月の砂漠に銀の雨《二人の騎士と異世界の神子》

伊藤クロエ

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後日談やおまけなど

【お手紙お礼SS再録】6年後の三人のお話(3)


「お帰りなさい!」

 思わず飛び出すと、馬からひらりと降りたサイードさんが飛びつこうとした僕を押し止めて言った。

「カイも濡れてしまう」

 そんなのいいのに、と言いたかったけれど我慢した。病院も薬もないこの草原で僕が体調を崩せば命に関わる。だから精一杯の思いを込めてサイードさんを見上げた。

「無事で良かったです」
「ああ。山羊も一頭残らず連れて帰れた」

 そういって微笑んだサイードさんの額に濡れた髪が張り付いていて、ひどく色っぽい。思わず見蕩れそうになった僕にサイードさんがさらに笑みを深めた。
 それから山羊たちをなんとか無事だった囲いの中に入れ、馬にも水を飲ませてサイードさんと二人で急いで幕家に戻る。

「濡れた服、すぐ脱がないと」

 そう言って片腕のサイードさんを手伝ってぐっしょりと濡れそぼったフード付きのマントや服を剥がす。そして毛布を被って炉の傍に座った彼に急いで熱いお茶を手渡した。

「ああ、生き返るな」

 しみじみとサイードさんが呟く。僕は渾身の力を込めてサイードさんの足から濡れたブーツを引っこ抜いて布で拭い、中にも乾いた布を詰めて炉からは遠いところに置いた。あまり急激に乾かすと革が縮んでしまうからだ。それを知らずに昔ダルガートのブーツを一足駄目にしてしまった苦い過去がある。
 それから地中に埋めた錫の壺から湯を汲んで盥にあけてサイードさんの前に置いた。一晩中嵐で濡れて赤く冷たくなってしまった彼の足をお湯の中で丁寧にマッサージしてあげると、サイードさんが気持ちよさそうにため息をついた。
 普段はいつも二人に助けられてばかりだから、珍しくサイードさんをお世話できることに少しだけうかれる。

 ようやく人心地ついたサイードさんを置いて幕家から仔山羊たちを出す。親山羊たちのいる囲いに連れていくと、すぐに母山羊目掛けて駆けて行く姿が可愛らしい。
 幕家に戻るとサイードさんが遅い朝食を食べていた。僕は床に敷いた油布を丸めて片側に寄せ、サイードさんの濡れた服やマントを衣桁に広げて乾かす。するとサイードさんに「カイ、おいで」と呼ばれた。そして毛布を広げた彼の懐にぎゅっと閉じ込められる。毛布の下は上半身裸のままで、だから彼の体温がじんじん伝わって来て思わず顔が熱くなった。

「ん……っ」

 ちゅ、ちゅ、と可愛らしい音を立ててサイードさんが僕の目尻や鼻先、そして唇にキスをする。大きな手に身体をまさぐられて僕はすぐにその気にさせられた。
 いつもはアルタワがいるからこんな風に触れ合うことはできない。僕はこみ上げる期待にぞくぞくと身体を震わせた。


     ◇   ◇   ◇


「んぅ、ん、んっ、ぁ……」
(おおきくて、おなか、いっぱいに、はいって、る……)

 サイードさんの逞しい腰に跨り両手で身体を支えながら、ぐらぐらと揺れる頭で必死に呼吸を繰り返した。
 初めの頃は先端を飲み込むだけでも苦しかったのに、今じゃ根本まで全部挿れられないと満足できないのが気恥しい。けれど限界までねじ込まれてぎゅって抱きしめられるとものすごく幸せを感じて涙まで出そうになるから僕も相当な末期だと思う。

 サイードさんは右腕がないから正常位だと片腕であの大きな身体を支えないといけないのが大変そうな気がして、僕は恥ずかしいのを堪えてよくこうして彼の上に跨って彼のモノを受け入れる。
 僕のナカがきゅうっ、となるたびにサイードさんがたまらないって顔をするから、僕もますます興奮して彼のモノを締め付けてしまう。

「……っ、はっ、はっ、……ん……っ」

 大きくて、熱くて、苦しくて、でもそれが気持ちいい。
 アルタワのいないところでこっそりキスくらいはするけれど、こうしてちゃんと繋がれるのは本当に久しぶりのことだ。だから全部挿入するまでサイードさんが指で丁寧に丁寧にナカを開いてくれて、ようやく全部呑み込めた今、散々待たされ焦らされたせいで限界まで昂ってすぐにでも達してしまいそうだった。

