27 / 35
第6話 疑う
第6話 疑う
しおりを挟む
神様は、どこにいるのだろう。
どこに行けば会えるのだろう。
※
土曜日は、学生にとって一番曖昧な曜日だと思う。
以前は普通に授業日だった、ゆとり教育になってなくなった、脱ゆとりのために復活させよう……大人の都合に振り回される曜日の筆頭だと言ってもよいだろう。授業日が嬉しいと感じる学生など滅多にいないと思うが、ないと世間の目は僕らをいつまでも『ゆとり世代』として扱うのである。世知辛い世の中ってやつだ。
「何でもゆとりのせいって言っておけばいいと思いやがって」
なんて不平を言いつつ、別に今日は授業日というわけではない。今日行われるのは、身体測定だけらしい。わざわざ一日かけて身長やら体重やらを集団で量る、非常にテンポの悪い行事だと僕は捉えている。一般的な高校一年生の平均を得たいがために統計をとるのだろうが、それにしてももう少し簡略化出来ないものなのか、と毎回感じるわけである。
まあ、こんなことでもない限り自分の身体の具体的な数値など知る由もないため、無理矢理ありがたいと思うこともできなくもないが。
身体の成長は、数値化することで自他共にそれを実感することが出来る。だが、心の成長はそうはいかない。はっきりと、こうなったから成長した、とは言えないのだ。それは、人に寄ってその基準が違うためだろう。
善悪の基準、何がよくて何がダメなのか、何を許して何を許さないのか……そういったラインは、一人一人がそれぞれ持っているものだ。自分で成長だと感じたことも、他者から見るとむしろ退化していると思われるかもしれない。
詰まるところ、心の成長とは、基準の一般化、平均化なのだろう。いかに多くの他者と考え方を同一、もしくは近づけ得るかが、心の育て方なのである。と、僕は思う。
周囲との基準の擦り合わせ。個性の埋没という言葉は、心の成長と同義だ。異端を排除する世の中では、そうならざるを得ない。個性を追い求める者は、『環境に溶け込めない人間』となる。
「僕は、成長できているのか?」
極力他人と関わりたくないという、他者との調和以前の問題を孕むこの考え方は、誰がどう見ても集団では異端扱いだ。別にそれでもいい、むしろそう捉えてもらった方が僕としても楽だ。そう自分に言い聞かせていたのが、僕のはずだった。
……なぜ?
どうして僕は、頑なにこの考えを固持し続けているのだろう。
他人との関わりは面倒だ。自分に干渉されたくない。一人でいる方が好きだ。一緒にいれば、いずれは喧嘩や不和もある。ならば最初から関わらない方がいい。
僕は果たして、本当に、心の底からそう感じているのか? 本当に、そう思わなければいけないのか?
