月の砂漠に銀の雨《二人の騎士と異世界の神子》

伊藤クロエ

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後日談やおまけなど

後日談 下級神官・ウルドの独白(後)


     ◇   ◇   ◇


 その日の奉仕を終えて交代の鐘が鳴る前に急いで地下の厨房へ向かう。カイはそこで一足先に夕食作りの手伝いをしているはずだった。

「カイ」

 木箱に座って芋の皮を剥いている彼にサイードという名の人のことを話すと、カイの顔がパッと輝いた。

「サイードさんがここに?」
「ああ、そう名乗っていたよ。ダウレシュでカイとダルガート様に会い、よい時を過ごしたのだ、と」

 するとカイの顔にじんわりと笑みが広がる。それを見て私も嬉しい気持ちになった。

「どうやらカイにとっても楽しい思い出だったようだね」
「はい。幕家に泊めてもらって、三人で話をしたり狩りをしたりしました」
「そうだったのか」

 私は素早く辺りを見回して皆がそれぞれの仕事に集中しているのを見ると、カイの手から剥きかけの芋を取って囁いた。

「五の鐘の時に正面の大階段の下にまた来てもらうことになっている。急いで行っておいで」
「え、でも……」
「いいから。ここは私がやっておく」
「……っ、ありがとうございます。ウルド」

 カイは自分のナイフを拭いて腰に差し、一目散に厨房から駆け出して行った。私は何食わぬ顔をして木箱に腰を下ろし、芋の皮を剥いた。

 その後夕食の大鍋を食堂へ運び給仕をしていると、いつの間にかカイが戻ってきていてそれぞれのテーブルにパンとチーズを配っているのが見えた。そして入り口からダルガート様が入ってこられると、カイもすぐに気づいてそちらへと走って行った。恐らく先ほどのサイードという人のことを話しに行ったのだろう。

 確かにカイとダルガート様は共にハリファ・カハルのお供をした間柄だが、神殿内では序列が違う。神武官であるダルガート様の方がずっと上だ。それにダルガート様は一日中ほとんど外におられるし、下級神官のカイは午後の町での奉仕を除けばずっと神殿の中にいる。
 そんな彼らが親しく話をしている姿は当然ながら今まで見たことがない。だから今、食堂の隅でカイが少し興奮したようにダルガート様を見上げて何かを言っている光景がひどく目についた。

 食堂でもダルガート様は同じ神武官たちともほとんど話をせず、まだ神殿に入ったばかりの年若い者はあの冷ややかな眼差しに呑まれて挨拶すらまともにできない者もいるほどだ。なのにカイはジャヒーヤの影からたいそう柔らかな笑みを彼に向け、盛んに何か話しかけている。
 かつてはカイ自身も近づきがたい素振りを見せていたダルガート様を相手に顔を輝かせて話しかけているカイが珍しくてついそちらを見ていると、突然鋭い声が食堂内に響いた。

「何をしている、この不届き者!」

 驚いて皆が一斉にそちらを見る。するとしょっちゅうカイに難癖をつけていたあのガリムが勢いよく近づいてきて、乱暴にカイの腕を引っ張った。そして彼を掴んだままペコペコとダルガート様に頭を下げる。

「不届き者が立場もわきまえず、申し訳ありませぬ。わたくしめからきつく言い聞かせておきますゆえ、どうか今回ばかりはお見逃し下さいませ」

 そして後ろでやや呆然としているカイに向かって眦を吊り上げた。

「貴様、いくらダルガート様に数日お供をさせていただいたとはいえ、馴れ馴れしいのも大概にいたせ! 下級神官の分際で神武官様に自らお声を掛けるとは! まさかお前、ダルガート様までみだりがわしき手管で釣ろうとしているのではなかろうな!?」

 まるでカイが色仕掛けか何かで人を甘言に乗せようとしているような酷い物言いに思わず食って掛かろうとした時、腹の底に響くような太い声が鼓膜を打った。

「下級神官の分際で、と言うのなら貴様は一体なんなのだ」

 それがダルガート様の発した声だと気づいて、その場にいた全員が息を呑む。

「……っい、いえ、私は、この者の先達として……ッ、彼の無作法を……」

 とガリムが言いかけたが、ダルガート様の恐ろしく冷ややかな目に見下ろされて硬直してしまった。さらにダルガート様は、聞いた者を凍り付かせるような声でガリムに言った。

「その手を離せ」
「は……、は……っ!」

 ガリムは完全に呑まれたように怯えながら、カイの腕から手を離す。すると皆が固唾をのんで見守る中、ダルガート様がカイに向かって手を差し出した。
 カイは浴びせられる大勢の視線に居心地悪そうな顔で小さく首を振ったが、ダルガート様が手を引っ込めないのを見て諦めたように一歩近づいた。
 ダルガート様がカイの腕を取り、神官服の袖を押し上げる。

