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レヴェント編

6.違和感

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 呼び出された四人の異界人、勇者たちは凄まじい力を用いて魔族を撃退していくがそれでも尚、圧倒的な力を持つ魔王には敵わず、命を懸けて魔王を封印するという形で戦争は終結した。
 200年、現在に至るまで魔王軍の残党たちによる報復活動による小さな紛争は度々起きているが、年々その数を減らし、ここ十数年に至ってはほぼゼロという形にまで落ち着いていた。
 しかし、最近になり再び魔王軍の活動は再開され、各国で魔王軍の襲撃が相次いでいる。
 そのことから察せられるに、ここ数年中に魔王は――


 「魔王は復活する……その身に受けた封印を解き、再び人の世に厄災を振り撒こうとしているのだ……」
 アンドリュオの言葉を聞き、クラスメートたちがざわつき周囲にいる重鎮達の顔が重く暗いものへと変わる。重鎮達の様子を見れば、この国に、この世界において魔王がどれだけ畏怖された存在なのか理解できる。
 まあ、定番的なシュチュエーションだよな、魔王の復活。
 先の話で周囲の様子が少し暗くなる中、俺は一人冷静に思考を回していた。
 「この事実を知る者は少数。私を含めここにいる者、そして他国でも限られた者しか知りえぬ情報だ」
 そう言うアンドリュオの言葉になるほど、と頷いた。
 先の歴史を知れば当然の処置であった。
 魔王復活という情報を制限するのは、魔王がこの国にとって、いや、この世界にとってどれだけの存在なのかを考えれば分かる。安易に国民に情報を開示し、混乱を招くことはあまり良い選択とは言えない。
 その情報にどれだけの信憑性があるかは知らないが、アンドリュオの言葉に今のところない。
 全くと言っていいほど情報に虚偽が紛れていない。それほどまでに勇者というのは、この世界において信用のおける存在なのか……あるいは、ワザと真実しか言っていないのか。
 どちらにせよ、これ以上の事実を知る術は今の俺にはない。
 そんなことより今重要なのは、今の話に感じただ。
 俺が感じた違和感、それは〝魔王〟の存在だ。
 今の話では魔王とは残虐非道な存在、人の命など石ころほどの価値も見ていない、そんなような存在に感じ取れる言い方をしている。
 しかし、この魔王は二百年前の戦争以外では、人族側に魔族を侵攻させていない。
 紛争などの小さな争いはあったらしいが、それを魔王が指示したとは思えない。おそらく勝手に争いを始めたのだろう、それくらいは人間同士でもありそうな話だ。
 問題は魔王の力を持ってすれば、もっと早くに人族に攻め入って壊滅させられている筈なのだ。
 彼らの語る魔王とは、強力な力を持った異界人すら手に余る力を持った存在。そんな力を持っているのであれば、人間界など容易く手中に収めていてもおかしくない。
 他にも勇者たちを殺すことも可能だったのにも関わらず、殺さず生かしているのか? それほどの力を持っていながら、封印されてしまうほどの隙を作ってしまったのか?
 確か遊んで殺すつもりだったとか、慢心をして取り逃してしまったとかの可能性もなくはないが、自分が封印されそうな状況でも何もしなかったは疑問だ。

 世界は物語ほど上手くはいかないモノだ――

 単にアンドリュオの説明不足、あるいは伝記交じりの歴史ということが相まって、完全な状態で話が伝わらなかったとも考えられなくはないが――それ以上に
 アンドリュオが言っていることは間違っていない、嘘を吐いていないと思う。
 だから、もっとなところに間違いが潜んでいる気がする。そう、が間違っているような……
 溢れる疑問、考えれば考えるほど思考が絡まり、複雑に、難解に成っていった。
 疑問に頭を抱える俺を他所に渚さんは、アンドリュオに向かって問いを投げかけた。
 「状況は理解しました……それで、あなた方は私達に何をやって欲しいのですか?」
 直球の質問、それ以上もそれ以下もない、純粋な問い。
 「我々はそなた達、異界人に封印から解放される魔王を討伐してもらいたいのだ……」
 直球の質問に対して素直な回答、これまた純粋な願い。
 「我々には魔王に対抗する手段がない……」
 悔やむようにそう言うアンドリュオ、王の言葉を継ぐようにガルビスが騙る。
 「私たちは歴史上でしか魔王の実態を知りません――ですが、魔王の行った悪行は事実なのです。この世界には魔王によってもたらされた〝厄災の痕跡〟が残っているのです」
 「そなた達には関係のないことは重々承知している……だが、それでもどうか、頼めないだろうか? この国を、この世界を救うために、その力を……貸し手は頂けないだろうか?」
 アンドリュオは再び深々と頭を下げた。
 この男は俺を含めた異世界人に、救いを求めている。嘘偽りはない、王として一人の男として国を憂い、助けを求めている。
 滑稽だが、俺はそんなアンドリュオに〝理想の王〟、その断片を見た。
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