思い浮かぶのは、如月と、最近知り合った四人の女子たち。秋谷、尾坂、千条、そして……えーと。
「ああ、渡瀬莉子か」
「……な、なんですか?」
僕は独り言を言ったつもりだったが、なぜか返事が帰ってきた。幻聴かと首を捻りながらそちらに顔を向ける。
渡瀬莉子が、顔を俯けてすぐ近くに立っていた。
「……や、やあ。おはよう」
まるでロボットのような口調でそう言ってみると、彼女は一瞬顔を上げて、またすぐに下を向き、無言でこくんと頷いた。僕はなんとか平静を装いながら、状況を理解しようとする。ここは下駄箱だ。ひたすら考え事をしながら歩いてきたせいで、無意識のうちに辿り着いていたらしい。僕の手には、しっかりと靴が握られている。いつの間に。
対する渡瀬は、僕の横に立って顔を下げたまま、一向に動こうとしない。もしかして、僕が動き出すのを待っているのだろうか。それとも、なぜ僕が渡瀬の名前を呟いたのか、理由が知りたいのかもしれない。どちらにせよ、顔くらいは上げてほしい。
「とりあえずさ、教室向かわないか?」
間に耐えきれず僕がそう提案すると、ぱっと顔を上げ、その言葉を待ってたと言わんばかりの表情で「そ、そうてすね!」と返して、すぐに上履きの準備を始めた。よくわからないが、どうやら僕の発言は正解だったようだ。
渡瀬の下駄箱は、一年三組女子のまとまりの中の、左から四列目、上から三段目のようだった。女子は二十人で、男女それぞれの一クラス分が六×四となるこの下駄箱では、出席番号最後の渡瀬の位置は本来そこではないはずだが、女子のロッカーは一つだけ壊れてるからその分だけずれている、と言っていた尾坂の話を思い出す。ちなみに、一昨日尾坂が壊した扉は、今は不安定な位置でなんとか止められていた。
上履きを履き終えた渡瀬は、ばたぱたとまた僕の近くに寄ってきて、動きを止めた。緊張したような体勢で、僕に対して何かを待っている目だ。とりあえず歩き出してみると、すぐにその後ろに着いてきた。
「……なあ、渡瀬」
「は、はい! な、なんですか……?」
「あーいやその……うん、やっぱいいや」
行動の意図をはっきりさせたかったのだが、「何で僕の後ろに着いてくるんだ?」という質問はあまりに直球過ぎてなんとなく気が引けたので、途中で口をつぐんだ。別に迷惑をかけられてるわけでもないし、どうでもいいと言えばどうでもいい。
「……き、今日は、如月さんは、ご一緒じゃない、んです、ね……」
「へ? ああ、如月? 別に、いつも一緒に登校してるってわけでもないし、朝から会う方が珍しいよ」
僕は答えて、ちらと後ろを向くと、渡瀬は興味深そうにこくこくと頷いていた。彼女の中では、僕と如月は朝から晩まで共にいるというイメージなのだろうか。なんとも考えるだに恐ろしいことだ。
「えっと、あの……最近、楽しいですか……?」
「最近? ……まあ別に、つまらなくはないと思うけど」
「そう、ですか。それはよかったです……」
沈黙。
如月や尾坂など、向こうからぐいぐい来る女子に最近関わられてばかりなせいか、こういう大人しめで人見知り的なタイプはどうにもやりにくい。もちろん僕も人と話すこと自体がそもそも苦手なわけだが、そんな奴等が二人きりで話していては、ぎこちない会話になってしまうのは仕方がないと言えるか。
それから教室までは、渡瀬は付かず離れずの距離を保ったまま、ずっと無言だった。口を開いても中身のない話になることは必至だと思われたので、僕も話しかけようとはしなかった。
「……あ、ありがとう、ございました!」
教室に入った途端に、頭を下げて礼を言う渡瀬。何事かと先にいた生徒たちがこちらを見てくる。呆気に取られる僕と周囲を他所に、渡瀬は早足で教室の一番右下隅である自分の机に着き、直ぐ様顔を突っ伏した。
「……何だったんだ……?」
よく状況が飲み込めないままに、僕もその反対側の自分の席までゆっくり歩く。自分のペースで動く人間をここ最近で数人は見てきたので、今さら些細なことは気にしないようにすることにした。
渡瀬には渡瀬の、彼女達には彼女達のペースがあり、スタイルがあるのだ。そしてもちろん、それは僕にもある。
何度も言っているように、僕は他人と極力———
