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第四話
ピュエラ・エクス・マキナ その1
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光明院ケイは軽く咳払いした後、静かに語り始めた。
「僕がタケシくんと知り合ったのは2年前……その日、僕は家の方針に反抗して一人で家を抜け出した」
一人で、という言い回しに引っ掛かりを覚えたキョーコの様子に気付いたルイが補足する。
「ケイはお嬢様だからね~。いつもは運転手兼ボディガードがついてたの。
って、正確には『今もついている』んだけどね」
「え!?ウソ!?そんな人いた!?」
ソワソワとドアを目をやるキョーコに対し、ルイがしれっと答える。
「実は密かについて来ているのです……」
キョーコはますます慌てて、天井を見て叫ぶ。
「まさか……上か!?」
大げさな挙動で立ち上がったキョーコを制するルイ。
「いや、忍者じゃないんだから」
「っても、どこにいたって話聞かれてたらヤバイじゃん!」
「あ、それは大丈夫。今はケイの意見を尊重して距離を取って行動しているから、
こちらから呼び出さなきゃ近づかないよ。
でも呼び出せば三分以内には飛んでくるから、ためしに呼んでみる?」
ルイの提案をキョーコは全力で拒否しながら手を振った。
「い、いや、いいですいいです!聞かれてないなら問題ないです!」
ひとまず安堵し、ソファーに腰を下ろしため息をつくキョーコ。
「はぁ~、しっかし、『お嬢様の付き人』なんてホントにあるんだねぇ……
四六時中誰かに付け回されてるなんて、私だったら息が詰まっちゃうなぁ~」
「っていうか、2年前の騒動はそれも一因だしね~」
「そう……当時の僕には、どこに行くにも何をするにも監視が付き、息が詰まりそうだった。
だからその日、僕は一人でも立派にやれるという事を証明する為こっそり家を抜け出したんだけど……」
手にしたカップを軽く煽った後、テーブルに置くケイ。
「でも、その日は、なんというか……ついてない日でね、やることなすことすべてがうまくいかなかった。
道を歩けば財布を落とすし、スマートフォンは充電し忘れ使えず、
道に迷った人を助けようとして逆に道に迷い、
捨てられていた子猫を四匹、保護したまではいいが何の解決策も見いだせない……
やがて日も落ち始めた頃、僕は子猫の入った段ボール箱を抱え、意味もなく街を歩きながら
唯唯、自分の無力さに打ちのめされていた……
そんな時、僕の前に颯爽と現れたのが只野タケシくんだったんだよ!」
そこまで行ってからケイは突然押し黙り、誰に言うともなくつぶやいた。
「いや、さっきはついてない日だったと言ったけど……
考えてみれば、僕がタケシくんと出会えた運命の日だったのかもしれないな」
ケイが乙女に目を向け微笑むと、
乙女はどう反応したらいいのか分からずに頭をかく。
「いやぁ、そんな大げさな」
「そうして、運命の出会いを果たした僕とタケシくんは……」
再び話し始めたケイの言葉を遮るようにルイが声を上げる。
「ちょい待ち!ケイ、その話長くなるやつ?」
「いや、出来るだけ手短に話すつもりだよ」
「ちなみに……後どのぐらいかかる?」
「ふむ……一時間ぐらいかな?」
「長いよ!十分長いよ!」
「そうかな~?あの日のタケシくんの活躍を語るには、むしろ短いぐらいだけどなぁ?」
「いやいや、トークショー並みに長すぎるって!」
「け、ケイくん、買い被りすぎだよ~」
ケイの言葉に乙女は顔を真っ赤にしながら照れる。
「それに……ほら!」
ケイに向けて掲げたルイの腕時計の針は午後7時を指し示していた。
「そろそろ門限が近づいておりますです」
「なんと!もうそんな時間かい?」
念のため自分の腕時計も確認するケイ。
「まあ今すぐ全部話さなきゃいけないってわけじゃないしさ、
今日の所はひとまずこれでお開きにしときましょ?」
言いながらルイはそそくさと各自のカップを下げると、問答無用で帰り支度を始める。
「仕方がない……キョーコくん、後の話は日を改めて、という事でいいかな?」
何とも言えない顔で話を聞いていたキョーコがケイの問いにハッとして答える。
「あ、うん、それでいいんじゃないかな~。今の話で大体わかったし……」
「ありがとう、キョーコくん」
ケイはスマホを取り出し手早く操作するとタケシとキョーコに言った。
「それじゃあタケシくん、キョーコくん、今、車を呼んだから一緒に家まで送ろう」
タケシ達がそんなやり取りをしている一方、
防衛省の一室では、日本政府により新設される『未知の存在に対する新組織』のメンバーの選定が行われていた。
自衛隊や政府内のみならず、様々な職種の中から選ばれたメンバーにより構成される新組織、
