月の砂漠に銀の雨《二人の騎士と異世界の神子》

伊藤クロエ

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【第二部】東の国アル・ハダール

66 凪★(ダルガート)

「ハッ、あっ、あっ、んっ」

 太い指を三本も咥え込まされて、お腹の中を掻きまわされている。

「んぐっ」

 奥を抉られて思わず息を呑むけど、どれだけ苦しくても全然気にならない。だって、僕に伸し掛かってじっと僕を見ているダルガートの目が、すごく、すごく、怖いくらいに黒く暗く輝いてる。

「あっ、あっ、ね、え、ダルガートは、……っ、ぼくが、ほしい……っ?」

 ダルガートは何も言わずに、ただ笑った。そのあまりにも獰猛な、獣が今まで隠してた牙を見せつけるみたいな笑みを見れば答えは一目瞭然だった。僕はめちゃくちゃ興奮して思わずため息をつく。

 ああ、すごい、嘘みたいだ。こんなに強くて一人で何でもできて、人の思惑なんてどうでもよさそうな、まさに傲岸不遜って言葉がぴったりくるような大人の男が、僕をこんなにも欲しがってるなんて。

 嬉しくて興奮して涙を滲ませながらダルガートの顔を見上げる。
 まるで捕まえた獲物を頭から食らおうとしているみたいに、自分よりもずっと大きな身体をした獣が僕を組み敷き、圧し掛かっている。僕は身動き一つ取れず、太くて強靭な腕と身体に自由を奪われ両足を広げさせられ一番の急所を露わにされながら、猛々しくそそり勃つ凶器を受け入れようとしていた。

「あ、あ、……っ」

 熱くうねる狭い肉壁を、水滴が岩に滴り穿つように少しずつ、少しずつこじ開けていく。そしてようやく到達したその場所をゆっくりと突かれ、あの血管の浮いた太くて硬いモノを根元まで咥え込まされた。

「…………っぐ…………っ、う、ふ……っ、ん…………っ」

 まるで亀頭の丸みを覚え込ませるように、ダルガートが容赦なく最奥を抉り、すり潰すように突き入れてくる。

「あ、う、ひう、んっ、んぐっ」

 ああ、すごい、すごい、あの、おっきくて、ふとくて、あついのが、ぼくのなかに、はいってるんだ。

「あ、ダ、ダルガート、ダルガート……っ」

 すぐ目の前に覆いかぶさる分厚い肩や胸に手を伸ばしてしがみつく。
 くるしい、くるしい、お腹どころか内臓を押し上げられて心臓まで突き上げられてるみたいに埋め込まれて。
 
「あっ、ひうんっ! んぐ、あうっ」

 ダルガートの身体は鋼のように強靭で、分厚い筋肉に覆われた身体はひたすら重くて、そんな彼に押し潰されそうになりながらもそれが気持ちよくてたまらない。

 サイードさんとのセックスは、すごく大事に愛されてとろとろに溶かされてるみたいだった。でもダルガートに抱かれてるとまさに身も心も征服され、屈服させられてるような気持ちになる。
 正直男として悔しいって気持ちもないわけじゃないんだけど、でも今はそれが気持ちよくてゾクゾクするほど興奮する。ああ、なんかもうめちゃくちゃだ。

「あっ、あっ、もっと、もっと、ダルガート……っ」

 うわ言みたいに何度も、自分でもわけも分からず喘いで懇願する。

 ダルガートの、そしてサイードさんの強さが羨ましい。
 早く大人になりたい。心も身体も両方、もっと早く大きくなって二人のことをちゃんと理解できて支えになれて、そしてできれば頼りにされるような大人の男になりたい。
 そのくせ、もっともっとして欲しいって気持ちが止まらない。奥まで穿って、貫いて、何もかも全部めちゃくちゃに壊して欲しい。

