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レヴェント編

58.才覚

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 実技テストが開始され、クラス内大半の試合が終わった。
 既に異世界人組は俺を除く全ての試合を終えている。正直、宮登以外の異界人の動きはお世辞にもいいものとは言えない物ばかり、全員が全員力任せの攻撃ばかりだった。一人を除いて……
 現地人組の方はそれなりに腕の立つ者も多くいた。魔法をメインにしている者でもそれなり動けているようだし、武術に長けている者は感嘆に値する動きをしている者もいた。
 「今年の生徒は凄まじいな」
 「そうですね。アルバート・バルティオス、ルーク・アリュベルン、アイネ・ホーネルン、オリビア・ジルフィール様、エヴァ・ローレシア、ルーカ・アクロダは特に凄まじいですね。異界人にも匹敵する才覚を持っています」
 「ああ」
 なにやら男性講師と女性講師が生徒達について話している。
 「彼らは上級組で決まりでしょう。異界人の方々はあまり戦闘慣れしていない様でしたが、ソウゲン・ミヤト、コウツチ・ミオ、この二人の実力は別格ですね」
 「そうだな。特にコウツチ・ミオ、彼女の剣術は素晴らしい。俺は昔、和栄国の剣の達人と手合わせしたことがあったんだが、彼らと同等、あるいはそれ以上の剣術だ。あれで魔法の類は使用していないという、全く末恐ろしいな」
 「そうですね」
 苦笑いを浮かべて同意する女性講師。
 一様この模擬戦のルール上、物理ダメージを及ぼす魔法でなければ使用してもいいというルールがあり、現地人たちはバンバン強化魔法とやらを使用している。
 明らかに異世界人側が不利なテストと思ったのだが、異世界人は元々召喚特典のようなもので基礎身体能力やらが異常に高い傾向にあるようで、現状で強化魔法を使わずとも軽い戦闘は行えるとのこと。
 ああ、俺は除いてね?
 巧鎚さんは元々、道場で剣術を修めている人間だ。異世界に召喚され向上した身体能力を合わせれば、有象無象に負けるほど柔ではない。
 今回の試合では圧倒的な力で講師を打ち負かしていた。
 「それにしてもランドス・ボーロス、彼の素行の悪さは何とかならないのか。能力はあっても人格に問題があっては正当な評価はできない……なのに上級組にしなくてはいけないのは」
 「仕方ないですよ。学園の出所金を多く出しているボーロス家の一人息子を無下に扱えば、出所金が切られる可能性もあるんですし、そうなれば私たちの給与も低くなりますよ」
 なんだろう……生徒に聞こえるところで、そういう会話は慎んで貰いたいんだけど。
 「う、本当にオリビア様やアルバート坊ちゃんを見習ってほしいんだがな」
 「そうですね、彼女らは自身の身分に胡坐をかかず努力をしている者達です、ああゆう子が増えてくれれば講師としての立場的には嬉しいですよね」
 「ああ、本当にそうだな」
 その気持ちに同情はしてやりたいのだが、生徒の聞こえないところでしてほしい。
 そんな感想を抱きながら次の模擬戦に目を向ける。
 「フィニス・エリューベンズ、行かせて頂きます」
 「どうぞ」
 縦髪ロール、金髪というリアルお嬢様である渚さんを越えたマジモンのお嬢様感を醸し出すフィニスさん、自己紹介の時も一際目立っていたが、やはり目を引かれる。
 すると俺のすぐ近くにいた生徒がコソコソと会話を始めた。
 「お、次はフィニス様か」
 「おお! 竜殺し、アゼス団長の兄妹、どれくらい強いんだろうな」
 竜殺し? ……ああ、さっきの。
 ふと思い出したように竜殺し、アゼス団長とやらのフルネームを思い出す。
 アゼス・エリューベンズ――つまり、フィニスさんは彼の妹なのだろう。というか、そこのモブBが兄妹って言っていたしな。(因みにモブAは俺)
 「では、始めッ!」
 ゼルーニ講師が開始の合図を始めるとフィニスさんと女性講師が戦闘を開始させた。
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