極秘に開発された最新鋭の化学装備を使い、常識を超えた事態から国民の生命と生活を守るエリート集団。
その名を─特別科学武装保安警備隊(仮)─という。
「僕がタケシくんと知り合ったのは2年前……その日、僕は家の方針に反抗して一人で家を抜け出した」
一人で、という言い回しに引っ掛かりを覚えたキョーコの様子に気付いたルイが補足する。
「ケイはお嬢様だからね~。いつもは運転手兼ボディガードがついてたの。
って、正確には『今もついている』んだけどね」
「え!?ウソ!?そんな人いた!?」
ソワソワとドアを目をやるキョーコに対し、ルイがしれっと答える。
「実は密かについて来ているのです……」
キョーコはますます慌てて、天井を見て叫ぶ。
「まさか……上か!?」
大げさな挙動で立ち上がったキョーコを制するルイ。
「いや、忍者じゃないんだから」
「っても、どこにいたって話聞かれてたらヤバイじゃん!」
「あ、それは大丈夫。今はケイの意見を尊重して距離を取って行動しているから、
こちらから呼び出さなきゃ近づかないよ。
でも呼び出せば三分以内には飛んでくるから、ためしに呼んでみる?」
ルイの提案をキョーコは全力で拒否しながら手を振った。
「い、いや、いいですいいです!聞かれてないなら問題ないです!」
ひとまず安堵し、ソファーに腰を下ろしため息をつくキョーコ。
「はぁ~、しっかし、『お嬢様の付き人』なんてホントにあるんだねぇ……
四六時中誰かに付け回されてるなんて、私だったら息が詰まっちゃうなぁ~」
「っていうか、2年前の騒動はそれも一因だしね~」
「そう……当時の僕には、どこに行くにも何をするにも監視が付き、息が詰まりそうだった。
だからその日、僕は一人でも立派にやれるという事を証明する為こっそり家を抜け出したんだけど……」
手にしたカップを軽く煽った後、テーブルに置くケイ。
「でも、その日は、なんというか……ついてない日でね、やることなすことすべてがうまくいかなかった。
道を歩けば財布を落とすし、スマートフォンは充電し忘れ使えず、
道に迷った人を助けようとして逆に道に迷い、
捨てられていた子猫を四匹、保護したまではいいが何の解決策も見いだせない……
やがて日も落ち始めた頃、僕は子猫の入った段ボール箱を抱え、意味もなく街を歩きながら
唯唯、自分の無力さに打ちのめされていた……
そんな時、僕の前に颯爽と現れたのが只野タケシくんだったんだよ!」
そこまで行ってからケイは突然押し黙り、誰に言うともなくつぶやいた。
「いや、さっきはついてない日だったと言ったけど……
考えてみれば、僕がタケシくんと出会えた運命の日だったのかもしれないな」
ケイが乙女に目を向け微笑むと、
乙女はどう反応したらいいのか分からずに頭をかく。
「いやぁ、そんな大げさな」
「そうして、運命の出会いを果たした僕とタケシくんは……」
再び話し始めたケイの言葉を遮るようにルイが声を上げる。
「ちょい待ち!ケイ、その話長くなるやつ?」
「いや、出来るだけ手短に話すつもりだよ」
「ちなみに……後どのぐらいかかる?」
「ふむ……一時間ぐらいかな?」
「長いよ!十分長いよ!」
「そうかな~?あの日のタケシくんの活躍を語るには、むしろ短いぐらいだけどなぁ?」
「いやいや、トークショー並みに長すぎるって!」
「け、ケイくん、買い被りすぎだよ~」
ケイの言葉に乙女は顔を真っ赤にしながら照れる。
「それに……ほら!」
ケイに向けて掲げたルイの腕時計の針は午後7時を指し示していた。
「そろそろ門限が近づいておりますです」
「なんと!もうそんな時間かい?」
念のため自分の腕時計も確認するケイ。
「まあ今すぐ全部話さなきゃいけないってわけじゃないしさ、
今日の所はひとまずこれでお開きにしときましょ?」
言いながらルイはそそくさと各自のカップを下げると、問答無用で帰り支度を始める。
「仕方がない……キョーコくん、後の話は日を改めて、という事でいいかな?」
何とも言えない顔で話を聞いていたキョーコがケイの問いにハッとして答える。
「あ、うん、それでいいんじゃないかな~。今の話で大体わかったし……」
「ありがとう、キョーコくん」
ケイはスマホを取り出し手早く操作するとタケシとキョーコに言った。
「それじゃあタケシくん、キョーコくん、今、車を呼んだから一緒に家まで送ろう」
タケシ達がそんなやり取りをしている一方、
防衛省の一室では、日本政府により新設される『未知の存在に対する新組織』のメンバーの選定が行われていた。
自衛隊や政府内のみならず、様々な職種の中から選ばれたメンバーにより構成される新組織、
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