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3 桐島園加と肝試し
第15話
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――絶対に彼女が怖がっていたなんて嘘だ。
半分を過ぎて、僕はそうはっきりと確信していた。
「どうしたの、山城君。顔、真っ青だよ?」
「いや、だってさ……怖くないほうがおかしいって、こんなの……」
ぐったりとした僕とは対照的に、何事もなかったかのようにケロッとしている彼女。いや、そういえば彼女は最初からこんな表情だった。変わっているのは僕だけだ。
だが、この状況から考えるに、おそらく、きっと、どう考えても、むしろ僕の方が正しいリアクションをしているし、正しい疲労感を感じているはずなのである。それなのに、なぜ彼女はこんなにも僕と正反対の状態を保っているというのか。
「みんな全力で驚かしに来すぎだよ……しかも無駄にバリエーション豊富だし……」
「さっきの佐藤君の奴は、結構怖かったよねー」
「……」
確かに怖かった。前から全力で目の前まで駆けてくるだけのシンプルな脅かし方だったが、僕は普通に叫び声をあげた。怖かったのはいいんだが、そんな何でもないような声で言われては、僕だけが怖がっているみたいで情けなくなってくるじゃないか。
大体、後ろからいきなり大声で叫んだり、暗闇の中で足を突然掴んできたりと、やり方がどれも古典的すぎるのもいけない。それも、女子に対する配慮からなのか、対象は全部僕だけだったし。男女差別ではなかろうか。
「今の時代、痴漢とかセクハラってすぐに大きな問題になるらしいよ」
「そう……」
世知辛い世の中だ。何だか泣きたくなってきた。
そんなわけで、今の僕は四方八方に注意を巡らせながら、まるで忍者の如き歩き方を実行している。隣で悠々自適に歩を進める彼女に対しては、逆に僕がいることで守られているのだ、と肯定的な意見を持つことで認めることにした。我ながら前向きな性格をしていると思う。
「次はどんな風に驚かしてくるかな?」
「さあ……でも、そういえば姉さんの姿をまだ見ていないのが気になるな」
自分で呟いて、その存在を思い出す。意気揚々とお化け役を買って出てはいたが、との辺りに潜んでいるのだろうか。半分を過ぎてもまだ現れていないことに、何か嫌な予感がしてならない。
「山城君、お姉さんいるんだ。どんな人?」
「ん? ああ、山城未来って聞いたことない? 学校では、勉強出来たり行事に積極的ったりでなぜかちょっとした有名人らしいんだけどさ、実態は……ただの、演劇好きな変わった人って感じだなあ」
「――ふーん。お姉さん、演劇が好きなんだ」
桐島園加は僕に問うわけでもなく、小さくそう口にした。変わった人というところよりも演劇好きであることをピックアップしたことに少し違和感を覚えたが、坂倉という身近な例がいるため、別に彼女が演劇について興味を持っていたとしてもおかしくはないな、と思い直した。
「そうそう、演劇っていえばね。山城君、どうしてうちの学校には演劇部がないのか、知ってる?」
「そんなの、今まで誰も作らなかったからじゃないのか?」
「ふふふ……それが、違うんだ」
感情のない笑い声というのも珍しい。相変わらずの話し方のため分かりづらいが、どうやら怖い話へと持っていこうとしているのは何となく伝わった。正直言ってそれなら聞きたくはないが、理由があるのならそれもそれで気になる自分もまたいるので、仕方なく聞き届けることにしておく。
僕が首を傾げていると、無表情に彼女は続けた。
「昔はね、ちゃんと演劇部も存在してたんだよ。それも、小さな部じゃなくて、大会で優勝したりするような、実力のある部だったんだって。先制も生徒も、みんなで応援してたし、みんなの憧れでもあったんだ」
「へえ……でも、ならどうして今はなくなったんだ?」
「……」
彼女はそこで黙った。そのまま、僕をじっと見つめる。
