なんでも探偵部!

きとまるまる

文字の大きさ
上 下
300 / 330

300話「摩訶不思議な現象、ごくごくたまに起こる件について②」

しおりを挟む

 屋上へと飲み物を買いに来た女子二人は、ベンチに座り購入した紙パックの飲み物を飲んでいる。


張間「全く、咲ちゃんってば...!ダメですよ、人前で異性とベタベタしちゃ!ここは、学校ですよ!学問を学ぶところですよ!そういう行為をするための学校ではありませんよ!」

新沼「ただ話してただけでベタベタ判定されるの?厳しすぎるでしょ。あんたの判定基準、どうなってるの?」

張間「とにかく!今後もし同じ行為をしているところを見かけたら、問答無用で手錠をかけますからね!わかりましたか!?」

新沼「はいはい。じゃあ、彩香ちゃんの見てないところでイチャイチャしますねー。」

張間「それはもっての外じゃい!!」

新沼「ってか、私に注意してくるってことは、もちろん彩香ちゃんはそういった行為はしてないってことだよね? 自分はしてるのに私にだけそうやって言ってきてるわけじゃないよね?」

張間「も、もももももちろんですよ!私は、一切しておりませんとも!」

新沼「もし嘘吐いてたら...言わなくてもわかるよね♡」

張間「すいません、調子乗ってました。本当にすいませんでした。」

新沼「素直でよろしい。でもさ、正直ズルいと思わない?毎日、傑先輩とお話ししてさ。」

張間「思いませーん!だって、同じ部活動だもーん!同じ部活だから、仕方のないことなのでーす!」

新沼「そっか。じゃあ、私も探偵部はいろ~。」

張間「ダメダメいけません!それだけは絶ッッ対にいけません!」

新沼「え、なんでぇ?別によくな~い?」

張間「よくありません!あなたには、バドミントンがあるでしょうに! それに、探偵部に入ったら羽和ちゃんとの勝負はどうするのさ!?」

新沼「別にバド部にいなくても勝負くらいできるわよ。はい、論破~。」

張間「いやいやいや、何をおっしゃいますか! それに、咲ちゃんはバドミントン強いんだし、今辞めるのは絶対にもったいないよ!だから、辞めちゃダメ!わかりましたか!?」

新沼「それ言ったら、彩香ちゃん運動神経めちゃくちゃ良いんだから、文化部より運動部にいた方がいいと思うんだけど?」

張間「そんなそんな!私は全然運動ダメダメ人間ですので、このまま探偵部に居続けますよ!私は絶対に探偵部辞めませんからね!咲ちゃんも、バド部辞めちゃダメ...って、あれ!?いない!? あっ、待て待てこのやろぉぉぉ! 抜け駆けは許さないからなぁぁぁ!」

