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レヴェント編・真紅の血鬼《クリムゾン・ブラッド》

2.息ピッタリ

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 学園に到着した俺達は各々自分の席に着いて一息を吐く。
 辺りに視線を向ける。朝練を抜いているのでそれなりに早い時間に教室へ到着したため、中にいる生徒は十数人程度。それもほとんどが知人という状態である。
 と、俺が周囲を確認していると、こちらへ駆け寄って来る人物が数人いた。
 「ケイヤ、体は大丈夫なのか?」
 「ケイヤさん、大丈夫なんですか?」
 真っ先にそう言ったのは、オリビア・ケーンレスとアルバート・バルディオスことアルの二人。
 他にもオリビアの従者であるルーク・アリュベルンとアイネ・ホーネルン、オリビアの友人であるエヴァ・ローレシア。それとシドとの戦いを見ていた、エイミー・ロベルトンも何故か詰め寄って来た。
 「動けるって意味なら大丈夫。痛いか痛くないかなら、今すぐにでも横になりたいくらいには激痛が走ってる」
 「それは全然大丈夫じゃないだろ」
 「かもな」
 「かもなって、今日も休んだ方が良かったんじゃないですか?」
 酷く心配そうな表情を向けてくるオリビア。その言葉に他の五人も同様の意見なのか、真剣な眼差しを向け、こちらの言葉を待っている。
 「いや、もう十分休んだ。それに寮にいても暇だし、動けないならまだしも動けるんだ。痛いくらいならそのうちになれる、全く動かない方が体に悪いよ」
 「ですけど……」
 「ソイツに何を言っても無駄だぞ? オリビア・ケーンレス」
 そう言ったのは俺の隣に座るアリシア。
 「人の忠告を聞いて止まる奴なら、私が苦労しない」
 「――――」
 アリシアの言葉を聞いてオリビアは口を紡ぐ。
 周囲の者も、俺とシドの戦いを見ているからこそ、〝俺〟という人間の頑固さを強く理解し、それ以上の言葉は無意味なのだと悟る。
 「なあ、俺ってそんなに苦労掛けるか?」
 「今更か?」
 「酷くない?」
 「以前の言動を鑑みろ。私が何を言っても、お前は自分のだろ?」
 彼女との今までのやり取りを思い出し、と納得した。
 「……ま、往生際が悪いことくらいが俺の取り柄だからな」
 「まったく、お前の鋼のような意思には完敗だ。まさかこっちが叩き折られるとは思っていなかったよ……フン、そういう部分なんだろうな。あの怪物がお前を認めた所は……」
 「その事実は全然嬉しくないぞ」
 「事実は事実だ、甘んじて受け入れろ」
 「はぁ~……甘んじて受け入れ難き事実もあるというモノだよ。アリシアさん」
 冗談っぽい口調でそう言葉を返すとアリシアは微笑を浮かべた。
 こう見ると本当に彼女は初対面の時に比べ、俺に対し表情を見せてくれるようになったと思う。以前の彼女だったら、鋭い視線を向けられて終わっただろう。
 あの日から、アリシアの態度は露骨に変わったよな……。
 シドとの戦ったあの日、それから彼女の様子がとても大きく変わった気がする。以前に感じた刺々しいイメージが軟化されたような気がする。シドとの戦いを見て、アリシアが俺のことを信用してくれるようになった、なら嬉しいのだが、それとはまたちょっと違う気がする。
 そんな疑問を抱きつつ、視線をオリビア達の方へ向ける。
 「ま、とりあえず、俺は大丈夫だ……ホント、お前らが無事で良かったよ」
 微笑を浮かべてそう言葉を贈る。
 オリビア、エヴァ、エイミーさん、ルークとアイネさんの五人は笑みを返してくれたが、一人――否、二人が嘘くさそうな表情を浮かべて言った。
 「思ってもないことは言うモノじゃないぞ、ケイヤ」
 「ああ、心を偽るのは良くないと思うよ、敬也」
 アルと横からそっと現れた宮登がそう言ってきた。
 「はぁ……テメェら喧嘩売ってんのか?」
 強い眼光と共に二人に威圧を飛ばす。
 「悪いがケイヤ、私も二人と同意見だったぞ」
 「酷くね?」

 「「「日頃の態度の問題だ」」」

 「ッ――、……お前ら、一体いつ仲良くなったんだ?」
 アリシア、アル、宮登の息の合った言葉に驚きを隠せない。
 頭を掻きながら呆れたような目線を向けていると、とある二人の人物が俺の机の目の前に立った。
 「えーと、何かご用でしょうか? ルーカさん、フィニスさん?」
 「「…………」」
 目の前に現れたルーカ・アクロダ、フィニス・エリューベンズの二人は無言のまま、真剣な眼差しをジッとこっちへ向けてくる。
 何やら様子のおかしい二人に気後れする。

 「「お少し――お時間を頂いてもよろしいですか?」」

 「…………」
 なにこれ、怖いんですけど……?
 またしてもいつ仲良くなったんだ? というペアが俺の前に現れ、困惑する事になった。
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