「須野君、今日は、渡瀬さんと一緒だったんだねー」
「……」
正面からの柔らかな声によって、僕の思考は強制的に中断される。なんとなく渋い顔をしながら顔を上げると、千条がすぐ目の前で僕を見下ろしていた。
「たまたま昇降口で会っただけだよ。一緒かに来たってほどでもないと思うけど」
「んーと……何画関係?」
首を傾げて真面目な顔で尋ねる千条に答えず、僕は渡瀬と同じように顔を突っ伏した。こういった馬鹿らしい会話は応じないに限る。如月で学んだことだ。
「ど、どうしたの、須野君? ね、ねえ……ごめんなさい、起きて。起きてってば……」
頭上から聞こえる慌てたような声。それが千条の反応であることを理解するのに、少し時間がかかった。顔を上げると、眉を潜めて心配そうな表情をしている彼女の姿。これまでで初めてみるような千条のリアクションに、思わず笑ってしまった。
「ちょっと、何で笑うの? せっかく、心配したのに」
「ごめんごめん、千条の慌てた反応が珍しかったからさ。そんな顔もするんだなって思っちゃって」
僕が何気なくそう言うと、今度は恥ずかしがるように顔を赤らめた。それに加えて、頬に手を当てて顔を下に向けている。それは古くないかとつっこもうかと思ったが止めておいた。
やはり、笑顔だけでは人の魅力や内面は伝わらない。喜怒哀楽、それぞれの表情を、それぞれのやり方で表すからこそ、人は輝き、魅力的になるのだと思う。多彩な感情の表現こそが、人にだけ許された特権なはずだ。
そう。
笑顔だけでは、楽しそうにしているだけでは、駄目なんだ。
「……そういえば、結局ソラは大丈夫だった? 結構深い傷だったみたいだけど」
「うん、今は包帯をぐるぐるに巻かれて、病院にいるよ。安静にしておけば大丈夫だって、お医者さんも言ってた」
「そっか」
千条のはっきりした答えに、僕はほっと胸を撫で下ろす。昨日のソラの血塗れで怪我した姿は、僕の中で中々ショッキングな光景だった。あの場では冷静だったが、一日経って思い出すと、その悲惨さが実感できてきたのである。
ほっとした表情を浮かべる僕に、千条はおそるおそると言ったように尋ねてきた。
「ねえ、一つ聞きたいんだけど……あれって、事故なのかな?」
「昨日見た限りじゃそんな感じだったよね。壺が落ちてきて、その破片でソラが怪我をした。直撃してなくて本当に良かったと思うよ」
「何で、あの壺は落ちたんだろう?」
「……さあ、僕には分からない。ソラが体当たりしたって説が一番有力かなっては思うんだけどね」
僕は嘘を吐く。正直に、『神様』の仕業の可能性を挙げてもよかったのだが、現時点ではあまりにそれは極論過ぎると思ったからである。それに、『神様』の存在を未だに探しているのはおそらく僕と如月くらいだろうから、わざわざ言うのが恥ずかしいというのもある。
千条は僕の答えに納得していないのか、頬に指を当てて優雅に首を傾げた。何か考えているだけなのだろうが、それだけで様になってしまうから彼女は凄い。
「昨日は、玄関の扉はずっと開いてたっけ? 僕たちがソラを見つけたときはどうなってた?」
「玄関? うーん、あんまり覚えてないけど……どうして、そんなことを、聞くの?」
「ああ、いや、それは……」
「『神様』の、話?」
ごまかそうとする僕に、彼女はびしっと、そう言ってきた。見ると、その顔は真面目そのものだ。どうやら千条も、最初からその可能性を考えていたようである。
「私ね、ちょっと思ってたんだ。あの手紙以来、『神様』何にもしてこないなーって。だから、そろそろ何か来るんじゃないかなって。もしかしたら、これがそうなんじゃないかな?」
「確かに僕もそれを考えてはいたけど……やっぱりちょっと飛躍しすぎな気がする。わざわざ千条の家に入り込んで、壺だけ落として帰る理由がよくわからないよ。そこまでやる必要性が見当たらない」
「うーん、そうかなー。案外、理由なんてないのかもね」
理由なく他人の家に入り込み、理由なく壺を落として犬に怪我をさせる『神様』。想像すればするほど意味の分からない存在になっていく。もし本当にそうなのだとすれば、一体誰のために、誰に何を見せたくてそうしているんだ? これが、あの手紙にあった『制裁』なのか?