「……痛みは?」
「あー、いえ、大丈夫、です……」
「痣にでもなれば事だ。オドラタムの湿布を当てておくといい。効能はよく知っているはずだ」

 そう言ってなぜかジャヒーヤを被ったカイの額の辺りを見た。するとカイが急に笑いをこらえるような顔をする。

「お心遣いありがとうございます。ダルガート様」

 カイが丁寧に礼を言うと、ダルガート様は珍しく眉を顰めていつものテーブルの席に腰を下ろした。すると固まっていた辺りの空気がパチンとはじけたような気がして、私を含め皆、慌ててそれぞれの持ち場に戻っていった。
 カイは何事もなかったかのように、腰かけたダルガート様の前にスープを配膳する。そしてチーズの乗った種なしパンをそっと置くと、一瞬だけ視線を合わせた。
 たったそれだけのことなのに、とても自然で流れるようなその動きになぜか目を奪われる。

 二人はそれきり言葉を交わすことも顔を見合わせることもなく、ダルガート様は食事を始め、カイは他の神武官の給仕へと戻っていった。
 けれど二人の間に感じたその不思議な空気は、いつまでも私の記憶の片隅に残っていた。


     ◇   ◇   ◇


 翌日、午後の仕事が終わると神官たちは皆食堂に集まり、夕食の準備に入る前の短い休憩をとるためお茶を淹れ始めた。すると町での奉仕から戻ってきたカイがお茶も飲まずに地下の部屋に戻って行くのが見えた。
 何かあったのかと追いかけてみると、部屋でカイが慌てて手足を清めている。

「何かあったのかい?」

 そう尋ねるとカイが「すみません。今日の夕餉の支度の時間、お休みをいただくことになりました」と言う。珍しいこともあるものだと驚いたが、すぐにその理由に思い当たった。

「ああ、旅先でお世話になったというあの人に会いに行くんだね」
「ええ、そうなんです。アルバハル様にお願いしたら神殿長様のお耳に入ったようで、以前お世話になったお礼を兼ねて町を案内して差し上げるように、と……」
「そう。それは良かったね」

 とは言え、今からでは日が暮れるまであと鐘ふたつ分ほどしかない。日没以降はいくら神殿のお膝元とは言え、一目で下級神官と分かる者がうろつくのは危険だ。

「なら早く行った方がいい。あまり遅くならない内に戻ってこないといけないよ」

 慌ただしく身じまいをするカイを手伝ってやると、カイはほんの少し目元を赤らめて「ええと、ダルガート、様が一緒なので大丈夫です」と言った。

「ああ……それならまったくもって安心だね」

 彼の威圧感溢れる顔立ちと体躯を思い浮かべてそう呟くと、カイが小さく吹き出した。私も一緒になって笑いながら洗濯をした綺麗なジャヒーヤを被せてやる。

「……くれぐれもこれは見られないように」

 少し長めの髪に隠れるように耳に嵌められた一対の耳環じかんを見て囁いた。それは私のような者でも一目でわかるほど高価なものだ。白金と思われる地金に小さな宝玉があしらわれている。左耳には若葉のように瑞々しい黄緑色の石が、右耳にはきらめく透明な石が。どちらも大きなものではないが、その輝きは贅沢品にはあまり興味のない私でさえも思わず目を奪われるほどのものだった。
 もしも万が一こんなものを下級神官であるカイが身に着けていることが知られればどんな危険や面倒ごとにまきこまれるか簡単に想像できる。
 ジャヒーヤを深く被せてそう注意すると、カイはなぜかくすぐったそうな顔をして私を見上げ「気を付けます」と言った。

 カイが部屋を出る時に私も一緒についていくことにする。
 カイだけが仕事を休んで外に行くところを誰かに見られたら、彼を口さがなく非難する者もいるだろう。もしそんなことになったら一言言ってやるつもりだった。

