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第16話 逸話:神界にてグッとしてギュッとしてビャー
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田中や真理子たちが勇者や聖女の力を借りてインフラの設備に奮闘している頃、女神レグリスに引き連れられた新人女神は、神界の教育施設に叩き込まれていた。
「あなた、いったい今まで何をしてたんですか!」
レグリスの叱責が訓練場に響き渡る。空には雷雲が渦を巻き、神威の余波が空間にざわめきを生む。新人女神は首をすくめ、小さく手を上げて答えた。
「す、すみません……いろいろあって、すっかり忘れてたというか……」
「召喚者を放置した“いろいろ”の内容も後でしっかり聞きますが、それよりまず、帰還の儀すら知らなかったなんて、どういうことですか!」
「う、うぅ……」
レグリスの指先が光を描くと、神界の教官神たちが次々と現れた。錬度の高い神々は厳しい目をして新人女神を見下ろす。空間の温度が下がったような威圧感の中、彼女はひとり、机の前に立たされた。
「召喚とは何か、答えてください」
「え? ええと……他の世界から人を呼ぶ……感じ?」
「“感じ”ではなく理論を答えなさい」
「……えっと、なんか……キラッてして、ピューってして、ビャーって……」
その瞬間、雷が空を裂いた。
「擬音で神術を語るなーッ!」
教官神が机を叩き、新人女神は飛び上がるようにして姿勢を正した。
「いいですか、召喚も帰還も、魂を扱う高位の神術です。神としての責任と理念、それが術の根幹を成します」
「り、理念……」
「まずはそこからです。あなたが何を感じ、なぜ呼んだのか、それを言葉にしてください。それがなければ、還すこともできません」
新人女神はうつむき、しばらく何も言えなかった。けれどやがて、ぽつりと口を開く。
「……あのとき、すごく寂しそうだったんです。ぽつんと漂ってて……。誰にも見つけてもらえない魂だって、わかって……それで、思わず手を伸ばしたんです」
静寂が落ちる。
その言葉に、教官神の一人が静かにうなずいた。
「それでいい。“向き合い、手を伸ばす”――それが祈りだ。召喚とは、本来そうあるべきものだ。あなたは、それを感覚で掴んだのだろう。ならば今度は、言葉にして術式に落とし込みなさい」
新人女神はぎこちなくペンを握り、光の筆で魔法陣を書き始めた。が――
「えっと、この円をグッと回して、こっちをキュッとして……」
「また擬音かァァァッ!」
閃光が走り、魔法陣が爆ぜた。今度は逆転座標が働き、彼女自身が空間の端に吹き飛ばされる。
「イタタタ……!」
「あなたが還ってどうするんです!召喚者を残して帰ってどうするのですか!」
失敗は続いた。光の糸が絡まり、座標がねじれ、神術が空に昇るたびに爆発する。だが、数百回目の試行の中で、確かに何かが変わっていった。
「“呼ぶ”って、たぶん……誰かをちゃんと迎えにいくことなんですね。だから、“還す”のは……その人が帰る場所を信じて送り出すこと……」
「……」
「怖いけど、それでも、ちゃんと送り出してあげないといけない……たぶん、グッてきて……あっ、違う!」
「よく堪えた。よく堪えました!」
その場にいた神々が一斉に拍手する。擬音を口にしかけて踏みとどまった瞬間、明らかに神術の本質が、彼女の中で形を持ち始めていた。
その日、彼女は帰還の儀の第一段階――“召喚の理念理解”をようやく修得した。だが、本当の戦いはこれからである。魂を還す術式の正確な組み立て、座標固定、神界とのリンク……いずれも実戦レベルには程遠い。
「よーし、次は魂をつかんで、ガッと持ち上げて、ギュ――あっ……」
「言うなァァァァァ!!」
雷鳴がまた、空に響いた。
雷鳴の残響が神界から遠ざかる頃――
地上には、また新しい朝が訪れていた。
静かに、しかし確実に、インフラ整備の歩みが進んでいた。
「あなた、いったい今まで何をしてたんですか!」
レグリスの叱責が訓練場に響き渡る。空には雷雲が渦を巻き、神威の余波が空間にざわめきを生む。新人女神は首をすくめ、小さく手を上げて答えた。
「す、すみません……いろいろあって、すっかり忘れてたというか……」
「召喚者を放置した“いろいろ”の内容も後でしっかり聞きますが、それよりまず、帰還の儀すら知らなかったなんて、どういうことですか!」
「う、うぅ……」
レグリスの指先が光を描くと、神界の教官神たちが次々と現れた。錬度の高い神々は厳しい目をして新人女神を見下ろす。空間の温度が下がったような威圧感の中、彼女はひとり、机の前に立たされた。
「召喚とは何か、答えてください」
「え? ええと……他の世界から人を呼ぶ……感じ?」
「“感じ”ではなく理論を答えなさい」
「……えっと、なんか……キラッてして、ピューってして、ビャーって……」
その瞬間、雷が空を裂いた。
「擬音で神術を語るなーッ!」
教官神が机を叩き、新人女神は飛び上がるようにして姿勢を正した。
「いいですか、召喚も帰還も、魂を扱う高位の神術です。神としての責任と理念、それが術の根幹を成します」
「り、理念……」
「まずはそこからです。あなたが何を感じ、なぜ呼んだのか、それを言葉にしてください。それがなければ、還すこともできません」
新人女神はうつむき、しばらく何も言えなかった。けれどやがて、ぽつりと口を開く。
「……あのとき、すごく寂しそうだったんです。ぽつんと漂ってて……。誰にも見つけてもらえない魂だって、わかって……それで、思わず手を伸ばしたんです」
静寂が落ちる。
その言葉に、教官神の一人が静かにうなずいた。
「それでいい。“向き合い、手を伸ばす”――それが祈りだ。召喚とは、本来そうあるべきものだ。あなたは、それを感覚で掴んだのだろう。ならば今度は、言葉にして術式に落とし込みなさい」
新人女神はぎこちなくペンを握り、光の筆で魔法陣を書き始めた。が――
「えっと、この円をグッと回して、こっちをキュッとして……」
「また擬音かァァァッ!」
閃光が走り、魔法陣が爆ぜた。今度は逆転座標が働き、彼女自身が空間の端に吹き飛ばされる。
「イタタタ……!」
「あなたが還ってどうするんです!召喚者を残して帰ってどうするのですか!」
失敗は続いた。光の糸が絡まり、座標がねじれ、神術が空に昇るたびに爆発する。だが、数百回目の試行の中で、確かに何かが変わっていった。
「“呼ぶ”って、たぶん……誰かをちゃんと迎えにいくことなんですね。だから、“還す”のは……その人が帰る場所を信じて送り出すこと……」
「……」
「怖いけど、それでも、ちゃんと送り出してあげないといけない……たぶん、グッてきて……あっ、違う!」
「よく堪えた。よく堪えました!」
その場にいた神々が一斉に拍手する。擬音を口にしかけて踏みとどまった瞬間、明らかに神術の本質が、彼女の中で形を持ち始めていた。
その日、彼女は帰還の儀の第一段階――“召喚の理念理解”をようやく修得した。だが、本当の戦いはこれからである。魂を還す術式の正確な組み立て、座標固定、神界とのリンク……いずれも実戦レベルには程遠い。
「よーし、次は魂をつかんで、ガッと持ち上げて、ギュ――あっ……」
「言うなァァァァァ!!」
雷鳴がまた、空に響いた。
雷鳴の残響が神界から遠ざかる頃――
地上には、また新しい朝が訪れていた。
静かに、しかし確実に、インフラ整備の歩みが進んでいた。
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