星架の望み(ステラデイズ)

零元天魔

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竜殺し編・焔喰らう竜

25.第一次戦

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 クレアの放った大出力の魔弾、他の生物であれば魂魄ごと粉砕してもおかしくないほどの威力。
 魔弾の性質としても、五つの元素により強化された弾丸は魔弾魔術のそれでは考えられない出力であり、数秘術、五元魔術、魔弾、その混合魔術であったのだが、それすら掠り傷すら与えられていない。
 あれは異様だ。どんな生物にしろ、五元素の特性を受けてあそこまで無傷なのは考えにくい。あれは、強固である以前に、が異常なのだろう。
 「あれ食らって、あれだけって在りえるの?」
 「さあ。まあでも、見たままの通り、効いてないみたいですよ」
 ピンク髪のツインテールが魔弾による損傷が全く無いように見えるイグナイスを見て、嫌気がさすような表情をする。そんな彼女の問に答えるのは星十字団の頭を張る人物、ミサリであった。
 そして、その隣には二人の少女がいた。
 「あんなものに私達は勝てるのでしょうか?」
 「やってみなければ分からない。第一、それ以外の選択肢はない、わかってるだろ天音」
 「そう、ですね」
 巫女服の少女、天音。大太刀を持つ少女、沙耶。
 叢真を星十字団の仮拠点に連れてきた二人は、ミサリとツインテールの少女、ルジュと共にイグナイスの元へやって来ていた。
 「それにしても、クレアの奴。私を置いて先に行くなんて、許せないぃ、むきぃー」
 地団太を踏むツインピンク(ピンク髪のツインテール)。彼女はクレアの自称・ライヴァルであり、そんな自身を置いて先にイグナイスの元へ向かったクレアに怒りを露わにしていた。
 「まあまあ、ルジュさん落ち着いて」
 「落ち着けるわけないでしょ! ライバルである私を置いて、一人で向かうなんて薄情だし、孤高気取ってて、ほんっとムカつく!」
 宥める天音の言葉を無視して、地団太を踏み続けるルジュに呆れる天音と沙耶であった。
 「ルジュさん」
 「なによ!」
 何かに気づいたような表情のミサリがそういい、ルジュに声を掛けた。
 「どうやら、クレアさん。一人ではないみたいですよ?」
 「ん?」
 「ほら、あそこ。もう一人いますよ」
 「え、どこどこ……あ、ホントだ。ってか、アレ誰?」
 ルジュが遠くを視るようにクレアが元いた場所に目を向けると、一人の少年が飛び去るクレアを見つめている姿を発見した。
 「あ! 逆刃大君ですよ、沙耶」
 「ん……そうか、彼女とは逢えたんだな」
 沙耶は満足そうな叢真の表情を見て、少し嬉しそうに微笑をこぼした。そして、天音も彼が生きていたことに安堵した。 
 「どうやら彼は、目的を果たせたようですね」
 「だな」
 「え、え、誰アレ誰アレ、三人とも知ってるの?」
 困惑の表情でそう訴えかけるルジュがいる中、三人は引き続き話を続ける。
 「ですが、あのままだと危険では?」
 「そうですね。ですが、それは彼も承知の上でしょう。我々としても、今この場を離れて彼を助けに行くのはリスクが高い。一刻も早く、イグナイスの討伐が優先でしょう」
 「無視するなっ!」
 「そうだな。それに叢真はああ見えて結構動ける、魔術師や執行者ほどではないが、低級のフリーカーであれば問題はない。私達はイグナイス及び、こいつらの殲滅を急いだ方がいいだろう」
 「そのようですね」
 「だから、無視するなって!!」
 周囲から湧き出るフリーカー、そんな中、ルジュの叫びが一層響いた。
 「もうあったまきた。コイツら全部一掃して、クレアとの決着をつけてやる!」
 そういうと同時、彼女の右手に黄緑色のラインが発光を始める。そして――
 「破裂バースト――」
 言葉と同時、右手を振り下ろすと空気に破裂音と共に、周囲に溢れたフリーカーの身体が破裂するように裂けて肉片が吹き飛んだ。
 「私の魔術はあんまり綺麗じゃないけど、アンタらみたいなのに対しては丁度いいわよね?」
 次々と溢れるフリーカーへ向かってそう言った。
 「では三人とも、準備はできていますか?」
 「ええ、もちろん準備万端よ」
 「ああ、できている」
 「よーし、やれます」
 それぞれ覚悟は固めている。そんな彼女たちの様子を見て、ミサリは笑みを浮かべる。
 「それでは第一次戦と行きましょう。我々の目的は竜の討伐、あるいは第二部隊、総戦力の投下までの時間稼ぎ。私は現場で指揮を取りつつ、戦闘に参加していきます。皆さん、死なない程度に頑張ってくださいね」
 ミサリの言葉と同時、三人はイグナイスへ向かって攻撃を放ち始める。そして、同時に周囲のフリーカーの一掃を始めた。
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