新沼「ねぇ、暑苦しいからベタベタしないでくれる?」

張間「ベタベタなんてしてません!これは、抜け駆けする悪魔を捕らえてるだけです!正義の行為です!」

新沼「悪魔はあんたでしょ。」

張間「はいぃぃぃ!?私のどこら辺が悪魔なのか、聞きたいんですけど!?」

新沼「全体的に。ってか、階段付近で暴れないでよ。落ちたらどうする気よ?」

張間「落ちませーん!やめて欲しかったら、まず抜け駆けをーーー」


 新沼の忠告を無視して、ギャーギャーと騒ぎまくる張間。不運なことに、新沼の忠告通りに足を滑らせ、階段を踏み外す。


張間「あぁっ...!?」

新沼「え...?」


 ふわっと宙を舞う張間ーーー勢い余って新沼の腕を掴んでしまい、巻き込む形で二人はゴロゴロと激しく階段を転げ落ちていく。


新沼「あ、あいたたた...!」

張間「ちょっと、なにすんのよ!?私、言ったわよね!?落ちたらどうすんのって!?」

新沼「ご、ごめんごめん。まさか本当に落ちるとは...。」

張間「もぉ...。どっちも大した怪我無さそうだからよかったけど...私、許さないから。」

新沼「そ、そんなこと言わずに!許してください!この通り...。」


 違和感を感じた新沼は、言葉を止め張間を見つめる。
互いにじっと見つめ合う二人ーーー本来、視界に入ることがない自身の顔が、不思議なことになぜか視界に映っている。


張間「...え?」
新沼「...あれ?」

張間「......。」

新沼「......。」

張間「...わ、私...新沼 咲...。」

新沼「私は、張間 彩香ちゃん...です...。」

張間「......。」

新沼「......。」

張間「...え、嘘...!うそうそうそ...!?」

新沼「も、ももももしかして、私たち...!?」

張間「入れ替わってるぅぅぅ!?」
新沼「入れ替わってるぅぅぅ!?」

張間「う、嘘でしょ!?嘘だよね!?こんな漫画みたいな展開、嘘でしょ!?嘘だって言って!」

新沼「あなたが私で、私があなた!?なんだ、この展開!?なんなんですか、これは!? と、とにかく、本当に入れ替わってしまったのであれば、お約束のあれをしなければ...!!」


 あわあわと慌てふためく張間を他所に、自身の胸を触り優しく揉み始める新沼。


新沼「おぉ...!これが、咲ちゃんのおっぱーーー」

張間「あんたはなにしてんだ、おい...!!」

新沼「す、すみません...つい...。」

張間「ついじゃないのよ!そんなことしてる場合じゃないでしょ!こんなわけわかんないことが起きてんのに! も、もしかして、夢!?そうだ、これは夢だよね!?じゃなきゃ、こんなわけわかんないことが起こるはずが...!」

新沼「あだだだだだ!?咲ちゃん咲ちゃん、頬つねるならご自身の頬で試してください!!痛い痛い痛いぃぃぃぃ!!」

張間「この痛がり...ゆ、夢じゃないの...? つまり、本当に私たちは...!!」

新沼「入れ替わっちゃったみたいだねぇ~。あはははは~。」

張間「なんであんたはそんな冷静でいられるのよ!? 入れ替わっちゃったのよ、私たち!? 彩香ちゃんが私で、私が彩香ちゃんに! これからどうする気よ!? どう生活していく気!? このままじゃ、私が彩香ちゃんとして...。」

新沼「...咲ちゃん、どうしたの?」

張間「ううん、なんでもない。とにかく、探偵部に戻りましょう!」

新沼「待て待て待て待て、待ちなさいあなた。」

張間「ん?どうしたの、咲ちゃん?」

新沼「もう私に成り代わろうとしていらっしゃる!?先ほどまでの焦りっぷりは、どこに投げ捨てたのですか!?」

張間「何言ってるの?私は、張間 彩香だよ? あなたは新沼 咲で、私が張間 彩香。」

新沼「やめろやめろやめろぉぉぉ!マジで混乱するから!マジでしちゃうから! ってか貴様、何を企んでやがる!?」

張間「なにも企んじゃないわよ。今私は新沼 咲ではなく、張間 彩香...傑先輩にあんなことやこんなことをしても、それは私ではなく張間 彩香がしたことになる...! うふふふ...♡」

新沼「漏れてる漏れてる!よからぬ企みがダダ漏れてるって! 他人を蹴落として自身の評価を上げようだなんて、最低だぞ!最低の行為だぞ、この腹黒ドS女! 私の身体で変なことしようもんなら、間宮先輩の前で全裸になって踊り狂ってやるからな!わかってんだろうな!?」