謎の気まずい沈黙が、数秒間続いた。一体どうしたというのだろう。今の流れ的に、まさか、最後のオチのための間か? 表情から読み取れないので、先の展開が全く読めない。
「……それはね――」
彼女が、何かを言おうとした瞬間。
「うああああああああああああああああ!!!!」
「うおあっ!? な、なんだ、なにごとっ!?」
進行方向から、これまでを遥かに凌ぐ凄まじい絶叫が聞こえてきた。それに呼応して、僕も同レベルの叫び声を上げてしまう。心臓が跳ね上がるほどの驚きをなんとか抑えながら視線を移すと、真っ暗闇の中で、何かがこちらに全速力で向かってきていた。
「な、なんだ、またこのパターンか。まったく、げ、芸のない奴らだよね」
冷静さをアピールする僕に、そうだね、と軽く返す桐島園加。僕の無駄な努力が悲しくなってくるじゃないか。男のプライドのためにも少しくらいは驚いた様子を見せてくれよ。これだけ無様な姿を見せておいて、今更プライドも何もないけどさ。
内心で深呼吸を繰り返し、正面からの来週に備えた。もうこのパターンは一度見ているし、これが怖いのは最初の叫びだけだ。それさえ過ぎれば、後はただその姿を捉えるだけの簡単な仕事である。
余裕ぶっていた僕の視界に、その誰かが入ってきた。
と、思いきや。
「うわああああああぁぁぁぁぁ……」
てっきり正面から驚かしに来ると思っていたそいつは、僕らの存在など気付いてもいないかのように横を走り抜け、そのまま僕らが歩いてきた方向へ去って行ってしまった。
「……え、何……?」
呆気にとられる僕と、無表情のまま口をぽかんと開けている彼女だけが取り残される。桐島さんってそういう表現の仕方はするのか、などと考えている場合でもなく、僕らは顔を見合わせた。
「何だったんだろうね。お化け役じゃなかったみたいだけど」
「正直、想像はしたくないんだけど、まさか……」
「こらー! ちょっとあんた、待ちなさいよー!」
僕が想像を広げる間もなく、前からもう一人、別の人物が走ってきた。何度も聞いたことのあるような、高い声。ここまですぐに顔が思い浮かぶ人物も中々いない。
「あーもう、一体何だって言うのよ……って、あんた零じゃない!」
予想通り、現れたのは村雨だった。どうやらさっきの人を追いかけてきたようだ。疲れた様子で息を切らしながら、僕たちの前に立つ。
「こんなところで何してんのよ、あんたたち」
「何って、肝試しに決まってるだろう。そっちこそ戻ってきたりして何してるんだ?」
「それが聞いてよ。急に、朝倉君が叫んで逃げ出したのよ! もう、男子のくせに情けないんだから」
朝倉君っていうのは、村雨のペアだった男子か。男子の僕としては、逃げ出したくなるのは本当によくわかるぞ。確か彼もそんなに気の強いほうではなかったはずだから、我慢に我慢を重ねてここまで来たのだろう。特に相手が村雨ともなれば、その苦労は計り知れない。同情。
「というか、ここまで来て逃げ出したくなるほどって、そんなに怖い奴がこの先待ってるのか……?」
「さあ、私は怖くなかったから分からないけど。とりあえず言えるのは……あんたのお姉さんって、やっぱり凄い人ね」
神妙に言ったその言葉で、僕は全てを察した。まさか、ノーマークだった姉さんが、この肝試しにおいて最大の難関と化しているというのか……? これだからあの人は油断ならないんだ。そう考えだしたらかなり怖くなってきたので、一旦その思考は放棄することにした。諦めた、とも言う。
彼が逃げていった暗闇に睨みを利かせていた村雨は、落ち着いたのか一つ息を吐き、また僕に向き直った。その顔は、何となく嬉しそうに感じなくもない。
「まあいいわ。そういうわけで、私はあんたたちと一緒に行かせてもらうから」
「は? 何で?」
「べ、別に何でもいいでしょう! とにかく、ここからは三人で――」
言いかけて、彼女は言葉を止める。同時に視線が下へ向き、表情が完全に固まった。
その視線の先にあるのは、僕の手である。
そしてそこには、桐島園加の手が重ねられていた。
……って、え?
