神の技術顧問〜異世界インフラ革命記?

夢花音

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15話 瘴気の核。亀裂から漏れる光

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魔法と技術が融合した探査機器を携え、田中と真理子は街の中央広場に設置された古い井戸の縁に立った。

「ここが、このエリアでも最も水脈が集まる場所……つまり、魔脈も集中しているはずよ」

真理子は小さな鈴を取り出し、静かに振る。鈴の音は水面を撫でるように広がり、空中に薄い魔法陣を描いた。透明な光の紋様が井戸の縁を包み込み、ゆっくりと地下深くへと降りていく。

田中は、最新の音響測深装置と神具として与えられた〈レグリス印の聖櫃〉を井戸のそばに並べた。

「こいつがあれば、地下の動きも、普通の地層じゃ捉えきれない禍々しい変化も計測できるはずだ。……よし、起動」

手早く装置を調整し、スイッチを入れる。静かな唸りが広がり、真理子の魔力と共鳴するようにして、井戸の底からさらに深く、地中の奥へと意識が潜り込んでいった。

やがて──

「……何かにぶつかった」

真理子の声がかすかに震えた。井戸のずっと下、地中深くから、紗のような黒い霧──まさしく瘴気──が、ゆっくりと、しかし確かに、溢れ流れているのが見えた。

「これが……“穢れの核”か」

田中は聖櫃の蓋を開け、掌を合わせた。

「……女神レグリス様。どうか俺たちの力を重ねてください。ここに技術と祈りの橋をかける……!」

ふたりは祈りと集中を重ねながら、田中が設計した魔力伝導路(チャネル)を地面に刻み込む。魔力と磁場のような波が放たれ、地下水脈に沿って流れはじめた。真理子の魔法がその道を守るように包み込んでいく。

地の底が、低く鳴った。

地下深くに絡みついていた黒い結晶核が、あたかも脈を打つように震え、抗うように波打つ。空間には無言の圧が満ちた。光が押し返される。瘴気が、必死にそこへ留まろうとしていた。

だが、ふたりの意志は揺るがない。

田中の技術が大地を貫き、真理子の魔力がそれに寄り添い、共鳴する。共に刻んだ導路が輝きを増し、瘴気の核へと伸びていく。

一瞬、空気が弾けた。

──ぱきん。

結晶核に亀裂が走る。そこから、あふれるように浄化の光が漏れ出した。

呻き声のような低い残響が響く。誰かの悲しみが、そこに凝り固まっていたかのようだった。

けれど、それすらも飲み込み、光はすべてを包み込んだ。

ごうん、と大地が小さく揺れる。

瘴気は絡みつくこともなく、力なく流され、浄化の光の中で静かに溶けていく。黒い核は脆く砕け、その破片は水のように澄んだ奔流となって消えていった。そして、全てを洗い流すように、一陣の柔らかな風が広場を吹き抜けた。

「……やった、のかな」

真理子が息を吐いた。その瞬間、井戸の底から、ごぼごぼ、と水の音が聞こえはじめた。

「見てごらん、真理子。水が……透きとおってるよ」

田中が指差す先。井戸水がかつてないほど透明に澄み、きらめいていた。その周囲の空気までもが清らかで、どこか温かい。

ふたりは静かに、しっかりと頷き合う。

「……これで、この街の根っこは浄化できたわね」

「まだやることは山ほどある。でも……突破口は、開いた」

頭上の雲が割れ、一筋の光が差し込む。その光はまるで、天からの静かな答えのように、ふたりと街をそっと照らしていた。

「今度は、隣の町……いや、この大地を全部、清潔にしてあげよう。俺たちにしかできないやり方で」

「うん」

田中と真理子は、新たな使命を胸に歩き出す。

その足音は、まだ見ぬ遠くの土地へ向かう。
いくつもの街に、インフラを広げていく為に。
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