なんでも探偵部!

きとまるまる

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314話「何事も準備してる時が一番楽しい④」

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 10月も中旬を迎え、肌寒くなってきた頃ーーー各クラス学園祭の出し物を決め終え、本格的に準備を始め出して数日が経った放課後。
いつもなら誰よりも早く部室へと向かう関も、部室へ向かうことなく校庭でクラスメイトと共に出し物であるダンスの練習を行っていた。

 出し物で喫茶店を行う予定の張間は、クラスでの話し合いを終えたのち、楽しげにスキップをしながら部室へと向かっていた。


張間「あっ、傑先輩!こんにちわ!」

間宮「こんにちわ。話し合いは終わったの?」

張間「はい!少しずつ形になってきてますよ! 今からワクワクドキドキが収まらないぜ!」

間宮「準備でテンション上げすぎて、当日風邪とか引かないでよ?」

張間「そんなおバカなことはしません~だ!張間ちゃんのこと、なんだと思ってるんですか!? ほら、早く部室の鍵開けてください!早く早く!」

間宮「今開けるから、急かさないでよ。」

張間「は~い、張間 彩香ちゃん一番乗り~! 傑先輩、部長は今日も来ませんかね?」

間宮「来ないんじゃない?今日もダンスの練習してると思うよ。」

張間「まぁ、部長も三年生で今年ラストですからね~。学祭にかける想いは人一倍あるんでしょうなぁ~。うんうんうん。」

間宮「......。」

張間「ところで、傑先輩は部室に来てていいんですか?劇するんでしょ?練習は?」

間宮「さっきまで練習してて、今は休憩中。またこの後教室で練習するよ。」

張間「ほうほう、そうなんですか。じゃあ、なんでいちいち部室に来てるんですか? ...あっ、す、すみません!忘れてください!」

間宮「今すごく失礼なこと考えてるでしょ?」

張間「そんなそんな!友達がいなくて居場所がないから...なんて思ってませんよ!おほほほほ~!」

間宮「全部口に出てるぞ、こら。お芝居って思った以上に体力使うからさ、休憩中は寝ようかなと思って。まだ一時間ちょっとくらいしかしてないけど、もうクタクタだよ...。覚えるセリフも多いし...。」

張間「傑先輩、主役ですもんね! いよっ、主役の主役!楽しみにしてますよっ!」

間宮「できれば観にこないでほしいんだけど...。」

張間「なんでそんなこと言うんですか!私、絶対に観に行きますからね!たとえ隕石が降ってこようとも、必ず観に行きます!!」

間宮「そんなことになったらお芝居どころの騒ぎじゃないわ。張間さんは、この後なにもないの?」

張間「ないですよ!今日の話し合いは終わりましたから!」

間宮「そっか。じゃあさ、一つだけお願いしてもいい?」

張間「お願い?」

間宮「僕、今から少し寝るからさ。30分経ったら起こしてくれない?」

張間「もちろん!それくらいでよければ、この張間 彩香にお任せください! どうせ誰も部室に来やしませんからね~。」

間宮「だね。」

張間「おっと!こんなこと言ってたら、部長に怒られちゃう! 傑先輩、今の発言は部長に言っちゃダメですよ!」

間宮「言われなくてもわかってるよ。じゃあ、お願いね。」

張間「お任せください!」

間宮「お任せしました。おやすみなさい...。」

張間「おやすみなさ~い!」


 一つ大きなあくびをすると、間宮はソファーに横たわり、早速気持ち良さそうな寝息を立て始める。


間宮「......。」

張間「...え?もしかして、もう寝たんですか?」

間宮「......。」

張間「傑先輩~?」

間宮「......。」

張間「寝るの、早っ!?そんなに疲れ溜まってるのかな...? お芝居って、そんな疲れそうなイメージないけどな~。あっ、でも覚えることたくさんって言ってたし...私も、テス勉とかちょっとしただけでめちゃくちゃ疲れるし、それと一緒なのかな?」

張間「ふふっ...!お疲れ様です、傑先輩。」

張間「...はっ!?忘れる前に、タイマータイマー!えっと、30分30分...っと!」


張間(M)30分後に起こす。小さな小さな頼まれごと。こんな小さなことが、なんだかとても嬉しかった。

張間(M)いつもいつも、傑先輩には甘えっぱなしで頼りっぱなしで...。だから、そんな人に頼ってもらえるって思ったら、私も信頼されてるんだなぁ~って気持ちになって、すごくすごく嬉しい。

張間(M)大好きな人に、信頼されて頼られて...なんだかとても幸せな気分だ。


張間「あっ、そうだ...!せっかく頼ってもらったんだし...!えへへへ...!」


張間(M)もし、もしもだけど...大好きな傑先輩とお付き合いすることになったとしたら...まだお付き合いというものがどんなものなのかはわからないけど、今みたいに頼って甘えっぱなしではダメだと思う。私も、傑先輩に頼ってもらって、そして甘えてもらえるような存在にならないといけないと思う。お互いがお互いを支え合って、一緒に歩いていかないといけないと思う。

張間(M)今日は、そんな素敵な未来に、一歩...一歩だけだけど、近づいた気がした。だから、こんなに嬉しいんだと思う。幸せなんだと思う。



関(...ん?張間くんのからメッセージ...なんかあったのか?)

 「今、部室で傑先輩が寝ています!だから、もし部室に来るならば、静かにお願いします!」

 「あと、ダンス練習ファイトです!すごく楽しみにしてますよ!!」

関(...いつの間に気の使える少女に成長したんだか。)



張間(M)高校生になって、まだ一年も経ってないけど...いろんなことを学んだ気がする。ほんと、いろーーんなことを。

張間(M)この先も、まだまだ色々とたくさん学んでいくんだなぁって思うと、なんだかドキドキとワクワクが止まらない。すごくすごく楽しみだ。


張間「よし。これで、よし。」


張間(M)大好きな先輩と、部室で二人きり。せっかくの二人きりなんだから、話していたい気持ちもある。

張間(M)でも...こうやって、なにも話さずに、ただ一緒の空間にいるだけっていうのも...意外と、悪くないかもしれない。


 自信満々な表情で扉に一枚の紙を貼り付け、張間は部室へと静かに戻っていく。
紙には、丸々とした可愛らしい文字でこう書かれていた。

 「先ぱいが、ねています!ご用がある方は、静かにノックしてください! なんでも探てい部 張間彩香」
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