 皆が集まる食堂を抜け、石造りの廊下を通って外に出る。外は少しずつ日が傾き始め、もう少しすれば西の空は赤く燃え、町の白い建物やずらりと並ぶ屋台のそこかしこに明かりが灯りだすだろう。

 この一年もエルミランの山頂には雨の女神サフィーナの豊かな恵みがあった。中央神殿には多くの民が小麦やナツメヤシやハミウリ、山羊や羊の肉、彩り鮮やかな布や鉱石に金など、それぞれが今年得たものをラハルに供えに来ている。
 砂漠を渡って来る風が頬をなぶる。その時、なぜか突然、今この世界がこれほど恵みに溢れていることを誰かに感謝したくなった。
 感謝を捧げるのならもちろん太陽神ラハルと雨の神サフィーナにだろう。けれど今私の脳裏に一瞬浮かんだのはまったく別の顔だった。

(……一体、誰だろう)

 とてもよく知っている人のようなのになぜか思い出せない。それがひどくもどかしい。
 だが突然足を止めた私をカイがいぶかしげに見て「ウルド?」と声を掛けて来た。

「いや、なんでもないよ」

 そう首を振ると、少し離れた柱の傍に誰かがいるのに気づく。カイもそちらを見て「あっ」と小さく声を上げた。
 シュマグを目深に被った大きな男と、同じくらい背が高く淡い褐色の肌をした男。ダルガート様と昨日会ったサイードという人だ。きっとカイを迎えに来たのだろう。

 私たち神官はたとえ私用であっても神官の証であるジャヒーヤを脱ぐことはできない。内でも外でも、そしてどの時間でも神に仕える者であることに変わりはないからだ。
 けれど家庭の事情や困窮から幼くして神殿に入る者が多い下級神官の中には世間慣れしていない者も多い。そこにつけ込んで悪さをしようとする者もいないわけではなかった。
 だから彼らがカイを一人で歩かせぬようにここまで迎えに来てくれていたことに安堵する。

「じゃあ行ってきます」

 カイが私を見上げてそう言った。

「気を付けて。楽しんでおいで」
「はい」

 カイが私に頭を下げて駆け出す。いかにも楽しそうに弾む後姿を見送っていると、サイード殿がカイを見てかすかに微笑んだ。そしてカイに何か言葉を掛けると、はじけるようなカイの笑い声がここまで聞こえて来た。いつもの黒革の胴鎧ではなく筒袖の上着に腰帯を結んでいるダルガート様が、そんな彼を守るように立って見下ろしている。
 三人並んだ姿を見て、なぜか突然視界が濡れて歪んだ。

「……えっ?」

 一体なんなんだ、これは。
 慌てて目を擦ったけれど、なぜか涙が後から後から溢れてくる。自分でも訳が分からず袖で顔を拭っていると、カイに気づかれてしまったようで彼が駆け戻ってきた。

「どうしたの、ウルド!?」
「いや、ごめん。なんでもないんだ」

 慌てて顔を取り繕いながら答えると、困ったことにダルガート様たちもやってきてしまった。
 いい年をしてきっと馬鹿のように見えるだろう、と恥ずかしさにうろたえる。だがダルガート様とサイード殿は呆れた様子もなく笑いもしなかった。二人は互いに顔を見合わせると、サイード殿が私に言った。

「カイから聞いた。まるで兄のように頼もしい、信頼できる人が神殿にいるのだと」
「……そうあれたらいいと、私も思います」

 するとカイが手を伸ばして私の手を握った。急いで目尻を拭い、彼を安心させようと笑みを浮かべて言う。

「さあ、行っておいで。時間がもったいないから」
「……うん。行ってきます」

 手を振るカイに頷いて三人を見送った。

 物珍し気にあちこち見ながら歩いていくカイの足取りは軽い。その隣を歩くサイード殿はしなやかな身のこなしがいかにも騎馬の民らしく、またカイを守るように少し後ろを歩きながら辺りを睥睨しているダルガート様ほど頼もしい人はいない、としみじみ思う。

 あるべき場所に、至宝は戻った。

 ふとそんな言葉が心に浮かぶ。
 それが何を意味しているのかはわからない。だがそれで構わない、と私は思う。
 天、しろしめす。世はすべて事もなし。
 私は深い満足を胸に抱いて、明かりが灯り始めた夕闇の町に背を向けた。



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(4月にまた別の話をアップする予定です)
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