「あっ、やっ、も、イきたい、イきたい……っ」

 今、僕への欲望で暗く光ってるダルガートの目を見ながらイきたくてたまらない。でも奥を突かれる度にジンジンしてお腹が熱くなるけど、さすがにこのまま達することはできそうにない。
 宥めるようにダルガートに口づけられて思わずきゅうっ、とお腹の奥が引き絞られる。するとダルガートが辛そうに眉を顰めた。辛いのかな、そりゃあんまりナカがキツかったりしたらダルガートだって痛いし苦しいよね。

「うんっ、あっ、ね、ダルガート、きもちいい? ダルガートも、きもち、いい……っ?」

 ハアハアと息を荒げながらダルガートの頬を両手で覆って尋ねる。するとダルガートがふっ、と口角を上げて言った。

「……根元まで咥え込まれて、熱い肉に擦られて、まさに涅槃アルイームのごとき心地ですな」
「ん……っ」

 そのまま深く口づけられて、最奥をぐぷっ、と抉られる。その衝撃で視界にパチパチと白い星が飛んだみたいになってぶるっ、と身体が震えた。
 え、今のなに? よくわかんない。でもそれと同時にダルガートが僕を抱きすくめてる腕にぎゅっと力が入って僕の中に精を吐き出した。じわぁ……っとお腹の中に広がる熱に思わず恍惚となる。
 ああ、ダルガート、イったんだ。僕のナカで。

「ダルガート、すき、あ……すごい、まだでてる……どくどく、って……」

 頭がバカになったみたいに呟く僕にダルガートがまた口づける。ちゅ、ちゅ、って、かわいいな、って思った途端ねっとりと舌を絡ませてきて、焦らして、あ~~、やらしい大人のキスだ。
 そんな風にイタズラみたいなキスをしながらもゆるゆるとナカで揺らされて、その度に甘い痺れみたいなのが繰り返し僕の中に広がっていく。おかしいな、僕まだイけてないはずなのに、え、違う? イった?

「ダルガート」

 ふわふわと覚束ない頭で、勝手に言葉がこぼれていく。
 
「会いたかったんだよ、ずっと」

 閉じた目の奥が、心臓が、熱くて痛い。

「僕だけじゃなくて、サイードさんも、ダルガートが必要だったんだよ」

 大事にしていた馬を自分の手で殺さなきゃいけなかったサイードさんの、静かで寡黙な背中を思い出してそう呟く。

「一緒にいてよ」

 僕よりサイードさんより体温の高いダルガートの、覆いかぶさってる重みがたまらなく心地いい。

「頼むから、一緒にいて」

 するとダルガートが僕の額の生え際に口づけて答えた。

「必要な時にお傍にいることができず、申し訳ござらぬ」

 僕はうっすら目を開けてダルガートを見る。

「もう、サイードさんには会った?」
「いや」
「そっか」

 僕はすっかり脱力してしまった腕をなんとか持ち上げて、ダルガートを抱きしめながら呟く。

「ね、僕にこの街を教えてよ。この国の良さを教えて」

 賑やかな街、ずらりと立ち並ぶ白い建物に夕陽の映える白い宮殿。
 アル・ハダールとは夜明けの国という意味だとヤハルが教えてくれた。この街から見る朝日はどんなだろう。

「僕、三人で朝日が見たいな」

 朝焼けに染まる白い街を、夜空に輝く月と星を。砂漠から渡って来る風を感じてサイードさんが飼ってる馬を見て、二人がこの街で好きな場所を教えて貰って。

「神子よ、我が喜びファラーハよ」

 ダルガートの低くて少し擦れたような声が聞こえる。

「貴方がこの国を選び、ここまでたどり着かれた事を、心から感謝申し上げる」
「…………うん、僕も、嬉しいよ」

 ついさっきまで自分の中で荒れ狂ってたわけのわからない感情が、ダルガートのひと言で凪いでいく。

 乾いた砂漠の砂のような匂いのするダルガートの腕の中で、僕は夢も見ずにぐっすりと眠った。
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