「……えええええええ!? いやあの、い、いつの間に……?」
「さっき朝倉君が逃げて行った時くらいからかな。また怖くなってきちゃって」
そんな、「喉乾いたから」みたいなノリで言われても全然信じられないんだが! というか本当にいつの間に握られていたんだ、全然気付かなかった。おそらく僕が叫び声に動揺していたせいだろう。
あたふたする僕の前から感じる、何かの威圧感。殺気とは正にこんな感じのことを言うのではないか、と思えるほどの空気感。
恐る恐る顔を向けると、怒りという感情を詰め込めるだけ詰め込んだような表情の村雨が、人を殺せそうなほどの目つきで睨んでいた。
「いや、あの、む、村雨さん……?」
「零、私はね、あんたのことを今この時ほど見損なったことはないわ……ふふふ、なるほどね。確かに、明日葉明日香の時もそうだったわね。ええ、いいわ。あんたは結局、そういう奴だったってわけね……」
「だ、だから、まずは話を……」
「うるさーい!!!」
かつてないほどの勢いの蹴りが僕の腹に思いきり命中し、僕は一発でダウンした。もう自分の置かれた状況が全く分からない。理解しようにも、腹の痛みがそれを放棄していた。
代わりに聞こえてきたのは、蹴りを入れた加害者の大声。
「もうあんたなんか知らない! どっか行っちゃえ! ほんっと最低!」
言うだけ言って、彼女は先へと走って行ってしまった。お前が行くのかよ、と突っ込む元気などあるはずもなく、僕はその場に踞る。
多分、彼女と出会ってから今までの中で一番の怒り方だった。でも僕にはその理由が一切分からない。少なくとも、桐島園加と手を繋いでいたことが原因の一つではあったっぽいが、それ以上の考えに至ることが出来ない。
「うわあ、痛そうだね。大丈夫?」
桐島園加の声は何も変わっていなかったが、これまでで一番優しく感じた。僕は既に何もかもを考えることを止め、大丈夫じゃないかもしれない、と答えておいた。
半分を過ぎて、僕はそうはっきりと確信していた。
「どうしたの、山城君。顔、真っ青だよ?」
「いや、だってさ……怖くないほうがおかしいって、こんなの……」
ぐったりとした僕とは対照的に、何事もなかったかのようにケロッとしている彼女。いや、そういえば彼女は最初からこんな表情だった。変わっているのは僕だけだ。
だが、この状況から考えるに、おそらく、きっと、どう考えても、むしろ僕の方が正しいリアクションをしているし、正しい疲労感を感じているはずなのである。それなのに、なぜ彼女はこんなにも僕と正反対の状態を保っているというのか。
「みんな全力で驚かしに来すぎだよ……しかも無駄にバリエーション豊富だし……」
「さっきの佐藤君の奴は、結構怖かったよねー」
「……」
確かに怖かった。前から全力で目の前まで駆けてくるだけのシンプルな脅かし方だったが、僕は普通に叫び声をあげた。怖かったのはいいんだが、そんな何でもないような声で言われては、僕だけが怖がっているみたいで情けなくなってくるじゃないか。
大体、後ろからいきなり大声で叫んだり、暗闇の中で足を突然掴んできたりと、やり方がどれも古典的すぎるのもいけない。それも、女子に対する配慮からなのか、対象は全部僕だけだったし。男女差別ではなかろうか。
「今の時代、痴漢とかセクハラってすぐに大きな問題になるらしいよ」
「そう……」
世知辛い世の中だ。何だか泣きたくなってきた。
そんなわけで、今の僕は四方八方に注意を巡らせながら、まるで忍者の如き歩き方を実行している。隣で悠々自適に歩を進める彼女に対しては、逆に僕がいることで守られているのだ、と肯定的な意見を持つことで認めることにした。我ながら前向きな性格をしていると思う。
「次はどんな風に驚かしてくるかな?」
「さあ……でも、そういえば姉さんの姿をまだ見ていないのが気になるな」
