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レヴェント編

51.感が良い

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 「そうか。見た目もそうだが、家柄的も充実しているって、人生勝ち組かよ、アル」
 恨めしそうな目で向けてそう言うと。
 「さっきも言ったが、あくまでそれは親の権威や先祖の功績だ。今の俺は何者でもない、自慢できるような話じゃない」
 「そうか、それは悪かった……」
 からかうつもりで言った言葉が予想以上に感に触ったのか、少し声に怒りのようなものを感じた。
 なるほどな、こういう#人間__タイプ__か。
 予想以上に芯が真面なアル、まだ不確かなところが多いが友人としては悪くない人種と判断できる。まあ――あくまで友人としては、だが。
 「ところでケイヤ」
 「ん、なんだ?」
 「なんでお前はそんなにレナ先生と仲がいいんだ?」
 「「…………」」
 核心をついたその疑問に俺とレナは固まる。よく考えれば会話は呼び方以外はナチュラルな会話になっていた。
 「そ、そうだな。私はケイヤと――」
 「俺は魔力無しってのは知ってるだろ?」
 「ああ」
 「その話で俺はレナの前に連れてかれてな、これからの話をしてもらってな。レナが敬語は気持ち悪いからってことで敬語抜きで話してたんだよ」
 「なるほどな」
 「まあ、他の生徒の手前、俺だけ敬語抜きってのもおかしいから、平常では敬語使ってるんだが、今のはあんまりにも自然に会話に入られてからその気遣いがなかった」
 「…………」
 嘘と事実を織り交ぜてそれっぽいことを口に出していると、レナが関心したような、呆れているような表情をこちらを見てくる。
 「事情は承知した」
 アルはイケメン顔で軽く笑ってそう言った。
 「ああ、承知したさ」
 「…………」
 あー、全然承知してないよこの人、全然疑ってる顔だよ。
 口ではそう言っているものの、その表情を見る限り完全に信じていないことは明白だ。我ながら上手い言い訳を言ったつもりだったのだが、俺というよりレナの様子から嘘だと断定したようだ。
 感が良いことで……
 某錬金術漫画じゃないが、感の良いガキは嫌いだよをリアルで言いたくなったよ。
 「はぁ~、レナ先生。他生徒も集まってきたところで話は止めにしましょう」
 「うむ、それもそうだな」
 都合が悪くなった俺はレナにそういい話を切ることにした。
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