「……千条は、手紙を受け取った俺たちの誰かが、あんなことをやったと思っているのか?」
「それは、分からない」
即答だった。真剣な表情のまま、千条は僕をしっかりと見据える。
「私は、まだみんなのことはよく知らないしね。誰がどんな人なのかは、まだ分からないなあ」
「入学前とかで、あの中の誰かと面識は?」
「なかったよ。みんな、この高校に来て初めて会った人たちだねー。……あ、でも」
何かを思い出したように、千条が笑い出す。本当に可笑しいといった様子だ。
「尾坂さんとは、入学式の日の朝に会ったんだ。昇降口で、靴を持って立ち竦んでたから、手伝ってあげたんだよ」
なるほど、尾坂が千条について言い淀んでいたのはこのことだったのか。おそらく、僕が見たときと同じように、自分の棚を見上げて途方にくれていたのだろう。容易に想像ができてしまう辺り、確かに面白い光景だと言えなくもない。
「それだけだねー、あの中で入学式までに関わったのは。他は思い付かないなあ」
「そうか。ありがとうな」
礼を言いながら、僕の頭は既に他のことを考えていた。
これまで秋谷と尾坂、それに千条に話を聞いた限り、相互に知り合っている人はいても、全員のことを知っている人はいない。もちろん、僕と如月も知らなかった。
これはおかしいことだ。
なぜなら、僕たち六人に対して手紙を送ったことは、偶然などではなく、明らかに意図されたものだと感じるからである。言うなれば、僕らは選ばれた六人ーーいや、神様を抜いて五人のはずなのだ。少なくとも最低一人は、手紙の秘までに全員のことを知っている必要がある。ということは、考えられることはただ一つ。
誰かが嘘を吐いている。
「じゃあ、私、そろそろ戻るね」
しばらく黙っていたせいか、千条が少し心配そうな声でそう言った。僕ははっと顔を上げ、ああと片手を挙げる。表面上は普通を装えているだろう。
内面と外面の違い。表と裏。自分と他人。
所詮、僕はこの程度だ。奇麗事を語りながら、自らそれを否定する。上辺だけ取り繕って、中身は何も伴わない。その場凌ぎの、適当な臭い言葉を並べるだけで、分かったような気にさせようとしている。
それが僕の本質、なのだろう。
きっと、そうだ。
「須野君は、優しい人だね」
どこからか声が降り注いだ。気づけば、僕はまた俯いていた。でも、今は顔を向けたくない。 僕の本質が、悟られる気がする。それだけは避けなければ。
「須野君は、もっと自分に素直になっていいと思うよ。あんまり、縛られ過ぎない方がいい」
縛られる? 僕が何に縛られているって?
僕は僕でしかないし、僕以外に僕の領域を犯せるものはいない。僕は昔からそうだった。他人に関わりたくない、上辺だけで中身のない、最低の人間。
僕には、他人を助けることなど出来ない。誰かの助けになることなど、出来やしない。そんな思い上がりは、悲惨な結果しか生まない。誰かの悲しみしか生まれない。
頭痛がする。また誰かが僕の頭を荒らしている。
誰かの泣き声。悲しみ。苦しみ。絶望。失敗。嗚咽。頭痛。悲鳴。
全部、僕のせいなんだ。
僕の――
「おっはよー、優君! 今日もいい天気さねえ」
一瞬で思考を現実に戻す声が、僕の頭に響いた。そちらに目を移すと、すぐ近くに満面の笑みの如月の顔。今来たのか、まだ鞄が肩に掛かっている。
「どったのどったの、朝から辛気くさい顔しちゃって。はい笑顔! イエススマイル、ノーライフ!」
「まったく意味が分からないんだが」
元気度120パーセントの如月に、苦笑しながら返事をする。いつもの光景。いつもの日常。いつもの如月。
そして、いつもの僕。
ここにいるのは、いつもの僕たち以外にあり得ないのだ。