自分で呟いて、その存在を思い出す。意気揚々とお化け役を買って出てはいたが、との辺りに潜んでいるのだろうか。半分を過ぎてもまだ現れていないことに、何か嫌な予感がしてならない。
「山城君、お姉さんいるんだ。どんな人?」
「ん? ああ、山城未来って聞いたことない? 学校では、勉強出来たり行事に積極的ったりでなぜかちょっとした有名人らしいんだけどさ、実態は……ただの、演劇好きな変わった人って感じだなあ」
「――ふーん。お姉さん、演劇が好きなんだ」
桐島園加は僕に問うわけでもなく、小さくそう口にした。変わった人というところよりも演劇好きであることをピックアップしたことに少し違和感を覚えたが、坂倉という身近な例がいるため、別に彼女が演劇について興味を持っていたとしてもおかしくはないな、と思い直した。
「そうそう、演劇っていえばね。山城君、どうしてうちの学校には演劇部がないのか、知ってる?」
「そんなの、今まで誰も作らなかったからじゃないのか?」
「ふふふ……それが、違うんだ」
感情のない笑い声というのも珍しい。相変わらずの話し方のため分かりづらいが、どうやら怖い話へと持っていこうとしているのは何となく伝わった。正直言ってそれなら聞きたくはないが、理由があるのならそれもそれで気になる自分もまたいるので、仕方なく聞き届けることにしておく。
僕が首を傾げていると、無表情に彼女は続けた。
「昔はね、ちゃんと演劇部も存在してたんだよ。それも、小さな部じゃなくて、大会で優勝したりするような、実力のある部だったんだって。先制も生徒も、みんなで応援してたし、みんなの憧れでもあったんだ」
「へえ……でも、ならどうして今はなくなったんだ?」
「……」
彼女はそこで黙った。そのまま、僕をじっと見つめる。
謎の気まずい沈黙が、数秒間続いた。一体どうしたというのだろう。今の流れ的に、まさか、最後のオチのための間か? 表情から読み取れないので、先の展開が全く読めない。
「……それはね――」
彼女が、何かを言おうとした瞬間。
「うああああああああああああああああ!!!!」
「うおあっ!? な、なんだ、なにごとっ!?」
進行方向から、これまでを遥かに凌ぐ凄まじい絶叫が聞こえてきた。それに呼応して、僕も同レベルの叫び声を上げてしまう。心臓が跳ね上がるほどの驚きをなんとか抑えながら視線を移すと、真っ暗闇の中で、何かがこちらに全速力で向かってきていた。
「な、なんだ、またこのパターンか。まったく、げ、芸のない奴らだよね」
冷静さをアピールする僕に、そうだね、と軽く返す桐島園加。僕の無駄な努力が悲しくなってくるじゃないか。男のプライドのためにも少しくらいは驚いた様子を見せてくれよ。これだけ無様な姿を見せておいて、今更プライドも何もないけどさ。
内心で深呼吸を繰り返し、正面からの来週に備えた。もうこのパターンは一度見ているし、これが怖いのは最初の叫びだけだ。それさえ過ぎれば、後はただその姿を捉えるだけの簡単な仕事である。
余裕ぶっていた僕の視界に、その誰かが入ってきた。
と、思いきや。
「うわああああああぁぁぁぁぁ……」
てっきり正面から驚かしに来ると思っていたそいつは、僕らの存在など気付いてもいないかのように横を走り抜け、そのまま僕らが歩いてきた方向へ去って行ってしまった。
「……え、何……?」
呆気にとられる僕と、無表情のまま口をぽかんと開けている彼女だけが取り残される。桐島さんってそういう表現の仕方はするのか、などと考えている場合でもなく、僕らは顔を見合わせた。
「何だったんだろうね。お化け役じゃなかったみたいだけど」
「正直、想像はしたくないんだけど、まさか……」
「こらー! ちょっとあんた、待ちなさいよー!」
僕が想像を広げる間もなく、前からもう一人、別の人物が走ってきた。何度も聞いたことのあるような、高い声。ここまですぐに顔が思い浮かぶ人物も中々いない。
「あーもう、一体何だって言うのよ……って、あんた零じゃない!」
