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レヴェント編
138.きっと意味がある
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訓練用のロングソードを握る俺とアリシア。
イザベラは手に持った剣を振って空を斬る。
「正直、二人に教えられることなんてほとんどないと思うけど、何か聞きたいことある?」
肩に刀身を乗せ、彼女はそう問いかける。
「俺からは特にない。正直言って俺の場合、身体能力の問題だからな、技術方面は二人の力を借りても限界が近い。まあ、意味がないわけじゃないが、やっぱ程度が知れるしな」
「そうか。私としても技術面でお前に教えられそうなところは何もないからな。ケイヤの問題は身体能力だが、これに関しては急激に向上させる方法はないから」
「なるほどね。つもりケイヤ君の方は手合せと地道な鍛錬でゆっくり向上させなきゃいけないと」
「ああ。イザベラと手合わせした時も思ったが、やっぱり俺は自力が弱い。身体能力が上の奴と戦うとどうしても後手に回らなきゃいけなくなる」
致命的な弱点、やはり魔力が少ない俺では身体能力という大きな壁が一番堪える。
「そういえばケイヤ。お前、私と戦った時、魔法を使ってなかったか? お前、魔法が使えないんじゃないのか?」
「…………」
「あの時は気にしなかったが、よく考えれば色々とおかしくないか?」
アリシアとイザベラの視線がこちらに注がれる。
「……えーと、できれば追求されたくない話なんだが……まあ、魔法のようなもの、と考えてくれ」
「これ以上の追求はするなと?」
「あー、別に隠すようなことでもないんだが……今はある事情があって話したくない。できれば、口外もしないでくれ。その内、話せる時が来たら話す」
「…………」
俺の言葉にアリシアが真っ直ぐな視線を向けてくる。
「そうか、わかった。お前がそういうのなら、今は何も聞かない」
「サンキュ」
微笑を浮かべる彼女を見て、感謝を述べる。
「つまりお前は特殊な力で身体能力を向上させられるわけだ。ステータス的にはどれくらいなんだ?」
「あー、平常のステータスで俺は筋力24、俊敏が37、身体強化で筋力77、俊敏98だ」
「そんなに上がるのか?」
アリシアは驚きを含んだ表情で問い掛ける。イザベラさんも彼女以上に驚いた表情をしていた。
「ああ。ま、この程度じゃ、お前の身体能力には全然及ばないだろうけどな」
「まあ、流石に私の方が上だ。だが、それでも普通の身体強化より上がり幅が大きい。身体強化は普通、使用者の10%~30%ほど能力が向上するものだ。能力が二三倍に跳ね上がるなんて聞いたことないぞ?」
「そうなのか……。ふん、魔法とはそれだけ違いが生まれるのか」
一人ふむふむと納得する。
「ところでお前の筋力と俊敏はどれくらいなんだ?」
「私か? 私は筋力275、俊敏297だ」
「ぶフッ!? マジでかッ!?」
余裕そうに構えていた俺は言われた数字の大きさに、思わず吹き出し、聞き返した。
「ああ」
「デッ、タラメ、だな」
彼女のステータスの高さに驚いたのは俺だけではなく、イザベラも驚愕した表情をしていた。
「因みにイザベラはどれくらいなんだ?」
「私? 私は筋力67、俊敏が46よ」
「マジ、か。アリシア、お前ホントデタラメなんだな……」
俺とイザベラは呆れたような目線を向ける。
「アリシア、あなた異世界人レベルの身体能力って異常よ? ああ、もちろんケイヤ君は除いて」
「一言余計だな」
「あなた一体何者?」
「ゴミ捨て場の学校、それの生き残りだ」
その言葉を聞き顎に手を当てるイザベラ、考えるようなポーズをとる。
「……――ッ、まさか院の……」
「…………」
イザベラは答えがわかったようで、驚いたような表情をする。
「そう、なるほどね。それなら納得だわ、あなたの強さの理由が。確かにあんな場所で生き延びられる人間なら、そんな馬鹿げた力を持っていてもおかしくないわね」