どこに行けば会えるのだろう。
※
土曜日は、学生にとって一番曖昧な曜日だと思う。
以前は普通に授業日だった、ゆとり教育になってなくなった、脱ゆとりのために復活させよう……大人の都合に振り回される曜日の筆頭だと言ってもよいだろう。授業日が嬉しいと感じる学生など滅多にいないと思うが、ないと世間の目は僕らをいつまでも『ゆとり世代』として扱うのである。世知辛い世の中ってやつだ。
「何でもゆとりのせいって言っておけばいいと思いやがって」
なんて不平を言いつつ、別に今日は授業日というわけではない。今日行われるのは、身体測定だけらしい。わざわざ一日かけて身長やら体重やらを集団で量る、非常にテンポの悪い行事だと僕は捉えている。一般的な高校一年生の平均を得たいがために統計をとるのだろうが、それにしてももう少し簡略化出来ないものなのか、と毎回感じるわけである。
まあ、こんなことでもない限り自分の身体の具体的な数値など知る由もないため、無理矢理ありがたいと思うこともできなくもないが。
身体の成長は、数値化することで自他共にそれを実感することが出来る。だが、心の成長はそうはいかない。はっきりと、こうなったから成長した、とは言えないのだ。それは、人に寄ってその基準が違うためだろう。
善悪の基準、何がよくて何がダメなのか、何を許して何を許さないのか……そういったラインは、一人一人がそれぞれ持っているものだ。自分で成長だと感じたことも、他者から見るとむしろ退化していると思われるかもしれない。
詰まるところ、心の成長とは、基準の一般化、平均化なのだろう。いかに多くの他者と考え方を同一、もしくは近づけ得るかが、心の育て方なのである。と、僕は思う。
周囲との基準の擦り合わせ。個性の埋没という言葉は、心の成長と同義だ。異端を排除する世の中では、そうならざるを得ない。個性を追い求める者は、『環境に溶け込めない人間』となる。
「僕は、成長できているのか?」
極力他人と関わりたくないという、他者との調和以前の問題を孕むこの考え方は、誰がどう見ても集団では異端扱いだ。別にそれでもいい、むしろそう捉えてもらった方が僕としても楽だ。そう自分に言い聞かせていたのが、僕のはずだった。
……なぜ?
どうして僕は、頑なにこの考えを固持し続けているのだろう。
他人との関わりは面倒だ。自分に干渉されたくない。一人でいる方が好きだ。一緒にいれば、いずれは喧嘩や不和もある。ならば最初から関わらない方がいい。
僕は果たして、本当に、心の底からそう感じているのか? 本当に、そう思わなければいけないのか?
思い浮かぶのは、如月と、最近知り合った四人の女子たち。秋谷、尾坂、千条、そして……えーと。
「ああ、渡瀬莉子か」
「……な、なんですか?」
僕は独り言を言ったつもりだったが、なぜか返事が帰ってきた。幻聴かと首を捻りながらそちらに顔を向ける。
渡瀬莉子が、顔を俯けてすぐ近くに立っていた。
「……や、やあ。おはよう」
まるでロボットのような口調でそう言ってみると、彼女は一瞬顔を上げて、またすぐに下を向き、無言でこくんと頷いた。僕はなんとか平静を装いながら、状況を理解しようとする。ここは下駄箱だ。ひたすら考え事をしながら歩いてきたせいで、無意識のうちに辿り着いていたらしい。僕の手には、しっかりと靴が握られている。いつの間に。
対する渡瀬は、僕の横に立って顔を下げたまま、一向に動こうとしない。もしかして、僕が動き出すのを待っているのだろうか。それとも、なぜ僕が渡瀬の名前を呟いたのか、理由が知りたいのかもしれない。どちらにせよ、顔くらいは上げてほしい。
「とりあえずさ、教室向かわないか?」