予想通り、現れたのは村雨だった。どうやらさっきの人を追いかけてきたようだ。疲れた様子で息を切らしながら、僕たちの前に立つ。
「こんなところで何してんのよ、あんたたち」
「何って、肝試しに決まってるだろう。そっちこそ戻ってきたりして何してるんだ?」
「それが聞いてよ。急に、朝倉君が叫んで逃げ出したのよ! もう、男子のくせに情けないんだから」
朝倉君っていうのは、村雨のペアだった男子か。男子の僕としては、逃げ出したくなるのは本当によくわかるぞ。確か彼もそんなに気の強いほうではなかったはずだから、我慢に我慢を重ねてここまで来たのだろう。特に相手が村雨ともなれば、その苦労は計り知れない。同情。
「というか、ここまで来て逃げ出したくなるほどって、そんなに怖い奴がこの先待ってるのか……?」
「さあ、私は怖くなかったから分からないけど。とりあえず言えるのは……あんたのお姉さんって、やっぱり凄い人ね」
神妙に言ったその言葉で、僕は全てを察した。まさか、ノーマークだった姉さんが、この肝試しにおいて最大の難関と化しているというのか……? これだからあの人は油断ならないんだ。そう考えだしたらかなり怖くなってきたので、一旦その思考は放棄することにした。諦めた、とも言う。
彼が逃げていった暗闇に睨みを利かせていた村雨は、落ち着いたのか一つ息を吐き、また僕に向き直った。その顔は、何となく嬉しそうに感じなくもない。
「まあいいわ。そういうわけで、私はあんたたちと一緒に行かせてもらうから」
「は? 何で?」
「べ、別に何でもいいでしょう! とにかく、ここからは三人で――」
言いかけて、彼女は言葉を止める。同時に視線が下へ向き、表情が完全に固まった。
その視線の先にあるのは、僕の手である。
そしてそこには、桐島園加の手が重ねられていた。
……って、え?
「……えええええええ!? いやあの、い、いつの間に……?」
「さっき朝倉君が逃げて行った時くらいからかな。また怖くなってきちゃって」
そんな、「喉乾いたから」みたいなノリで言われても全然信じられないんだが! というか本当にいつの間に握られていたんだ、全然気付かなかった。おそらく僕が叫び声に動揺していたせいだろう。
あたふたする僕の前から感じる、何かの威圧感。殺気とは正にこんな感じのことを言うのではないか、と思えるほどの空気感。
恐る恐る顔を向けると、怒りという感情を詰め込めるだけ詰め込んだような表情の村雨が、人を殺せそうなほどの目つきで睨んでいた。
「いや、あの、む、村雨さん……?」
「零、私はね、あんたのことを今この時ほど見損なったことはないわ……ふふふ、なるほどね。確かに、明日葉明日香の時もそうだったわね。ええ、いいわ。あんたは結局、そういう奴だったってわけね……」
「だ、だから、まずは話を……」
「うるさーい!!!」
かつてないほどの勢いの蹴りが僕の腹に思いきり命中し、僕は一発でダウンした。もう自分の置かれた状況が全く分からない。理解しようにも、腹の痛みがそれを放棄していた。
代わりに聞こえてきたのは、蹴りを入れた加害者の大声。
「もうあんたなんか知らない! どっか行っちゃえ! ほんっと最低!」
言うだけ言って、彼女は先へと走って行ってしまった。お前が行くのかよ、と突っ込む元気などあるはずもなく、僕はその場に踞る。
多分、彼女と出会ってから今までの中で一番の怒り方だった。でも僕にはその理由が一切分からない。少なくとも、桐島園加と手を繋いでいたことが原因の一つではあったっぽいが、それ以上の考えに至ることが出来ない。
「うわあ、痛そうだね。大丈夫?」
桐島園加の声は何も変わっていなかったが、これまでで一番優しく感じた。僕は既に何もかもを考えることを止め、大丈夫じゃないかもしれない、と答えておいた。
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