「ああ、あそこでは弱い者から先に死んでいく。生き延びるためにはただ強くなるしかない……それに私は――いや、何でもない」
「ん?」
言葉の途中で言うのを止めるアリシア。
俺は聞き返そうとも思ったのだが、何故だか聞く気になれなくてその話をすることはなかった。
「とりあえず、あなた達二人は私がどうこう言っても意味がなさそうだし、好きにやっちゃて」
「そうさせてもらう」
そうアリシアが言った後、俺が右手を上げる。
「あ、じゃあ、試したいことがある。二人とも、少し付き合ってくれないか?」
「ん? 何かあるのか?」
「ああ、俺にはさっき言った身体強化の他に、暴威っていう身体強化法がある」
「暴威?」
その言葉に俺は頷き、話を続ける。
「暴威なら持続時間も通常の身体強化よりも長いからな。倍率の上下の感覚を、精度を上げたい。二人の攻撃を俺が捌く、最初は防御で手一杯だと思うけど、慣れたら反撃するようにする。だからまず――」
血流を回し、筋肉を隆起させる。
「時間の許す限り、手合せ頼む」
感覚を馴染ませるため、俺は二人にそう頼んだ。
オーク戦、あの時は慣れない暴威を過剰使用して死にかけた。倍率の上げ下げの調整が悪くて、無駄が多かった。もっともっと、俺なら上手く使える筈だ。
元の世界じゃ練習相手がロクにいないから仕方ないが、ここなら――丁度いい相手がいる。
「了解だ。まずはイザベラ頼めるか?」
「わかったわ。ケイヤ君、一様聞くけど、手加減はした方がいい?」
「いや、魔法ありの全力で頼む」
「ふぅ――、了解」
真っ直ぐな瞳が俺を射抜く。そして次の瞬間、彼女の周りに魔法陣が展開され、彼女を通り過ぎる。
「あれ? それって身体強化だよな?」
「ええ」
「詠唱必要なんじゃないのか?」
「無属性の魔法で身体強化なら、別に無詠唱でもできるわよ。属性アリの魔法で無詠唱は難しいけど、無属性は比較的魔法の中でも無詠唱が容易な種類なのよ?」
「そうなのか」
「まあ、完全詠唱の方が効力は高いでしょうけど。まずは慣れが必要でしょ? これくらいで行くわよ」
そう言い彼女は構える。
「よろしくお願いしますよ。イザベラ講師」
「任されました!」
その言葉と共に両者は地面を強く蹴った。
イザベラは手に持った剣を振って空を斬る。
「正直、二人に教えられることなんてほとんどないと思うけど、何か聞きたいことある?」
肩に刀身を乗せ、彼女はそう問いかける。
「俺からは特にない。正直言って俺の場合、身体能力の問題だからな、技術方面は二人の力を借りても限界が近い。まあ、意味がないわけじゃないが、やっぱ程度が知れるしな」
「そうか。私としても技術面でお前に教えられそうなところは何もないからな。ケイヤの問題は身体能力だが、これに関しては急激に向上させる方法はないから」
「なるほどね。つもりケイヤ君の方は手合せと地道な鍛錬でゆっくり向上させなきゃいけないと」
「ああ。イザベラと手合わせした時も思ったが、やっぱり俺は自力が弱い。身体能力が上の奴と戦うとどうしても後手に回らなきゃいけなくなる」
致命的な弱点、やはり魔力が少ない俺では身体能力という大きな壁が一番堪える。
「そういえばケイヤ。お前、私と戦った時、魔法を使ってなかったか? お前、魔法が使えないんじゃないのか?」
「…………」
「あの時は気にしなかったが、よく考えれば色々とおかしくないか?」
アリシアとイザベラの視線がこちらに注がれる。
「……えーと、できれば追求されたくない話なんだが……まあ、魔法のようなもの、と考えてくれ」
「これ以上の追求はするなと?」
「あー、別に隠すようなことでもないんだが……今はある事情があって話したくない。できれば、口外もしないでくれ。その内、話せる時が来たら話す」
「…………」
俺の言葉にアリシアが真っ直ぐな視線を向けてくる。
「そうか、わかった。お前がそういうのなら、今は何も聞かない」
「サンキュ」
微笑を浮かべる彼女を見て、感謝を述べる。
「つまりお前は特殊な力で身体能力を向上させられるわけだ。ステータス的にはどれくらいなんだ?」
「あー、平常のステータスで俺は筋力24、俊敏が37、身体強化で筋力77、俊敏98だ」