間に耐えきれず僕がそう提案すると、ぱっと顔を上げ、その言葉を待ってたと言わんばかりの表情で「そ、そうてすね!」と返して、すぐに上履きの準備を始めた。よくわからないが、どうやら僕の発言は正解だったようだ。
渡瀬の下駄箱は、一年三組女子のまとまりの中の、左から四列目、上から三段目のようだった。女子は二十人で、男女それぞれの一クラス分が六×四となるこの下駄箱では、出席番号最後の渡瀬の位置は本来そこではないはずだが、女子のロッカーは一つだけ壊れてるからその分だけずれている、と言っていた尾坂の話を思い出す。ちなみに、一昨日尾坂が壊した扉は、今は不安定な位置でなんとか止められていた。
上履きを履き終えた渡瀬は、ばたぱたとまた僕の近くに寄ってきて、動きを止めた。緊張したような体勢で、僕に対して何かを待っている目だ。とりあえず歩き出してみると、すぐにその後ろに着いてきた。
「……なあ、渡瀬」
「は、はい! な、なんですか……?」
「あーいやその……うん、やっぱいいや」
行動の意図をはっきりさせたかったのだが、「何で僕の後ろに着いてくるんだ?」という質問はあまりに直球過ぎてなんとなく気が引けたので、途中で口をつぐんだ。別に迷惑をかけられてるわけでもないし、どうでもいいと言えばどうでもいい。
「……き、今日は、如月さんは、ご一緒じゃない、んです、ね……」
「へ? ああ、如月? 別に、いつも一緒に登校してるってわけでもないし、朝から会う方が珍しいよ」
僕は答えて、ちらと後ろを向くと、渡瀬は興味深そうにこくこくと頷いていた。彼女の中では、僕と如月は朝から晩まで共にいるというイメージなのだろうか。なんとも考えるだに恐ろしいことだ。
「えっと、あの……最近、楽しいですか……?」
「最近? ……まあ別に、つまらなくはないと思うけど」
「そう、ですか。それはよかったです……」
沈黙。
如月や尾坂など、向こうからぐいぐい来る女子に最近関わられてばかりなせいか、こういう大人しめで人見知り的なタイプはどうにもやりにくい。もちろん僕も人と話すこと自体がそもそも苦手なわけだが、そんな奴等が二人きりで話していては、ぎこちない会話になってしまうのは仕方がないと言えるか。
それから教室までは、渡瀬は付かず離れずの距離を保ったまま、ずっと無言だった。口を開いても中身のない話になることは必至だと思われたので、僕も話しかけようとはしなかった。
「……あ、ありがとう、ございました!」
教室に入った途端に、頭を下げて礼を言う渡瀬。何事かと先にいた生徒たちがこちらを見てくる。呆気に取られる僕と周囲を他所に、渡瀬は早足で教室の一番右下隅である自分の机に着き、直ぐ様顔を突っ伏した。
「……何だったんだ……?」
よく状況が飲み込めないままに、僕もその反対側の自分の席までゆっくり歩く。自分のペースで動く人間をここ最近で数人は見てきたので、今さら些細なことは気にしないようにすることにした。
渡瀬には渡瀬の、彼女達には彼女達のペースがあり、スタイルがあるのだ。そしてもちろん、それは僕にもある。
何度も言っているように、僕は他人と極力———
「須野君、今日は、渡瀬さんと一緒だったんだねー」
「……」
正面からの柔らかな声によって、僕の思考は強制的に中断される。なんとなく渋い顔をしながら顔を上げると、千条がすぐ目の前で僕を見下ろしていた。
「たまたま昇降口で会っただけだよ。一緒かに来たってほどでもないと思うけど」
「んーと……何画関係?」
首を傾げて真面目な顔で尋ねる千条に答えず、僕は渡瀬と同じように顔を突っ伏した。こういった馬鹿らしい会話は応じないに限る。如月で学んだことだ。
