鋼鉄少女王 タイタンメイデン

鳳たかし

文字の大きさ
37 / 64
第四話

ピュエラ・エクス・マキナ その1

しおりを挟む
 光明院ケイは軽く咳払いした後、静かに語り始めた。

 「僕がタケシくんと知り合ったのは2年前……その日、僕は家の方針に反抗して一人で家を抜け出した」

一人で、という言い回しに引っ掛かりを覚えたキョーコの様子に気付いたルイが補足する。

 「ケイはお嬢様だからね~。いつもは運転手兼ボディガードがついてたの。
  って、正確には『今もついている』んだけどね」

 「え!?ウソ!?そんな人いた!?」

ソワソワとドアを目をやるキョーコに対し、ルイがしれっと答える。

 「実は密かについて来ているのです……」

キョーコはますます慌てて、天井を見て叫ぶ。

 「まさか……上か!?」

大げさな挙動で立ち上がったキョーコを制するルイ。

 「いや、忍者じゃないんだから」

 「っても、どこにいたって話聞かれてたらヤバイじゃん!」

 「あ、それは大丈夫。今はケイの意見を尊重して距離を取って行動しているから、
  こちらから呼び出さなきゃ近づかないよ。
  でも呼び出せば三分以内には飛んでくるから、ためしに呼んでみる?」

ルイの提案をキョーコは全力で拒否しながら手を振った。

 「い、いや、いいですいいです!聞かれてないなら問題ないです!」

ひとまず安堵し、ソファーに腰を下ろしため息をつくキョーコ。

 「はぁ~、しっかし、『お嬢様の付き人』なんてホントにあるんだねぇ……
  四六時中誰かに付け回されてるなんて、私だったら息が詰まっちゃうなぁ~」
 
 「っていうか、2年前の騒動はそれも一因だしね~」

 「そう……当時の僕には、どこに行くにも何をするにも監視が付き、息が詰まりそうだった。
  だからその日、僕は一人でも立派にやれるという事を証明する為こっそり家を抜け出したんだけど……」

手にしたカップを軽く煽った後、テーブルに置くケイ。

 「でも、その日は、なんというか……ついてない日でね、やることなすことすべてがうまくいかなかった。
  道を歩けば財布を落とすし、スマートフォンは充電し忘れ使えず、
  道に迷った人を助けようとして逆に道に迷い、
  捨てられていた子猫を四匹、保護したまではいいが何の解決策も見いだせない……
  やがて日も落ち始めた頃、僕は子猫の入った段ボール箱を抱え、意味もなく街を歩きながら
  唯唯、自分の無力さに打ちのめされていた……
  そんな時、僕の前に颯爽と現れたのが只野タケシくんだったんだよ!」

そこまで行ってからケイは突然押し黙り、誰に言うともなくつぶやいた。

 「いや、さっきはついてない日だったと言ったけど……
  考えてみれば、僕がタケシくんと出会えた運命の日だったのかもしれないな」

ケイが乙女タケシに目を向け微笑むと、
乙女タケシはどう反応したらいいのか分からずに頭をかく。

 「いやぁ、そんな大げさな」

 「そうして、運命の出会いを果たした僕とタケシくんは……」

再び話し始めたケイの言葉を遮るようにルイが声を上げる。

 「ちょい待ち!ケイ、その話長くなるやつ?」

 「いや、出来るだけ手短に話すつもりだよ」

 「ちなみに……後どのぐらいかかる?」

 「ふむ……一時間ぐらいかな?」

 「長いよ!十分長いよ!」

 「そうかな~?あの日のタケシくんの活躍を語るには、むしろ短いぐらいだけどなぁ?」

 「いやいや、トークショー並みに長すぎるって!」

 「け、ケイくん、買い被りすぎだよ~」

ケイの言葉に乙女タケシは顔を真っ赤にしながら照れる。

 「それに……ほら!」

ケイに向けて掲げたルイの腕時計の針は午後7時を指し示していた。

 「そろそろ門限が近づいておりますです」

 「なんと!もうそんな時間かい?」

念のため自分の腕時計も確認するケイ。

 「まあ今すぐ全部話さなきゃいけないってわけじゃないしさ、
  今日の所はひとまずこれでお開きにしときましょ?」

言いながらルイはそそくさと各自のカップを下げると、問答無用で帰り支度を始める。

 「仕方がない……キョーコくん、後の話は日を改めて、という事でいいかな?」

何とも言えない顔で話を聞いていたキョーコがケイの問いにハッとして答える。

 「あ、うん、それでいいんじゃないかな~。今の話で大体わかったし……」

 「ありがとう、キョーコくん」

ケイはスマホを取り出し手早く操作するとタケシとキョーコに言った。

 「それじゃあタケシくん、キョーコくん、今、車を呼んだから一緒に家まで送ろう」



 タケシ達がそんなやり取りをしている一方、
防衛省の一室では、日本政府により新設される『未知の存在に対する新組織』のメンバーの選定が行われていた。
自衛隊や政府内のみならず、様々な職種の中から選ばれたメンバーにより構成される新組織、
極秘に開発された最新鋭の化学装備を使い、常識を超えた事態から国民の生命と生活を守るエリート集団。
その名を─特別科学武装保安警備隊(仮)─という。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...