「そんなに上がるのか?」
アリシアは驚きを含んだ表情で問い掛ける。イザベラさんも彼女以上に驚いた表情をしていた。
「ああ。ま、この程度じゃ、お前の身体能力には全然及ばないだろうけどな」
「まあ、流石に私の方が上だ。だが、それでも普通の身体強化より上がり幅が大きい。身体強化は普通、使用者の10%~30%ほど能力が向上するものだ。能力が二三倍に跳ね上がるなんて聞いたことないぞ?」
「そうなのか……。ふん、魔法とはそれだけ違いが生まれるのか」
一人ふむふむと納得する。
「ところでお前の筋力と俊敏はどれくらいなんだ?」
「私か? 私は筋力275、俊敏297だ」
「ぶフッ!? マジでかッ!?」
余裕そうに構えていた俺は言われた数字の大きさに、思わず吹き出し、聞き返した。
「ああ」
「デッ、タラメ、だな」
彼女のステータスの高さに驚いたのは俺だけではなく、イザベラも驚愕した表情をしていた。
「因みにイザベラはどれくらいなんだ?」
「私? 私は筋力67、俊敏が46よ」
「マジ、か。アリシア、お前ホントデタラメなんだな……」
俺とイザベラは呆れたような目線を向ける。
「アリシア、あなた異世界人レベルの身体能力って異常よ? ああ、もちろんケイヤ君は除いて」
「一言余計だな」
「あなた一体何者?」
「ゴミ捨て場の学校、それの生き残りだ」
その言葉を聞き顎に手を当てるイザベラ、考えるようなポーズをとる。
「……――ッ、まさか院の……」
「…………」
イザベラは答えがわかったようで、驚いたような表情をする。
「そう、なるほどね。それなら納得だわ、あなたの強さの理由が。確かにあんな場所で生き延びられる人間なら、そんな馬鹿げた力を持っていてもおかしくないわね」
「ああ、あそこでは弱い者から先に死んでいく。生き延びるためにはただ強くなるしかない……それに私は――いや、何でもない」
「ん?」
言葉の途中で言うのを止めるアリシア。
俺は聞き返そうとも思ったのだが、何故だか聞く気になれなくてその話をすることはなかった。
「とりあえず、あなた達二人は私がどうこう言っても意味がなさそうだし、好きにやっちゃて」
「そうさせてもらう」
そうアリシアが言った後、俺が右手を上げる。
「あ、じゃあ、試したいことがある。二人とも、少し付き合ってくれないか?」
「ん? 何かあるのか?」
「ああ、俺にはさっき言った身体強化の他に、暴威っていう身体強化法がある」
「暴威?」
その言葉に俺は頷き、話を続ける。
「暴威なら持続時間も通常の身体強化よりも長いからな。倍率の上下の感覚を、精度を上げたい。二人の攻撃を俺が捌く、最初は防御で手一杯だと思うけど、慣れたら反撃するようにする。だからまず――」
血流を回し、筋肉を隆起させる。
「時間の許す限り、手合せ頼む」
感覚を馴染ませるため、俺は二人にそう頼んだ。
オーク戦、あの時は慣れない暴威を過剰使用して死にかけた。倍率の上げ下げの調整が悪くて、無駄が多かった。もっともっと、俺なら上手く使える筈だ。
元の世界じゃ練習相手がロクにいないから仕方ないが、ここなら――丁度いい相手がいる。
「了解だ。まずはイザベラ頼めるか?」
「わかったわ。ケイヤ君、一様聞くけど、手加減はした方がいい?」
「いや、魔法ありの全力で頼む」
「ふぅ――、了解」
真っ直ぐな瞳が俺を射抜く。そして次の瞬間、彼女の周りに魔法陣が展開され、彼女を通り過ぎる。
「あれ? それって身体強化だよな?」
「ええ」
「詠唱必要なんじゃないのか?」
「無属性の魔法で身体強化なら、別に無詠唱でもできるわよ。属性アリの魔法で無詠唱は難しいけど、無属性は比較的魔法の中でも無詠唱が容易な種類なのよ?」
「そうなのか」
「まあ、完全詠唱の方が効力は高いでしょうけど。まずは慣れが必要でしょ? これくらいで行くわよ」
そう言い彼女は構える。
「よろしくお願いしますよ。イザベラ講師」
「任されました!」
その言葉と共に両者は地面を強く蹴った。
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