「ど、どうしたの、須野君? ね、ねえ……ごめんなさい、起きて。起きてってば……」
頭上から聞こえる慌てたような声。それが千条の反応であることを理解するのに、少し時間がかかった。顔を上げると、眉を潜めて心配そうな表情をしている彼女の姿。これまでで初めてみるような千条のリアクションに、思わず笑ってしまった。
「ちょっと、何で笑うの? せっかく、心配したのに」
「ごめんごめん、千条の慌てた反応が珍しかったからさ。そんな顔もするんだなって思っちゃって」
僕が何気なくそう言うと、今度は恥ずかしがるように顔を赤らめた。それに加えて、頬に手を当てて顔を下に向けている。それは古くないかとつっこもうかと思ったが止めておいた。
やはり、笑顔だけでは人の魅力や内面は伝わらない。喜怒哀楽、それぞれの表情を、それぞれのやり方で表すからこそ、人は輝き、魅力的になるのだと思う。多彩な感情の表現こそが、人にだけ許された特権なはずだ。
そう。
笑顔だけでは、楽しそうにしているだけでは、駄目なんだ。
「……そういえば、結局ソラは大丈夫だった? 結構深い傷だったみたいだけど」
「うん、今は包帯をぐるぐるに巻かれて、病院にいるよ。安静にしておけば大丈夫だって、お医者さんも言ってた」
「そっか」
千条のはっきりした答えに、僕はほっと胸を撫で下ろす。昨日のソラの血塗れで怪我した姿は、僕の中で中々ショッキングな光景だった。あの場では冷静だったが、一日経って思い出すと、その悲惨さが実感できてきたのである。
ほっとした表情を浮かべる僕に、千条はおそるおそると言ったように尋ねてきた。
「ねえ、一つ聞きたいんだけど……あれって、事故なのかな?」
「昨日見た限りじゃそんな感じだったよね。壺が落ちてきて、その破片でソラが怪我をした。直撃してなくて本当に良かったと思うよ」
「何で、あの壺は落ちたんだろう?」
「……さあ、僕には分からない。ソラが体当たりしたって説が一番有力かなっては思うんだけどね」
僕は嘘を吐く。正直に、『神様』の仕業の可能性を挙げてもよかったのだが、現時点ではあまりにそれは極論過ぎると思ったからである。それに、『神様』の存在を未だに探しているのはおそらく僕と如月くらいだろうから、わざわざ言うのが恥ずかしいというのもある。
千条は僕の答えに納得していないのか、頬に指を当てて優雅に首を傾げた。何か考えているだけなのだろうが、それだけで様になってしまうから彼女は凄い。
「昨日は、玄関の扉はずっと開いてたっけ? 僕たちがソラを見つけたときはどうなってた?」
「玄関? うーん、あんまり覚えてないけど……どうして、そんなことを、聞くの?」
「ああ、いや、それは……」
「『神様』の、話?」
ごまかそうとする僕に、彼女はびしっと、そう言ってきた。見ると、その顔は真面目そのものだ。どうやら千条も、最初からその可能性を考えていたようである。
「私ね、ちょっと思ってたんだ。あの手紙以来、『神様』何にもしてこないなーって。だから、そろそろ何か来るんじゃないかなって。もしかしたら、これがそうなんじゃないかな?」
「確かに僕もそれを考えてはいたけど……やっぱりちょっと飛躍しすぎな気がする。わざわざ千条の家に入り込んで、壺だけ落として帰る理由がよくわからないよ。そこまでやる必要性が見当たらない」
「うーん、そうかなー。案外、理由なんてないのかもね」
理由なく他人の家に入り込み、理由なく壺を落として犬に怪我をさせる『神様』。想像すればするほど意味の分からない存在になっていく。もし本当にそうなのだとすれば、一体誰のために、誰に何を見せたくてそうしているんだ? これが、あの手紙にあった『制裁』なのか?
