してぇぇぇぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!? それ以上、そこを押さないでぇぇぇぇ!!」

暁「冬華様ぁぁぁぁ!? 苦しい苦しい、息ができないぃぃぃぃぃ!! ごめんなさいお許しくださいぃぃぃぃ!!」

間宮「......。」

立花「すいません、騒がしくして。こちらはいつものことなので、どうぞお気になさらずに。」

間宮「あ、はい...。」

張間「お願いします、夏帆先輩ぃぃぃ!!」

不知火「寄るな、抱きつくな、さっさと離れろぉぉぉぉ!!」

間宮「張間さん、何度も言ってるけど無理やりは良くないってば! 夏帆ちゃんも嫌がってるでしょ! もうこの話は、終わり! 僕も一緒に手鞠先輩に頭下げに行くからさ。ほら、行こ。」

張間「嫌です嫌です嫌ですぅぅぅ!離してください、間宮先輩ぃぃぃ! ってか、間宮先輩はどっちの味方なんですか!?あなた、探偵部でしょうに! このままでは、なんでも探偵部は仕事できない部活動だって言われるし、手鞠先輩だって無事では済まないんですよ!? いいんですか!?」

間宮「そんなこと言った......た、確かに僕らがダメってなったら、手鞠先輩も危ないんだっけか...?」

張間「そうですそうです! このまま帰ってしまえば、手鞠先輩の命が危険です! ほら、間宮先輩も頭下げてお願いしてください!」

百瀬(夢衣ちゃんの命が危険...?)

笹原(一体、どんな話になってるのやら...?)

不知火「とにかく! 私は何を言われても絶ッッ対にやらないから! さっさと帰れ!」

張間「帰りません! やるって言ってくれるまで、絶ッッッ対に帰りません!!」

百瀬「あらあら、どっちも譲らずですね。」

笹原「私たちができることなら、手伝ってあげたいんだけどねぇ...。」

五十嵐「冬華には、おっぱいが足りねぇもんな。うんうん。」


立花(M)しばらくお待ちください。


五十嵐「よーしお二人さん、一向に話が進まないみたいだし...こういうのはどうだ?」

不知火「は?」

張間「なんですか?」

間宮「というか、大丈夫なんですか...? 顔ボッコボコなんですけど...。」

暁「間宮くん、これが遊部だ。気にするな。」

立花「いつものことなんで、お気になさらず。」

五十嵐「お前さんたちは今、遊部の部室にいる。つーことで、決め事は全て遊部のルールに従ってもらう。」

不知火「なんでそういう話になるんですか?」

五十嵐「お前らぁぁぁ!!遊べぇぇぇぇ! そして、勝者の言うことを聞けぇぇぇぇ!! 揉め事は全て、遊びで決めろぉぉぉぉ!!」

不知火「話を聞け。」

張間「おぉ、いいですねいいですね!シンプルイズベストマンですね!!」

間宮「ベストマンってなんだ、ベストでいいわ。」

張間「その話、乗ったぁぁぁ!! 夏帆先輩、勝負です! 私が負けたら、コスプレのことは諦めます! 綺麗さっぱり、お忘れします! しかーーし、夏帆先輩が負けた場合はーーー」

不知火「やらない。」

張間「え?」

五十嵐「おい夏帆、ちょっとくらい乗ってやれよ。」

不知火「嫌です。そもそも、この勝負を受けて私になんのメリットがあるのよ? 負けた時のデメリットしかないじゃない。勝った時はコスプレしなくていいだけなんて...勝負する価値もないわ。」

 「でしたら、なにかしらのメリットがあれば受けてくださると言うことでよろしいですね?」

百瀬「あっ、幸くん。こんにちわ。」

関「こんにちわ、凪ちゃん。すみませんね、うちの部員が騒がしくしてしまって。」

百瀬「ううん、賑やかで楽しいから気にしてないよ。」

張間「部長、今の今までどこに行ってたんですか!? 大変だったんですよ!?わかってます!? 土下座せい、土下座!!」

関「あなたの尻拭いをしてたんですから、そんな声荒げないでください。」

関「さてさて、無駄話は夏帆くんが嫌いでしょうし...単刀直入にお伝えします。今から行う勝負に、夏帆くんが勝った場合のメリットをお付けいたします。それでしたら、勝負を行なってくださいますね?」

不知火「あ、いや、それは...。」

関「もちろん、付けさせていただく物は、あなたにとてもプラスになるはずです。損は全くないと思いますよ。」

不知火「申し訳ないですが、何をプラスされようと、私はあの衣装は絶対にーーー」

関「夏帆くんって、ゲームが趣味だそうですね?」

不知火「...そ、それがなにか?」

関「9月に2本...10月に1本...さらに11月にもう2本と、欲しいゲームソフトが立て続けに出るそうですね?」

不知火「な、なぜそれを...!?」

関「自らお金を稼ぐ社会人ならばともかく...我々学生という身分は、つねに金欠...。欲しいものがあっても、なかなか手に入れられないのが現状...。夏帆くんは、欲しいゲームソフトを全て購入する予定ですか?」

不知火「ぐっ......!」

百瀬「買いたいものに順位をつけて、下から三つは我慢するそうです...。」

不知火「うっ...!?」

関「そうですか...。でもまぁ、我々は学生です...。学生と金欠は、イコールで結ばれます...仕方ないことです...。」

五十嵐「夏帆に至っては、バイトしてない身...。つまり、お小遣いでやりくりしないといけない...。だから、そんなホイホイゲームソフトなんて、買えるわけがない...。」

関「我慢しなきゃ...。」

五十嵐「我慢しなきゃ...。」

関・五十嵐「我慢、しなきゃ...。」

百瀬「我慢することは、大切なこと! でも、我慢ばっかりじゃ身体に毒! たまには、欲しいものを欲しいと思った時に欲しいの!」

五十嵐「でも、俺たちには金がねぇ! 金がなきゃ、なんもできねぇよ!」

百瀬「バイトよ、バイトをするの!」

五十嵐「そんな簡単に見つかるかよ! それに、バイトは金が手に入るが、時間がなくなる...ゲームをする時間が、ありゃしねぇじゃねぇか! なんのためのバイトだ!? なんのために貯めた金だ!?」

立花「あの、すみません。なんですか、これ?」

笹原「急にミュージカルみたいなの始まったわね。」

間宮(あの二人が、もしや協力者...?)

暁(とっても可愛い...凪先輩...!!)

百瀬「じゃあ、私はどうすればいいの...!? どうしたらいいのよ!?」

五十嵐「我慢するしかねぇよ...! 我慢...するしか...!」

百瀬「そうやって、我慢我慢...我慢ばっかり...! 我慢が大切なのはわかってる...でも...!!」

不知火「ぐっ...うぬぬぬ...!!」

笹原「ありゃりゃ、効いちゃってる効いちゃってる。」

暁「入り込んじゃってますねぇ、夏帆ちゃん。」

関「我慢...しなくていいんですよ。」

不知火「...え?」

百瀬「え!?」

五十嵐「えぇ!?」

関「我慢は、大切なこと...しかし、やりすぎは身体に毒です...毒なのです...。私が、其方の願い...叶えてやろうではないか...!」

不知火「え...? ま、まさか...!?」

百瀬「か、神様...!」

五十嵐「もしかして...!?」

関「夏帆くん...あなたがこの勝負を受け、もし勝ったら...コスプレの話は、なし。さらに...諦めかけているゲームソフト...三本を私がプレゼント致しましょう...!!」

不知火「なっ...!?」

笹原「えぇぇぇ!?」

暁「嘘でしょ!?」

立花「三本も!?」

張間「さすが部長!!」

間宮「僕は絶対に協力しませんよ!!」

関「ご安心を、傑くん。今回は全て、私のポケットマネーですので。私、一年の頃からバイトしてますので、こう見えて懐は潤っているんですよ。」

間宮「あぁよかった...。」

笹原「三本...三本かぁ~!」

暁「三本は、かなりデカいなぁ~!」

立花「ソフト三本新品は、揺らぎますね...!」

不知火「ぐっ...! うぅぅ...!?!?」

笹原「おーおー、立花くんの言うように、揺らいでる揺らいでる。」

暁「しかし、あれだけの条件でも即答ではない...!」

笹原「さぁ、関先輩はどうする...!?」

不知火「ソ、ソフト三本...! でも、負けたら、アレ...! アレは、流石に...!!」

関「仮に負けても、二本はプレゼントしますよ。無理言ってやってもらうことになるので。」

不知火「ぐふぅ!? 負けても、二本...!?」

笹原「あぁぁぁ!? これは効いたぁぁぁぁ!!」

暁「顔面にクリーンヒットォォォ! 夏帆の足元が、揺らぐぅぅぅぅ!!」

不知火「ゲ、ゲームソフト...二本...! でも、あの衣装は、無理...! 絶対に、無理...! 絶対にーーー」

百瀬「あら? 夏帆ちゃんの欲しいソフトランキング3位のソフト、限定版も出るみたいですね。」

五十嵐「どれどれ...あら、ほんとだわ! 通常版と限定版があるみたい! 買うならやっぱり、限定版よね!」

百瀬「でも、限定版はお高いんでしょ~...?」

五十嵐「まぁ!? い、一万円超えてるわ! とってもお高い! こんなの、私たち学生じゃ到底届かないわ!」

百瀬「やっぱり、ここでも我慢よね...。」

五十嵐「こればっかりは、仕方ないわ...。」

関「と、思っているそこのあなた!」

不知火「え...?」

関「ご安心ください! 先ほども言いましたが、私は一年の頃からバイトをしておりまして、貯金はありますありますありあります!」

百瀬「と、いうことは...!?」

五十嵐「もしかして...!?」

関「本日限り!特別に!あなただけ!特別ですよ~!限定版をご購入いたしま~す!!」

百瀬「ま、まぁ!? 限定版!?」

五十嵐「勝負して、勝てばソフト三本! 負けてもコスプレしてソフト二本...うち一つは限定版! す、すご~い!!」

関「今だけ!今だけの特別サービス! この機会を逃すと、もう次はありません!!」

関「と、言うことです。長々と失礼いたしました。」

不知火「......。」

関「で、どうしますか、夏帆くん? 勝負、します?しません? 嫌でしたら嫌とはっきり言ってもらってもーーー」

不知火「やります...。」

関「ん?」

不知火「この勝負...やらせていただきます...!!」


間宮(M)こうして、夏帆ちゃんの説得に成功した僕ら探偵部は、部の威厳を保つために負けられない戦いを始めるのであった。

五十嵐(M)後半へ~続く!

























 







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