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web版【第一部】おまけ&後日談
回想 ダルガートからの手紙
カイがこの国の文字が読めると気づいたのは、ダルガートの書いたメモがきっかけだった。
三国間での合議が行われていた三日間、カイは一度もダルガートに会わなかった。
というのも元々ダルガートは皇帝陛下のすぐ傍にいて敵から守る筆頭近衛騎士で、カイの護衛をしていたのは相当イレギュラーなことだったらしい。
ちなみにサイードは、身体が鈍らぬように騎士たちが常に行っている訓練や神殿周りの哨戒の傍ら、時間を見つけてはカイに付き添ってくれている。
そのサイードの話では、カハル皇帝は合議の合間を縫ってめったに来れないダーヒル神殿領を精力的に見て回ってるらしく、ダルガートも常にそれに付き従っているらしかった。
(サイードさんとはご飯の時や夜寝る時とかに割と会えてるけど、ダルガートとはほんとにあれっきりだなぁ……)
カルブの儀式で山に登った時は朝から晩までずっと一緒にいたから、こう何日も顔さえ見ていない日が続くとやはり少しばかり気になってしまう。
(なんかあの皇帝陛下の護衛をずっとしてるのは結構大変そうな感じだけど……)
とは言え、カイと違ってあれだけ鍛えた身体をしているし、精神的にも相当強そうな彼にとっては大した事ないのかもしれない。
(でもちょっと、顔くらいは見たいかなぁ)
などと思っていたらどうやらサイードがそのことをどこかでダルガートに話したようで、今朝、サイードの部下である騎士のヤハルがダルガートから預かったと言って小さな包みを持ってきた。
ちょうどサイードと朝食を取っていた時で、カイはその場で包みを開けてみる。すると出てきたのは、いくつかのオレンジ色をした手のひらサイズの果物だった。
「これは珍しい」
サイードがそう呟く。
「そうなんですか?」
「ああ、これは神殿領の西の端にあるセラウというオアシスの辺りにしかない果実だ」
そう言ってサイードはいつも腰に挿してるナイフを器用に操って分厚い皮を剥いた。
「甘くてみずみずしい。美味いぞ」
例の、カイがどうにも弱いあの微笑みを口元に浮かべたサイードが、いつぞやのように剥いた果肉をそのままカイの口元に持ってくる。
(う……、ほんとにウルドたちが近くにいても全然気にしないな……。というか、この程度で一々動揺する僕がおかしいんだろうか?)
互いに想いを伝え合った仲とはいえ、なかなかこの距離感には馴染めない。
とはいえサイードに特別扱いされること自体はとても嬉しい。カイが気恥ずかしく思いながらもおっかなびっくり口を開けると、サイードが皮と同じオレンジ色の果肉を舌に乗せてくれた。確かにメロンのように果汁たっぷりで柔らかくて美味しい。
するとサイードがもう一切れナイフでこそぎ取りながら「……しかし、合議の合間にセラウまで往復しておられるのか……」と呟いた。
「それって遠いんですか?」
「ああ、結構あるな」
(……皇帝陛下ってやっぱり、かなり破天荒な人みたいだな……)
それはともかく、普段は随分と不愛想というか、何を考えてるかわからないような無表情のダルガートがわざわざそんな珍しい果実を自分宛てに言付けてくれたということが嬉しい。
思わずにやつきそうになる顔を引き締めてカイが包んであった布を見ると、何か文字らしき物が書いてあった。
(……ってか、これ文字だよね? なんか記号にしか見えないけど)
カイが首をひねっていると横からサイードが覗き込んできて、かすかに笑った。
「え、あの、なんて書いてあるんです?」
するとサイードがさらに笑みを深くして答える。
「……果たして俺の口から伝えていいことなのか」
「って一体何書いてんだあの野郎?!?」
突然のカイの叫びに驚くサイードから布を隠し、カイは文字らしき記号の羅列をギリギリと睨みつけた。その時、ふいに頭の中に言葉が浮かんできて驚く。
「……あれっ!?」
「どうした、カイ」
「…………あの、これってもしかして」
カイがウルドたちに聞こえないように小声でその言葉を言うと、サイードが目を見開いた。
「カイはこの国の文字が読めるのか」
「……み、みたいです」
と言っても、ただ漫然と文字を見ていても意味はわからない。頭の中でその文字を理解しようと頭だか目だかに微妙に力を籠めると、ふっと言葉の意味が頭に浮かぶような感じだ。
本などのまとまった量をすらすらと読むには恐らく多少の訓練は必要だろう。それでもカイにとってはとてつもない朗報だった。
(うわ、これは大発見だ……! なら、ここ神殿なんだから本とかたくさんありそうだし、読ませて貰えないかな!?)
いい加減なんでもいいから活字が読みたくて読みたくて仕方がなかったカイはオタならではの喜びに打ち震える。
だが、それより何より、カイは大声でダルガートに言ってやりたかった。
(僕がうっかりウルドに「これなんて書いてあるの?」って聞くかもしれないようなところにこんなことを書くな!!!!)
ちなみに果物が包んであったその布には『これは貴方と同じ味がする』と書いてあった。
絶対、間違いなくダルガートは面白がってこれを書いている。
そう確信を持ったカイは真っ赤な顔をでその布をぐしゃぐしゃに握りつぶし、それを見たサイードはそれはそれは楽しそうに笑ってウルドたちをひどく驚かせた。
三国間での合議が行われていた三日間、カイは一度もダルガートに会わなかった。
というのも元々ダルガートは皇帝陛下のすぐ傍にいて敵から守る筆頭近衛騎士で、カイの護衛をしていたのは相当イレギュラーなことだったらしい。
ちなみにサイードは、身体が鈍らぬように騎士たちが常に行っている訓練や神殿周りの哨戒の傍ら、時間を見つけてはカイに付き添ってくれている。
そのサイードの話では、カハル皇帝は合議の合間を縫ってめったに来れないダーヒル神殿領を精力的に見て回ってるらしく、ダルガートも常にそれに付き従っているらしかった。
(サイードさんとはご飯の時や夜寝る時とかに割と会えてるけど、ダルガートとはほんとにあれっきりだなぁ……)
カルブの儀式で山に登った時は朝から晩までずっと一緒にいたから、こう何日も顔さえ見ていない日が続くとやはり少しばかり気になってしまう。
(なんかあの皇帝陛下の護衛をずっとしてるのは結構大変そうな感じだけど……)
とは言え、カイと違ってあれだけ鍛えた身体をしているし、精神的にも相当強そうな彼にとっては大した事ないのかもしれない。
(でもちょっと、顔くらいは見たいかなぁ)
などと思っていたらどうやらサイードがそのことをどこかでダルガートに話したようで、今朝、サイードの部下である騎士のヤハルがダルガートから預かったと言って小さな包みを持ってきた。
ちょうどサイードと朝食を取っていた時で、カイはその場で包みを開けてみる。すると出てきたのは、いくつかのオレンジ色をした手のひらサイズの果物だった。
「これは珍しい」
サイードがそう呟く。
「そうなんですか?」
「ああ、これは神殿領の西の端にあるセラウというオアシスの辺りにしかない果実だ」
そう言ってサイードはいつも腰に挿してるナイフを器用に操って分厚い皮を剥いた。
「甘くてみずみずしい。美味いぞ」
例の、カイがどうにも弱いあの微笑みを口元に浮かべたサイードが、いつぞやのように剥いた果肉をそのままカイの口元に持ってくる。
(う……、ほんとにウルドたちが近くにいても全然気にしないな……。というか、この程度で一々動揺する僕がおかしいんだろうか?)
互いに想いを伝え合った仲とはいえ、なかなかこの距離感には馴染めない。
とはいえサイードに特別扱いされること自体はとても嬉しい。カイが気恥ずかしく思いながらもおっかなびっくり口を開けると、サイードが皮と同じオレンジ色の果肉を舌に乗せてくれた。確かにメロンのように果汁たっぷりで柔らかくて美味しい。
するとサイードがもう一切れナイフでこそぎ取りながら「……しかし、合議の合間にセラウまで往復しておられるのか……」と呟いた。
「それって遠いんですか?」
「ああ、結構あるな」
(……皇帝陛下ってやっぱり、かなり破天荒な人みたいだな……)
それはともかく、普段は随分と不愛想というか、何を考えてるかわからないような無表情のダルガートがわざわざそんな珍しい果実を自分宛てに言付けてくれたということが嬉しい。
思わずにやつきそうになる顔を引き締めてカイが包んであった布を見ると、何か文字らしき物が書いてあった。
(……ってか、これ文字だよね? なんか記号にしか見えないけど)
カイが首をひねっていると横からサイードが覗き込んできて、かすかに笑った。
「え、あの、なんて書いてあるんです?」
するとサイードがさらに笑みを深くして答える。
「……果たして俺の口から伝えていいことなのか」
「って一体何書いてんだあの野郎?!?」
突然のカイの叫びに驚くサイードから布を隠し、カイは文字らしき記号の羅列をギリギリと睨みつけた。その時、ふいに頭の中に言葉が浮かんできて驚く。
「……あれっ!?」
「どうした、カイ」
「…………あの、これってもしかして」
カイがウルドたちに聞こえないように小声でその言葉を言うと、サイードが目を見開いた。
「カイはこの国の文字が読めるのか」
「……み、みたいです」
と言っても、ただ漫然と文字を見ていても意味はわからない。頭の中でその文字を理解しようと頭だか目だかに微妙に力を籠めると、ふっと言葉の意味が頭に浮かぶような感じだ。
本などのまとまった量をすらすらと読むには恐らく多少の訓練は必要だろう。それでもカイにとってはとてつもない朗報だった。
(うわ、これは大発見だ……! なら、ここ神殿なんだから本とかたくさんありそうだし、読ませて貰えないかな!?)
いい加減なんでもいいから活字が読みたくて読みたくて仕方がなかったカイはオタならではの喜びに打ち震える。
だが、それより何より、カイは大声でダルガートに言ってやりたかった。
(僕がうっかりウルドに「これなんて書いてあるの?」って聞くかもしれないようなところにこんなことを書くな!!!!)
ちなみに果物が包んであったその布には『これは貴方と同じ味がする』と書いてあった。
絶対、間違いなくダルガートは面白がってこれを書いている。
そう確信を持ったカイは真っ赤な顔をでその布をぐしゃぐしゃに握りつぶし、それを見たサイードはそれはそれは楽しそうに笑ってウルドたちをひどく驚かせた。
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