「……千条は、手紙を受け取った俺たちの誰かが、あんなことをやったと思っているのか?」
「それは、分からない」
即答だった。真剣な表情のまま、千条は僕をしっかりと見据える。
「私は、まだみんなのことはよく知らないしね。誰がどんな人なのかは、まだ分からないなあ」
「入学前とかで、あの中の誰かと面識は?」
「なかったよ。みんな、この高校に来て初めて会った人たちだねー。……あ、でも」
何かを思い出したように、千条が笑い出す。本当に可笑しいといった様子だ。
「尾坂さんとは、入学式の日の朝に会ったんだ。昇降口で、靴を持って立ち竦んでたから、手伝ってあげたんだよ」
なるほど、尾坂が千条について言い淀んでいたのはこのことだったのか。おそらく、僕が見たときと同じように、自分の棚を見上げて途方にくれていたのだろう。容易に想像ができてしまう辺り、確かに面白い光景だと言えなくもない。
「それだけだねー、あの中で入学式までに関わったのは。他は思い付かないなあ」
「そうか。ありがとうな」
礼を言いながら、僕の頭は既に他のことを考えていた。
これまで秋谷と尾坂、それに千条に話を聞いた限り、相互に知り合っている人はいても、全員のことを知っている人はいない。もちろん、僕と如月も知らなかった。
これはおかしいことだ。
なぜなら、僕たち六人に対して手紙を送ったことは、偶然などではなく、明らかに意図されたものだと感じるからである。言うなれば、僕らは選ばれた六人ーーいや、神様を抜いて五人のはずなのだ。少なくとも最低一人は、手紙の秘までに全員のことを知っている必要がある。ということは、考えられることはただ一つ。
誰かが嘘を吐いている。
「じゃあ、私、そろそろ戻るね」
しばらく黙っていたせいか、千条が少し心配そうな声でそう言った。僕ははっと顔を上げ、ああと片手を挙げる。表面上は普通を装えているだろう。
内面と外面の違い。表と裏。自分と他人。
所詮、僕はこの程度だ。奇麗事を語りながら、自らそれを否定する。上辺だけ取り繕って、中身は何も伴わない。その場凌ぎの、適当な臭い言葉を並べるだけで、分かったような気にさせようとしている。
それが僕の本質、なのだろう。
きっと、そうだ。
「須野君は、優しい人だね」
どこからか声が降り注いだ。気づけば、僕はまた俯いていた。でも、今は顔を向けたくない。 僕の本質が、悟られる気がする。それだけは避けなければ。
「須野君は、もっと自分に素直になっていいと思うよ。あんまり、縛られ過ぎない方がいい」
縛られる? 僕が何に縛られているって?
僕は僕でしかないし、僕以外に僕の領域を犯せるものはいない。僕は昔からそうだった。他人に関わりたくない、上辺だけで中身のない、最低の人間。
僕には、他人を助けることなど出来ない。誰かの助けになることなど、出来やしない。そんな思い上がりは、悲惨な結果しか生まない。誰かの悲しみしか生まれない。
頭痛がする。また誰かが僕の頭を荒らしている。
誰かの泣き声。悲しみ。苦しみ。絶望。失敗。嗚咽。頭痛。悲鳴。
全部、僕のせいなんだ。
僕の――
「おっはよー、優君! 今日もいい天気さねえ」
一瞬で思考を現実に戻す声が、僕の頭に響いた。そちらに目を移すと、すぐ近くに満面の笑みの如月の顔。今来たのか、まだ鞄が肩に掛かっている。
「どったのどったの、朝から辛気くさい顔しちゃって。はい笑顔! イエススマイル、ノーライフ!」
「まったく意味が分からないんだが」
元気度120パーセントの如月に、苦笑しながら返事をする。いつもの光景。いつもの日常。いつもの如月。
そして、いつもの僕。
ここにいるのは、いつもの僕たち以外にあり得ないのだ。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる