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レヴェント編
24.知らない?名前
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その瞬間――
血液が沸騰したような錯覚を起こすほどの速度で無雪を首元へ突きつけた。
俺は瞬間的に隠し持っていた折り畳み式ナイフを振ったのだった。
「お前、何者だ?」
返答によっては容赦なくこの手のナイフを振り抜く覚悟でそう言った。彼女としても俺の意思はしっかりと伝わっているだろう、俺が放つ殺気に冷や汗を流しているのだから。
この返答命取り、ミスをすれば反撃の前に首を切り落とす。
容赦も――躊躇いも――存在しない――
瞳は薄暗い殺人鬼の眼をしている。
「おお、怖い怖い。さっきとはまるで別人だな、ケイヤ。 ……だけど、少々冗談が過ぎるんじゃない? なあ、そうだろう――ヤキョウ」
冷や汗を流しつつ、微笑を浮かべてそう言った。
「……は? 夜境? ……誰だそれ?」
学園長が俺を指した名前。だが、俺にはその名前に一切の聞き覚えがない。
「誰って、君の名前だろう?」
「は? ……違うぞ。俺の名前は神塚敬也。本名は天無だ、夜境なんて知らないぞ?」
「…………え?」
「え?」
間の抜けたその声に思わずこちらも間の抜けた声を出してしまった。
一体どういう事だ?
両者が膠着状態に陥る。正直、もうナイフを突きだしていることに意味を感じない。なぜならこれはただの勘違い、両者に戦意などあろう筈もない。
沈黙の最中、スッとナイフを収めて椅子に座る。
「あの~。つかぬことをお聞きしますが、どういった経緯で僕を修正者だと思ったんですか?」
再び敬語に戻ると、何も考えず要点だけを素直に聞くことにした。
「し、知り合いに似ていたからだ……」
「なるほど……」
その一言で再び話が途切れる。
…………うん、気まずな。うん、マジで気まずい。
沈黙がズサズサと刺さって痛い。俺としてのミスは行動してしまったこと、相手のミスが偶然にもブラフのような形となりクリティカルヒットした。
「えー、この際もう話しますが、俺は修正者臨時担当の天無です。今の名前は神塚敬也、できれば神塚敬也の名で呼んでくれれば都合がいいです」
「私はレナ・ケーンレス。この学園の学園長だ、それと敬語はいい名も気軽にレナと呼んでくれ」
「じゃあ……よろしく、か? レナ」
「多分な」
なんとも噛み合わない出会いである。
これが修正者臨時担当、もとい異世界人・神塚敬也と学園長・レナ・ケーンレスの出会いである。そしてこの出会いが、天無という人間が自身の〝記憶の欠片〟を大きく見つける、初めのきっかけだった。
血液が沸騰したような錯覚を起こすほどの速度で無雪を首元へ突きつけた。
俺は瞬間的に隠し持っていた折り畳み式ナイフを振ったのだった。
「お前、何者だ?」
返答によっては容赦なくこの手のナイフを振り抜く覚悟でそう言った。彼女としても俺の意思はしっかりと伝わっているだろう、俺が放つ殺気に冷や汗を流しているのだから。
この返答命取り、ミスをすれば反撃の前に首を切り落とす。
容赦も――躊躇いも――存在しない――
瞳は薄暗い殺人鬼の眼をしている。
「おお、怖い怖い。さっきとはまるで別人だな、ケイヤ。 ……だけど、少々冗談が過ぎるんじゃない? なあ、そうだろう――ヤキョウ」
冷や汗を流しつつ、微笑を浮かべてそう言った。
「……は? 夜境? ……誰だそれ?」
学園長が俺を指した名前。だが、俺にはその名前に一切の聞き覚えがない。
「誰って、君の名前だろう?」
「は? ……違うぞ。俺の名前は神塚敬也。本名は天無だ、夜境なんて知らないぞ?」
「…………え?」
「え?」
間の抜けたその声に思わずこちらも間の抜けた声を出してしまった。
一体どういう事だ?
両者が膠着状態に陥る。正直、もうナイフを突きだしていることに意味を感じない。なぜならこれはただの勘違い、両者に戦意などあろう筈もない。
沈黙の最中、スッとナイフを収めて椅子に座る。
「あの~。つかぬことをお聞きしますが、どういった経緯で僕を修正者だと思ったんですか?」
再び敬語に戻ると、何も考えず要点だけを素直に聞くことにした。
「し、知り合いに似ていたからだ……」
「なるほど……」
その一言で再び話が途切れる。
…………うん、気まずな。うん、マジで気まずい。
沈黙がズサズサと刺さって痛い。俺としてのミスは行動してしまったこと、相手のミスが偶然にもブラフのような形となりクリティカルヒットした。
「えー、この際もう話しますが、俺は修正者臨時担当の天無です。今の名前は神塚敬也、できれば神塚敬也の名で呼んでくれれば都合がいいです」
「私はレナ・ケーンレス。この学園の学園長だ、それと敬語はいい名も気軽にレナと呼んでくれ」
「じゃあ……よろしく、か? レナ」
「多分な」
なんとも噛み合わない出会いである。
これが修正者臨時担当、もとい異世界人・神塚敬也と学園長・レナ・ケーンレスの出会いである。そしてこの出会いが、天無という人間が自身の〝記憶の欠片〟を大きく見つける、初めのきっかけだった。
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