「ン……、あ、ぅごいちゃ、だめ……ぇ……っ」

 サイードさんが身じろぎするだけで、ぐり、と最奥を抉られて思わず声が上がる。彼の腰にべったりと座り込んでいるせいで、信じられないほど奥までサイードさんのモノが入り込んでしまっている気がする。膨れ上がった亀頭の先がゴツゴツと当たり、そのたびに視界がチカチカと白く弾けて、今相当ヤバイ状態なのだと思い知らされた。

「カイ、苦しくはないか」

 サイードさんの声が聞こえる。でもその奥に、本当はめちゃくちゃに動いて思う存分僕の中で扱いてイきたいのを必死に堪えてるような熱が見え隠れしていて、そこにまた興奮して奥がひくり、とうねった。

「だ……だいじょう、ぶ……っ、ハッ、ハッ、あっ」

 サイードさんは昔と変わらず僕に優しい。いつでも穏やかで動じなくて、アルタワが思春期に差し掛かってサイードさんに少し反抗的だった時でも本当の父親のように根気よく向き合い、持てる知識や技術のすべてを伝えようと心を砕いている。そんなサイードさんに僕は毎日惚れ直している。
 そんな彼が、今僕を腹に乗せて息を荒げ、全部貪り食ってしまいたいと言わんばかりに目を光らせて僕を見上げている。その目に僕はまるで酒に酔ったみたいにくらくらして、それだけでイってしまいそうだった。

(あ、ダメだ、このままじゃ、あたま、とんじゃいそう)

 僕は間一髪のところでサイードさんの胸に腕をつき、膝立ちしてなんとか腰を浮かす。ソコを突かれてイくと、うまく射精できずにひどく長引くオーガズムに悶絶する羽目になるのだ。それでも自分の中に埋め込まれている圧倒的な質量に僕は恍惚となる。

(もっとほしい、ねつとか、たいおん、とか、それから)
「ひぐっ」

 ビクン! と身体が勝手に跳ねて思いもよらないタイミングでイってしまった。

「あ、あ、あ、」

 ビクビクとナカが激しく痙攣して、その拍子にサイードさんがぐっと眉をしかめて僕の腰を掴む。そして彼のペニスがどくり、と震えて、腹の奥にじわ……とたまらない熱が広がっていった。

「……っあ、…………ぁつぃ……ぃ……」

 あまりの気持ちよさにサイードさんの胸にぐずぐずと倒れ込む。大きな手のひらで労わるように背中を撫でられて、またそれが気持ちよくてため息が漏れた。結局まだ出さずに達してしまったみたいで、まだ中がひくっ、ひくっ、と脈打っている。
 その時、外から馬のいななきが聞こえて来た。ダルガートだ。帰ってきたんだ。

(馬たちを囲いに入れるの、手伝わなきゃ)

 それにさっきサイードさんにしてあげたみたいに温めてあげて、お茶と、着替えと、あたたかいご飯と。あれこれと頭にやるべきことが思い浮かぶのに、余韻がいつまで経っても抜けなくて起き上がれない。するとサイードさんが起き上がって僕の身体に毛布を巻き付けると、そっと額にキスをしてくれた。

「カイはここにいてくれ。すぐに戻る」

 僕も手伝う、と言いたかったけどやっぱり動けない。たった一回達しただけなのに、久しぶりのセックスで頭も身体もどろどろに融けてしまったようだ。
 サイードさんが片手で器用に上衣を羽織って幕家の外に出て行く。僕は目を閉じて深く息を吐き、まだ奥がぞわぞわしている身体を抱きしめて丸くなった。空っぽになってしまったお腹がひどく寂しい。
 やがて幕布が開く気配がして重い足音が聞こえてくる。薄く目を開けると見上げるほどの巨体が覆いかぶさって来ていきなり口づけられた。でもすぐに離れてしまって僕が伸ばした手は空を切ってしまう。

「力が入らぬようですな」

 太い声が降って来て、僕はダルガートが濡れて重くなった服を脱いでいく様子を息を荒げながら見ていた。サイードさん以上に分厚くて重そうな身体に濡れた服がぴったりと張り付いている。盛り上がった筋肉の隆起が浮かび上がっているのが恐ろしく官能的で思わずため息がこぼれた。
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