張間「あんた、もしそんなことしようもんなら...言わなくてもわかってるわよね?」

新沼「も、もぉ~冗談ですよ冗談~!ですから、そんな急にマジトーンにならないでくださいよ~!お、おほほほ~!」

張間「はぁ...とにかく、お互いにバカなことはやめて、元に戻る方法を考えましょう。」

新沼「ですな。どうしましょう?」

張間「何をするにも、まずは周りにバレないよう行動しましょう。このことが周りにバレたら、めんどくさいことになるのは目に見えてる。」

新沼「中身が入れ替わってしまった女子高校生に迫る!!とかいうテレビの特集組まれて、人気者になっちゃうね!」

張間「人気者かはともかく、テレビに出るは否定できないわね...。私は絶対にそんなの嫌。だから、このことは絶対に秘密。わかった?」

新沼「わかっておりますとも。お任せを!」

張間「...改めてみると、なんか違和感すごいわね...。」

新沼「まぁ、あなたが私で私があなたですからね。」

張間「あんた、絶対に変なことしないでよ?」

新沼「それはこっちのセリフでもあるからね? で、どうする?どうやったら、元に戻れると思う?」

張間「...もう一度、階段から落ちてみる?」

新沼「まずはそれしかないよね。よし、やろう。」

張間「うん。」

関「あなたたち、なにしてるんですか?」

張間「いやぁぁぁぁぁ!?」
新沼「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」

関「そんな驚かせるつもりはなかったのですが...申し訳ありません、驚かせてしまって。」

張間「ぶ、ぶぶぶ部長さん!?」

新沼「どうしてここに!?何をしにここに!?」

関「あなたたちの帰りが遅いので、気になって探しに来たんですよ。なにかあったんですか?」

新沼「え、あ、いや!なにもないですよ、なにも!な~んにもございませんとも!ご心配なさらずに~!」

張間「ちょっと...!私はそんな話し方じゃないわよ...!」

新沼「え...?あっ...! な、なーんにもありませんわ~!私、新沼 咲はなにも心配ありませんわよ~!おーっほっほっほ!」

関「...新沼くん?いつの間にお嬢様キャラに路線変更したんですか?」

張間「いえいえ違います違います!え、えっと、今罰ゲームをしておりまして、こんなわけわかんない話し方してるだけでなんですよ~!もぉ~部長さんってば、それくらいのことわかってくださいよ~!ほんと、部長はてばてばの手羽先ですね~!キュピキラン!うふっ!」

関「...あなた、自販機に頭ぶつけました?」

新沼「おーまーえーはーなにしとんじゃぁぁぁい!!」

張間「な、なにって...あなた、いつもこんな感じーーー」

新沼「違うわーー!全然違うわーー! てばてばの手羽先って、なに!?私、一度も言ったことないわ!え!?言ったことないよね、私!? ってか、キュピキラン!うふっ!って、なによ!?私をどんなキャラに仕立て上げたいの!?やめてくれる!?恥ずかしくて、穴にあったら入りたいレベル!!」

張間「そ、それをいうなら、あんただって私のことめちゃくちゃにしようとしてたじゃないの!人のこと言えないじゃない!」

新沼「いや、あれは、その...!咲ちゃんはおとなしいイメージってよく言われてたから...!」

張間「あんたがやってたの、大人しさ全く感じられなかったけど!? やっぱりあんた、めちゃくちゃなことして評価下げようとしてんじゃーーー」

新沼「違う違う違う!そんなことは全く微塵も一ミリも思っておりませぬ!本当です、信じてください!!」

関「あなたたち、大丈夫ですか?」

張間「大丈夫です!」
新沼「大丈夫です!」

関「そうですか。何をしているのかよくわかりませんが、お互いがいいのであれば私は口出ししませんので。私のことはお気になさらずに。」

張間「わ、私たちのことはどうでもいいんですよ! そ、それより部長さ...部長は、ここに何をしに来たんですか!?」

関「あっ、そうでしたそうでした。喜んでください、張間くん!あの傑くんが、ついに我々と一緒に人生ゲームしてくれると!」

新沼「え!?本当ですか!?やった~!」

関「おや、新沼くんも人生ゲームやりたいのですか?」

新沼「ん?...あっ!?」

張間「さ、咲ちゃんってば~!そんなに喜ぶなら、一緒にする~?」

新沼「う、うん~!する~!人生ゲーム大好き~!」

関「では、新沼くん含め四人で人生ゲームやりましょう!人生ゲームは、大人数でやった方が楽しさも倍増ですからね~! ってことなので...。」


 関は笑顔を絶やさぬまま、張間を軽々と担ぎ上げる。


張間「...へ?」

関「さぁ、行きますよ~!傑くんの気が変わらぬうちに~!」

張間「え?あ、ちょっ、待っ...部長さん、待っ...!いやぁぁぁぁ!?」

新沼「部長ぉぉぉぉ!!そのお方は、もっと丁重に扱わないと...お待ちください、部長ぉぉぉぉ!!」
しおりを挟む

処理中です...